ナス土作りと苦土石灰と堆肥と元肥

ナス土作りで失敗しやすいpH調整、苦土石灰と堆肥と元肥の順番、畝立てと排水の考え方までを、定植前の段取りに落として整理します。現場で迷う「いつ・どれだけ・どう混ぜる」を一緒に詰めませんか?

ナス土作りとpHと苦土石灰

ナス土作りで最初に揃える3点
🧪
pHの目安を決める

ナスの好適pHはおおむね6.0〜6.5。まず土壌の現状を把握し、酸度矯正の要否を判断します。

🪨
苦土石灰は「早め」に入れる

定植の2〜3週間前〜30日前を目安に施用し、耕うんして土に馴染ませます(直前投入はトラブルの元)。

🌱
堆肥→元肥→畝立ての順で整える

有機質で土の骨格を作ってから、元肥を全層に入れて畝を仕上げると、根張りと水管理が安定します。

ナス土作りのpHと苦土石灰の目安


ナスは酸性に傾いた畑で根の動きが鈍くなりやすく、まずpHの着地点を決めるのが土作りの起点です。ナスの好適pHは6.0〜6.5が目安とされ、苦土石灰などで調整します。根拠として、種苗会社の栽培ポイントでも「苦土石灰と堆肥でpHを調整してから元肥」という順序が示され、pH調整が前提作業として扱われています。
苦土石灰は「入れるなら早め」が基本で、植え付け(定植)直前にまとめて入れると、土中の反応が落ち着かないまま根域に触れやすく、活着が不安定になりがちです。栽培情報では、植え付けの2〜3週間前に苦土石灰散布→深く耕す、という段取りが一般的に紹介されています。さらに県の栽培資料でも、定植の30日前までに有機資材と苦土石灰を施して耕うんする流れが明記されています。


pHがすでに高い圃場で「苦土石灰を入れない」判断も重要です。高知県の資料では、土壌pHが6.5以上で苦土石灰を施用しない場合、硫酸マグネシウムを10a当たり50〜60kg施用する、と具体の代替案が示されています。ここが意外と見落とされがちで、「Mgを入れたい=苦土石灰」と短絡するとpHだけが上がり、リン酸の効きや微量要素の動きが読みづらくなることがあります。


目安を決める実務では、次の順で考えるとブレにくいです。


  • 🧪 まず土壌診断(pH)を確認し、目標pH(6.0〜6.5)との差を把握する。
  • 🪨 苦土石灰を使うなら、定植の2〜3週間前〜30日前までに散布して耕うんする。
  • ⚖️ pHが高いなら苦土石灰を控え、Mgは別資材(硫酸マグネシウム等)で補う選択肢を持つ。

pH調整は「一回で決めきる」より、「次作まで含めて寄せる」感覚が現実的です。特に施設や多肥傾向の圃場では、石灰・肥料が積み上がりやすいので、毎作の微調整の方が事故が少なくなります。


参考(pHと石灰・Mgの考え方):定植30日前までの苦土石灰、pH6.5以上時の硫酸マグネシウムの代替が書かれています
https://www.nogyo.tosa.pref.kochi.lg.jp/info/dtl.php?ID=6283

ナス土作りの堆肥と深耕と根張り

ナスは「土質を選ばない」と言われる一方で、根が土中深くまで入り込むため、耕土が深く有機質に富んだ肥沃な土壌が好ましいとされています。これは見た目の“ふかふか”だけでなく、深い層まで根が伸びて水分・養分を拾える構造を作る、という意味合いが強いです。県の資料でも、良質な堆肥施用と深耕をあらかじめ行う重要性が明記されています。
堆肥の役割は肥料分そのものより、「団粒化」や「保水・排水の両立」「根域の空気」を作ることにあります。特にナスは夏場の高温期に根が酸欠になりやすく、通気・排水が悪いと一気に樹勢が落ちます。だからこそ、堆肥を入れる時は“量”よりも“完熟・均一混和・適湿での耕うん”が効いてきます。


現場で起きやすい失敗が、過湿・過乾燥の状態で無理に耕うんして土を練ってしまうことです。高知県の資料では、過湿・過乾燥で耕うんすると土壌の物理性が悪くなり根張りが悪くなるので、適湿で行うよう注意が書かれています。つまり土作りは資材の話だけでなく、「トラクタを入れるタイミング」も技術のうちです。


堆肥の入れ方は、次のように“狙い”を分けると判断しやすくなります。


  • 🌱 根域全体を柔らかくしたい:全面散布→深めに耕うん(深耕の意図)。
  • 💧 排水が弱い:高うね、明渠暗渠、耕盤破砕など“水の出口”を先に作る。
  • ☀️ 乾燥しやすい:平うね寄り+有機質で保水、マルチや敷きわらで蒸散を抑える。

「堆肥を入れたのに効かない」ケースの多くは、分解が進んでいない(未熟)か、混和が浅く根域がまだ固い、または水が抜けず根が働けていない、のどれかに寄ります。ナスは根が“動き出す”と回復も早いので、土の物理性を最初に整える価値が大きい作物です。


参考(深耕・堆肥・適湿耕うん):根が深く入る、良質な堆肥と深耕が大切、適湿で耕うんの注意が書かれています
https://www.nogyo.tosa.pref.kochi.lg.jp/info/dtl.php?ID=6283

ナス土作りの元肥と畝立てと定植前

土作りの段取りとして重要なのが、「pH調整(苦土石灰・堆肥)→元肥→畝立て→定植」という順番を守ることです。タキイ種苗の栽培ポイントでも、粗起こし時に苦土石灰と堆肥でpH調整をした後に元肥、再度耕して畝を立てる、という流れが示されています。順番が逆になると、元肥の位置がバラつき、根域の濃淡が激しくなって初期生育が揺れます。
元肥は“最初の勢い”を作る一方で、多すぎると根が肥料の濃い層を避けてしまい、結果として乾きやすい層に根が偏ることがあります。高知県の資料では、元肥は定植の15日以上前に全層に施用して畝立てをする、とされ、時間を取って土と馴染ませる設計です。ここを守るだけで、定植後の活着と水管理がかなり楽になります。


畝の作り方は圃場条件で変えるのが合理的で、排水が悪い圃場は高うね、乾燥しやすい圃場は平うね、という指針が県資料にあります。畝幅も基準が示されており、機械作業や管理通路を含めて設計すると、追肥防除のブレが減ります。


定植直前の注意として「浅植え」が複数資料で共通しています。タキイ種苗は根鉢の表面が見える程度の浅植えを示し、県資料でも鉢土上面がうね面から少し出る位の浅植えとし、鉢と土壌の間に隙間を作らないよう丁寧に植える、と具体に書かれています。ナスは深植えで首が湿りやすい条件が重なると、初期の勢いが落ちやすいので、浅植え+灌水+細土で隙間を埋める一連の作業を丁寧に行います。


実務のチェックリストとしては、次の5点が“事故予防”になります。


  • 🪨 苦土石灰と堆肥は早めに入れ、pHを落ち着かせる。
  • 🧑‍🌾 元肥は定植の15日以上前に全層施用し、畝を仕上げる。
  • 🌧️ 適湿で耕うんし、練り土を作らない。
  • 🛏️ 圃場に合わせて高うね・平うねを選ぶ(排水と乾燥で決める)。
  • 🌱 定植は浅植え+隙間なし+十分な灌水で活着を取る。

参考(元肥→畝立て、浅植え):苦土石灰と堆肥でpH調整後に元肥、畝立て、浅植えが書かれています
https://www.takii.co.jp/umauma/manual/nasu/index.html

ナス土作りのECと塩類集積と施設

施設栽培や多肥栽培では、土作りの盲点として「塩類集積(EC)」が効いてきます。福岡県の施肥基準では、施設栽培は塩類が集積しやすく、塩類の集積は土壌水の浸透圧を高めて発芽不良や生育不良を引き起こすため、ECが塩類濃度診断の指標として重要だと説明されています。ナスは定植後の根の立ち上がりが命なので、ECが高い状態で定植すると“水があるのに吸えない”状況を招きやすくなります。
さらに国の施肥指導基準の資料では、露地畑のECは0.1〜0.3mS/cmの範囲が一般的だが、極端な多肥栽培やハウス栽培では1.5mS/cm以上に達し、肥料やけなどの障害が発生する場合がある、とされています。土作りの場面で言えば、元肥を足す前にECの現状を見て「足す」のか「減らす(除塩)を優先する」のかを決めるのが合理的です。


意外な実務ポイントは、「石灰+複合肥料」を毎作同じ感覚で入れるほど、リン酸や塩基類が積み上がりやすい点です。農研機構の資料でも、定植前に苦土石灰や複合肥料が施用されることでリン酸や塩基類の集積が進行し、ECが高い土壌にナスが定植されることによる生育阻害が示唆されています。つまり“いつもの土作り”が、施設では“いつもの蓄積”にもなり得ます。


EC対策は、いきなり難しい技術に寄せなくても、次の順で効果が出ます。


  • 🧪 まずECを測り、上がっているかを可視化する。
  • 🚿 除塩を優先する(過剰施肥の停止、潅水・排水設計の見直し)。
  • 🧱 元肥は「入れる前に」残存成分と圃場履歴を踏まえて設計する(前年の追肥量も含める)。

ECは数値が出る分、現場で意思決定しやすい指標です。ナス土作りではpHが注目されがちですが、施設ではECが“隠れた初期不良の原因”になるため、土壌診断の項目に組み込む価値があります。


参考(施設の塩類集積とECの重要性):施設は塩類が集積しやすく、ECが診断指標として重要と書かれています
https://www.pref.fukuoka.lg.jp/uploaded/life/763928_62443940_misc.pdf
参考(ECが高い場合の目安):露地ECの範囲、多肥・ハウスで1.5mS/cm以上になり障害が出る可能性が書かれています
https://www.maff.go.jp/kanto/seisan/kankyo/sizai/attach/pdf/index-12.pdf

ナス土作りの太陽熱消毒と連作障害(独自視点)

検索上位でよく見かけるのは「苦土石灰・堆肥・元肥・pH」ですが、現場で収量を落とす原因として無視できないのが連作障害です。そして連作障害の対策は、実は土作りの“前工程”として組み込むと失敗が減ります。輪作が基本とされつつ、輪作年限が確保しにくい場合や病害が見られる圃場では、太陽熱や薬剤による土壌消毒が有効な対策になり得る、と整理されています。
太陽熱消毒は、夏の高温期に土壌へ十分な水分を与え、透明ビニールで被覆して密閉し、地温を上げた状態を2〜3週間〜1ヶ月程度維持して病原菌やセンチュウを減らす方法として説明されています。ポイントは「水分」「被覆」「期間」の3点で、これが欠けると温度が上がらず効果が出にくくなります。太陽熱消毒は薬剤を使わないメリットがあり、圃場の状況によっては最初の一手として選びやすい方法です。


ここで独自視点として強調したいのが、「消毒の後に、元肥をいつも通り入れるとECが跳ねやすい」問題です。太陽熱消毒は土壌の微生物相にも影響を与えるため、消毒後は“土がリセットされた”ように見えても、養分管理は別問題として残ります。特に施設で塩類集積が進んでいる圃場は、消毒より先にECの現状確認をし、必要なら除塩→消毒→土作り(pH・堆肥・元肥)の順に組み直すと、定植直後の失速を避けやすくなります。


実務での組み立て例(圃場条件別)です。


  • 🌞 連作+病害が出た:太陽熱消毒→pH調整(必要なら)→堆肥→元肥→畝立て→定植。
  • 🧪 施設でEC高め:除塩(排水・潅水含む)→必要なら太陽熱消毒→資材投入は控えめから設計。
  • 🌱 連作だが接ぎ木苗を使う:土壌病害の圧を下げつつ、土の物理性(深耕・堆肥)を優先。

土作りは「今年だけの出来」ではなく、圃場の病害虫・塩類・pHの履歴の上に積み上がります。ナスは樹勢が安定すれば長く収穫できる作型が多いので、定植前の2〜4週間を“土作り期間”として確保し、消毒・pH・堆肥・元肥を一つの工程表に落とすのが、結果的に最も省力で再現性が高いです。


参考(太陽熱消毒の具体):水分付与、透明ビニール被覆、地温40〜60℃、2〜3週間〜1ヶ月程度などが書かれています
https://nihonshubyo.jp/nasu-rensakushougai/




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