成虫を見つけてから農薬を葉に散布しても、すでに根元に産み付けられた卵から幼虫が土中で食害を続けているため収量が3割以上落ちることがあります。
ナスノミハムシは体長2〜2.5mmと非常に小さく、黒色で金銅色の光沢を持つ甲虫です。 見た目は黒ごまほどのサイズで、葉の裏に密集していることが多く、触れるとノミのように跳び跳ねるのが最大の特徴です。 コウチュウ目ハムシ科に分類され、後脚の腿節が太く発達していることで、その俊敏な跳躍力が生まれています。kurashi-no+1
成虫はナスのほか、ジャガイモ・トマト・タバコ・メロンなどナス科全般の葉を食害します。 葉の表面にゴマ粒ほどの小孔が無数に開いている場合は、ほぼナスノミハムシの成虫被害と判断してかまいません。一方、幼虫は白く細長く体長約4mmほどで、土中に潜ってナスやジャガイモの根や地下茎を内側から食い荒らします。
参考)幼虫の食害が怖い、ナスノミハムシとは?3つの対策&おすすめの…
つまり、成虫被害は葉、幼虫被害は地下部と、まったく異なる場所で起きているということですね。
被害が進むと葉の光合成能力が低下し、花・実の着きが悪くなります。 特にジャガイモでは皮を剥いた後にもミミズ腫れ状の食痕が残り、商品として出荷できなくなるレベルの損失につながります。 これは農業従事者にとって直接的な収益減につながる深刻な問題です。
ナスノミハムシの成虫は主に6月ごろから活動を始め、ナスなどの葉に飛来して産卵します。 卵から孵化した幼虫は株元の土中に潜り込み、根を食べながら成長し、8月ごろには新成虫として再び地上に現れます。 つまり1シーズンに少なくとも2世代発生すると考えて管理する必要があります。
近年は分布が急速に拡大しており、かつて北海道・東北中心だった発生が、関東・中部・近畿にまで広がっています。 2021年時点で24都府県での発生が確認されており、従来「本州では少ない」という認識は過去のものになっています。
これは意外ですね。
参考)http://jppa.or.jp/onlinestore/shuppan/images-txt/2022/2022_0203.pdf
| ステージ | 時期 | 場所 | 主な被害 |
|---|---|---|---|
| 成虫(越冬後) | 5〜6月 | 葉・茎 | 葉面に無数の小孔 |
| 産卵 | 6〜7月 | 株元の土中 | 幼虫の土中侵入準備 |
| 幼虫 | 7〜8月 | 土中(根・地下茎) | 根・イモの内部食害 |
| 新成虫 | 8〜9月 | 葉・茎 | 再度の葉面食害 |
成虫は越冬して翌春に再活動するため、圃場周辺の雑草管理も重要な対策の一つです。イヌホオズキなどのナス科雑草が圃場周辺にあると、そこが越冬・増殖の温床になります。 6月の定植直後から対策を始めるのが原則です。
農薬による防除は、成虫対策と幼虫(土壌)対策の2段構えが基本です。 成虫が飛来している段階では葉面散布が有効ですが、すでに産卵が済んだ後は土壌灌注・土壌混和が不可欠になります。葉だけに散布していても、土中の幼虫には届きません。
農薬使用で必ず守りたいのが「ローテーション散布」です。同一成分系統を連続使用すると、ナスノミハムシが耐性を獲得し、薬剤が効かなくなるリスクが高まります。
これは使えます。
モスピラン(ネオニコチノイド系4A)とアクタラ(同4A)は同系統なので、系統が異なるピレスロイド系やカーバメート系と組み合わせましょう。 必ず農薬ラベルの「作物登録・使用回数・収穫前日数」を確認してから使用することが条件です。noukaweb+1
参考情報:農林水産省の農薬登録情報と適用作物・害虫の詳細はこちらで確認できます。
農林水産省 農薬登録情報提供システム(農薬の登録・適用作物の公式確認ページ)
最も費用対効果が高い予防策は、定植直後からの防虫ネット被覆です。 ただし、ここで多くの農業従事者が犯しがちな失敗があります。体長2〜2.5mmのナスノミハムシには、一般的な防虫ネット(目合い2mm)では小さな個体が通り抜けてしまうことがある点です。目合い1mm以下のネットを選ぶのが原則です。
防虫ネットを張るだけでは不十分な場合もあります。
圃場周辺の雑草管理は見落とされがちですが、重要です。ナス科雑草はナスノミハムシの越冬・増殖場所になるため、圃場際の草刈りを怠ると翌年の大発生につながります。 雑草除去→ネット被覆→定期的な農薬散布の順で対策を進める、という流れが確実です。
参考情報:茨城県農業総合センターによるタバコノミハムシ(近縁種)の防除指導資料で、発生状況や防除ポイントを確認できます。
農業従事者の多くは葉の穴あきに注目しますが、実は経済的ダメージが大きいのは幼虫による地下部の食害です。 地上部の症状だけでは幼虫被害を判断しにくく、収穫後にジャガイモやナスの根を見て初めて被害の深刻さに気づくケースが少なくありません。つまり「葉が元気だから大丈夫」は禁物ということですね。
早期発見のために押さえておきたいサインを整理します。
「株が育ちにくい」と感じたら、すぐに株元の土を掘って幼虫の有無を確認する習慣をつけることが重要です。
幼虫被害が確認された場合は、土壌灌注タイプの農薬(モスピラン液剤の株元散布など)を速やかに使用することが被害拡大防止の鍵になります。 掘り確認→土壌処理→記録という一連の対応を素早く行うのが条件です。
参考情報:植物防疫専門誌での発生拡大報告や生態情報も専門機関で参照できます。