茗荷は多年草で、一度植えると同じ場所で数年維持する作型になりやすいぶん、「元肥=最初の設計」が後々の追肥の難易度まで左右します。特に露地では、元肥を適当にすると、追肥で取り返すつもりが結果的に窒素を重ねすぎ、葉だけ茂って花蕾(食用部)の出が鈍る事故につながります。
元肥設計で最初に見たいのは、肥料銘柄よりも土の状態です。土壌酸度(pH)が極端にずれていると、肥料を入れても吸えない・効きが不安定、という「効かないのに入れたくなる」悪循環に入りやすいからです。高知県の家庭菜園向け資料でも、植え付け前に苦土石灰を施用して混和する手順が明記されています(植え付け1か月前までに苦土石灰150g/㎡程度)。この“1か月前”という時間設定は重要で、直前投入で根に当てると障害リスクを上げます。
参考)https://www.semanticscholar.org/paper/929d6f503fa5b7ac1a306510ea46cd9b6ec552b7
元肥の具体量は、地域や土質、前作、堆肥投入歴で振れますが、行政資料に近い「たたき台」があると設計が早いです。こうち農業ネットでは、春植えの場合にチッソ・リン酸・カリを各成分で15g/㎡程度、秋植えの場合は3月中旬に各成分で10g/㎡程度という目安が示されています。ここでのポイントは「NPKを同じ成分量で入れる」発想で、最初から窒素だけを突出させないことです。
一方、農家webの解説では、茗荷は肥料分を過剰に必要としないがリン酸要求が多いので、やせ地でなければ堆肥と熔成リン肥料(ようりん)でも良い、という整理になっています。つまり、元肥は“窒素で押す”より“土づくり+リン酸の土台”を作って、追肥で不足を補うほうが事故率が下がります。
参考)https://www.semanticscholar.org/paper/bfd5f14b2863d6a818f440564bb9959dac4c1de2
現場向けに元肥の考え方を箇条書きにするとこうなります。
参考リンク(植え付け前の苦土石灰量、元肥成分量、追肥の目安がまとまっている)
こうち農業ネット「家庭菜園(ミョウガ)」
追肥は「いつ入れるか」で効き方が変わります。茗荷は地下茎で翌年以降につなぐ作物なので、地上部が伸びている時期に切らさない設計が基本ですが、闇雲に頻回施肥すると窒素過多に傾きやすいのが落とし穴です。
追肥の“葉数”基準は、家庭菜園情報でも複数のソースで一致しています。ハイポネックスの解説では、芽が伸びて葉が2~3枚の頃に1回目、葉が7~8枚になったらもう一度追肥、と明記されています。この葉数基準は、カレンダーより作物の生育に合わせやすいので、作型がずれても対応しやすい指標です。
参考)https://www.semanticscholar.org/paper/dd60d4632a994d50b815e6705564bf71604737fc
一方で、「時期(暦)」での目安も持っておくと、作業計画が立てやすくなります。こうち農業ネットでは、追肥は5月下旬頃に各肥料成分で10g/㎡程度、その後肥料が切れているようなら順次1g/㎡程度を追肥、という形で示されています。この書き方が現場的に優れているのは、“まず基準量を入れるが、以降は様子を見て小さく足す”という安全運転になっている点です。
農家webの記述では、追肥は葉が5~6枚の頃に1回、その後1か月後にもう一度、という整理で、さらに1回目追肥を1㎡あたり50g程度(化成肥料または有機配合肥料)として具体量も例示されています。葉数の基準が2~3枚/5~6枚とソースで異なるのは、前提(元肥の強さ、土の肥沃度、苗の状態、家庭菜園か連作か)で調整幅があるためです。結論としては「葉が増え始めてから、肥料切れになる前に1回目」「そこから約1か月or葉の展開を見て2回目」という2段構えが、判断ミスを減らします。
追肥設計の実務ポイントは次の通りです。
参考リンク(葉数で追肥タイミングを判断する目安が明確)
ハイポネックス「ミョウガの育て方(肥料・追肥のタイミング)」
茗荷肥料を考えるとき、意外と抜けがちなのが「リン酸をどう確保するか」です。窒素は効きが見えやすいので入れがちですが、茗荷はリン酸要求量が多いという整理があり、元肥でリン酸の土台を作る発想が向いています。
農家webでは、やせ地でなければ堆肥と熔成リン肥料(ようりん)だけでもよい、と踏み込んだ書き方をしています。熔成リン肥料は、水に溶けにくい「く溶性リン酸」が中心で、根や微生物が分泌する有機酸などでゆっくり溶け出して吸収される、という説明もあります。この「ゆっくり」が、宿根性作物の土台づくりと相性が良いと考えると理解しやすいです。
加えて、熔成リン肥料には石灰や苦土(マグネシウム)、けい酸などが含まれるという説明があり、単なるリン酸資材以上に“土の環境を整える寄与”も期待しやすい資材です。もちろん、土壌診断をして過剰を避けるのが本筋ですが、少なくとも「茗荷=窒素で押す」単純化から抜け出せます。
ここでの実務上のコツは、「リン酸を入れる=追肥でリン酸を足す」ではないことです。リン酸は土に固定されやすく、速効性だけで勝負しにくいので、元肥側で堆肥と一緒に混和して土に馴染ませておくほうが扱いやすい場面が増えます。農家webも、元肥は植え付け前に行い、有機肥料なら2週間前、化成肥料なら1週間前までに行う、という段取りを示しています。
リン酸設計の要点は次です。
参考リンク(熔成リン肥料の性質、茗荷がリン酸要求が多い点、追肥量の例がまとまっている)
農家web「みょうが栽培 おすすめの肥料と与え方」
茗荷の施肥失敗で多いのが、窒素過多による「つるボケ」です。葉と茎が立派なのに花蕾が少ない、収穫が伸びない、病気が出やすい、という形で現れやすく、現場では精神的ダメージも大きい領域です。
農家webでも、肥料過多になると葉や茎ばかりが大きくなるつるボケを起こし、花蕾が少なくなったり病気が発生しやすくなる、と明記しています。つまり「追肥を増やせば増収」という単純な足し算が成立しない作物で、追肥は“不足を埋める作業”に徹するのが安全です。
では、窒素過多をどう避けるか。ポイントは、追肥の回数を増やすことより「1回の量を控えめにして、状態を見て刻む」運用です。こうち農業ネットの追肥設計は、最初に10g/㎡程度、その後は切れているようなら1g/㎡程度を順次、という“小刻み”の発想になっています。この運用は、効きすぎたときに戻せないという肥料の性質を踏まえた、リスク管理として合理的です。
また、肥料の種類選びでも窒素過多の回避はできます。農家webは追肥に三大要素が含まれた肥料が良いとし、化成肥料8-8-8のような均等型も紹介しています。窒素だけ強い資材を単独で使うより、「Nだけ突出させない」設計に寄せられます。
現場のチェック項目を、観察ベースでまとめます。
検索上位の解説は「元肥・追肥の時期と量」に集中しがちですが、茗荷で見落とされやすいのが“肥料を効かせるための水分と地温の安定”です。茗荷は乾燥に弱く、湿り気を好むため、追肥そのものより「追肥が働く環境」を作るほうが収量のブレを減らします。
ここで使えるのが、バーク堆肥の敷き込みという発想です。こうち農業ネットでは、乾燥・雑草防止・品質向上の目的で、収穫が始まる前までに粗いバーク堆肥をうね表面に敷き込み、1㎡あたり20kg程度使用する、と具体的に書かれています。肥料の記事でバーク堆肥が出てくるのは一見意外ですが、追肥の効き方を左右するのは「水分が安定して根が働くか」という土台なので、ここに投資する価値は大きいです。
さらに、マルチングは“品質事故”の予防にもつながります。ハイポネックスは、敷き藁などでマルチングすると花芽が日に当たって緑化するのを予防できる、と説明しています。つまり、肥料で太らせても、花蕾が緑化して品質が落ちれば売り物になりにくいので、「肥料+マルチング」をセットで考えるのが実務的です。
独自視点としての結論は、「追肥の設計=肥料袋の中身」だけでは完結しないということです。水分保持、雑草抑制、地温の緩和で根の活動が安定すると、同じ追肥量でも効きが読みやすくなり、窒素の“当たり外れ”が減ります。
実装しやすい運用例です。