あなたがアザミウマを成虫で駆除しても、すでに幼虫期に保毒した個体は防除後も一生ウイルスを撒き続けます。
黄化えそ病は、初期症状が他の病害や生理障害に似ているため、発見が遅れやすい病気です。 生長点付近の葉から黄化・えそ斑点が始まり、葉は下向きに湾曲します。 茎や葉柄にも褐色の凹んだえそ条斑が入り、進行すると芽が黄化して枯れ込みます。nogyo.tosa.pref.kochi+2
これが黄化えそ病の典型的な進み方です。
果実の症状も特徴的です。表面がこぶ状に隆起して奇形となり、えそ斑点や着色むらが見られます。 生育初期に感染した株は被害が特に激しく、株全体が萎れて枯死することもあります。 一方、生育後期に感染した場合はえそ症状が軽く、モザイクや黄化症状にとどまることもあります。
参考)トマト黄化えそ病
見分け方に注意が必要です。
よく混同される病害として「トマト黄化葉巻病(TYLCV)」があります。黄化葉巻病は葉が表側に巻き込んで球状になるのが特徴で、媒介虫もコナジラミ類と異なります。 黄化えそ病はえそ(組織の褐色壊死)を伴う点が最大の識別ポイントです。 判断に迷ったときは、県の農業技術センターへ診断を依頼するのが確実です。nippongene-analysis+1
TSWVの伝搬様式は、農業害虫の中でも極めて特異です。 アザミウマは幼虫期にのみウイルスを獲得でき、成虫になってからウイルスを吸っても保毒虫にはなりません。 蛹から羽化するまでの約10日間の潜伏期間を経た後、成虫になって5分以上の吸汁でウイルスを伝搬します。
参考)https://www.takii.co.jp/tsk/bn/pdf/19990335.pdf
一度保毒した成虫は死ぬまで伝搬能力を持ちます。
参考)トマト黄化えそウイルス(TSWV)による病害 :&…
つまり、圃場での防除タイミングは「幼虫期の発生を抑えること」が原則です。成虫を駆除しても、すでに幼虫期に保毒した個体は農薬で処理した後も生き残っている限りウイルスを撒き続けます。 これが「アザミウマを農薬で駆除しても感染が止まらない」という現象の根本的な理由です。
厳しい仕組みですね。
媒介昆虫はミカンキイロアザミウマとヒラズハナアザミウマが主体で、活動が活発な5月〜10月頃に被害が集中します。 圃場周辺の雑草から採集されたミカンキイロアザミウマのTSWV保毒率は8.9〜29.1%という調査データもあります。 つまり、圃場の外にも高率の保毒虫が存在しているということです。pref+1
圃場周辺の雑草除去が必須です。
雑草はTSWVの重要な感染源であるとともに、アザミウマの増殖場所にもなっています。 ダリア・ヒオウギは越年してTSWVの伝染源となるため、特に圃場周辺への植え付けは避ける必要があります。 ピーマン・インゲン・ホウレンソウなどの自家用野菜も同様に、圃場近くへの作付けは控えましょう。pref.tochigi+1
自家菜園が思わぬ感染源になるケースがあります。
参考:高知県こうち農業ネット(TSWVの症状・伝染・防除対策)
トマト黄化えそウイルス(TSWV)による病害 :&…
物理的防除の核心は、アザミウマを「施設内に入れないこと」です。 施設の開口部への防虫ネット設置が最も基本的かつ効果的な手段です。iplant-j+1
目合いのサイズが重要なポイントです。
アザミウマ類の侵入を防ぐには、目合い0.4mm以下のネットが必要です。 長崎県の指針では1mm目以下とされていますが、より確実な防除を求めるなら0.4mm以下が推奨されます。 ただし、目が細かいほど通風性が低下し、夏期の施設内気温が上昇するため、換気計画と合わせて検討する必要があります。pref+1
岩手県農業研究センターの試験では、0.8mm目合いの赤色防虫ネットがアブラムシ類・アザミウマ類・オンシツコナジラミの侵入抑制に効果的であることが確認されています。 赤色ネットは通常の白色ネットと比較して害虫が忌避する効果が期待されており、目合いと色の組み合わせで防除効果を高める方法が普及しつつあります。 現在使用中のネットの目合いを確認する価値はあります。
参考)https://www.pref.iwate.jp/agri/_res/projects/project_agri/_page_/002/004/442/h29shidou_36.pdf
これは使えそうです。
収穫終了後には施設を10日間以上密閉し、高温状態を保つことでアザミウマ類を死滅させる処理も有効です。 残渣はアザミウマの越冬・増殖場所になるため、速やかに処分することが翌年の初期発生を抑える上で重要です。 施設内の残渣処理→蒸し込み→防虫ネット設置の順で、次の作付けシーズンに向けた環境を整えておきましょう。pref+2
黄化えそ病に対して直接効く農薬は現時点では存在せず、化学的防除の対象はあくまでも媒介虫であるアザミウマ類です。 育苗期から定植直後にかけての早期防除が特に重要で、この時期のアザミウマ防除が感染リスクを大きく左右します。boujo+1
育苗期の防除が最も効果的です。
農薬防除では抵抗性の発達に注意が必要です。ネオニコチノイド系の粒剤は定植後1ヶ月程度で残効が切れるため、その後は散布剤による防除に切り替える必要があります。 同一系統の農薬を連用すると薬剤抵抗性が発達しやすく、防除効果が著しく低下します。 IRACode(農薬の作用機序分類)の異なる薬剤をローテーション散布することが抵抗性管理の基本です。
参考)https://www.pref.nara.jp/secure/42654/7-2_thrips.pdf
ローテーションが原則です。
また、UVカット(紫外線除去)フィルムの活用も有効な手段の一つです。アザミウマ類の視覚は紫外線領域を感知するため、UV カットフィルムを施設に使用することで誘引を抑制できます。 粘着トラップを活用したアザミウマの発生予察を行い、密度が高まる前に適期防除を実施することが経済的な損失を最小限に抑えるポイントです。iplant-j+1
参考:奈良県「アザミウマ類の防除ポイントと薬剤情報」
https://www.pref.nara.jp/secure/42654/7-2_thrips.pdf
TSWV耐性品種の選択は、黄化えそ病被害を軽減するうえで有効な選択肢の一つです。ただし、ここには見落とされがちな重要な落とし穴があります。
品種選択だけでは安心できません。
耐病性品種でも、外部からTSWV感染苗を持ち込むことで未発生圃場を汚染するリスクがあります。 宮城県の防除指針では「既発生地からの苗をできるだけ導入しない」ことが明記されており、未発生地への苗持ち込みが拡散の主要経路の一つとされています。 ウイルスに感染していても症状が出ていない「無病徴感染苗」が存在するため、外見上は健全に見える苗でも実は保毒している場合があります。nogyo.tosa.pref.kochi+1
これは盲点になりやすい点です。
また、トマト黄化葉巻病(TYLCV)の事例では、高温条件下(35℃以上)でウイルス抵抗性遺伝子Ty-1の機能が崩壊し、複数の耐病性品種で発病が確認されています。 黄化えそ病においても、耐病性品種を過信した管理は禁物です。耐病性品種の導入は「防除の補助手段」として位置づけ、アザミウマ防除・防虫ネット・発病株早期除去との組み合わせで使うことが重要です。takii+1
耐病性品種と管理の両輪が条件です。
未発生圃場を守る観点では、種苗の導入元の確認が特に重要です。購入先に「TSWV未発生地区産」であることを確認する、または自家育苗に切り替えるなど、外部からの持ち込みリスクを最小化することが長期的な圃場管理のカギになります。pref+1
参考:大阪府「トマト黄化えそ病(発生報告と病徴写真)」
https://www.pref.osaka.lg.jp/documents/92759/200805_tomato_eso.pdf