ケイ酸資材で水稲の収量と食味を高める施用法

水稲栽培でケイ酸資材を正しく使えているか確認していますか?施用タイミングや種類の選び方を間違えると、せっかくの資材が効果を発揮しません。収量・食味・倒伏防止に直結するケイ酸の正しい知識、把握できていますか?

ケイ酸資材と水稲の関係を正しく理解する

稲わらをすき込んでいるだけでは、水稲に必要なケイ酸の約70%以上が不足したままになっています。


この記事の3つのポイント
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ケイ酸は水稲の「総合防衛資材」

いもち病・倒伏・高温障害・食味低下、これら4つの課題に同時に働きかける唯一の成分がケイ酸です。窒素の10倍・リン酸の20倍もの量を吸収するほど水稲にとって重要な成分です。

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全国の水田でケイ酸不足が深刻化

農業用水のケイ酸濃度は40年で約半分に低下し、ケイ酸質肥料の施用量も年々減少しています。稲わら還元だけでは毎年必要な約140kg/10aを補えません。

施用タイミングが効果を左右する

ケイ酸の全吸収量の60%以上は幼穂形成期以降に集中しています。この時期を逃さない追肥設計が、収量・品質の向上に直結します。


ケイ酸が水稲の生育で担う役割と吸収量の実態


水稲にとってケイ酸(ケイ素)は、窒素・リン酸・カリウムといった三大肥料要素と並ぶ、非常に重要な成分です。水稲によるケイ酸の吸収量は、窒素の約10倍・リン酸の約20倍にのぼります。つまり、ケイ酸は水稲が土壌から最も多量に吸い上げる養分といっても過言ではありません。


ケイ酸が水稲の体内に取り込まれると、葉や茎の表面に「ケイ化細胞」が形成されます。このケイ化細胞がいわばコーティングの役割を果たし、植物体を物理的に硬くします。結果として、いもち病などの病原菌の侵入を防ぎ、害虫による食害も受けにくくなります。


茎の強度が増すことで、台風や大雨による倒伏(とうふく)のリスクも大きく低減できます。これが原則です。


また、ケイ化細胞によって葉が直立した形に保たれると、上の葉が光を独占せず下の葉にも太陽光が届くようになります。株全体で光合成の効率が高まり、生産される炭水化物(デンプン)の量が増えます。このデンプン増加の結果として、米粒中のタンパク質比率が相対的に低下し、食味スコアの向上へとつながります。


🌾 ケイ酸の主な働きをまとめると次のとおりです。


- ケイ化細胞の形成:葉・茎が硬くなり、病原菌・害虫の侵入を物理的に防ぐ
- 葉の直立化:光合成効率が上がり、デンプン蓄積量が増える
- 茎強度の向上:倒伏リスクを低減する
- 蒸散調整:高温期に過剰な水分蒸散を抑え、高温障害を緩和する
- 根への酸素供給:根腐れを防ぎ、養水分の吸収効率を維持する


これは使えそうです。ケイ酸一つで多面的な効果が得られるわけです。


重要なのは、ケイ酸は植物の「必須元素」には分類されないものの、水稲においては事実上なくてはならない成分だという点です。施用することで病害虫の発生が抑えられれば、農薬コストの削減につながる可能性もあります。稲作の総合的な収益性を底上げする成分として、正しく理解し活用していきましょう。


ホクレン肥料農薬部によるケイ酸の役割と施用法の解説(アグリポートWeb)


水稲が必要とするケイ酸量と土壌の現状・不足のリスク

水稲は1作あたり約140kg/10aものケイ酸を必要とします。この量を補う供給源は大きく3つあります。すなわち、灌漑水(かんがいすい)、稲わらや籾がら(もみがら)のすき込み、そして土壌そのものです。


問題はこの3つを合計しても、多くの圃場では140kg/10aに足りないという事実です。北海道農業試験場の調査では、水稲のケイ酸吸収量10a当たり110.5kgのうち、土壌から約56kg、灌漑水から約13kgが供給され、残り約41kgは肥料で補う必要があったと報告されています。


さらに、農業用水からのケイ酸供給量は年々低下しています。山形県の調査では、農業用水のケイ酸濃度が1956年の平均19.7ppmから、1996年には平均9.8ppmへと約半分に減少したことが確認されています。ここ40年でほぼ半減している、ということですね。


ダムや人工河川の整備が進んだことで、自然な岩石の風化によって河川に溶け出すケイ酸が減ったためとされています。加えて、農林水産省「農地土壌環境の変化」によると、ケイ酸カルシウム肥料の施用量自体も年々減少傾向にあります。


| ケイ酸の供給源 | 10a当たりの供給量目安 |
|---|---|
| 土壌(稲わら還元含む) | 約56kg |
| 灌漑水 | 約13kg |
| 合計(自然供給) | 約69kg |
| 水稲の必要量 | 約140kg |
| 不足分(肥料で補う必要) | 約71kg |


不足量は肥料で補うが原則です。稲わらのすき込みをしているから大丈夫、と思っている農業者は少なくありませんが、それだけでは不十分なケースがほとんどです。


可給態ケイ酸の目標値(20mg/100g以上)を下回る水田が全国各地で報告されており、農林水産省もその状況を問題視しています。ケイ酸不足は表面上は見えにくいため、土壌診断を定期的に行い、圃場の実態を数値で把握することが土づくりの第一歩です。


ケイ酸とは何か・水稲への効果・種類と施用量の詳細解説(minorasu by BASF)


ケイ酸資材の種類と水稲栽培における選び方

一口にケイ酸資材といっても、その種類はさまざまです。目的や圃場の状況に応じて使い分けることが、施用効果を最大化するポイントになります。


ケイ酸カルシウム(ケイカル) は最も広く普及している基肥向けのケイ酸資材です。製鉄所の副産物(高炉スラグ)を原料とし、価格が比較的安いため、集団での機械散布を推進する営農組合でも多く採用されています。土壌pHをアルカリ側に矯正する効果もあり、酸性土壌の改良を兼ねた施用として有効です。基肥での施用量は10a当たり120〜200kgが目安で、田植え2週間前までに全層施肥するのが基本です。


ケイ酸加里肥料(珪酸加里) はケイ酸とカリウムを同時に補給できる肥料で、火力発電所の石炭灰を原料としています。く溶性(根酸などで緩やかに溶ける性質)のため、根に接触すると少しずつ溶け出し、流亡しにくいのが特長です。基肥・追肥の両方で使え、基肥は10a当たり40〜60kg、追肥は30〜40kgが目安です。土壌の酸性化を引き起こさない点でも使いやすい資材です。


ケイ酸マグネシウム(ケイ酸苦土) はマグネシウム(苦土)も含む水溶性の高い資材で、施肥効果が速く現れるのが特長です。育苗段階から本田まで幅広く使えます。水稲の育苗箱に1箱当たり50g、基肥では10a当たり30〜45kg、追肥では15〜30kgが目安です。


ようりん(熔成リン肥) はリン酸・ケイ酸・マグネシウムを含む多機能な基肥資材です。稲わらや籾がらの分解を促進する働きもあり、土壌有機物の活性化と地力向上を兼ねて使えます。


🌱 資材の選び方の基本ポイントをまとめると。


- 基肥でpH矯正も行いたい圃場:ケイカルが適している
- 追肥でケイ酸・カリウムを補給したい:珪酸加里がおすすめ
- 育苗段階から強い苗をつくりたい:ケイ酸苦土やシリカゲル肥料が有効
- 有機物の分解促進も兼ねたい:ようりんが向いている


つまり、目的と圃場の状態で選ぶが条件です。なお、土壌診断でpHや可給態ケイ酸の数値を確認してから資材を選ぶと、過不足なく施用できます。近くのJAや農業試験場の窓口で土壌診断を依頼するのが一つの方法です。


ケイ酸肥料の種類と特徴・施用量の目安一覧(minorasu by BASF)


ケイ酸資材の水稲への施用タイミングと施用量の目安

ケイ酸資材の効果は、施用するタイミングによって大きく変わります。これは知っておかないと損です。


水稲によるケイ酸の吸収は、幼穂形成期以降に全吸収量の60%以上が集中します。つまり、ケイ酸の吸収のピークは生育後半に訪れます。この特性を踏まえると、基肥で土壌中のケイ酸を確保しておくことはもちろん、最高分げつ期から幼穂形成期にかけての追肥が非常に重要です。


基肥での施用タイミングと量


ケイカルを基肥として施用する場合は、代掻き(しろかき)前・耕起前に土壌全面に散布し、15cm以上の深さまで土とよく混和させます。田植え2週間前には施用を完了させるのが理想的です。施用量は土壌診断の結果に基づいて決めるのが原則ですが、一般的な目安は10a当たり100〜200kgです。砂質土壌や秋落ち傾向のある水田では150〜250kgと多めに施用します。


追肥での施用タイミングと量


追肥は中干し前から中干し開始頃(出穂40日前頃)が最も効果的です。この時期に施用することで、地表に張るうわ根からケイ酸が効率よく吸収されます。また、幼穂形成期1週間後に20kg/10aを追肥すると、不稔(ふねん)の軽減や低タンパク米生産に効果が高いとされています。北海道の全道11カ所の試験(2011〜2013年)でも、この追肥が収量・品質の両方にプラスの効果をもたらしたことが確認されています。


| 施用区分 | 施用時期 | 施用量の目安(10a当たり) |
|---|---|---|
| 基肥(ケイカル) | 耕起前・代掻き前(田植え2週間前まで) | 100〜200kg |
| 追肥(珪酸加里など) | 中干し前〜中干し開始頃(出穂40日前) | 30〜40kg |
| 追肥(幼穂形成期) | 幼穂形成期1週間後 | 約20kg |


ケイ酸肥料は水に溶けにくい性質を持つため、施用後も通常の水管理で問題ありません。濃度障害が発生しないのも、扱いやすいポイントです。


なお、秋施用(収穫後のすき込み時)と春施用では、耐倒伏性や千粒重などの品質に大きな差は生じないことが確認されています。農作業の労力配分を考えながら、農閑期にまとめて施用するのも一つの方法です。


ケイ酸の吸収タイミングと追肥の効果的な施用法(ホーネンアグリ株式会社)


高温障害・倒伏・いもち病にケイ酸資材が効果を発揮する理由

近年の夏は、出穂期から登熟期にかけて気温が28℃を超える日が増え、米の品質低下が深刻な問題になっています。高温が続くと白未熟粒(はくみじゅくりゅう)や背白米・基白米が増え、収量が10〜30%減少するケースも報告されています。痛いですね。


ケイ酸が十分に吸収されていると、葉の気孔の開閉が適切に制御され、過剰な水分蒸散が抑えられます。猛暑の日でも葉の温度が上がりすぎず、光合成の機能が維持されやすくなります。細胞膜・葉緑体の構造が安定するため、高温ストレスによる細胞ダメージそのものも軽減される効果があります。


いもち病への抵抗力についても、ケイ酸の効果は古くから研究されています。ケイ酸が沈積した葉・茎の表面は、いもち病菌の菌糸が侵入しにくい物理的な壁として機能します。鳥取県の試験では、ケイ酸含有資材「マインマグN」の施用によって苗体のケイ酸含有率が高まり、苗いもちの発生が抑制されたことが確認されています。


倒伏については、茎のケイ化細胞が増えることで稈(かん=茎の節間部分)が太く、かつ折れにくくなります。強風や大雨の際でも倒れにくい稲体を作ることが、最終的な収量確保への近道になります。収量を守るが目的です。


💡 ケイ酸が対策できるリスクと、その仕組みを整理すると。


| リスク | ケイ酸の効果 | メカニズム |
|---|---|---|
| 高温障害 | 白未熟粒・背白米の減少 | 蒸散を適切に制御し、葉温上昇を抑制 |
| 倒伏 | 耐倒伏性の向上 | 茎のケイ化細胞増加による稈強度の向上 |
| いもち病 | 感染リスクの低減 | 表皮のケイ酸層が菌糸の侵入を物理的に防ぐ |
| 食味低下 | タンパク質含有率の低下 | 光合成増加→デンプン蓄積増→タンパク比率低下 |


近年では液体タイプのケイ酸資材も登場しており、吸収効率が高く、水口からの流し込みやドローン散布にも対応しています。従来のケイカルに比べて即効性があるため、高温障害が予測される時期の追加対策としても注目されています。高温障害対策としてケイ酸追肥を検討する際は、出穂40日前〜幼穂形成期の施用タイミングを目標に、資材を手配しておくと安心です。


倒伏・高温障害を防ぐケイ酸肥料の選び方と使い方(アグリスイッチ)


水稲の食味向上に直結するケイ酸と低タンパク米生産の独自視点

「特A米」を目指す農業者なら必ず押さえておきたいのが、ケイ酸と米のタンパク質含有率の関係です。ほとんどの農業者は窒素を減らせば食味が良くなると考えていますが、実はケイ酸施用によるアプローチの方が、収量を落とさずに低タンパク化を実現できる場合があります。


玄米中のタンパク質含有率が7%を超えると、食味が大きく低下することが研究で確認されています。一方、6%以下に下げることができれば、炊き上がりの粘りが増し、食味スコアの向上につながります。


ケイ酸を十分に吸収した水稲は、光合成効率が高まることで玄米1粒に蓄えられるデンプン量が増えます。デンプンの割合が高まれば、相対的にタンパク質の割合が下がります。つまり「デンプンでタンパク質を薄める」という低タンパク化の方法がケイ酸施用の本質です。


北海道農業改良普及協会の資料では、ケイ酸/窒素比が高い水稲は吸収した窒素当たりの子実収量が向上するため、白米タンパク質含有率が低下し、玄米の白度も高まることが報告されています。収量と食味を同時に高められる、ということですね。


具体的な実践方法としては、以下のステップが有効です。


- ステップ① 土壌診断でケイ酸肥沃度を確認する:可給態ケイ酸が13mg/100g以下の圃場は収量増加が期待でき、20mg/100g以上を目標に施用計画を立てる。


- ステップ② 基肥でケイカルを施用し、地力としてのケイ酸を確保する:圃場全体の底力を上げることが基本。


- ステップ③ 幼穂形成期1週間後に追肥を実施する:不稔の軽減と低タンパク化の両立が期待できるタイミング。


- ステップ④ 窒素施肥の過多を避けながら穂肥を調整する:ケイ酸施用による効果をより引き出すには、窒素過多と組み合わさないことが重要。


食味検査で「6%台のタンパク質含有率」という目標を立てている農業者にとって、窒素を削ることは減収リスクと背中合わせです。ケイ酸を積極的に活用するアプローチは、収量を落とさずに食味基準をクリアするための現実的な選択肢といえます。


圃場の可給態ケイ酸の数値を一度確認するだけで、施用計画の精度が大きく変わります。JAや農業試験場への土壌分析依頼を、次の作業計画に組み込んでみてください。


不稔軽減と高品質米生産を目指したケイ酸の合理的施肥法(北海道立農業試験場)


ケイ酸施用による低タンパク米生産と食味向上の仕組み(アグリポートWeb)




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