種子伝染率が最大40%でも、外見が正常な種子が「無症状の感染源」になっています。
感染初期は、若い葉の葉脈がすき通るように透けて見えます。
これが最初のサインです。
参考)島根県:モザイク病(トップ / しごと・産業 / 農林業 …
その後、濃緑色と淡緑色が入り混じったモザイク模様があらわれ、葉が小さくなりながらねじれ・巻き上がりが進みます。 表面には凸凹(ブリスター)がたくさんでき、一目で「おかしい」と分かる状態になります。
つまり葉の変形が判断の基準です。
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子実(大豆の粒)にも影響が出ます。感染成熟粒は黒または茶褐色のまだら模様(褐斑粒)を呈し、商品価値が著しく低下します。 褐斑粒は検査等級の下落に直結するため、収量は確保できていても売上損失につながります。naro+1
さらに厄介なのが「無症状感染株」の存在です。外見が健全に見える株からも病菌が分離され、そのまま開花・結実することがあります。 見た目が正常でも安心できないということですね。
参考)日本植物病理学会報
| 症状部位 | 具体的な症状 | 被害 |
|---|---|---|
| 若葉(初期) | 葉脈透け・モザイク模様 | 光合成低下 |
| 葉全体(中期) | ねじれ・巻き・凸凹 | 同化機能の著しい低下 |
| 株全体(重篤) | 萎縮・矮化 | 収量減少 |
| 子実(収穫期) | 褐斑粒・黒色まだら | 等級下落・商品価値消失 |
参考:京都府農林水産技術センター「ダイズモザイクウイルス」解説ページ(症状・発生・防除の概要)
https://www.pref.kyoto.jp/nougijyutsu/documents/1355375441572.pdf
SMVの感染は大きく2つのルートがあります。 それが種子伝染とアブラムシによる虫媒伝染です。
種子伝染率は品種・感染時期・系統によって3〜40%の幅があります。 40%という数字は、播いた種子の5粒に2粒が感染源になる計算です。 開花期以前に感染した株ほど種子伝染率が高くなるため、生育初期の感染防止が特に重要です。boujo+1
アブラムシによる伝搬は「非永続伝搬型」です。 これは、アブラムシがウイルス保有植物を5分吸汁するだけでウイルスを獲得し、健全株に移って5分吸汁するだけで感染させられることを意味します。 殺虫剤を散布してもアブラムシが死ぬ前に伝搬が完了してしまうため、「農薬をかければ大丈夫」とはいえません。
短時間で拡散するのが最大の問題です。
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主な媒介アブラムシはダイズアブラムシとモモアカアブラムシで、体長わずか1.4〜1.6mm(ごまの粒ほど)の小さな虫です。 6〜7月に高温少雨が続くとアブラムシが多発し、ウイルス感染も連鎖的に拡大します。 天候に応じた早期モニタリングが条件です。pref+1
| 感染ルート | 特徴 | 感染リスクが高まる条件 |
|---|---|---|
| 種子伝染 | 伝染率3〜40%(品種・感染時期で変動) | 開花前に親株が感染した場合 |
| アブラムシ伝搬 | 5分の吸汁で感染成立(非永続伝搬) | 6〜7月の高温少雨、アブラムシ多発年 |
| 圃場周辺植物 | マメ類・クローバ類が一次伝染源に | 圃場周囲に感染植物がある場合 |
参考:農研機構・東北農業研究センター「ダイズモザイクウイルス日米系統の比較」(SMVの被害実態と感染拡大メカニズムの詳細)
https://www.naro.go.jp/publicity_report/publication/files/tohoku117-7.pdf
防除の基本は3つです。①無病種子の使用、②発病株の早期抜き取り、③アブラムシの防除です。
この順番に意味があります。
種子伝染を断つために、必ず健全株から採取した無病種子を使用してください。 ただし前述のとおり「無症状感染株」が存在するため、外見だけで「健全」と判断するのは危険です。 採種元の圃場でウイルス病発生歴がないかを確認するのが原則です。
参考)https://www.jppn.ne.jp/fukuoka/boujyo/futuu/1271.htm
発病株を発見したらすぐに抜き取り、焼却処分します。 この作業が遅れるほど圃場内のアブラムシに拾われ、感染が次々と広がります。
迷わず抜き取りが正解です。
アブラムシ防除については注意が必要です。SMVは「非永続伝搬」のため、殺虫剤を散布してもアブラムシが死ぬ前にウイルスを伝搬してしまいます。
殺虫剤のみに頼るのはリスクがあります。
そのため、農薬散布と同時に圃場周辺のマメ科植物・クローバ類などの伝染源となる雑草を除去する対策を組み合わせることが効果的です。 また、生育初期から種子処理剤や播種時の粒剤を活用してアブラムシの発生密度自体を下げる方法も有効です。jppa+2
参考:防除ハンドブック(農薬・防除情報サイト)「ダイズモザイク病 発生・薬剤情報」(防除薬剤と耕種的対策の詳細)
ダイズモザイク病
被害回避の最も確実な方法は、SMV抵抗性品種の導入です。 農薬に頼らない根本的な解決策といえます。
参考)https://www.naro.go.jp/publicity_report/publication/files/tohoku117-7.pdf
代表的なSMV抵抗性品種を以下にまとめます。
品種を選ぶ際は、地域の作型や用途(豆腐用・納豆用など)に合わせて選択することが大切です。 ただし、SMV抵抗性品種でも「無症状で感染する」ケースがあることが報告されており、品種を変えたからといって完全に安心とはいえません。 抵抗性品種+無病種子の組み合わせが条件です。
参考)https://www.naro.go.jp/publicity_report/publication/files/daizu_alacarte_ver2.pdf
参考:農研機構「大豆の品種あらかると 増補ver.2」(SMV抵抗性を持つ品種一覧と特性の詳細)
https://www.naro.go.jp/publicity_report/publication/files/daizu_alacarte_ver2.pdf
水田転換畑での大豆栽培では、一般的な普通畑よりもSMVの被害が拡大しやすい状況があります。 これはあまり語られない現場の落とし穴です。
転換畑では圃場周辺に多様な植物が混在しやすく、それらがウイルスの「保毒源」となるリスクがあります。 普通畑に比べて圃場管理の難易度が上がります。また、転換初年度は土壌の排水状況が不安定なことが多く、作物がストレスを受けて病害への抵抗力が下がりやすい環境です。
参考)https://niigata-u.repo.nii.ac.jp/record/5919/files/h28fak173.pdf
さらに、SMVは高温少雨の年に特に多発します。 近年の夏の傾向として高温・少雨が続く年が多く、アブラムシの発生密度が上がりやすくなっています。
気候変動の影響も見逃せません。
参考)ダイズモザイク病
こうした圃場では、種子処理剤の使用を検討することが有効です。 播種時に種子にネオニコチノイド系などの粒剤・種子処理剤を使うことで、発芽直後からアブラムシの初期寄生を抑え、一次感染源となる種子伝染株からの拡散リスクを減らせます。 まず「初期のアブラムシ密度を下げること」が最重要の一手です。
参考)大豆-褐斑粒/茨城県
参考:茨城県農林水産部「大豆-褐斑粒(ウイルス病・アブラムシ類)」(転換畑での防除体系・薬剤選定の解説)
大豆-褐斑粒/茨城県