近年、農業現場で注目を集めている「bs資材(バイオスティミュラント資材)」ですが、長らく明確な法的定義が存在せず、肥料や土壌改良材との境界線が曖昧なまま流通していました。しかし、この状況は大きく変わりつつあります。農林水産省は、農業者が安心して効果のある資材を選択・使用できる環境を整えるため、「バイオスティミュラントの表示等に係るガイドライン」を策定しました。このガイドラインの登場により、bs資材は単なる「謎の液体」から、科学的根拠に基づいた農業資材へと進化を遂げようとしています。
農水省のガイドラインにおいて、バイオスティミュラント(BS)は以下のように定義されています。
これまで市場には、「驚くほど育つ」といった過剰な宣伝文句や、根拠の乏しい資材が混在していました。新しいガイドラインでは、こうした不適切な表示を是正するルールが設けられています。具体的には、事業者が製品のパッケージや説明書に効果を記載する場合、合理的な根拠(試験データなど)を持つことが求められます。また、肥料としての登録がないにもかかわらず「肥料効果」を謳ったり、農薬登録がないのに「病害虫への効果」を標榜したりすることは、従来通り肥料法や農薬取締法に抵触するため厳格に禁止されています。
ガイドラインの遵守はあくまで任意ですが、業界団体や大手メーカーはこの基準に沿った品質保証体制を構築し始めています。農業者としては、資材選定の際に「この製品はガイドラインに準拠した表示を行っているか?」を確認することが、粗悪品を掴まないための第一の防衛線となるでしょう。
農林水産省:バイオスティミュラントの表示等に係るガイドラインについて(定義と表示ルールの詳細)
bs資材を効果的に活用するためには、既存の農業資材である「肥料」や「農薬」との違いを明確に理解しておく必要があります。これらは法的な位置づけも、植物に対する作用機序も全く異なります。現場ではこれらを混同して使用すると、期待した効果が得られないばかりか、法令違反のリスクさえあります。以下の表で、それぞれの役割と法的な違いを整理します。
| 項目 | 肥料 (Fertilizer) | 農薬 (Pesticide) | bs資材 (Biostimulant) |
|---|---|---|---|
| 主な役割 | 植物に栄養を直接供給する | 病害虫や雑草を防除する | 植物の免疫力・耐性を高める |
| 作用対象 | 植物の栄養不足 | 生物的ストレス(虫・菌) | 非生物的ストレス(熱・水) |
| 法規制 | 肥料の品質の確保等に関する法律 | 農薬取締法 | 専用法なし(ガイドライン等) |
| 成分例 | 窒素、リン酸、カリウム | 殺虫成分、殺菌成分 | アミノ酸、海藻エキス、腐植酸 |
| 登録制度 | あり(登録または届出) | あり(厳格な登録制度) | なし(自主管理が中心) |
肥料との違い:
肥料は、人間に例えると「食事(カロリーやビタミン)」です。植物が体を大きくするために不可欠な材料を直接与えます。対してbs資材は「サプリメント」や「漢方薬」、あるいは「トレーニング」に近い役割を果たします。食事(肥料)が不足している状態でサプリ(bs資材)だけを飲んでも体は大きくなりません。あくまで、肥料が十分に吸収される土台を作ったり、暑さで食欲(吸肥力)が落ちないように体調を整えたりするのがbs資材の役目です。
農薬との違い:
農薬は、病気や害虫といった「生物的ストレス」を直接叩く薬剤です。bs資材には、菌を殺したり虫を殺したりする直接的な効果はありません。しかし、bs資材によって植物自体が健康になり、細胞壁が強化されることで、結果的に病気にかかりにくくなることはあります。これを「抵抗性誘導」と呼ぶことがありますが、これを「病気に効く」とパッケージに書くと農薬取締法違反(未登録農薬の販売)になります。この法的な違いは非常に重要で、農水省も監視を強めているポイントです。
独立行政法人農林水産消費安全技術センター(FAMIC):農薬と肥料、その他の資材の法的な区分の解説
bs資材の真価は、近年の異常気象において発揮されます。猛暑、長雨、干ばつといった環境変化は、植物にとって過酷な「非生物的ストレス」となります。これらは従来の肥料や農薬では対処が難しい領域でしたが、bs資材の効果的な活用により、ダメージを軽減できる可能性が高まっています。代表的な成分とその作用メカニズムを知ることで、自社の圃場の課題に合った資材選びが可能になります。
これらの資材を活用する際の鉄則は、「予防的な散布」です。人間が風邪をひいてからサプリを飲むより、普段から飲んで免疫を高めておく方が効果的であるように、bs資材も「明日から気温が上がる」「台風が来る」といったストレスがかかる前に植物体に作用させておくことが、最大の効果を引き出すコツです。農水省のガイドラインでも、こうした「本来の機能の補助」という点が強調されています。
日本バイオスティミュラント協議会:各資材の技術情報や活用事例の紹介
ここはあまり語られない視点ですが、bs資材の導入は農水省が推進する「みどりの食料システム戦略」、特に脱炭素(カーボンニュートラル)の実現と密接に関わっています。一見すると、植物の生育促進材と地球温暖化対策は無関係に見えるかもしれません。しかし、ここには「肥料の利用効率(Nutrient Use Efficiency: NUE)」という重要なキーワードが隠されています。
化学肥料、特に窒素肥料は、製造時に大量のエネルギーを消費するだけでなく、農地に施用された後、その一部が「亜酸化窒素(N2O)」という強力な温室効果ガスに変化して大気中に放出されます。N2Oの温室効果は二酸化炭素の約300倍とも言われており、農業分野からの温室効果ガス排出の大きな割合を占めています。
ここでbs資材の出番です。
bs資材(特に腐植酸や特定のアミノ酸、微生物)を活用することで、植物の根が肥料を吸い上げる力が強まります。これにより、今まで「10」与えていた肥料のうち「6」しか吸われていなかったものが、「8」吸われるようになれば、施肥量を「8」に減らしても同じ収量を維持できる計算になります。
bs資材の原料には、食品残渣、魚のアラ、海藻、家畜排泄物などの有機廃棄物が利用されることが多くあります。これらを廃棄・焼却処分せずに農業資材として再資源化することは、循環型社会の構築に直結します。
ストレス耐性が向上し、光合成能力が高まった作物は、より多くのCO2を大気中から吸収・固定します。
農水省がガイドラインを整備してまでbs資材の普及を後押しする背景には、単なる農業振興だけでなく、2050年のカーボンニュートラル達成に向けた「化学肥料の使用量30%低減」という国家目標があるのです。農業者にとっても、肥料高騰が続く中で、bs資材をうまく組み合わせて減肥しつつ収量を維持することは、経営と環境の両面で「賢い選択」となりつつあります。
農林水産省:みどりの食料システム戦略トップページ(肥料低減と環境負荷軽減のロードマップ)
農水省のガイドラインは画期的な一歩ですが、現状では法的な強制力を持つ「法律」ではありません。そのため、市場には依然として玉石混交の資材が存在する可能性があります。そこで重要な役割を果たしているのが、「日本バイオスティミュラント協議会」などの業界団体による自主的な取り組みです。
協議会では、農水省のガイドラインに準拠した自主基準を設けています。この基準は、以下のような項目を厳しくチェックするものです。
今後、bs資材を購入する際は、パッケージやカタログに「協議会の会員であること」や「自主基準に適合していること」を示すマークや文言があるかを確認することをお勧めします。また、販売店やメーカーに対して「この効果の根拠となるデータはありますか?」と質問することも有効です。
信頼できるメーカーは、ガイドラインに基づき、どの作物で、どの時期に、どのようなストレスに対して効果があったのかという具体的な試験データを開示しています。「何にでも効く」ではなく「トマトの夏の高温障害に効く」といった、ターゲットを絞った具体的な提案ができる資材こそが、本物のbs資材と言えるでしょう。農水省のガイドラインは、私たちが「本物」を見極めるための強力なものさしを提供してくれています。
日本バイオスティミュラント協議会:会員企業一覧と自主基準の取り組みについて

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