ベニカS乳剤は「殺虫剤」で、有効成分はペルメトリン2.0%の乳剤です。
狙いどころは、ケムシ・アオムシなどのチョウ目害虫で、庭木・果樹・野菜まで幅広く使える点にあります。
実務上は「効く・効かない」の判断を、体感ではなく適用表で先に決めるのが最短です。
適用表の読み方として、最低限ここを確認します。
たとえば登録情報には、トマトのアブラムシ類に200〜300倍、収穫前日まで、本剤3回以内など具体条件が掲載されています。
また、だいこんはアオムシ・コナガ・ヨトウムシ等が200倍で「収穫30日前まで」と、葉菜とは違う“前日数の長さ”が出るため、播種〜収穫の計画に組み込みやすい反面、終盤の緊急散布には向かない場面が出ます。
この「同じ薬でも作物で終盤に使える/使えないが変わる」点が、現場での効き目評価をぶらす典型パターンです。
ベニカS乳剤は、作物・害虫により希釈倍数が200〜800倍など幅があります。
「薄すぎて効かない」「濃すぎて薬害やコスト増」どちらも起きやすいので、まず登録の希釈倍数・使用液量を固定して考えます。
代表例として、登録情報では多くの野菜で使用液量が100〜300mL/㎡と示されており、希釈倍数だけでなく“どれだけ濡らすか”も効果の一部になっています。
樹木類では200〜700mL/㎡のように多めの設定もあり、葉量の多い作物・樹木は「希釈倍数が合っていても、付着量が足りないと効きが落ちる」ことが起こります。
希釈の作業ミスを減らすための、現場で使える考え方です。
※実際の散布は必ず適用表の倍率を優先し、計量はスポイト・計量カップ等で行います。
そして、効かせ方で差が出るのが「当て方」です。チョウ目害虫は葉裏や芯部に潜みやすく、表面だけ濡れても取り逃がしが起きます。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3183760/
散布では、葉表だけでなく葉裏・新芽・芯(食入部位)へ薬液が届くよう、ノズル角度と歩行スピードを意識します。
散布液は「使いきる量だけ調製する」ことも重要で、ラベル上でも使い切りが注意として示されています(残液処理のリスクを減らす意味もあります)。
ベニカS乳剤の使用時期は、適用表で多くが「発生初期」とされ、早めの対応が前提の薬剤設計です。
さらに具体的なコツとして、ねぎのシロイチモジヨトウは「食入前の若令幼虫期に散布する」と明記されており、食入後では効率が落ちることが示唆されています。
ここは意外と見落とされがちですが、「虫が小さいうちに当てる」ことが、薬剤の強み(速効性)を最大化する最短ルートです。
実務で“発生初期を逃さない”ための見張り方はシンプルです。
持続性については、製品説明で「チャドクガ・若令幼虫で1〜2週間(散布葉)」と記載されており、散布後しばらくは効きが残る設計です。
ただし、これは「散布葉に残った薬剤が効く」前提なので、新葉が次々出る作物や、強い降雨で被膜が落ちる状況では、残効の体感が短くなることもあります。
そのため、発生が続く圃場では“回数制限を守りつつ”次の一手(系統を変える、物理防除を組む等)も同時に準備しておくと、効かない期間を作りにくくなります。
ベニカS乳剤の注意点として、かんきつ・茶での散布は「場合によりハダニ類が増えることがあるので注意」と明記されています。
この注意は、薬剤の効きそのものではなく、防除体系の中で“結果として困る増え方”が起こり得る、という現場目線の重要情報です。
果樹や茶で「別の害虫は減ったのに、後でハダニが目立つ」ケースでは、薬剤選定だけでなく天敵やローテーションの組み方まで見直す価値があります。
安全面では、散布時のマスク・手袋・保護メガネ着用、皮ふや眼への刺激性、体調不良時は散布しない等の注意事項がまとめられています。
また、カイコへの長期間毒性があるため桑園付近では使用しない、ミツバチに飛散する恐れがある場合は使用しない等、周辺環境への配慮も具体的に記載があります。
水産動植物(魚類)への強い影響があるため、河川や養殖池への飛散・流入を避け、洗浄水も流さない、といった水系管理も明確です。
守るべきポイントを、現場向けに短くまとめます。
参考:国の登録情報(適用表・希釈倍数・収穫前日数・回数制限の確認)
農林水産省 農薬登録情報提供システム(ベニカS乳剤 登録23112)
「ラベル通りに撒いたのに効きが弱い」と感じるとき、原因が“成分の強さ”ではなく“付着の弱さ”であることは少なくありません。
特に葉がはじきやすい作物、葉裏が多い作物、ワックス層が強い葉面では、薬液が玉になって転がり、当てたい場所に残りにくいことがあります(結果として残効も短く感じます)。
そこで独自視点として提案したいのが、展着剤の使いどころを「雨対策」だけでなく「葉裏到達率の改善」として考えることです。
市販の展着剤(例:ダイン)は、散布液の付着性・固着性を高め、ムラを減らし、雨や露による流亡も軽減する、と説明されています。
参考)展着剤 ダイン 100ml 住友化学
つまり、害虫そのものに当たりにくい圃場条件ほど「同じ希釈倍数でも効きが安定する余地」が出ます。
ただし混用は万能ではなく、最終判断は必ず各資材の注意書き・混用可否に従うのが安全です。
現場でよくある失敗として、散布液を強く作りすぎて薬害リスクが上がったり、回数制限を超えたりするケースがあるため、「濃度ではなく到達率で改善する」発想のほうが、結果的に安定しやすいです。
また、初めての作物・新品種では薬害確認を事前に行い、防除所や販売店に相談することが望ましい、と明記されているので、展着剤を足す前提でもこの手順は省けません。
展着剤を使う場合の、現場チェックリストです。
この「付着を整えて、ラベル通りの設計性能を出す」アプローチは、薬剤抵抗性の議論とは別軸で、今すぐできる改善策になりやすいです。