農薬を使わずにアオムシを9割以上駆除できる天敵が、すでにあなたの畑に自然発生しているかもしれません。
アオムシコマユバチは体長3mmほどの小さな黒いハチで、モンシロチョウの幼虫(アオムシ)に産卵して寄生します。 雌のハチは若いアオムシの体内に産卵管を直接刺して産卵するため、卵は目視できません。ageha.funabori+1
1匹のアオムシの体内には約80個もの卵が産み付けられます。 産卵後、夏場なら約14日で幼虫が宿主の皮膚を食い破って外へ出てきて黄色い繭の集塊を作り、さらに約7日で成虫が羽化します。 つまり産卵から羽化まで、夏場はわずか21日前後で完了します。
参考)https://blog.goo.ne.jp/yjezoensislovers/e/24d9e2c12fcab79624eb52d7f6fee182
孵化した幼虫は宿主の体内から栄養を吸い取って成長し、宿主のアオムシは繭が出てきた後、2〜3日以内に死亡します。 一度寄生されたアオムシを助ける方法はないとされています。 寄生そのものは読者にはコントロールできない自然現象ですが、この仕組みを農業管理に活かす視点が重要です。butterfly-labo+1
寄生のメカニズムが基本です。
農業害虫コマユバチの詳細な生態については、イカリ消毒による解説が参考になります。
モンシロチョウの幼虫が無事に成虫になれる確率は、わずか1〜2%程度と言われています。 残りの98〜99%は、寄生をはじめとした様々な要因で途中死亡します。香川県での調査では、4月世代のアオムシのうち卵から羽化までの間に91.6%が死亡したという記録も残っています。blog.goo.ne+2
この驚異的な死亡率の一因がアオムシコマユバチの寄生です。特に7〜8月の夏場はこの寄生が多く、この時期に畑にいるアオムシのほとんどがすでに寄生されているとも言われます。 「ハチがいるから畑が安全」ではなく、寄生バチが自然に高い密度で活動していることを意味します。
参考)モンシロチョウの幼虫に寄生!?見分け方や防ぐ方法 は?
農業従事者にとってのメリットは明確です。アオムシコマユバチが自然発生していれば、農薬を使わなくても相当数のアオムシが自然に死滅します。これはつまり農薬コストと散布労力の削減に直結します。
数字を見ると、その効果のほどがよくわかります。
アオムシの発生と防除に関する実践情報は、アリスタ ライフサイエンスの解説が詳しいです(農薬と天敵の関係を理解するための比較として)。
キャベツのアオムシ:発生状況や防除のポイント | アリスタ ライフサイエンス
農薬との併用は天敵の大敵です。化学農薬を散布するとアオムシコマユバチが死滅・活性低下するため、天敵農法の効果が一気に消えてしまいます。 導入タイミングを誤ると、高いコストをかけて導入した天敵が農薬で全滅することも実際に起こります。
農薬の天敵への影響を確認する際は、農薬影響表(天敵生物)を活用することで、使用する農薬がアオムシコマユバチに対してどの程度有害かを事前に調べられます。 農薬を使いたい場面では、天敵への影響が低い農薬(BT剤など微生物農薬)を選ぶことが基本対策になります。
参考)農薬影響表(天敵生物)
また、アオムシコマユバチ自身にも「過寄生」という現象があります。アオムシコマユバチの繭がさらに別の寄生バチ(ユーリトマ属など上位寄生蜂)に寄生されることがあり、自然界の天敵バランスは想像より複雑です。 天敵農法を長期的に維持するには、圃場環境全体のモニタリングが欠かせません。
参考)http://www.big.ous.ac.jp/~nakamura/HTML/tagawa/study/cg.htm
農薬との組み合わせには慎重さが条件です。
農薬が天敵生物に与える影響の一覧は以下で確認できます(使用前の事前確認に活用できます)。
天敵農法でアオムシコマユバチを効果的に機能させるには、「呼び込む環境づくり」が出発点です。成虫のハチは花蜜を餌とするため、畑周辺に開花植物(コリアンダーやフェンネルなどのセリ科植物が特に有効)を植えることでハチの定着率が上がります。
初期のアオムシ発生を確認した段階で早めに対処することが最も効果的です。 害虫の数が多すぎる状態では、天敵だけでは抑制しきれません。1株に複数のアオムシが確認された段階を目安に行動を起こすと良いでしょう。
さらに、葉裏にいるアオムシは葉表にいるアオムシよりもアオムシコマユバチに寄生されにくいという特性があります。 アオムシが葉の裏側を好む習性はこの寄生回避行動と関係している可能性が指摘されています。これを逆手に取り、葉裏の確認を重点的に行うことで実害が深刻化しやすいアオムシを早期発見できます。
つまり「呼び込む→観察する→早期対処」が基本の流れです。
防虫ネットでモンシロチョウの産卵を防いでいるつもりでも、すでに産みつけられた卵が内部に残っていれば意味がありません。
これは実際によくある見落としです。
防虫ネットの設置は、ほ場準備段階(播種・定植直後)からの早期設置が原則です。
一方で、防虫ネットを張ることでアオムシコマユバチも畑内に入れなくなるという矛盾が生じます。 天敵農法を前提とした栽培か、物理的防除を前提とした栽培かを最初に決めておかないと、コストと効果が両方中途半端になります。これは農業経営として大きなデメリットにつながります。
防虫ネットを使いながら天敵農法の効果も取り込みたい場合は、開口部のある半開放型ネット管理(通気を確保しながらモンシロチョウだけを防ぐ工夫)が選択肢になります。地域の農業試験場や普及センターに相談することで、ほ場規模に合った具体的な設計アドバイスを無料で受けられます。
防虫ネットと天敵農法は組み合わせに注意が必要です。
白菜・キャベツにおけるアオムシの農薬・農薬以外の総合防除対策は以下が詳しいです。
白菜の防除 アオムシ(モンシロチョウ)の農薬・農薬以外の対策 | 農家web