ナスヒメヨコバイの被害と対策、防除法

ナスに発生するフタテンミドリヒメヨコバイは、葉の黄化や萎縮を引き起こす新たな害虫です。年間7世代も発生し、施設栽培で被害が拡大しています。効果的な防除方法はご存知ですか?

ナスヒメヨコバイの被害と防除

2024年以前は登録農薬がありませんでした。


この記事の3つのポイント
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年間7世代発生する害虫

フタテンミドリヒメヨコバイは繁殖力が高く、1匹の雌が一度に15個の卵を産卵し、卵から成虫まで最短11日で成長します

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葉の黄化と生育不良を引き起こす

幼虫と成虫の両方が新葉や茎から吸汁し、葉が黄化・萎縮して奇形を呈し、収量の大幅な低下につながります

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2mm以下の防虫ネットが効果的

施設栽培では開口部に2mm目以下の防虫ネットを設置することで成虫の侵入を物理的に防げます


ナスヒメヨコバイの特徴と形態

フタテンミドリヒメヨコバイは体長約2.7mm前後の小型の害虫で、成虫の翅の末端には一対の黒点が特徴的に見られます。この黒点が名前の由来にもなっており、肉眼でもよく観察すれば確認できるサイズです。体色は淡い緑色で、セミの仲間であるヨコバイ科に分類されています。


つまり植物の汁を吸う害虫です。


幼虫は成虫よりさらに小さく、孵化直後は体長1mm程度しかありません。成長しても2mm程度で、体色は淡黄白色から淡黄色をしています。幼虫には羽がないため飛翔できず、葉の裏側に群がって生活する習性があります。成虫は素早く動き回り、驚くと横歩きで葉の裏側に逃げ込む行動が観察されます。


この害虫は東南アジアから南アジア、マリアナ諸島、オーストラリアなど広い地域に分布しています。国内では沖縄県、奄美大島、小笠原諸島で古くから確認されていましたが、2020年以降、高知県、徳島県、岡山県、熊本県、福岡県など西日本各地で相次いで発生が確認されました。温暖化の影響もあり、今後さらに北上する可能性が指摘されています。


これは全国的な警戒が必要ですね。


本種はナスのほか、オクラ、ハイビスカスでも被害が報告されています。興味深いことに、トマトに対しては接種試験で症状が再現されなかったという研究結果があり、寄主植物には選択性があることがわかっています。施設栽培の冬春ナスで特に被害が大きく、露地栽培でも夏季の高温期に発生が増加する傾向があります。


高知県農業技術センターの病害虫台帳には、フタテンミドリヒメヨコバイの詳細な形態写真と被害症状が掲載されています。


ナスヒメヨコバイの生態と繁殖サイクル

フタテンミドリヒメヨコバイは年間7世代も発生する極めて繁殖力の高い害虫です。沖縄県では5月から10月にかけて発生し、特に7月から8月の高温期に多発します。本州の温暖地でも同様の発生パターンが確認されており、夏季の施設栽培では爆発的に増殖するリスクがあります。


雌成虫は葉脈に黄白色の卵を一度に15個ほど産卵します。卵は植物組織内に産み込まれるため、外からは発見しにくい特徴があります。産卵された卵は孵化直前になると灰色がかった黄色に変色し、この色の変化が孵化のサインとなります。卵期間は温度によって4日から11日と幅があり、高温ほど早く孵化する傾向があります。


卵から孵化した幼虫は7日から21日の幼虫期間を経て成虫になります。この期間も温度の影響を強く受け、夏季の高温期には最短で11日程度で成虫まで成長します。つまり真夏には卵から成虫まで最短2週間程度という驚異的なスピードで世代交代が進むということです。


成虫の寿命は35日から50日程度です。


成虫になるとすぐに交尾・産卵を開始し、1匹の雌が生涯に複数回産卵を繰り返します。1世代が約1か月、年間7世代ということは、初夏に侵入したわずか数匹の個体が、秋までに数千倍に増殖する計算になります。このため、発生初期の段階で確実に防除することが極めて重要になります。


施設栽培では周年栽培が可能なため、冬季でも暖房があれば世代交代が継続します。福岡県の事例では、12月の冬春ナス施設で被害が確認されており、施設内では季節を問わず警戒が必要です。露地栽培では低温期には活動が低下しますが、越冬した個体が春に再び増殖を開始すると考えられています。


沖縄県の病害虫発生予察注意報には、フタテンミドリヒメヨコバイの詳細な生態情報と発生時期が記載されています。


ナスヒメヨコバイによる被害症状

フタテンミドリヒメヨコバイの最大の問題は、幼虫と成虫の両方が植物の汁を吸って加害することです。特に新葉や若い茎など、柔らかく成長中の部位を狙って吸汁します。口針を植物組織に刺し込んで師管液を吸い取る際に、唾液を注入するため、吸汁箇所周辺の細胞が破壊されます。


初期症状として葉の黄化が現れます。葉脈間が黄色く変色し始め、進行すると葉全体が黄色から褐色に変わります。この黄化は栄養不足による黄化とは異なり、虫の吸汁による直接的なダメージです。葉の裏側を観察すると、多数の幼虫や成虫が密集している様子が確認できます。


吸汁が続くと葉の萎縮や奇形も発生します。新葉が十分に展開できず、縮れたり歪んだりした状態で成長が止まってしまいます。この症状が出た時点で、すでに相当数の個体が寄生していると判断できます。葉の展開不良は光合成能力の大幅な低下を意味し、植物全体の生育に深刻な影響を与えます。


生育抑制が最も重大な被害です。


多発すると生育そのものが止まり、草丈の伸びが悪くなり、新しい葉が出なくなります。


花芽の形成も阻害され、着果数が減少します。


結果として収量が大幅に低下し、小笠原の事例では生育が鈍化して明らかな収量低下が観察されたと報告されています。被害が激しい場合、経済的な栽培継続が困難になるレベルまで収量が落ち込むケースもあります。


被害の特徴として、施設内で局所的に多発する傾向があります。最初は施設の入口付近や風通しの悪い場所から発生が始まり、徐々に施設全体に広がります。発見が遅れると、気づいた時には手遅れになっている場合も多く、日常的な観察による早期発見が防除の鍵を握ります。


ナスヒメヨコバイへの登録農薬と薬剤防除

2024年11月まで、ナスにおけるフタテンミドリヒメヨコバイに適用登録のある農薬は存在しませんでした。これが生産者にとって大きな問題となっていましたが、2024年11月13日にウララDF(フロニカミド水和剤)がナスのフタテンミドリヒメヨコバイに対して適用拡大登録されました。


ウララDFは2000倍に希釈し、100リットルから300リットルを10アール当たり散布します。収穫前日まで使用可能で、総使用回数は3回以内という制限があります。この農薬はアブラムシ類やコナジラミ類などの半翅目害虫に効果を示す殺虫剤で、吸汁行動を速やかに阻害する作用機作を持っています。


ウララDFが基本の防除薬剤です。


使用のタイミングは発生初期が最も効果的です。多発してからでは防除効果が十分に得られない可能性があるため、定期的な観察で少数の個体を発見した段階で速やかに散布することが推奨されます。散布時は葉の裏側にも薬液が十分にかかるよう、丁寧に散布することが重要です。


薬剤抵抗性の発達を防ぐため、同一成分の連続使用は避けるべきです。ウララDFの作用機構分類(RACコード)はグループ9Cに属するため、他のグループの薬剤とローテーション散布を組むことが理想的です。オクラでは複数の薬剤が登録されているため、オクラでの使用事例も参考になります。


登録前の対処法として、他のヨコバイ類やアブラムシ類に登録のある薬剤が一定の効果を示す可能性が指摘されています。小笠原の試験ではアセフェートオルトラン)水和剤が効果を示したという報告がありますが、現在ナスへのオルトラン粒剤の使用は制限されているため、必ず最新の農薬登録情報を確認してください。


石原産業のウララDF登録内容変更情報には、ナスへのフタテンミドリヒメヨコバイ適用追加の詳細が記載されています。


ナスヒメヨコバイの物理的防除と耕種的対策

薬剤防除以上に重要なのが、成虫の侵入を物理的に防ぐ対策です。施設栽培では開口部に2mm目以下の防虫ネットを必ず設置することが推奨されています。フタテンミドリヒメヨコバイの成虫は体長約2.7mmと小さいため、通常の防虫ネット(4mm目や6mm目)では簡単に侵入してしまいます。


2mm目以下のネットなら侵入を防げます。


防虫ネットは天窓、側窓、出入口など、すべての開口部に隙間なく設置する必要があります。特に出入口は人の出入りで隙間ができやすいため、二重カーテンの設置や、開閉時間を最小限にする工夫が求められます。ネットに破れや隙間がないか定期的に点検し、見つけたらすぐに補修することも重要です。


栽培終了時の残渣処理も見落としがちな重要ポイントです。収穫が終わった株には多数の虫が残っており、そのまま圃場外に持ち出すと、近隣の作物に被害が拡大するリスクがあります。ビニールハウスなら、夏季に密閉して太陽熱で蒸し込み処理を行い、虫を死滅させてから残渣を処分するのが効果的です。


蒸し込み処理は7月から8月の高温期に実施すると、ハウス内温度が50度以上に上昇し、害虫だけでなく病原菌も死滅させる効果があります。処理期間は2週間から3週間が目安で、この方法なら薬剤を使わずに次作への持ち越しを防げます。ただし蒸し込み前に必ずハウスを密閉し、虫が外に逃げないようにすることが条件です。


雑草管理も予防策の一つです。ハウス周辺や施設内の雑草は、フタテンミドリヒメヨコバイの隠れ場所や増殖場所になる可能性があります。特にナス科アオイ科の雑草は寄主植物となりうるため、こまめに除草して施設周辺を清潔に保つことが、害虫の発生源を減らすことにつながります。


発見時の初動対応として、少数の虫が発見された段階で、その葉を切り取って密閉袋に入れて処分する方法も有効です。初期段階なら局所的な除去で拡大を防げる場合があります。ただし切り取った葉をその場に放置すると、虫が這い出して再び寄生するため、必ず施設外で適切に処分してください。


JAcomの特殊報記事では、福岡県での発生事例と具体的な防除対策が詳しく解説されています。