除草剤で茎葉を枯らせばイモの品質は上がると思っていたら、逆に維管束が褐変して商品価値がゼロになることがあります。
茎葉枯凋病(けいようこちょうびょう)とは、バレイショをはじめとする作物の茎葉が急速に萎れ・枯死する現象の総称です。 病害によるものと、収穫管理上の意図的な枯凋処理(枯凋剤散布)の2つが混同されやすい点に注意が必要です。imoshin+1
自然の枯凋を待ちすぎると、収穫適期を過ぎて塊茎(いも)の維管束が褐変し、品質が著しく悪化します。
これがまず押さえるべき基本です。
参考)https://www.cacn.jp/technology/kokusanqamp;a/Q3-7.pdf
茎葉が繁茂した状態で収穫機械を入れると茎葉が機械に絡まり、作業効率が大きく落ちます。 だからこそ、収穫前の茎葉管理は品質と効率の両方に直結する重要課題です。
茎枯れ・萎凋をもたらす病原菌は複数存在し、代表的なものはフザリウム菌とリゾクトニア菌です。 どちらも土壌伝染性で、感染した植物残渣とともに土壌中で越冬し、翌年の感染源になります。
参考)【第12回・最終回】生育中の植物が枯れる|こんな症状の時どう…
参考)https://www.pref.kumamoto.jp/uploaded/attachment/243559.pdf
参考)https://www.zennoh.or.jp/ty/einou/vegetable/pdf/farm_bareisho.pdf
つまり、湿度管理と輪作体系が基本です。
特に注意が必要なのは、萎凋病の初期症状です。日中に葉がしおれて夕方には回復するため、最初は「水不足」と勘違いしやすいのです。 数日後には褐変して枯死するため、早期発見が遅れがちになります。
見落としやすい症状ですね。
参考)【第10回】茎がしおれた、茎の色が変わり枯れてしまった|こん…
茎葉枯凋剤として農薬登録されている主な薬剤には、石灰窒素(10〜15kg/10a)、ジクワット液剤、デシカン乳剤、レグロックス液剤などがあります。japr+2
使用時期を守ることが何より重要です。
参考)https://www.hokuren.or.jp/common/dat/agrpdf/2014_0314/13947820771513768386.pdf
参考)https://japr.or.jp/wp-content/uploads/shokucho-shi/37/shokucho_37-07_02.pdf
茎葉黄変期より前に散布すると塊茎の肥大が止まり、収量損失に直結します。 「まだ少し早いかも」という段階で散布しないことが条件です。
石灰窒素を水溶液として散布する場合は、水温が50℃を超えないよう徐々に投入し、30℃前後に保ちながらよく撹拌してください。 沈殿物が固まると散布むらの原因になるため、ハンドミキサーを使うのが確実です。
これは使えそうです。
参考:石灰窒素によるばれいしょの茎葉枯凋法(長野県佐久農業改良普及センター実証試験データ収録)
https://www.cacn.jp/technology/dayori_pdf/144_cont02.pdf
長野県佐久農業改良普及センターの実証試験(1994年)では、石灰窒素処理と除草剤処理で維管束褐変率に大きな差が出ました。
| サイズ | 石灰窒素処理区(発生率) | 除草剤処理区(発生率) |
|---|---|---|
| 2Lサイズ | 1.0% | 62.5% |
| Lサイズ | 6.3% | 25.0% |
| Mサイズ | 12.5% | 25.0% |
| Sサイズ | 12.5% | 25.0% |
2Lの大玉で除草剤処理を行った場合、維管束褐変発生率が62.5%にのぼるというのは衝撃的な数字です。 「除草剤で素早く枯らせば品質が上がる」という常識は、データで否定されています。
石灰窒素は枯凋日数が除草剤よりやや長めにかかりますが、品質への影響が圧倒的に少ないのです。 特に大玉狙いの栽培では、石灰窒素処理への切り替えが収益に直結するといえます。
参考:北海道におけるバレイショ茎葉枯凋剤使用の動向(日本植物調節剤研究協会)
https://japr.or.jp/wp-content/uploads/shokucho-shi/37/shokucho_37-07_02.pdf
食用バレイショの栽培では触れられないことが多いのですが、種バレイショ栽培では茎葉処理のタイミングがウイルス感染防止と深く関係しています。
これが意外なポイントですね。
参考)https://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2010763123.pdf
種バレイショ栽培では、アブラムシによるウイルス媒介を防ぐために茎葉黄変期以前の早い段階から茎葉処理を行う場合があります。 食用栽培とは「早めに処理する理由」がまったく逆になるわけです。
同じ「茎葉枯凋処理」でも、目的によって正解の使用時期がまったく異なります。
栽培用途を混同した処理は、種いものウイルス感染率を上げるか、食用いもの品質を下げるかのどちらかに直結します。 栽培目的ごとに適用基準を確認することが大前提です。
参考:種ばれいしょ栽培における茎葉処理後のウイルス感染の可能性(農業・食品産業技術総合研究機構)
https://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2010763123.pdf
茎葉枯凋病の被害を最小化するには、農薬だけに頼らない圃場全体の管理が不可欠です。
複数の対策を組み合わせることが原則です。
参考)【植物の病害あれこれ】萎凋病について。萎凋病の原因や対処法と…
耕種的防除(農薬を使わない対策)
化学的防除(農薬を使った対策)
アスパラガスの茎枯病には、ベンレート水和剤・ダコニール1000・アミスター20フロアブルなどが有効で、収穫前日まで使用できる薬剤もあります。 約14日間隔でローテーション散布し、株元にもかかるよう散布することが重要です。
参考)https://www.pref.nagasaki.jp/e-nourin/nougi/manual/asparagus_phomopsis_MN_Ver1.pdf
バレイショ疫病(茎葉・塊茎の腐敗をもたらす関連病害)の多発圃場では耐病性品種の選定も有効です。 「品種選び」という一度の判断が、シーズン全体の防除コストを左右します。
土壌消毒が必要な場合は、クロールピクリン・キルパー・バスアミド微粒剤などの燻蒸処理が効果的ですが、播種・定植まで相当の日数が必要なため、計画的なスケジュールが必須です。
参考:アスパラガス茎枯病防除マニュアル(長崎県農林技術開発センター)
https://www.pref.nagasaki.jp/e-nourin/nougi/manual/asparagus_phomopsis_MN_Ver1.pdf