えかきむしは、葉の内部を幼虫が「トンネル状」に食い進むことで、白い筋が蛇行して見える害虫(ハモグリバエ類の通称)です。葉の表面に白い線が出たら、まず「葉の中を食っている」のか、「葉の表面がカスれた」のかを切り分けるのが最短です。葉を透かして見ると、筋の先端付近に幼虫(概ね数mm)がいることがあり、そこを起点に被害が伸びます。
症状は大きく2種類で、見分けると防除の打ち手がブレません。
特に注意したいのは「被害が葉だけでも、収量に効く」点です。果菜類では果実を直接食害しないタイプが多い一方、葉のダメージが積み上がると着果・肥大・糖度・色回りが落ちやすく、秀品率に響きます。施設栽培だと発生期間が長くなりやすく、少数発生を見逃すほど後半の薬剤回数が増える、という悪循環が起こります。
見分けの現場コツとして、以下を“毎回同じ順番”で確認すると判断が速くなります。
参考リンク(えかきむしの生態・白い筋や白点の意味、防除全体像)
https://agri.mynavi.jp/2024_12_28_294245/
えかきむし(ハモグリバエ類)は、春~秋に複数回発生しやすく、種類や気温で発生ピークがずれます。実務上は「外から飛来する成虫が入った瞬間に始まる」ため、暦よりも“飛来の検知”が重要です。そのために効くのがモニタリングで、黄色粘着板を株元~草冠付近に設置し、週1回以上は捕獲数と圃場の被害葉率を同時に記録します。
黄色粘着板が効く理由は、ハモグリバエが黄色に誘引されやすい性質を利用できるためです。成虫の捕獲が増えた週は、「葉の白点が増える→数日後に白い筋が増える」という順番になりやすいので、白い筋を見てから動くより、粘着板の増加で前倒しする方が結果的に散布回数も被害も減りやすいです。
設置のポイントは、やり過ぎないシンプルさです(続かないと意味がありません)。
あまり知られていない盲点は、「粘着板が“防除”にもなるが、“見逃し防止の計測器”として価値が高い」ことです。捕獲がゼロに近い期間は薬剤を打つ根拠が薄くなり、IPMの観点でも無駄散布を減らせます。逆に捕獲が連続増加なら、耕種・物理・薬剤の同時立ち上げを検討する合図になります。
参考リンク(黄色粘着板や他手段を組み合わせる総合防除の考え方)
https://www.maff.go.jp/j/syouan/syokubo/gaicyu/g_ipm/attach/pdf/index-38.pdf
えかきむし対策で、薬剤より先に効く“土台”は3つあります。侵入を止める、防除の起点(苗)をきれいにする、増殖源を圃場外へ出す、の3点です。ここが弱いと、どれだけ強い薬剤を回しても「また入る・また湧く」になり、結果として防除コストが跳ね上がります。
まず苗です。育苗中に寄生された苗が本圃に持ち込まれると、定植直後から圃場内に世代が成立してしまい、以降ずっと追いかける展開になりがちです。播種直後~育苗期から防虫ネットや寒冷紗で物理的に遮断し、購入苗なら「葉に白い筋がないか」「白点が多くないか」を必ず見てから導入します。
防虫ネットは“目合いが細いほど良い”だけではなく、通気と高温リスクのバランスが現場論点になります。目合いが細かいネットは侵入を防ぎやすい一方、ハウス内の熱が抜けにくくなり、作物側のストレスが上がるため、季節・換気能力・作型に合わせた運用が必要です。侵入経路になりやすい開口部(サイド、妻面、出入口)を優先し、隙間を作らない施工・管理(開閉時の癖、資材搬入時の開放時間)まで含めて“ネットの性能”と考えます。
次に除去(テデトール)です。被害葉の摘葉は地味ですが、初期の密度を下げるには理にかなっています。ポイントは「圃場内に残さない」ことで、摘んだ葉を通路に置きっぱなしにすると、そこから蛹化・羽化につながりやすくなります。やるなら、袋を持って回収し、その日のうちに圃場外へ持ち出して処分するのがセットです。
意外と効く小技として、作業導線の設計があります。収穫や誘引のついでに“最初に被害株を触る”と、葉や衣服に付いた成虫を別列へ運ぶリスクが上がります。被害の多い列は最後に回す、ハサミや手袋を区画で替える、など小さな運用が秀品率に効くことがあります。
えかきむしは薬剤抵抗性がつきやすいとされ、薬剤だけに寄せた防除は行き詰まりやすい害虫です。そのためIPM(総合防除)として、物理防除・耕種防除・生物防除・必要最小限の薬剤を組み合わせる設計が現実的です。天敵(寄生蜂)を使う場合、発生が増えてから投入しても追いつくまでに時間がかかるため、「発生初期から入れる」発想が重要になります。
生物防除として知られるのが、ハモグリミドリヒメコバチなどの寄生蜂です。幼虫に産卵し、天敵側が増えながら密度を下げられるため、薬剤抵抗性の問題を増やしにくい利点があります。一方で、天敵は費用がかかること、残効のある薬剤を使うと天敵が先に落ちることがあるため、投入前後の薬剤選定と散布タイミングの整合が不可欠です。
ここで検索上位にあまり出にくい独自視点として、「天敵が効く圃場の“前提条件”」を先に整える話をします。天敵は万能ではなく、以下が揃うと成功率が上がります。
この「前提条件」を整えると、天敵が“コスト”ではなく“散布回数の保険”として機能しやすくなります。特に施設で作期が長い場合、後半に薬剤ローテーションが詰まってくるので、前半から密度を低く保つ意味が大きいです。
参考リンク(天敵の考え方、発生初期施用、ネット目合いの注意点など)
農業害虫ハモグリバエの被害を防げ!防除と駆除の方法について解…
えかきむしの薬剤防除は、「効く薬を探す」より「効く状態で当て続ける」設計が重要です。ハモグリバエ類は薬剤抵抗性がつきやすいとされ、同一系統の連用は避けるべきだとされています。つまり、散布回数が増えるほど、系統を意識しない運用はリスクが上がります。
基本方針は次の3点です。
代表的な考え方として、IRACコード別に農薬を整理し、同じコードを続けない運用が紹介されています。例えばネオニコチノイド系(4A)、有機リン系(1B)、IGR(15)など、異なる系統を計画的に回すことで、長期作での“効かなくなる”リスクを下げられます。ここで注意したいのは「ローテーション=何でも回せば良い」ではなく、作物登録・天敵との相性・他害虫同時防除を全部同時に満たす必要がある点です。
現場で起きがちな失敗は、被害が目立った段階で“とにかく強めの剤を連続”してしまうことです。短期的には効いたように見えても、次世代で戻りやすく、最終的に回数が増えます。だからこそ、物理防除(防虫ネット)、除去(被害葉の持ち出し)、モニタリング(黄色粘着板)を前提にして、薬剤は「増やさないために打つ」位置づけにすると安定します。
意外な改善ポイントとして、散布の“当たり方”があります。えかきむしは葉の内部で食害するため、接触剤だけに寄せるより、浸透移行性や残効、幼虫齢の進み具合も踏まえて、散布タイミングを合わせた方が結果が出やすいです。加えて、ハウスの換気や葉面の乾き具合で付着が変わるので、散布日は「風・温度・湿度」をメモし、効いたパターンを翌年に再現できるようにします。
参考リンク(抵抗性を踏まえたローテーション、物理・生物・耕種を含むIPMの重要性、RAC/IRAC整理)
ハモグリバエを駆除、防除する農薬について