柚子の施肥は、まず春先の「元肥(寒肥)」を基準に組み立てます。元肥は、春の芽出しと開花・新梢伸長の土台づくりで、遅れるほどスタートが鈍くなりがちです。
時期の目安は「3月頃までに元肥」という考え方がよく使われます。元肥には緩効性〜遅効性の肥料、有機質肥料(堆肥・油かす等)や緩効性化成肥料が向きます。理由は、土中で分解・溶出してから効くため、早めに入れておく方が“必要な時に効く”設計にしやすいからです。
元肥のやり方で現場差が出やすいのは「置き場所」です。幹の根元に寄せるのではなく、樹冠の外周〜やや外側(いわゆる根の吸収域)に分散させ、軽く土となじませる方が効率的です。根が多い場所に置けば、同じ量でも効きが安定し、肥料焼けのリスクも下がります。
元肥の資材選択は、園地の土質と作業性で決めます。堆肥は“肥料というより土づくり”の側面が強く、土の通気・保水の改善を狙えます。一方、油かすなど窒素が効きやすい資材は、若木や樹勢が弱い木には武器になりますが、やりすぎると枝葉ばかり伸びて花芽が乗りにくくなるため、樹勢を見ながら控えめに始めて調整してください。
参考:柚子の元肥・追肥の時期(3月に元肥、6月・9月・11月に追肥の考え方)
https://www.noukaweb.com/yuzu-fertilizer/
追肥は「元肥だけでは足りなくなる時期に、切らさずつなぐ」ために行います。柚子は結実と新梢の両方に養分が要るため、追肥の設計が収量・品質・樹勢維持を左右します。
一般的な目安として、追肥を6月に入れる(夏肥)設計がよく示されます。6月は新梢が伸び、果実も動き始め、樹が栄養を使う局面に入るため、ここで“つなぎ”を入れると葉色が安定しやすいです。JAの栽培資料でも、施肥例として夏肥(6月)を設定している例があります。
追肥の肥料タイプは、緩効性と速効性を使い分けます。基本は緩効性化成肥料などで“じわっと安定”を狙い、明らかに樹勢が落ちている(葉色が抜ける、新梢が短い等)場合に、速効性で応急対応する、という順番が安全です。速効性は効き目が早い一方、外し方(量・乾燥・根域)が悪いと肥料焼けに寄りやすいので、土が乾いている日にドカンと入れないのが鉄則です。
また、追肥は「回数」を増やすほど良いわけではありません。大事なのは、樹の吸収が進む条件(地温・土壌水分・根の健全性)を満たしていることです。吸収できない状態で入れると、土中濃度だけが上がり、根が水を吸えずに障害が出ることがあります(肥料焼け)。
参考:施肥例(春肥・夏肥(6月)・初秋肥(8〜9月)・秋肥(10月下旬〜11月上旬))の具体例
https://www.ja-hareoka.or.jp/agri_food/kateisaien/2023/044/
柚子は秋に肥切れすると葉が落ちやすい、という指摘があります。葉が落ちると翌年の花芽の準備や樹勢維持が難しくなるため、秋の設計は「今年の実」と「来年の花芽」の両方に関わります。
そのため、秋側に追肥を置く設計がよく組まれます。例えば、9月(初秋肥)と11月(秋肥)を目安に追肥する考え方があり、さらにJA資料では初秋肥(8〜9月)と秋肥(10月下旬〜11月上旬)を分けている例もあります。ここを“ひと山”で済ませると、効く時期が偏って果実肥大や樹勢の戻りが不安定になりやすいので、園地の作業体系が許すなら2回に分けるメリットはあります。
秋の肥料設計で特に注意したいのは窒素です。秋に窒素を入れる目的は「葉を維持して光合成を確保し、樹を疲れさせない」ことにありますが、遅すぎる時期に強く効かせると、無駄な秋梢が出たり、寒害に弱くなるリスクが増えます。したがって、秋肥は“量を増やす”より“時期と効かせ方を整える”方が結果につながりやすいです。
隔年結果が強い園では、秋肥の考え方も変わります。表年(なり年)に秋肥で樹勢を回復させる設計は有効ですが、窒素過多で枝葉が暴れると冬〜春の管理(剪定・花数調整)が難しくなることもあります。秋肥は、葉色(濃すぎないか)と翌年の芽の充実を見ながら、「欲張らず、切らさず」を狙ってください。
施肥の失敗で現場に多いのが、「効かない」より「効きすぎて弱る」です。特に、若木・鉢植え・乾燥時・根が傷んでいる木は、同じ量でも肥料焼けが起きやすくなります。
肥料焼けは、土中の肥料濃度が高くなりすぎて根が水を吸えなくなり、葉や枝に障害が出たり枯れたりする現象として説明されます。対策は単純で、①一度に入れすぎない、②根の近くに集中させない、③乾き切ったタイミングを避ける、④弱っている木ほど薄く・回数で調整、の4点です。
「早く回復させたいから多めに追肥」は逆効果になりがちです。弱っている木は根の吸収力自体が落ちていることが多く、吸えないのに土中濃度だけ上げてしまうからです。まずは土壌水分を整え、根域の環境(通気・排水)を改善し、それから少量の追肥で反応を見る方が安全です。
また、柚子は“肥料を欲しがる時期”と“吸える時期”が一致しないことがあります。例えば雨が続いて根が傷んでいる、逆に乾燥で根が止まっている、といった状況では、カレンダー通りに追肥しても効きが出ません。肥料時期を固定せず、「樹のサイン(葉色・新梢・落葉傾向)」と「土の状態」を必ずセットで確認してください。
参考:肥料焼けの考え方、苗木は施肥量を減らす必要がある点
https://www.noukaweb.com/yuzu-fertilizer/
同じ「柚子の肥料時期」でも、実は土壌酸度(pH)と地温のズレで結果が大きく変わります。ここは検索上位でも“触れて終わり”になりがちですが、収量と樹勢のブレを減らすには、施肥時期より先に押さえる価値があります。
柚子の生育適正pHは弱酸性(pH5.5〜6.5程度)とされ、酸度がずれると肥料を入れても吸収効率が落ちやすくなります。酸性に傾きすぎる園では苦土石灰などで矯正しますが、ここでの落とし穴は「石灰=いつでも良い」ではない点です。窒素系肥料や有機質肥料と同時に強く当てると、根に負担をかけたり、効き方が乱れることがあるため、土づくり資材は施肥計画の“前工程”として別枠で入れるのが安全です。
さらに、土が冷たい時期は分解・吸収が進みにくく、特に有機質肥料は“入れたのに効かない”が起こりやすいです。だからこそ元肥は「早めに入れて、必要な頃に効くように段取りする」という設計が理にかないます。地温が上がる春先に向けて、緩効性や有機物を事前に仕込むことで、芽出し期の栄養の谷を作りにくくなります。
意外と見落とされるのが、pH調整の“測らない運用”です。感覚で苦土石灰を入れ続けると、弱酸性を通り越してアルカリ寄りになり、微量要素の吸収が不利になることがあります。酸度計で現状を数値化し、「直す量」より「維持する量」を決める方が、長期的に樹が安定します。
参考:柚子の適正pH(5.5〜6.5)、酸度が上がったときに有機石灰や苦土石灰で中和する考え方
https://www.noukaweb.com/yuzu-fertilizer/
【現場で使える施肥カレンダー例(目安)】
🍀3月:元肥(寒肥)…緩効性/有機質を中心に、根域へ分散
☀️6月:追肥(夏肥)…樹勢・着果を見て“つなぎ”
🍁8〜9月:初秋肥…秋の肥切れ防止、翌年に向けた樹勢維持
🍂10月下旬〜11月上旬(または11月):秋肥…回復目的、効かせすぎ注意
【施肥量を決めるチェック項目】
✅葉色:薄い→不足傾向、濃すぎ→窒素過多の疑い
✅新梢:伸びない→根・水分・肥切れ、伸びすぎ→肥料過多や剪定の影響
✅落葉:秋に落ちる→肥切れや根域ストレスを疑う
✅隔年結果:表年は回復優先、裏年は“効かせすぎない”調整が重要
【小さな工夫(効果が出やすい)】
🧤施肥前に土を軽くほぐし、雨前・潅水前に入れて溶けムラを減らす
🚿乾燥しすぎの追肥は避ける(根が吸えない状態で濃度だけ上がる)
🧺有機物は「土づくり」と割り切って、毎年少量を継続して土の反応を整える