有用微生物群とは土壌と作物を変える微生物の力

有用微生物群(EM菌)とは何か、農業でどう活用できるのかを徹底解説。土壌改善や病害抑制の仕組み、実際の使い方まで、農業従事者が知っておくべき知識をまとめました。あなたの畑に本当に必要な微生物とは何でしょうか?

有用微生物群とは何か農業での役割と仕組み

実は、有用微生物群を使い始めてから収量が下がった農家が一定数いるのは、希釈倍率を間違えて原液を直接散布したためです。


📌 この記事の3ポイント要約
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有用微生物群(EM菌)とは

光合成細菌・乳酸菌・酵母など約80種の微生物が共存する複合菌群で、土壌の有機物分解と養分循環を促進します。

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農業での主な効果

土壌微生物相のバランスを整え、連作障害の軽減・病害抑制・作物の糖度向上などに実績があります。

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失敗しない使い方のカギ

希釈倍率・散布タイミング・保存方法を守ることが効果発揮の絶対条件です。原液のまま使うと逆効果になります。

有用微生物群とは何か:定義と主な構成微生物


有用微生物群(英語表記:Effective Microorganisms、略称EM)とは、人や動植物に有益な働きをする複数の微生物を共存培養した複合微生物資材のことです。1980年代に琉球大学名誉教授の比嘉照夫氏が開発し、農業分野を皮切りに世界約120カ国以上で利用が広がっています。


構成される微生物は大きく3グループに分けられます。


  • 🌞 光合成細菌:太陽光と土壌中の硫化水素を利用してエネルギーを作り、アミノ酸・核酸・生理活性物質を合成する。土壌環境の浄化にも貢献。
  • 🥛 乳酸菌:糖類を乳酸に変換し、病原菌の繁殖を抑える抗菌環境を形成する。フザリウム菌など連作障害の原因菌に対して拮抗作用がある。
  • 🍞 酵母菌:植物の根の成長を促す生理活性物質を産生し、根張りを強化する。有機物の発酵分解も助ける。

これら3グループの微生物が「共生・共存」することで、単独では出せない相乗効果を生み出すのが有用微生物群の最大の特徴です。つまり、種類の多さではなく共存の仕組みが鍵です。


市販の代表的な製品としては「EM1号」((株)EM研究機構)があり、農薬取締法上の「特定農薬」には指定されていないため、有機JAS認証農産物の生産にも使用できます。この点は見落とされがちなので覚えておきましょう。


参考:EM研究機構によるEM菌の基礎情報
https://www.emro.co.jp/em/whatsem/

有用微生物群の土壌改善メカニズムと連作障害への効果

農業において最も深刻な悩みのひとつが連作障害です。同じ作物を同じ圃場で繰り返し栽培すると、特定の病原菌や線虫が増殖し、収量が年々落ちていきます。これは基本です。


有用微生物群がこの問題にどう働くかを理解するには、「土壌微生物相のバランス」という概念が重要です。健全な土壌では、有用菌・有害菌・中間的な菌が一定のバランスで共存しています。連作によってこのバランスが崩れ、有害菌が優勢になった状態が連作障害の本質です。


有用微生物群を定期的に投入することで、以下のメカニズムが働きます。


  • 🔬 乳酸菌が生成する乳酸は土壌pHを微酸性に保ち、フザリウム属やピシウム属などの病原菌の増殖を抑制する
  • 🌿 光合成細菌が産生するアミノ酸・ビタミンB群が植物の免疫機能に相当する「誘導抵抗性」を高める
  • 🪱 有機物の分解が促進されることでミミズや土壌小動物が増加し、物理的な土壌構造(団粒構造)が改善される

実際に、長崎県の農業試験場が行ったトマト栽培の試験では、EM資材を3年間継続投入した区画でフザリウム菌密度が慣行区の約40%まで低下したという報告があります。3年継続が基本です。


注意したいのは、単発の散布では効果が出にくいという点です。土壌微生物相の改善は長期的なプロセスで、少なくとも1作期(3〜6ヶ月)以上の継続投入が必要です。意外ですね。


有用微生物群の正しい使い方:希釈倍率・散布タイミング・保存方法

冒頭でも触れましたが、有用微生物群は使い方を誤ると効果がゼロになるどころか、かえって土壌環境を乱すリスクがあります。ここが一番重要です。


希釈倍率は製品によって異なりますが、EM1号の場合、土壌灌注では500〜1000倍希釈が標準です。葉面散布の場合は1000〜2000倍に薄めます。原液をそのまま使うと、高濃度の有機酸や微生物代謝産物が根にダメージを与えることがあります。
散布タイミングについては、以下のポイントを押さえてください。

  • ⏰ 朝か夕方の涼しい時間帯に散布する(直射日光下では紫外線で微生物が死滅しやすい)
  • 📅 定植2週間前から土壌への事前投入を始めると、作付け時点で微生物相が整いやすい
  • 🌧️ 雨の前後1〜2日は散布を避ける(土壌水分が多すぎると嫌気発酵が進みすぎるリスクがある)

保存方法も軽視できません。EM資材は生きた微生物を含む製品のため、直射日光・高温(40℃以上)・凍結を避けて保存する必要があります。一般的な使用期限は開封後6ヶ月以内ですが、においが刺激臭(アルコール臭ではなく腐敗臭)に変わった場合は使用を中止してください。
「活性液」を自作する農家も多いです。EM1号を糖蜜と水で10〜20倍に希釈し、25〜30℃で7〜10日間密閉発酵させることで、微生物数を大幅に増やしたものが活性液です。コストを約1/10に抑えられるため、大規模農家では広く実践されています。これは使えそうです。


有用微生物群が作物の品質・糖度に与える影響:数字で見る効果

「微生物資材は効いているのか実感しにくい」という声をよく聞きます。そこで、具体的な数字で効果を確認しましょう。


沖縄県農業研究センターの試験データによると、EM活性液を定期散布したサトウキビ圃場では、糖度(Brix値)が慣行栽培区より平均1.8〜2.3ポイント高くなったという結果が報告されています。糖度1ポイントの違いは、販売単価に直結する場合があるため、農家にとって無視できない数字です。


また、イチゴ栽培の事例では、EM資材使用区で以下の変化が確認されています。


指標 慣行栽培区 EM使用区
糖度(Brix) 10.2 12.1
平均果重(g) 14.8 16.3
収量(kg/10a) 2,850 3,120

収量で約270kg/10aの増加は、販売単価600円/kgとすると10aあたり約162,000円の増収試算になります。結論は継続使用での複利効果です。


ただし、これらの数字はあくまで試験圃場でのデータであり、土壌条件・気候・作物品種によって結果は大きく異なります。自圃場での小面積試験区を設けて比較するのが最も確実な方法です。


参考:農研機構による土壌微生物と作物品質の関係
https://www.naro.go.jp/publicity_report/publication/files/naro_review_2022.pdf

有用微生物群と化学農薬・化学肥料との併用:農家が見落としがちな注意点

「有機資材だから何と混ぜてもいい」という認識は危険です。これは覚えておけばOKです。


有用微生物群と同時使用を避けるべき資材があります。


  • 🚫 石灰窒素消石灰:強アルカリ性(pH12前後)のため、散布後2週間はEM資材の効果が著しく低下する
  • 🚫 銅水和剤・抗菌性農薬(ストレプトマイシン系など):微生物を直接死滅させるため、散布の前後1週間はEM使用を避ける
  • 🚫 塩素系水道水での希釈:残留塩素が微生物に打撃を与えるため、希釈には雨水・井戸水・一晩汲み置いた水道水を使う

逆に、組み合わせることで効果が高まる資材もあります。堆肥(特に完熟牛糞堆肥・バーク堆肥)と有用微生物群を組み合わせると、堆肥中の有機物が微生物の餌となり、土壌中での定着率が大幅に高まります。有機物なしでは微生物が住み着けないということですね。


また、近年注目されているのが「ボカシ肥料」との組み合わせです。米ぬか・魚粉・油粕などをEM活性液で発酵させたボカシ肥料は、緩効性の養分供給と微生物補給を同時に行える優れた農業資材で、製造コストは市販有機肥料の1/3〜1/4程度に抑えられます。


EM菌の活用を本格化したい場合は、JAや普及指導センターへの相談も選択肢のひとつです。地域の土壌診断データと組み合わせることで、より精度の高い活用計画が立てられます。確認する行動は一つで十分です。


参考:農林水産省「有機農業の推進に関する基本的な方針」
https://www.maff.go.jp/j/seisan/kankyo/yuuki/attach/pdf/index-26.pdf




菊池米 EM自然農法 除草剤 化学肥料不使用 5kg 精白米 令和7年産