農薬をまいているのに炭疽病が止まらず、出荷量が3割以上落ちた生産者もいます。
シュンギク炭疽病の初期症状は、葉に現れる淡褐色の水染み状の斑点です。 最初はうっすらとした水浸み状の斑点に見えるため、単なる傷や汚れと見間違えやすいのですが、放置すると数ミリ程度のやや凹んだ病斑へと拡大します。
参考)シュンギク炭疽病
病斑上には淡橙色の胞子の塊がにじみ出るのが特徴で、これが他の葉枯れ症状との決定的な違いです。 つまり「橙色のにじみ」が見えたら炭疽病と確定できます。
新芽への被害も見逃せません。新芽が罹病すると芯が黒く枯死し、そのまま生育できずに株枯れを起こすケースがあります。 葉先だけが褐色に変わる場合もあるため、株全体を定期的に丁寧に観察する習慣が必要です。 葉枯れが全体に広がると出荷できる部位が激減し、収量に直接影響します。yuukurasan+1
炭疽病を引き起こす菌は、Colletotrichum acutatumとColletotrichum chrysanthemi(旧名:グレオスポリウム クリサンテミ)という2種類の糸状菌(カビ菌)です。
カビが病原体であることが基本です。
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これらの菌は、気温20〜28℃・高湿度の環境で活発に増殖します。 28℃前後の高温期に湿度が重なると胞子が大量に形成され、感染が急速に拡大するため、夏の高温多湿期が最も危険な時期です。
意外ですね。
参考)シュンギクの重要病害「シュンギク炭疽病」を出さない為の防除対…
| 発生条件 | 詳細 |
|---|---|
| 適温 | 20〜28℃(特に28℃前後で急拡大) |
| 湿度 | 高湿度で胞子が大量発生 |
| 感染経路 | 雨・散水・泥の跳ね返り・空気伝染 |
| 越冬場所 | 圃場の残渣・土壌中で越冬 |
| 種子伝染 | 罹病種子から苗への感染あり |
特に厄介なのは、水による伝染だけでなく空気伝染もする点です。 1株に発病を確認した時点で、すでに周囲への胞子散布が始まっている可能性が高いと考えてください。また、炭疽病菌は圃場の残渣とともに土壌で越冬し、翌作の感染源になるため、罹病した残渣の完全除去が翌シーズンの被害を左右します。sanchoku-prime+1
さらに、肥料過多(特に窒素過多)は発病を著しく助長することが知られています。
施肥管理の乱れが炭疽病の温床になります。
参考)シュンギクを病気から守る!知っておくべきシュンギクの病気6つ…
農薬散布と同等かそれ以上に重要なのが耕種的防除、つまり圃場環境の整備です。密植状態では株同士の葉が重なり合い、通気が悪化して湿度が上昇するため、炭疽病菌にとって絶好の増殖環境を提供してしまいます。
播種の段階から厚まきを避け、後々の間引きも計画的に行いましょう。 水はけの改善には、完熟堆肥の土壌混和が有効です。 排水性が上がれば余分な湿度が抑えられ、発病リスクが下がります。yuukurasan+1
種子伝染の存在は見落とされがちです。大阪府の有機栽培マニュアルでも「しゅんぎくの炭疽病は種子によって病気が伝染することが知られているため、健全な種子を利用するよう」明記されています。
消毒済み種子の使用が条件です。
参考)https://www.pref.osaka.lg.jp/documents/7685/nannzyakuyasai.pdf
また、罹病した圃場で次作を行う場合は、定植前に必ず土壌消毒を行ってください。 残渣を放置したまま次の播種をすると、越冬菌が初発のタイミングで一気に広がります。
シュンギクに登録のある炭疽病防除農薬は、非常に限られています。 現在、炭疽病で有効な登録を持つ農薬はストロビルリン系の以下3剤のみです。
これら3剤はすべて同じストロビルリン系という点に注意が必要です。
3剤すべてが同一系統です。
つまりローテーションを意識して使用しても、薬剤の作用機構は同じため、薬剤抵抗性菌が出現した場合は3剤まとめて効果が落ちるリスクがあります。takii.co+1
このリスクを補うために、「野菜類登録」の銅成分殺菌剤を予防的に組み合わせるのが実践的な対策です。 代表的な銅剤としては、コサイド3000・Zボルドー水和剤・クプロシールドフロアブルなどがあります。 銅剤は発病前にコーティングすることで抗菌効果を発揮するため、散布タイミングは「発病後」ではなく「発病前の予防」が原則です。
⚠️ ストロビルリン系薬剤を使う際の重要な注意点
参考:農薬の作用機構分類や最新の登録情報はこちらで確認できます。
多くの生産者が見落としている点として、炭疽病の発生が集中する高温多湿の夏場は、シュンギクの市場価格が最も高騰する時期と完全に一致することが挙げられます。 夏場は特に相場が高いため、あえて難しい夏作に挑む生産者も多いですが、炭疽病リスクと価格メリットが表裏一体の関係にあります。
高値相場を狙って夏場に作付けするほど、炭疽病の発生リスクも高まります。
これは経済的なジレンマです。
このジレンマを乗り越えるには、「発病してから農薬を探す」のではなく、「播種の段階から予防体系を組む」発想の転換が必要です。 具体的には、播種前の土壌消毒・消毒済み種子の使用・定植後の予防的銅剤散布・発病初期のストロビルリン系剤投入という体系を、作付け計画と同時に立案しておくことが収益を守る近道です。
参考)炭疽病(たんそびょう)の症状や原因は? 予防方法や作物ごとの…
また、炭疽病は空気伝染するため、隣接する圃場や風上の農家での発生情報も積極的に収集しましょう。 地域の農業改良普及センターや農協の防除暦を定期確認することも、早期対応のための有効な手段です。
参考:シュンギクを含む軟弱野菜の有機栽培における病害防除の詳細は大阪府の公式マニュアルで解説されています。
大阪府:軟弱野菜における有機栽培マニュアル(PDF)
参考:シュンギクの炭疽病をはじめとした病害虫情報を体系的に確認できます。