リンゴハダニ農薬効かない理由と対策

リンゴハダニに農薬が効かなくなる抵抗性発達のメカニズムと、効果的な防除方法を解説します。同一薬剤の連続使用がもたらすリスクと、薬剤ローテーションの重要性を理解していますか?

リンゴハダニ農薬選択と散布タイミング

同じ系統の農薬を年2回以上散布すると、翌年には効果が半減します。


この記事の3ポイント要約
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薬剤抵抗性の発達が早い

リンゴハダニは世代交代が年7~8回と非常に多く、同一系統の農薬を繰り返し使うと、わずか1シーズンで抵抗性個体群が優占する危険性があります

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系統別ローテーション散布が必須

同一系統の殺ダニ剤は1シーズン1回までの使用に限定し、複数年単位で異なる作用機作の農薬を輪番使用することで抵抗性発達を遅延できます

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天敵保護が防除の鍵

カブリダニ類などの土着天敵に影響の少ない農薬を選択し、天敵製剤と組み合わせることで、殺ダニ剤の使用回数を年4~5回から2~3回に削減可能です


リンゴハダニ防除に使える農薬の系統分類


リンゴハダニの防除に使用できる殺ダニ剤は、作用機作によって複数の系統に分類されています。この系統分類を理解することが、効果的な薬剤ローテーションの第一歩です。


主要な殺ダニ剤の系統には、METI系(ミトコンドリア電子伝達系阻害剤)、成長制御剤系、気門封鎖剤系などがあります。IRACコード(殺虫剤抵抗性委員会による分類番号)が同じ農薬は、たとえ商品名が異なっていても同一系統とみなされます。


つまり作用する仕組みが同じということですね。


例えば、METI系に分類されるフェンピロキシメート(商品名:ダニトロンフロアブル)とピリダベン(商品名:サンマイト水和剤)は、異なる商品ですが同じIRACコード21Aに属します。このため、シーズン中にダニトロンを使用した場合、同じ年にサンマイトを使用すると交差抵抗性により効果が低下するリスクが高まります。


日本農薬のダニトロンフロアブル製品ページでは、作用性の異なる他の薬剤との輪番使用が推奨されており、年1回の散布に限定することが明記されています。


防除効果を維持するためには、散布前に必ず農薬のラベルでIRACコードを確認し、前回使用した薬剤と異なる系統であることを確かめる習慣をつけましょう。記録をつけておくと次回の選択がスムーズです。


リンゴハダニ散布適期と越冬卵対策

リンゴハダニの防除では、越冬卵を対象とした春期防除が最も重要な防除タイミングとなります。この時期を逃すと、年間を通じてハダニ密度が高く推移する原因になります。


リンゴハダニは8月頃から枝の分枝点などに越冬卵を産み始め、翌年の4月頃(展葉期)にふ化します。この越冬卵を対象とした防除は、展葉1週間後頃(芽出し10日後頃)にマシン油乳剤200倍を散布するのが基本です。北日本のリンゴ産地では、平年4月下旬がこの時期にあたります。


マシン油乳剤は、越冬卵の表面を油膜で覆うことで呼吸を妨げて殺卵効果を発揮します。物理的作用なので薬剤抵抗性が発達しないのが大きな利点です。ただし、散布時期が遅れると既にふ化した幼虫には効果が劣るため、適期を守ることが何より重要になります。


発生が多い園地では、発芽前(3月下旬~4月上旬)にマシン油50倍を散布する方法もあります。この場合、展葉1週間後頃のマシン油200倍散布は省略できます。ただし、発芽前の散布は樹体への薬害リスクもあるため、風の弱い日に丁寧に散布することが条件です。


日本曹達の青森県におけるりんごハダニ類防除の資料では、マシン油散布のタイミングと効果について詳細なデータが示されており、越冬卵防除の重要性が実証されています。


春期の越冬卵対策を徹底すれば、生育期間中の殺ダニ剤散布回数を大幅に削減できます。


リンゴハダニ薬剤抵抗性発達のメカニズム

リンゴハダニが薬剤抵抗性を発達させやすい理由は、その生物学的特性に起因しています。発育期間が短く、年間の世代数が非常に多いため、遺伝的な選抜圧が強く働くのです。


ハダニ類は、卵から成虫まで約10日間で成長し、1頭の雌が100~150個もの卵を産みます。リンゴハダニの場合、北日本でも年に7~8世代を繰り返すため、仮に同一系統の農薬を年に3~4回散布すると、生き残った抵抗性個体が急速に増殖し、次世代では個体群全体が抵抗性を持つようになります。


薬剤抵抗性は遺伝するため、一度発達すると元に戻すことは極めて困難です。さらに厄介なことに、交差抵抗性という現象も知られています。これは、ある薬剤に対して抵抗性を獲得したハダニが、使用したことのない別の薬剤に対しても抵抗性を示す現象で、特に作用機作が類似した薬剤間で発生しやすい特徴があります。


実際に、1990年前後には多くのリンゴ産地でヘキシチアゾクスやクロフェンテジンに対する抵抗性個体群が確認され、防除効果の低下が問題となりました。東北地方のリンゴ産地では、冬季のマシン油散布が不徹底だったことと、殺ダニ剤に対する抵抗性発達が重なり、ハダニの多発要因となった記録が残っています。


農林水産省のハダニ簡易検定資料によると、ハダニは薬剤散布面積に比べて行動範囲が狭く、隔離された集団で淘汰を受けるため、抵抗性が発達しやすいと説明されています。


抵抗性発達を回避するには、同一系統の薬剤を1シーズン1回までに制限することが原則です。


リンゴハダニ天敵利用と総合防除体系

近年のリンゴハダニ防除では、土着天敵であるカブリダニ類を保護・活用する総合防除体系(IPM)が注目されています。天敵を上手に使えば、殺ダニ剤の使用回数を大幅に減らせる可能性があります。


カブリダニ類は、ハダニ類を捕食する益虫で、リンゴ園では特にミヤコカブリダニやケナガカブリダニなどが自然発生します。これらの天敵は、ハダニの卵から成虫まで幅広く捕食し、ハダニ密度を低く抑える働きをします。ミヤコカブリダニは花粉なども餌にできるため、ハダニがいない時期でも園内に定着できるのが強みです。


天敵を活用した防除体系では、カブリダニに影響の少ない農薬を選択することが最重要ポイントになります。合成ピレスロイド系殺虫剤(IRACコード3A)や一部の殺ダニ剤は、カブリダニに対しても強い殺虫活性を示すため、使用を避けるか最小限に抑える必要があります。


天敵の密度が不足している園地では、天敵製剤(ミヤコトップ、スパイカルEXなど)を導入する方法も有効です。これらの製剤は、ミヤコカブリダニを大量に含むボトル入り製剤で、樹上に放飼することでカブリダニ密度を一気に高めることができます。放飼時期は、ハダニ発生初期の6月頃が適しています。


農研機構のIPM技術資料では、土着天敵の保護とミヤコカブリダニ製剤の組み合わせにより、殺ダニ剤散布を年2~3回に抑えた事例が報告されており、農薬使用量削減と防除効果の両立が可能であることが示されています。


天敵を守る農薬選択が、持続可能なハダニ防除の基本ということですね。


リンゴハダニ被害と経済的損失の実態

リンゴハダニの被害は、主に葉の吸汁加害によって引き起こされます。被害の程度によっては、果実品質や翌年の収量に深刻な影響を及ぼすため、経済的損失の観点からも防除の重要性が高いといえます。


リンゴハダニは葉の表裏両面に寄生して吸汁するため、被害を受けた葉は葉緑素が抜けて白いかすり状の斑点が生じます。発生が多い場合、葉全体が銀白色から褐色に変わり、同化機能が著しく低下します。


光合成能力が落ちるということですね。


重度の被害では、花芽形成不良や果実の糖度低下、果実肥大不足などが発生します。ただし、リンゴサビダニとは異なり、リンゴハダニは果実に直接寄生することは少なく、果実品質への影響は主に樹勢低下を通じた間接的なものです。それでも、樹勢が弱まれば翌年の着果や収量に悪影響が出るリスクがあります。


被害が拡大すると、1園地あたりの殺ダニ剤散布回数が年4~5回に増加し、農薬コストが大幅に上昇します。殺ダニ剤は一般的な殺虫剤よりも価格が高い傾向にあり、10aあたりの散布コストは1回につき3,000~5,000円程度になることもあります。年5回散布すれば、殺ダニ剤だけで15,000~25,000円の費用がかかる計算です。


さらに、薬剤抵抗性が発達して防除効果が低下すると、より高価な新規系統の農薬を使わざるを得なくなり、コスト負担はさらに増加します。早期発見と適期防除により、こうした悪循環を断ち切ることが経営面でも重要です。


葉1枚あたり雌成虫3~4頭を目安に防除を判断すると、過剰散布を避けられます。




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