イワダレソウとヒメイワダレソウの違い!雑草対策やグランドカバー

庭の雑草対策で人気の植物ですが、実は在来種と外来種で大きな違いがあることをご存知ですか?見た目の特徴から環境省の指定リスク、土壌への意外な影響まで、植える前に知っておくべき真実とは?
イワダレソウとヒメイワダレソウの違い
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見た目と原産地

在来種のイワダレソウは背が高く、外来種のヒメイワダレソウは低く密生します。

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環境へのリスク

ヒメイワダレソウは生態系被害防止外来種リストに掲載され、管理が必要です。

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アレロパシー効果

雑草を抑制する成分を出しますが、周囲の植物や土壌にも影響を与えます。

イワダレソウとヒメイワダレソウの違い

庭の雑草対策や法面の保護として、グランドカバープランツを導入する農家やガーデナーが増えています。その中でも特によく耳にするのが「イワダレソウ」と「ヒメイワダレソウ」です。名前は非常に似ていますが、この二つは植物学的な特性も、環境に与える影響も、そして法的な扱いにおける注意点も全く異なります。


単なる「品種違い」と軽く考えて植えてしまうと、後から取り返しのつかない繁殖に悩まされたり、知らず知らずのうちに地域の生態系を乱してしまったりするリスクがあります。ここでは、それぞれの植物としての明確な違いから、導入する際のメリット・デメリット、さらにはあまり知られていない土壌化学的な作用までを深掘りして解説します。


イワダレソウとヒメイワダレソウの茎や花の見た目の違い


まず、この二つの植物を見分けるための物理的な特徴について詳しく見ていきましょう。園芸店やホームセンターでは混同されて販売されているケースも稀にありますが、以下のポイントを押さえておけば確実に見分けることができます。


原産地と分類の違い
最も根本的な違いは、その「生まれ」にあります。


  • イワダレソウ(岩垂草): 日本の在来種です。本州の南岸から沖縄にかけての海岸沿いの岩場や砂地に自生しています。日本の気候風土に古くから適応しており、自然な景観を形成します。
  • ヒメイワダレソウ(姫岩垂草): 南アメリカ(ペルーなど)原産の外来種です。昭和時代に日本に持ち込まれ、「リッピア(Lippia)」という名前で流通することもあります。

草丈と茎の伸び方
グランドカバーとして利用する際に、最も重要となるのが草丈(高さ)と茎の性質です。


特徴 イワダレソウ(在来種) ヒメイワダレソウ(外来種)
草丈 高い (15cm〜20cm) 低い (5cm〜10cm)
茎の太さ 比較的太く、しっかりしている 細く、緻密に分岐する
被覆密度 やや粗い(隙間ができやすい) 非常に高い(マット状になる)
葉の形 丸みを帯びた倒卵形 小さく、ギザギザが鋭い

イワダレソウは在来種特有のおおらかさがあり、茎が太く、立ち上がるように伸びる傾向があります。そのため、完全に地面を隠すには時間がかかり、踏みつけられた時の復元力もヒメイワダレソウに比べるとやや劣ります。


一方、ヒメイワダレソウはその名の通り「姫(小さい)」サイズですが、茎が非常に細く、地面を這うように緻密に広がります。この性質が、雑草を物理的に遮断する「マルチング効果」を生み出す要因となっています。


花の特徴と開花時期
花にも決定的な違いがあります。両者ともランタナを小さくしたような可愛らしい花を咲かせますが、よく観察すると構造が異なります。


  • イワダレソウの花: 花穂(かすい)が長く伸び、円筒形になります。花の色は薄いピンクや白が多いですが、花つきはそれほど多くありません。
  • ヒメイワダレソウの花: 花穂が短く、丸い帽子のような形状をしています。花の色は白やピンクで、開花期(5月〜10月)には葉が見えなくなるほどびっしりと花を咲かせるのが特徴です。

この「花密度の高さ」がヒメイワダレソウの人気の一つですが、それは同時に大量の種子を生産する可能性を示唆しており、管理上の注意点にもつながります。


以下のリンクは、実際にイワダレソウとヒメイワダレソウを比較したブログ記事です。写真付きで違いが分かりやすく解説されています。


イワダレソウとヒメイワダレソウの比較写真と詳細な特徴(野草風薫)

雑草対策に役立つヒメイワダレソウの繁殖力とグランドカバー適性

農業従事者や広い庭を持つ人々が、なぜ在来種のイワダレソウではなく、あえて外来種のヒメイワダレソウ(またはその改良種)を選ぶのでしょうか。その最大の理由は、圧倒的な「繁殖力」と「耐踏圧性」にあります。


芝生の10倍とも言われる驚異の伸長速度
ヒメイワダレソウの成長速度は凄まじく、条件が良ければ1株で1シーズンに1平方メートル以上を覆い尽くすことも珍しくありません。この速度は一般的な芝生(高麗芝など)の約10倍から20倍とも言われています。


  • 初期コストの削減: 成長が早いため、苗を植える間隔(植栽密度)を広く取ることができます。例えば、1平方メートルあたり4〜6株程度植えれば、数ヶ月で地面が埋まります。これにより、導入コストを大幅に抑えることが可能です。
  • 物理的な雑草抑制: ヒメイワダレソウの茎は網の目のように交差し、何層にも重なって分厚いマット(カーペット)を形成します。これにより、太陽光が地表に届かなくなり、飛来した雑草の種子が発芽しても光合成ができずに枯死します。

強力な耐踏圧性と「踏まれるほど強くなる」性質
多くの植物は、人や車に踏まれると茎が折れて枯れてしまいますが、ヒメイワダレソウは「耐踏圧性」が極めて高い植物です。


  1. 木質化する茎: 成長した茎は次第に木のように硬くなり(木質化)、地面に強固に張り付きます。これにより、人が毎日歩く通路や、軽自動車が通る程度の場所であれば耐えることができます。
  2. 踏圧による緻密化: 適度に踏まれることで、植物は上に伸びることをやめ、横へ横へと分枝を促します。結果として、踏まれる場所ほど葉が小さく密度が高くなり、より美しい緑の絨毯が出来上がります。

管理の手間:刈り込みの必要性
「植えっぱなしでOK」という宣伝文句を見かけますが、これは半分正解で半分間違いです。確かに肥料や水やりはほとんど不要ですが、その強すぎる繁殖力を制御するための「刈り込み」は必須です。


  • ランナー(匍匐茎)の暴走: コンクリートの隙間、花壇の中、隣家の敷地など、あらゆる場所に茎を伸ばして侵入します。最低でも年に2〜3回は、敷地の境界線をハサミやエッジカッターで切断する作業が必要です。
  • 高さの調整: 放置すると立ち上がってボサボサになることがあります。6月〜7月の梅雨明け頃に一度刈り込みを行うことで、蒸れを防ぎ、病害虫の発生を抑制できます。

以下のリンクでは、実際にヒメイワダレソウを植えた際の管理の大変さや、具体的な成長の様子が記録されています。


ヒメイワダレソウ(リッピア)の管理記録とグランドカバーとしての実力

環境省のリスト掲載!生態系を守るための外来種の取り扱い

ヒメイワダレソウを導入する前に、必ず知っておかなければならないのが「法的・環境的なリスク」です。単に「よく増える便利な植物」として扱うには、あまりにも影響力が大きすぎるため、国(環境省)も注意を喚起しています。


生態系被害防止外来種リストへの指定
ヒメイワダレソウ(Lippia canescens)は、環境省及び農林水産省が作成した「生態系被害防止外来種リスト」において、「重点対策外来種」に類する扱いを受けています(地域や自治体によって呼び方は異なりますが、警戒すべき種であることは共通しています)。


  • 指定の理由: 在来種の植物(本来のイワダレソウなど)の生息地を奪い、駆逐してしまう懸念があるためです。また、河川敷などに流出した場合、在来の植生を単一のヒメイワダレソウ群落に変えてしまい、そこに依存する昆虫や小動物の生態系まで変えてしまう恐れがあります。
  • 法的拘束力: 特定外来生物(オオキンケイギクなど)のように、栽培や運搬が法律で完全に禁止されているわけではありません。しかし、「適切な管理が必要であり、野外への逸出を防止すべき種」として位置付けられています。

栽培者が守るべきモラルとルール
このリストに掲載されている植物を扱う場合、栽培者(農家・所有者)には以下の責任が伴います。


  1. 封じ込め: 庭や畑などの敷地内だけで完結させ、外に逃がさないこと。
  2. 種子の拡散防止: ヒメイワダレソウは種子を作ります。種が風や雨水、靴の裏の泥などに混じって拡散するリスクがあります。
  3. 河川敷や畦畔への安易な植栽禁止: 特に公共の河川敷や、水系がつながっている場所への植栽は避けるべきです。一度定着すると、除草剤を使わずに根絶することはほぼ不可能です。

特に注意すべきは「種(タネ)」
ヒメイワダレソウの最大のリスクは「種」ができることです。鳥が実を食べたり、雨で流されたりして、意図しない場所(遠く離れた自然保護区など)で発芽する可能性があります。これが、後述する改良品種「クラピア」との決定的な違いとなります。


以下の環境省の公式サイトでは、生態系被害防止外来種リストの詳細や、外来種対策の考え方が解説されています。


環境省:生態系被害防止外来種リストの概要と詳細一覧

法面保護にも活躍するクラピアとヒメイワダレソウの使い分け

ヒメイワダレソウの「雑草抑制力」は魅力的ですが、「環境リスク」は怖い。このジレンマを解消するために開発されたのが、改良品種である「クラピア」です。


クラピア:種を作らない不稔性の改良種
クラピアは、日本の在来種イワダレソウをベースに、宇都宮大学の故・倉持仁志先生が長年の研究の末に開発した品種です。最大の特徴は、「種を全く作らない(不稔性)」という点です。


  • 生態系への安全性: 種ができないため、植えた場所から勝手に飛び火して増えることがありません。ランナー(茎)が伸びる範囲でしか広がらないため、管理が容易で、環境省のリストにも掲載されていません。
  • 繁殖力の向上: 種を作るエネルギーをすべて茎や葉の成長に回すため、ヒメイワダレソウよりもさらに成長速度が速く、被覆密度も高いとされています。
  • 法面保護能力: クラピアは根を地中深く(1m以上)まで伸ばす性質があり、土壌をしっかりと掴みます。これにより、雨による法面の崩落や土砂流出を防ぐ効果が期待でき、公共工事やメガソーラーの敷地管理でも採用されています。

コストと目的による使い分け
では、すべてクラピアにすれば良いかというと、コスト面での課題があります。


項目 ヒメイワダレソウ(リッピア) クラピア(K7, K5など)
価格 安価(1ポット 100円〜200円) 高価(1ポット 500円〜600円)
入手方法 ホームセンター、ネット通販 認定特約店のみ(種苗法登録品種
種子の有無 あり(こぼれ種で増える) なし(完全不稔性)
環境リスク 高い(逸出の恐れあり) 極めて低い
おすすめの場所 完全に隔離された庭、鉢植え 農地、法面、公園、広い庭

種苗法(しゅびょうほう)による制限
クラピアは種苗法で登録された品種であり、「株分け」や「挿し木」で勝手に増やして譲渡・販売することは法律で禁止されています(自家増殖も制限される場合があります)。一方、ヒメイワダレソウにはそのような法的な増殖制限はありません(ただし、前述の通り環境的配慮は必要です)。


「安く済ませたい」という理由でヒメイワダレソウを選ぶ場合は、絶対に外に漏らさない管理体制が必要です。一方、「環境への配慮」や「法面の土留め」を重視するなら、初期投資は高くてもクラピアを選ぶのが、長期的には賢明な選択と言えます。


以下の記事では、種苗法に関する注意点や、ヒメイワダレソウが環境省のリストに含まれている背景について触れられています。


種苗法とヒメイワダレソウ(リッピア)の環境リスクについて

他の植物を枯らすアレロパシーの土壌への作用と自家中毒

最後に、検索上位の記事ではあまり深く触れられていない、しかし農業従事者にとっては極めて重要な生理現象について解説します。それは、イワダレソウ属が持つ「アレロパシー(多感作用)」です。


天然の除草剤「アレロパシー」とは
アレロパシーとは、植物が根や葉から特定の化学物質(アレロケミカル)を放出し、周囲の他の植物の成長を阻害したり、微生物の活動に影響を与えたりする現象のことです。セイタカアワダチソウやクルミの木が有名ですが、実はイワダレソウやヒメイワダレソウも強いアレロパシー活性を持っています。


  • フェノール類の影響: イワダレソウ属は、根からフェノール酸などの物質を分泌します。これが土壌中に拡散し、他の雑草の種子の発芽を抑制します。つまり、物理的に光を遮るだけでなく、化学戦も仕掛けています。これが、驚異的な雑草抑制効果の裏付けの一つです。

知られざるリスク:自家中毒と土壌の「忌地(いやち)」化
この強力な作用は、諸刃の剣でもあります。


  1. 混植の難しさ: 花壇の縁取りにヒメイワダレソウを植えると、その近くに植えた他の草花(特に根の浅い一年草や野菜)の成長が悪くなることがあります。「ヒメイワダレソウの近くでは他の花が育たない」というのは、単に栄養を奪われているだけでなく、この化学物質の影響を受けている可能性があります。
  2. 自家中毒(自家際作用): アレロパシー物質が土壌に高濃度に蓄積すると、最終的には自分自身の生育も阻害してしまうことがあります。これを「自家中毒」と呼びます。
    • 何年も同じ場所で密生させていると、突然中央部分から枯れ込んだり、勢いが衰えたりする現象が見られます。これは、根詰まりや老化だけでなく、自ら出した毒素で土壌環境が悪化した(忌地現象)結果である場合があるのです。

対策としての土壌更新
この問題を回避するためには、数年に一度、エアレーション(穴あけ)を行って土壌中のガス交換を促したり、枯れ込んだ部分は一度剥がして新しい土を入れたりするなどのメンテナンスが有効です。


「雑草が生えない魔法の植物」として導入されがちですが、その足元の土壌の中では、激しい化学的な攻防が行われていることを理解しておく必要があります。将来的にその場所を畑に戻したり、別の植物を植えたりする計画がある場合は、この「土壌への残留効果」も考慮に入れておくべきでしょう。


以下のアレロパシーに関する詳細な解説では、植物が放出する化学物質のメカニズムや、農業における活用とリスクについて学術的な視点で書かれています。


アレロパシー効果のメカニズムと土壌・植物への具体的な影響




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