土留めをDIYで行う際、ホームセンターは最強の味方です。プロが使う資材から、初心者でも扱いやすい簡易的なキットまで幅広く揃っています。特に、庭の景観を整えたり、雨による土砂流出を防いだりするためには、適切な材料選びが成功の鍵を握ります。
ホームセンターで入手できる主な土留め材料には、大きく分けて「軽量で安価なプラスチック系」「耐久性重視のコンクリート系」「景観重視の木材・レンガ系」があります。それぞれの特徴を理解し、自分の技術レベルと予算に合ったものを選ぶことが、DIY成功への近道です。例えば、家庭菜園のちょっとした土留めなら「あぜ板」が圧倒的にコスパが良く、しっかりとした境界線を作りたいなら「重量ブロック」や「化粧ブロック」が適しています。
また、材料費だけでなく、施工に必要な道具(スコップ、水平器、転圧機代わりの角材など)もホームセンターで一度に揃えることができます。最近では、軽トラックの貸し出しサービスを行っている店舗も多いため、重量のあるブロックや長尺の木材を購入しても持ち帰りに困ることはありません。まずは、近くのホームセンター(コメリ、カインズ、コーナンなど)の実店舗で、実際の質感やサイズを確認してみることをおすすめします。
参考リンク:コーナンeショップ|アゼ板400N - ガーデニング・農業資材(あぜ板の価格や仕様の参考)
参考リンク:コメリドットコム|あぜ板なみ 600×1200×4mm(サイズバリエーションの参考)
「あぜ板(あぜいた)」または「あぜ波」と呼ばれる農業資材は、土留めDIYにおいて最強のコストパフォーマンスを誇ります。本来は水田とあぜ道を仕切るために使われるものですが、その耐久性と施工のしやすさから、ガーデニングや家庭菜園の土留めとして非常に人気があります。
あぜ板のメリットと活用法
あぜ板の最大の魅力は、その安さと手軽さです。高さ30cm〜40cm、幅120cm程度の板が1枚あたり300円〜600円程度で販売されています。素材はポリエチレンやポリプロピレンなどのプラスチック製であるため、木材のように雨や土中の湿気で腐る心配がありません。
施工のポイント:杭打ちで補強
あぜ板単体でも自立しますが、土圧(土が押す力)がかかると外側に膨らんでしまうことがあります。これを防ぐために、ホームセンターで売られている「支持杭(プラスチック製や木製の杭)」を一定間隔(60cm〜1mおき)で打ち込み、あぜ板を固定するのがコツです。特に高さがある場合や、雨で土が重くなる場所では、この補強が必須となります。
デメリットと対策
見た目が「黒いプラスチック板」であるため、どうしても「畑感」や「工事現場感」が出てしまうのが欠点です。おしゃれな庭を目指す場合は、あぜ板の手前にグランドカバーとなる植物を植えたり、レンガを並べて隠したりする工夫が必要です。「見えない部分の土留め」として使い、表面だけおしゃれに仕上げるという「ハイブリッド工法」も賢いやり方です。
参考リンク:お手軽簡単!あぜ板でお安くレイズドベッドを作ろう!(あぜ板を使った具体的な施工手順と費用感)
耐久性と安定感を求めるなら、コンクリートブロックやレンガを使った土留めが王道です。ホームセンターには、無骨な「普通ブロック(重量ブロック)」だけでなく、表面に加工が施されたおしゃれな「化粧ブロック」や、アンティーク風の「レンガ」も多数販売されています。
初心者でも失敗しない基礎作りの手順
ブロックやレンガをただ地面に置くだけでは、雨や土圧で簡単に傾いたり沈んだりしてしまいます。長く使える土留めを作るためには、「基礎」が命です。
鉄筋の必要性について
土留めの高さが低く(2段程度まで)、花壇の縁取り程度であれば、鉄筋なしでモルタル接着のみで施工するケースもあります。しかし、3段以上積む場合や、背後に大量の土がある場合は、ブロックの穴に鉄筋を通して基礎と連結させる必要があります。倒壊事故を防ぐため、DIYでのブロック積みは「高さ40cm〜50cm程度(2〜3段)」までにとどめ、それ以上の高さが必要な場合は専門業者に依頼するのが安全です。
レンガでおしゃれに仕上げるコツ
レンガは一つ一つが小さいため、曲線を描く土留めに適しています。また、きっちりとモルタルで固める方法以外に、レンガを斜めに立てて半分埋めるだけの「コバ立て」という手法もあります。これならモルタルを使わずに簡易的な土留めができ、洋風ガーデンのおしゃれなアクセントになります。
参考リンク:土留めブロック施工DIYチャレンジ!(ブロック施工の詳細なステップと予算の目安)
参考リンク:DIYにおける転圧の必要性とやり方4選(転圧の重要性と具体的な道具の紹介)
「ナチュラルな庭にしたいから、コンクリートやプラスチックは使いたくない」という方に人気なのが、木材や枕木を使った土留めです。しかし、天然木を土に埋めると、シロアリや腐朽菌によって驚くほど早く(早ければ1〜2年で)腐ってしまいます。そこで活躍するのが、ホームセンターで買える「腐らない」代用品です。
コンクリート製枕木(擬木)
見た目は使い古されたアンティーク枕木そのものですが、素材はコンクリートで作られています。これを「擬木(ぎぼく)」と呼びます。
ハードウッドと防腐木材
どうしても本物の木を使いたい場合は、木材選びにこだわりましょう。
焼杉杭(やきすぎくい)の活用
昔ながらの知恵として、杭の表面を炭化させた「焼杉杭」もホームセンターで手に入ります。表面が炭になっているため腐りにくく、和風の庭によく合います。松などの安価な木材でも、表面を焼くことで数年は寿命が延びますが、恒久的な土留めには向きません。あくまで簡易的なものか、数年ごとの打ち直しを前提に使用しましょう。
参考リンク:腐らない!枕木風コンクリート|ウッドデッキのDIY(コンクリート枕木の特徴と施工例)
参考リンク:YouTube|屋外で使う木工DIY!これやるとすぐ腐ります!(木材が腐る原因と対策の解説)
土留めを長持ちさせ、機能させるためには、壁の裏側(土がある方)の処理が極めて重要です。ただ土をパンパンに詰め込むと、雨が降った際に水を含んだ土が膨張し、強烈な圧力で土留めを押し倒そうとします。これを防ぐための「水はけ対策」と、表面の土流出を防ぐ「グランドカバー」について解説します。
裏込め石(うらごめいし)の重要性
ブロックやあぜ板などの土留め材を設置した後、その裏側(土と壁の間)には、必ず「砂利」や「砕石」を入れてください。これを「裏込め石」と呼びます。
表面の土流出を防ぐグランドカバー
土留めの上部や法面(のりめん:斜面部分)の土が雨で削られ、土留めを乗り越えて流出してしまうことがあります。これを防ぐには、植物の根で土を掴むのが一番です。
防草シートと砂利の組み合わせ
土留めの内側をすべて植物にするのが大変な場合は、防草シートを敷いてその上に「化粧砂利」を敷くのもおすすめです。雨が直接土を叩かないため泥はねが減り、雑草取りの手間も激減します。ホームセンターには「防犯砂利」や「白玉砂利」など、色や音が鳴るものなど多種多様な砂利があり、庭の雰囲気に合わせて選べます。
参考リンク:防草シートの上に花壇は作れるの?(シートと植物を併用した土留め・雑草対策)
最後に、コンクリートやプラスチックなどの「硬い人工物」を極力使わず、自然な風景を維持しながら土留めを行う、プロ視点のテクニックを紹介します。これは、特に斜面(法面)の土留めに有効な「グリーンインフラ」的なアプローチです。
生分解性シートと植栽の合わせ技
急な斜面の土が崩れるのを止めたいけれど、コンクリートで固めるのは無粋だし、費用もかかる。そんな時は「植生シート(しょくせいシート)」や「ココナッツ繊維マット」を活用します。
土のう袋を使った「土のう花壇」
災害時のイメージが強い「土のう」ですが、ホームセンターには黒や茶色の目立たない土のう袋(UV耐性のあるもの)も売られています。
この方法は、ブロックを運ぶのが困難な場所や、将来的に撤去する可能性がある場所(借地など)に最適です。重機もモルタルも使わず、スコップ一つで施工でき、不要になれば土を出して袋を捨てるだけで原状回復できます。
注意点:竹による土留め
古民家風のDIYで「竹」を使って土留めをするアイデアを見かけますが、生の竹は非常に腐りやすく、中が空洞のため虫の巣窟になりやすい素材です。竹を使う場合は、防腐処理された製品を選ぶか、毎年作り変える覚悟が必要です。「竹害」という言葉があるように、生きている竹を植えて土留めにするのは、根が広がりすぎて近隣トラブルになるため絶対にやめましょう。
参考リンク:Evaluation of calcium carbide residue...(土壌安定化と持続可能なバインダーに関する学術的視点 ※参考情報として)