種苗法登録品種一覧の観葉植物検索と表示義務や許諾の確認

改正種苗法で観葉植物の扱いが厳格化されたことをご存知ですか?登録品種の検索方法から自家増殖の禁止、表示義務、違反時の罰則まで、農業関係者が知るべき必須知識を網羅しました。あなたの管理体制は万全ですか?

種苗法の登録品種一覧と観葉植物

記事の要点まとめ
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検索の重要性

農林水産省データベースで正確な品種登録状況を確認することがコンプライアンスの第一歩です。

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自家増殖の制限

登録品種の自家増殖は許諾制へ移行。無許可の株分けや挿し木は法律違反となります。

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重い罰則規定

法人で最大3億円以下の罰金。知らなかったでは済まされないリスク管理が必要です。

近年、観葉植物の市場拡大に伴い、新品種の開発とその権利保護がかつてないほど重要視されています。特に2020年(令和2年)の種苗法改正および2022年(令和4年)4月の完全施行により、農業関係者や生産者、販売店が守るべきルールは劇的に変化しました。これまでは慣習的に行われていた自家増殖の一部が制限され、登録品種の管理が厳格化されています 。

 

参考)種苗法の改正について:農林水産省

観葉植物は、野菜や穀物と異なり、挿し木や株分けで容易に増殖できる特性を持っています。これは生産効率が良い反面、意図しない権利侵害(不法増殖)が発生しやすいリスクも孕んでいます。ポトスやモンステラ、多肉植物など、人気のある品種が実は「登録品種」であり、無断で増やして販売することが育成者権の侵害にあたるケースが増えています 。

 

参考)種苗法と多肉植物|登録品種一覧と知っておきたいポイント - …

本記事では、農業関係者が必ず押さえておくべき「種苗法登録品種一覧」の正確な検索方法、自家増殖に関する許諾のルール、販売時の表示義務、そして違反した場合のペナルティについて、実務的な観点から詳細に解説します。

 

種苗法登録品種一覧の観葉植物を農林水産省データベースで検索

業務として観葉植物を取り扱う際、最も基本的かつ重要なアクションが「その品種が登録されているか否か」を正確に把握することです。これを確認せずに栽培や販売を行うことは、地雷原を目隠しで歩くようなものであり、経営上の重大なリスクとなります。確認のための公式ツールが、農林水産省が提供する「品種登録データ検索」です 。

 

参考)https://www.hinshu2.maff.go.jp/vips/cmm/apCMM110.aspx?MOSS=1

このデータベースは誰でも無料で利用でき、現在登録されている品種だけでなく、出願中の品種や権利が消滅した品種も検索可能です。観葉植物の場合、流通名(商品名)と登録品種名が異なるケースが多々あるため、この検索作業は必須です。

 

検索の手順とポイント:

  • 農林水産植物の種類で絞り込む:

    検索画面では「草花類」「観賞樹」などの区分を選択するか、直接「アジサイ」「サンセベリア」などの属名を入力して絞り込みます。観葉植物は多岐にわたるため、学名(ラテン語)での検索も併用するとより確実です 。

  • 出願公表と品種登録の違いを理解する:

    データベースには「登録品種」と「出願公表中の品種」の両方が掲載されています。出願公表中の品種も、仮保護の対象となる場合があり、登録品種と同様の注意が必要です。ステータスが「登録」になっているか、「出願公表」か、「登録消滅」かを必ず確認してください 。

     

    参考)https://www.takii.co.jp/list/

  • 権利消滅日の確認:

    育成者権には存続期間(通常25年、永年性植物は30年)があります。期間が満了している、または登録料未納などで権利が消滅している場合は「一般品種」として扱われ、制限なく利用可能です。しかし、この判断を自己流で行うのは危険ですので、必ずデータベース上の「消滅日」を確認してください 。

多くの農業関係者が陥りやすいミスとして、「昔からある品種だから大丈夫だろう」という思い込みがあります。改良品種が次々と登録されている現在、見た目が似ていても全く別の登録品種である可能性があります。仕入れや増殖計画を立てる前には、必ずこのデータベースで最新情報を照会する習慣をつけてください。

 

農林水産省 品種登録データ検索
https://www.hinshu2.maff.go.jp/vips/cmm/apCMM110.aspx?MOSS=1
※正確な品種情報の確認に必須となる公式データベースです。出願中や権利消滅のステータスも確認できます。

 

種苗法登録品種一覧にある観葉植物の自家増殖と許諾のルール

2022年4月の改正種苗法完全施行における最大の変更点は、登録品種の自家増殖(自家用栽培向け増殖)に育成者権者の「許諾」が必要になったことです 。これまでは、農家が正規に購入した種苗から収穫物を得るために、自らの圃場で増殖を行うことは原則として自由でした。しかし、改正後はこの例外規定が登録品種においては撤廃されました。

 

参考)種子や種苗の「自家増殖」はどこからが違法?【連載・農家が知っ…

観葉植物における自家増殖の具体的制限:

  • 挿し木・株分け・葉挿し:

    観葉植物生産で一般的に行われるこれらの栄養繁殖は、登録品種である場合、すべて許諾の対象となります。無断で行えば育成者権の侵害となります 。

     

    参考)売ってはいけない花や植物がある? 種苗法違反にあたる行為と罰…

  • 許諾の取得方法:

    許諾を得るためには、育成者権者(種苗メーカーや育種家)と契約を結ぶ必要があります。多くの場合、許諾料(ロイヤリティ)の支払いが条件となります。許諾の手続きは、個別に契約する場合もあれば、種苗購入時に契約が含まれている場合、あるいはJAや団体を通じて包括的に許諾を得る場合など様々です 。

  • 一般品種の扱い:

    改正法で制限されるのはあくまで「登録品種」のみです。在来種や品種登録されていない「一般品種」、登録期間が終了した品種については、従来通り自由に自家増殖が可能です。したがって、ご自身の圃場で扱っている植物が登録品種なのか一般品種なのかを明確に区分けして管理することが求められます 。

例えば、多肉植物の特定の品種や、斑入りのポトス、改良されたアジサイなどが登録品種である場合、親株を一つ買ってきて無限に増やして販売するというビジネスモデルは、正規の許諾契約なしには成立しません。これは販売目的だけでなく、農業者が自分の栽培用苗を確保するために増やす行為も含まれる点に注意が必要です。

 

農研機構などの公的機関が育成した品種についても、許諾手続きの方針が公表されています。公的機関だからといって無条件で利用できるわけではなく、所定の手続きを経て許諾を得る必要があります 。

 

参考)農研機構育成の登録品種の自家用の栽培向け増殖に係る許諾手続き…

農研機構育成の登録品種の自家用の栽培向け増殖に係る許諾手続きについて
農研機構育成の登録品種の自家用の栽培向け増殖に係る許諾手続き…
※公的機関が開発した品種における許諾手続きの具体例と方針が記載されています。

 

種苗法登録品種一覧の観葉植物におけるPVP表示義務とラベル

登録品種の種苗を譲渡(販売)する際には、それが登録品種であることを表示する義務があります。これを怠ったり、虚偽の表示を行ったりすることも法律違反となります。農業関係者が市場に出荷する際や、直売所、ネットオークション等で販売する際には、適切なラベリングが不可欠です 。

表示すべき事項とPVPマーク:

  • 「登録品種」の文字表示:

    種苗(苗、鉢植え、種子など)を販売する際、その包装や添付するラベルに「登録品種」という文字、または「品種登録第○○号」という登録番号を記載することが義務付けられています 。

  • PVPマークの活用:

    「PVP(Plant Variety Protection)」マークは、登録品種であることを分かりやすく示すための統一マークです。必須ではありませんが、消費者や取引先に権利関係を明確に伝えるために広く利用されています。ホームセンターなどで見かける「PVP」と書かれたラベルがこれに該当します 。

  • 海外持出制限等の利用条件の表示:

    改正種苗法では、育成者が「国内栽培限定」や「海外持出禁止」などの利用条件を付すことができるようになりました。これらの条件が付されている場合、販売時にその旨を表示する義務も課せられています。例えば「海外持出禁止(公示)」といった表示が必要です 。

現場での運用注意点:
特に観葉植物の場合、生産者から市場、仲卸、生花店、そして消費者へと流通する過程で、ラベルが紛失したり、植え替えによって表示がなくなったりすることがあります。しかし、種苗法上の義務は「譲渡の対価として種苗を引き渡す時」に発生します。

 

もし、あなたが生産者として苗を出荷する場合、必ずラベルや納品書等で登録品種である旨を明示しなければなりません。また、フリマアプリやネットオークションで個人が販売する場合も同様です。「知らなかった」では済まされず、表示義務違反には罰則(10万円以下の過料、虚偽表示の場合は懲役または罰金)が規定されています 。

適切な表示は、自らを守るだけでなく、購入者が知らずに違法な増殖や海外持ち出しを行ってしまうことを防ぐための重要な防波堤でもあります。

 

種苗法登録品種一覧の観葉植物で知らないと怖い違反と罰則

「たかが植物」と軽く考えていると、取り返しのつかない事態に陥る可能性があります。種苗法違反、特に育成者権の侵害に対する罰則は、日本の知的財産権関連法の中でも非常に重い部類に入ります。ここでは、あまり知られていない「法人に対する重科」や「サプライチェーンリスク」という独自の視点から解説します。

 

刑事罰と民事責任のダブルパンチ:

  • 個人の場合:

    故意に育成者権を侵害(無断増殖や販売)した場合、10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金、またはその両方が科せられます。これは特許法侵害と同等の重さです 。

     

    参考)そのタネ、ほんとに大丈夫?~育成者権侵害について~:農林水産…

  • 法人の場合(重要):

    農業法人や企業が組織ぐるみで侵害行為を行った場合、その罰金は最大で3億円以下となります 。これは、コンプライアンス意識の低い従業員が勝手に増殖を行っていた場合でも、法人としての管理責任を問われる可能性があるため、経営者にとっては死活問題です。

  • 民事上の請求:

    刑事罰とは別に、育成者権者から損害賠償請求や、販売の差し止め、在庫の廃棄処分を求められる民事訴訟を起こされるリスクがあります 。過去の裁判例でも、数千万円規模の賠償命令が出た事例が存在します。

サプライチェーンにおける「見えない」リスク:
独自の視点として強調したいのが、仕入れ先のリスクです。「正規のルートだと思って仕入れた苗が、実は違法増殖されたものだった」というケースです。

 

種苗法では、情を知って(違法品であることを知って)譲り受けたり販売したりする行為も侵害とみなされる可能性があります。また、違法品と知らずに購入したとしても、その後の販売停止や在庫回収などのトラブルに巻き込まれれば、信用失墜は免れません。

 

特に観葉植物業界では、新品種がSNS等で話題になると、瞬く間に未承認の増殖株が個人間取引や一部の不透明なルートで流通することがあります 。農業関係者としては、以下の対策を徹底する必要があります。

 

参考)【お迎え前に調べてほしい】絶対に悲しくならないフリマサイトの…

  1. 仕入れ元の信頼性確認: 正規のライセンス契約を結んでいる生産者や種苗会社から購入する。
  2. 契約書の確認: 増殖を行う場合は、必ず書面で許諾契約を交わす。
  3. 証憑の保存: 正規ルートで購入したことを証明する納品書や請求書、ラベルを一定期間保存する。

意図しない違反を防ぐためには、「疑わしきは扱わない」という姿勢と、前述のデータベースでの徹底した確認作業が不可欠です。

 

種苗法違反事件の事例一覧表
https://www.kirinsou.com/_p/acre/25770/documents/syubyouhouihan.pdf
※実際に起きた違反事例や判決内容がまとめられており、リスクの大きさを具体的に理解するのに役立ちます。