表面排水の勾配は、出口の高さと排水路の水位を確認してから決めます。1/1000は0.1%で、30mなら3cm下がる計算ですが、途中に逆勾配があれば水は残ります。落水口との接続・閉塞を調べ、途中の高さも測ってから、部分補修か全面造成かを選びます。農研機構の地表排水診断
勾配が緩すぎると、水が10アール当たり数十万円分の収量を奪うことがあります。
表面排水の勾配は、地表の水を排水先へ流す方向の傾きです。数値は『高低差÷水平距離』で求め、高低差と距離の単位をそろえて計算します。1/1000は0.1%で、1%ではありません。千分率では1‰、1m当たりでは0.1cm、つまり1mmの下がりです。
| 分数 | 百分率 | 千分率 | 水平距離1m当たりの高低差 |
|---|---|---|---|
| 1/2000 | 0.05% | 0.5‰ | 0.05cm=0.5mm |
| 1/1000 | 0.1% | 1‰ | 0.1cm=1mm |
| 1/100 | 1% | 10‰ | 1cm=10mm |
農業工学研究所の傾斜化試験も、0.5‰=1/2000と、1‰=1/1000を区別して比較しています。圃場面傾斜化の試験報告
仮に1/1000で計画するなら、高低差は『水平距離÷1000』です。10mなら0.01m=1cm、30mなら0.03m=3cm、100mなら0.1m=10cm下がります。30mを0.5‰にする仮例では、30m×0.0005=0.015m=1.5cmです。これらは換算例であり、すべての畑に同じ勾配を勧める数字ではありません。
また、畑面の勾配、明渠底の勾配、受け側の排水路の水位は別々に確認します。畑面に落差があっても、明渠が落水口につながっていなかったり、落水口が明渠底より高かったりすれば、ほ場外への排水は成立しません。農研機構の地表排水診断
関連用語・資料:圃場 / 暗渠排水 / 農林水産 / 土地改良事業 / 根腐れ
勾配改善の効果を読むときは、排水開始までの時間、湛水時間、収量を区別します。若杉晃介・藤森新作による2006年の農業工学研究所の報告には、傾斜化による排水の変化を比較した試験があります。次の数値は排水・湛水の結果であり、そのまま増収率や減収率を表すものではありません。転換畑の圃場面傾斜化による排水・灌漑促進効果
| 比較した勾配 | 排水が始まるまでの時間 |
|---|---|
| 水平 | 45分 |
| 0.5‰ | 21分 |
| 1‰ | 25分 |
この比較は、所内の30m×70mの関東ローム・裸地の同一圃場を勾配別に造成したものです。地下60cmのビニールシートとコンクリート畦畔で降下浸透と畦畔漏水を防ぎ、24mm/hの掛け流し灌漑を行っています。自然降雨時の一般的な排水時間ではありません。また、0.5‰の21分に対し1‰は25分であり、『勾配を急にするほど必ず早く排水できる』という結果でもありません。有底圃場の通水条件と比較結果
別の試験では、関東ロームの隣接する40m×110mの2筆を、水平と1‰に造成して比較しました。造成は2002年11月で、麦の後に大豆を不耕起狭畦栽培しています。2003年8月14~15日の総降雨量150mmでは、水平圃場が約17時間湛水した一方、傾斜化圃場は湛水に至りませんでした。この2筆は降下浸透があり、暗渠はなく、水口側・水尻側に明渠が施工され、畦畔はコンクリートでした。前の有底圃場とは条件が異なります。大豆圃場の自然降雨時の観測
この観測からは、大豆圃場で長時間の湛水を避けられた比較を読み取れます。ただし、この降雨による収量損失を測った数値ではないため、『17時間で必ず何%減収する』『1‰にすれば収量が保証される』とは結論できません。
測定は畑の高い側からではなく、落水口と受け側の排水路から始めます。造成したい高さだけを決めても、出口の高さや受け側の水位と合わなければ排水できません。農研機構の診断手順は落水口の深さと接続を確認し、農林水産省の排水路設計資料は常時と洪水時の設計水位を分けて扱っています。落水口からの診断、排水路の設計水位
両端だけでは逆勾配を見落とします。次は任意の仮基準高を使った計算例で、実測記録ではありません。
| 始点からの水平距離 | 仮の地盤高 | 直前の地点からの変化 |
|---|---|---|
| 0m | 100.000m | 始点 |
| 10m | 99.990m | 10mm下がる |
| 20m | 99.995m | 5mm上がる |
| 30m | 99.970m | 25mm下がる |
全体では30mで3cm下がる1/1000ですが、10~20m区間は5mmの逆勾配です。平均勾配を満たすことと、途中まで水を滞らせずに流せることは同じではありません。
公的な傾斜化試験では10mメッシュで計画高と実測高を比較していますが、これは試験の測定条件です。小さな菜園のくぼみや轍を調べるときは、10m間隔を固定せず、変化のある場所を追加測定します。傾斜化試験の測量方法
改善工法は、水が止まっている場所と原因から選びます。出口の閉塞が原因なのに畑全面を削る、局所的な轍だけなのに全体を造成する、といった施工を避けるため、落水口から地表へ順に調べます。農研機構の排水診断
| 確認できた状態 | 先に検討する対処 | 施工前に確認すること |
|---|---|---|
| 落水口や明渠が崩れた土でふさがっている、両者がつながっていない | 閉塞土の除去、接続部分の補修 | 補修後に出口まで水の通り道が連続するか。 |
| 出口は使えるが、轍や小さなくぼみにだけ水が残る | 部分整地、明渠の局所補修 | 周囲との高さを測り、補修箇所の下流に新しい段差を作らないか。 |
| 面全体に凹凸や逆勾配があり、局所補修では排水方向を作れない | 測量に基づく全面的な均平・傾斜化 | 表土厚、切土・盛土の範囲、土の移動量、出口との高さ関係。 |
| 受け側の水位が高く、出口を確保できない | 受け側を含む排水計画の見直し | 平常時と降雨時の水位。畑だけを低くする案で解決できるか。常時・洪水時の排水条件 |
| 湧水や高地下水位が主因で、地表の経路を直しても過湿が続く | 地下排水や湧水対策を別途検討 | 地表排水だけで対応できる問題か。湧水・地下排水の診断 |
全面造成では、高い所を削れば済むとは限りません。2006年の傾斜化報告は、造成前の表土厚確認、心土を露出させないこと、盛土部の転圧を挙げています。施工範囲を決める前に、削れる厚さと盛る位置を測量結果に重ねます。造成時の表土・盛土管理
施工後も、全面の再造成が必要とは限りません。茨城県新利根地区の泥炭土圃場では、2001年6月に1‰で造成し、不耕起の大豆・大麦栽培を行ったところ、1年後も傾斜は維持されていました。一方、コンバインが旋回する枕地の轍は整地が必要でした。全体の勾配と、作業で生じる局所的な傷みを分けて点検・補修する例です。新利根地区の施工後調査
関連用語・資料:サブソイラー / 明渠 / 農業委員会 / 農業共済 / 農業農村整備事業 / https://www.maff.go.jp/j/nousin/mizu/index.html
土質や作物名だけで勾配を固定せず、出口、土の動かし方、排水不良の原因を組み合わせて設計します。次の項目が未確認なら、先に勾配の数値を決めるのではなく、その項目を測定・点検します。
農研機構の資料にある『高低差10cm未満』も、それだけで勾配率を決める数値ではありません。設計図や作業記録には、水平距離、始点・終点の計画高、途中の測点、落水口の高さを一緒に残します。地表排水の勾配と均平に関する説明
関連用語・資料:粘土質 / 砂質 / 黒ボク土 / タマネギ / フザリウム / べと病 / トマト / 施設栽培 / 土壌診断 / 農研機構 / https://www.naro.go.jp/index.html
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