フスマは小麦を製粉するときに除かれる外皮部と胚芽からなる副産物で、日本では古くから牛などの家畜飼料として利用されてきた資材です。
デンプンやタンパク質に加え、繊維質やミネラルが豊富なため、単なる「かさ増し」ではなく、栄養価の高い原料として評価されており、近年は健康食品や小麦ブランとしてパン・シリアルなどにも活用が広がっています。
フスマは乾物であり、そのままでは保水性が高い素材ではないものの、有機物として土壌に投入することで団粒構造の形成を助け、間接的に保水性や通気性を高める効果が期待されます。
参考)フスマを活用した肥料の正しい使い方とその効果解説
また、小麦ふすまは不溶性食物繊維を多く含むため、水分を吸って膨らむ性質があり、腸内環境の改善や便通促進などの機能性が注目されている一方で、家畜に多給するとカルシウムとリンのバランスが崩れるなど、栄養設計上の注意点もあります。
参考)小麦ふすまや小麦わら飼料の使用には注意が必要です
作物栽培の観点では、フスマは窒素や炭素源に富んだ有機資材なので、微生物のエサとして土壌に投入すると分解が進みやすく、とくに高温期には急激な発酵・ガス発生や一時的な窒素飢餓を招きやすい点を理解しておく必要があります。
参考)https://www.pref.kagawa.lg.jp/documents/43542/retasumanyuaru.pdf
この「分解の速さ」と「窒素の多さ」をどうコントロールするかが、フスマ 栽培 特徴を現場で活かすうえでのキーになります。
フスマを肥料として使う代表的な方法が、ボカシ肥づくりと堆肥原料としての利用です。
ボカシ肥では、フスマに米ぬかや油かす、魚かすなどを混ぜ、水分を調整しつつ嫌気・好気発酵をコントロールしていきますが、「完熟堆肥はボカシ肥の残りがゆっくり分解している状態」と捉えると理解しやすく、元肥に使う際は1作に必要な量の半分以下に抑えることが推奨されています。
土壌還元消毒では、フスマや米ぬかなどの有機物を土に混和し、潅水とマルチ被覆で還元状態をつくることで、土壌病害菌やセンチュウを抑える手法が普及しています。
参考)https://ja-kyotocity.or.jp/wp/wp-content/uploads/2018/06/ippuku248_tac.pdf
神奈川県や香川県の資料では、フスマは土壌還元消毒の資材として見られがちだが、実際にはかなりの窒素を投入していることになり、例えば1㎡あたり1kg施用すると相当量の窒素肥料を入れたのと同じであると指摘されており、その後の追肥設計を見直す必要性が強調されています。
参考)土壌還元消毒後の施肥を考えていくために - 神奈川県ホームペ…
現場でありがちな失敗として、土壌還元消毒後に慣例どおりの化成肥料をフルで入れてしまい、窒素過多で過繁茂や軟弱徒長、病害多発を招くケースがあります。
対策としては、
・フスマ施用量から大まかな窒素供給量を見積もり、元肥窒素を2〜3割削る
・還元消毒後の土壌がまだ強い還元状態(硫黄臭・黒色)なら、ガス抜き・乾燥期間を十分にとる
・根が浅くなりやすい作物では、フスマの混和深度を耕うん深さに合わせて均一にする
といった「肥料もセットで設計する」視点が重要です。
意外なポイントとして、フスマを土の表面にばらまくだけでなく、しっかり土と混和することで微生物が均一に資材へアクセスでき、分解ムラを減らせることが指摘されています。
表面だけにフスマが偏ると、コケやカビが出たり、ガス障害が一部に集中するリスクがあるため、耕運機やホークなどで「横方向」だけでなく「深さ方向」も意識した攪拌が、安定した効果を出すための実務的なコツになります。
フスマ肥料の撒き方や施肥量の考え方、野菜・果樹などへの使い分けが具体的に解説されています。
フスマの「栽培」という言葉でまずイメージされるのは作物栽培ですが、実はキノコの菌床栽培でも重要な役割を果たしています。
菌床栽培では、広葉樹のおがくずにフスマなどの栄養剤を混合し、ブロック状に固めた培地を使いますが、フスマ由来のデンプン・タンパク・ミネラルが菌糸の炭素源・窒素源として働き、収量や品質に直結するとされています。
北海道林産試験場の報告では、ナメコ瓶栽培においてフスマ配合比を増やすと、収量もそれに伴って直線的に増加するという結果が示されており、「フスマはきのこの増収資材」としての特徴を持つことが分かります。
参考)https://www.hro.or.jp/upload/12059/17503003001.pdf
ただし、フスマ量を増やしすぎると培地のpHや物理性が変わりすぎたり、雑菌汚染を招くリスクもあるため、菌種ごとに適正配合比が試験で詰められており、栽培マニュアルに沿った設計が欠かせません。
もう一つ、意外なキーワードが「専増産フスマ制度」です。
参考)株式会社キノックス
これは、小麦粉の歩留まりを下げて(外皮を多く除く)、フスマにより多くの小麦粉分を残した「高栄養フスマ」を製造する制度で、牛などの飼料としての価値だけでなく、キノコ菌床での栄養体としても利用されてきました。
一般製粉では小麦粉歩留りが約78%であるのに対し、専増産フスマでは歩留まり40〜45%まで外皮を除去することで、フスマ中の小麦粉割合が高くなり、そのぶんデンプンやタンパクの供給力が高まるという特徴があります。
価格面では、政府の畜産振興を目的として飼料用フスマが輸入小麦よりも低い価格水準に設定されてきた歴史があり、結果として「高栄養で安価なエネルギー源」という位置づけで、家畜飼料と菌床栽培の両方を支えてきました。
参考)https://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2010811309.pdf
このように、フスマ 栽培 特徴を広く見ると、
・きのこ菌床では収量アップの鍵となる栄養源
・専増産フスマとして家畜とキノコという2つの生産現場をつなぐ素材
という、穀物栽培→製粉→畜産・きのこ生産までを貫く「循環資材」としての顔が浮かび上がります。
フスマの定義や家畜飼料・菌床栽培での使われ方に触れた技術・解説資料です。
家畜飼料としてのフスマは、粗タンパク質が高く、リン含量が高くカルシウム含量が低いという特徴を持ちます。
一般に小麦ふすまのリンとカルシウムの比率は4:1とされ、家畜や家禽の生理的に必要なカルシウムとリン比(1.5〜2:1程度)と比べてリン過多・カルシウム不足になりやすいため、多給するとくる病や尿路結石、薄殻卵などの問題を引き起こす可能性が指摘されています。
一方、反芻家畜の配合飼料においては、フスマはエネルギーとタンパクのバランスに優れた素材として評価され、育成・肥育用の配合に一定割合組み込まれることが多いと報告されています。
このように、フスマは「入れすぎは危険だが、適量なら非常に使いやすい」という、肥料としての特徴とよく似た性質を持っており、家畜の種類・成長段階に応じて設計されるべき原料です。
環境負荷の視点で見れば、フスマは小麦製粉の副産物であり、これを飼料・菌床・肥料として使い切ることは、フードロス削減や資源循環の観点からも重要です。
参考)フスマ_現代農業用語集
栽培現場で米ぬかや家畜ふん堆肥と組み合わせて土づくり資材として再利用すれば、「穀物→製粉→畜産→堆肥→作物」という循環が閉じ、化学肥料依存度の低減や土壌有機物の維持・向上にもつながります。
独自の視点として、フスマを「家畜の健康」と「土壌の健康」をつなぐ共通キーワードとして捉えると、
・飼料設計ではカルシウム・リン比を是正しつつ、フスマのエネルギーと繊維を活かす
・堆肥設計ではフスマの速効性と窒素量を考慮し、他の炭素源・窒素源とのバランスをとる
・圃場管理では、フスマ由来の微生物活性化効果を利用して、還元消毒や団粒化を促す
といった「一つの素材を起点にした全体設計」が可能になります。
この発想で現場を見直すと、フスマ 栽培 特徴は単なる副産物の話ではなく、ほ場・家畜・きのこ・環境をつなぐ戦略資材としての位置づけに変わっていきます。
フスマを含む小麦ふすま飼料の使い方とカルシウム・リンバランスへの注意点を解説した資料です。
最後に、農業従事者が自分のほ場や畜舎でフスマを扱う際のチェックポイントを整理します。
フスマを肥料・土づくり資材として使う場合:
・土壌還元消毒で1㎡あたり何kg入れているかを把握し、窒素換算して化成肥料を減らす。📌
・元肥に使うときは、ボカシ肥や完熟堆肥として投入し、未熟な状態で根域に集中させない。📌
・耕うん深さを意識し、表面だけでなく層全体に均一に混和して分解ムラを減らす。📌
・高温期はガス発生リスクが高まるため、施用後のガス抜き期間や作付けタイミングを調整する。📌
フスマを家畜飼料として使う場合。
・小麦ふすまのリン高・カルシウム低の特徴を理解し、石灰などでカルシウム補給を図る。📌
・若齢家畜や採卵鶏では、多給による骨や卵殻への悪影響に注意し、配合割合を上限設定する。📌
・飼料分析値(CP、NDF、リンなど)を確認し、他の穀類副産物とのバランスを考えた設計を行う。📌
きのこ・堆肥との連携を考える場合。
・菌床きのこ(ナメコなど)では、フスマ量の増加が収量増につながる一方、汚染リスクもあるため、試験データに基づく適正配合率を守る。📌
参考)https://www.megahira.co.jp/pc/maitake/saibaihou.htm
・廃菌床と鶏ふんなどを組み合わせた堆肥化で、フスマ由来の有機物を最後まで土に戻す仕組みをつくる。📌
参考)キノコ菌床で堆肥作り!作り方や材料は?農家の事例紹介
・「専増産フスマ」「一般フスマ」など原料の違いを意識し、栄養価の差を堆肥設計や施肥量に反映する。📌
このように、フスマ 栽培 特徴を「窒素と炭素を持つ多用途資材」として捉え直し、畜産・きのこ・作物栽培の境界を越えて使い方を設計できれば、副産物でありながら経営の要所を支える頼もしい味方になります。
自分の経営にとって適正量・適正用途はどこか、一度帳簿や配合設計を引っ張り出して、フスマの使い方を棚卸ししてみる価値は大きいはずです。