高温期の対策は「暑いから冷やす」だけでは不十分で、作物体内で何が壊れていくか(機能の破綻点)を押さえるほど、資材投入や作業の優先順位が明確になります。植物は光合成生物であるがゆえに環境ストレスの影響を強く受け、ストレス条件では炭酸同化系の働きが低下し、余剰の還元力が活性酸素(ROS)生成側に回りやすいことが知られています。
この「光は入るのに、同化(糖を作る工程)が追いつかない」状態は、葉の内部では酸化ストレスや酵素活性低下を引き金に、生育停滞・品質低下へ連鎖します。高温ストレス下では酵素が変性して光合成や代謝が阻害される、という整理は現場の肌感(昼に止まり夕方回復しない)とも合いやすい視点です。
さらに、気孔が閉じやすくなると蒸散冷却が落ち、葉温が上がり、同じ気温でも「作物が受けるダメージ」が上振れします。高温耐性メカニズムの説明として、気孔閉鎖の抑制→葉温上昇の抑制、光合成能の向上、ストレス耐性関連遺伝子の発現上昇などが整理されています。
ここで大事なのは、「高温障害=一発の事故」より「積算の疲労」である点です。例えば、日中のピークが2~3時間でも、それが数日続くと、葉の光合成能力、転流、根の吸水、登熟など複数の弱点が同時に露出します。バイオスティミュラントの定義としても、非生物的ストレス耐性の強化・回復、栄養同化や転流の促進、品質属性の改善などが挙げられており、暑さ対策の“目的語”が「冷却」だけでないことが分かります。
「ドヒート」という狙いワードで記事を組むとき、検索上位の多くは“高温対策の資材(バイオスティミュラント)”文脈で語られがちです。例えば酷暑対策に特化した資材として、アミノ酸・海藻抽出物・微生物代謝物の「トリプル効果」をうたう設計が紹介されています。
この3要素は、それぞれ役割がズレます。アミノ酸はストレス時の代謝を支える材料・エネルギー面の補助として語られ、海藻抽出物は環境ストレス抵抗力を高める成分として位置づけられ、微生物代謝物は生理活動を整える働きとして整理されています。
現場の意思決定で重要なのは、「成分の名前」よりも「どの不調を、いつ支えるか」です。例えば水稲では、幼穂形成期~出穂期の処理が推奨され、ドローン散布にも対応し、使用量100ml/10a(8倍希釈)、水量0.8L/10a(ドローン散布時)という具体値が提示されています。
参考)「ヒートインパクト」で猛暑から稲を守る
この種の設計は、病害虫のように“見えたら叩く”より、登熟・品質が崩れる前に「作物側の耐性スイッチ」を入れる発想に寄ります。実際、ヒートインパクトの説明では「高温ストレスに特化した処方設計」「猛暑下でも光合成や代謝を維持」など、機能維持に主語が置かれています。
「意外な落とし穴」として、資材を“万能の栄養剤”として捉えると、肥料設計とぶつかって失敗します。高温時は根の吸収が落ちる一方、葉面は蒸散・クチクラの状態が変わり、同じ濃度でも効き方・焼け方が変わるため、資材のロジック(予防・回復、葉面・土壌、ドローン)を揃えてから投入する方が事故が減ります。バイオスティミュラントの概念自体が「栄養の同化・転流・使用を促進」まで含むため、施肥の“量”だけでなく“動かし方”の設計が核になります。
散布設計は、(1)希釈倍率、(2)散布水量、(3)散布時刻、(4)天候、(5)他資材との混用、の5点セットで考えるのが現場向きです。葉面散布の例として、500~1,000倍希釈が提示されているケースがあり、同じ資材でも用途(葉面・土壌・養液・ドローン)で倍率が変わります。
また、ドローン散布のように水量が極端に少ない方式は、葉面滞留の仕方が地上散布と別物で、実質的な濃度感・乾き方・ムラの出方が変わります。水稲向けの例では8倍希釈・0.8L/10aという設計が示され、これは地上の葉面散布(100~400L/10aなど)とは思想が異なります。
「一番の注意事項」は、暑い日に“濃くする”方向で安全域を削らないことです。高温・強日射の時間帯は、薬液の乾きが速く、葉面に残る溶質濃度が瞬間的に上がりやすく、葉焼けや生理障害の引き金になり得ます(資材の種類により出方は異なります)。そのため、散布時刻は早朝・夕方を基本に、風が弱い日を選び、乾燥が早すぎる条件は避けるのが安全です。
さらに、資材の「撹拌・沈殿・詰まり」も、夏場の作業ストレスと直結します。遮熱塗布資材の例ですが、混合が不十分だとタンク底に沈みノズル詰まり原因になる、タンク内を循環させると良い、という具体的注意が提示されています。
参考)レディヒートならトヨタネ株式会社。農業に関することならおまか…
ドヒート系の散布でも、液肥・展着剤・微量要素など複数投入をするほど沈殿・分離リスクは上がるため、「規定通りの攪拌」「小面積でテスト」「フィルター清掃」を“作業工程”として組み込むのが、結局は一番コストを下げます。
参考:バイオスティミュラントの定義(非生物的ストレス耐性、転流、品質などの考え方)
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高温対策の資材は、効いた・効かないが「見た目」だけだと判断しづらいので、評価の取り方を先に決めるほど再現性が出ます。水稲の説明では、乳白米・未熟粒の発生抑制など“等級に直撃する指標”が目的として挙げられ、幼穂形成期処理で登熟期高温への耐性向上が見込まれるとされています。
このタイプの資材は、収量(kg/10a)より先に、品質(等級、白未熟、着色、糖度、日焼け果、徒長など)が改善指標になることが多く、作物別にKPIを分けた方が迷いません。ヒートインパクトの「こんな時に」という例では、白未熟粒、糖度不足、着色不良、日焼け果、施設内高温による苗の徒長、花粉不稔による結実不良など、症状ベースの目的が列挙されています。
記録は難しく考えず、最低限で十分です。例えば、以下を同じフォーマットで残すだけで、翌年の“投入判断”が速くなります。
・📅処理日、作型、品種、ステージ(幼穂形成期、出穂前、摘果後など)
・🌡️処理当日の最高気温予報、日射(体感でも可)、風(ドローンは特に)
・🧴資材名、希釈倍率、水量、展着剤の有無(混用含む)
参考)商品一覧(目的で探す)
・📷処理前後の同一アングル写真(葉色、葉焼け、徒長、果実日焼け)
・📦出荷時の等級・不良内訳(乳白、着色不良、日焼け、尻腐れ等)
「意外と効く」運用は、区を大きくしすぎないことです。全面投入で失敗すると挽回が難しいので、まずは圃場の端で“同じ散布回の中に小区を作る”方が、労力を増やさず比較ができます。全国の試験で効果が実証されている、といった紹介もありますが、最終的には自分の土・水・作型の癖に合わせたローカル最適が必要になります。
参考:植物の高温ストレスで起きるROSや光合成の破綻(仕組みの理解)
https://katosei.jsbba.or.jp/view_html.php?aid=1290
検索上位は資材の説明(成分・効果・倍率)が中心になりやすい一方、実務で差が出るのは“暑さの中でも回る作業設計”です。つまり、ドヒートを効かせる前に、散布できる状態(人・水・機械・判断)があるかで結果が変わります。ヒートインパクトがドローン散布に対応する、といった情報は省力化の観点で強力ですが、ドローンだから万能ではなく「散布可能な風」「補給動線」「圃場周辺の障害」「液の撹拌維持」まで含めた設計が必要です。
具体的には、次のような“現場ルール”を先に決めると、忙しいピークで迷いが減ります。
・🕒散布の実行条件:最高気温が高い日は早朝固定、日中は原則やらない(例外条件も決める)
・🌬️中止条件:風速、降雨予報、散布後の乾燥時間を条件化する(塗布資材でも乾燥や降雨回避が強調される)
・🧰トラブル対策:フィルター予備、ノズル清掃、攪拌手順を作業前チェックリスト化(詰まり・沈殿の未然防止)
・📍優先順位:圃場やハウスを「日射が強い順」「水が切れやすい順」「着果負荷が高い順」に並べ、上から処理する
・🧾記録の簡略化:圃場ごとにQRやメモテンプレを作り、処理内容を30秒で残す
“意外な効果”が出やすいのは、資材そのものより、工程を整えた瞬間です。暑さの年は「水管理」「換気」「遮熱」「防除」が同時進行で、どれか一つでも破綻すると、資材の効果が見えにくくなります。だからこそドヒートを導入するなら、資材リサーチと同じ熱量で「散布できる仕組み」を作るのが、結果的に最短ルートになります。