大葉(シソ)は葉を収穫する作物なので、「葉を作る」働きが強い窒素の比重が施肥判断の中心になります。窒素は葉や茎の生長に欠かせず「葉肥」と呼ばれる一方、リン酸は開花・結実を促す「実肥」、カリウムは根の発育や抵抗力に関係し「根肥」と整理できます。これらは肥料袋のN-P-K表示で確認でき、まずはN-P-Kの意味が読めるだけで現場判断が速くなります。
一方で大葉は「窒素を入れれば入れるほど良い」作物ではありません。葉が青々としている時期に追肥を重ねると、施肥が効きすぎて肥料やけや生育の乱れを誘発しやすいので、葉色・葉サイズ・収穫の回り方(摘み取り後の戻り)で必要性を判断します。
また、二次要素(マグネシウム・カルシウム等)や微量要素(鉄・マンガン・ホウ素等)も植物に必要で、液肥や配合肥料ではこれらを含む製品もあります。特に連作や雨が多い圃場では、微量要素が「不足というより、吸えない状態」になっていることがあるため、単純な三要素追加で解決しないケースがある点は押さえておきたいところです。
参考:大葉に必要な養分(N-P-Kと二次要素・微量要素)の整理(基礎の確認)
https://www.noukaweb.com/shiso-fertilizer/
元肥は「定植前に土台を作る肥料」で、初期生育を助けるために緩効性・遅効性の肥料を使うのが一般的です。大葉の栽培では、土作りと同時に元肥を入れ、必要なら苦土石灰で酸度調整を行う考え方が紹介されています。さらに、溝施肥の例として、畝中央に溝を掘って堆肥や有機配合肥料を入れる手順も示されており、元肥=「土に混ぜ込み、効かせる土台」と理解するとブレません。
pHは数値だけを追うより、「pHがズレると吸えない要素が出てくる」ことが問題です。酸性寄りだとリン酸が固定されやすくなったり、アルミ等の影響が出たり、逆に上げすぎると微量要素が効きにくくなるなど、施肥の効率そのものが落ちます。土壌pHを調整する資材として苦土石灰が使われるのは、pH調整と同時に苦土(Mg)補給の意味があるからで、散布前に測定して過不足を避けるのが安全です。
堆肥は「肥料成分」と「物理性改善」を分けて考えると組み立てやすいです。牛ふん堆肥などは土をふかふかにして根張りを助けますが、未熟堆肥はガス等で悪影響が出る可能性があるため完熟堆肥を選ぶ、未発酵なら早めに入れて時間を取る、といった基本を守るほど後工程(追肥)の自由度が上がります。
参考:元肥・土作り・pH調整(大葉での具体例)
https://www.noukaweb.com/shiso-fertilizer/
追肥は「定植後に肥料切れを起こさないための追加」で、大葉のように長く収穫する作物では収量と品質を支える主役になります。追肥が遅れると葉色が薄くなったり生育が止まったりし、最悪の場合は枯れることもあるため、作業の都合で後回しにしない設計が重要です。特に窒素とカリウムは消費が早いので、一定のリズムで補うのが合理的です。
実務では「一発で効かせる」より「分割して刻む」ほうが事故が少ないです。例えば地植えの例では、間引き後や定植後しばらくしてから、化成肥料を畝周辺にまき中耕して土寄せする手順が紹介されています。プランターでも、置き肥(固形)なら月1回、液肥なら2週間に1回など、効き方に合わせて回数設計を変えるのが基本です。
追肥のコツは、施肥量を「g/株」だけで固定せず、圃場条件(地力、前作、雨での流亡)と収穫圧(どれだけ摘み取っているか)で補正することです。葉が小さくなってきた・色が抜けたというサインが出たら、追肥の遅れを疑い、逆に葉が濃すぎて柔らかすぎる・先枯れが出るなら、過剰を疑って一度止める判断も必要になります。
参考:追肥の開始時期・回数・目安量(地植え・プランター・水耕の違い)
https://www.noukaweb.com/shiso-fertilizer/
参考:2週間おき追肥などの管理例(家庭菜園だが運用の目安になる)
https://www.ja-hareoka.or.jp/agri_food/kateisaien/2025/061/
大葉は肥料が不足すると葉が小さくなり、香りが薄くなるため「収穫物としての価値」が下がります。反対に、肥料を与えすぎると肥料やけを起こし、葉が丸まったり茶色くなったりして、生育が急に落ちることがあります。つまり大葉肥料は「不足も過剰もどちらも損失」で、農業経営ではここが一番のムダになりやすいポイントです。
肥料やけの原理はシンプルで、土壌溶液中の肥料成分濃度が高いと根が脱水状態になり、地上部へ水が上がらなくなって萎れや枯れにつながります。対処としては、施肥後に異常が出たらすぐ灌水して土壌溶液中の濃度を下げる、土をかき混ぜて肥料を分散させる、といった「濃度を下げる行動」が推奨されています。被害が大きい場合は植え替え・再播種なども選択肢になりますが、まずは初動で止血できるかが勝負です。
見分け方は、現場では次のように整理すると判断が速いです。
- 葉が小さくなる/香りが弱い:肥料不足の疑い(追肥遅れ、根の吸収低下など)
- 葉が丸まる/茶色化/先枯れ:肥料過多・肥料やけの疑い(濃度が高い、置き肥の局所高濃度など)
- 葉色が濃すぎる・茎葉が軟らかい:窒素過多を疑い、追肥を一旦止めて様子を見る
この「見分け」を徹底すると、追肥の判断が経験だけに依存しなくなり、担当者が変わっても品質が揺れにくくなります。
参考:肥料過多・不足のサイン(大葉の症状例を含む)
https://www.noukaweb.com/shiso-fertilizer/
参考:肥料やけの初動対応(灌水、混和で濃度を下げる等)
https://bsikagaku.jp/f-knowledge/knowledge51.pdf
検索上位の記事は「いつ・どれくらい」の説明が中心になりがちですが、現場で差が出るのは“肥料の効き方の設計”です。特に大葉は収穫期間が長く、追肥作業も繰り返すため、忙しい時期ほど「一度に入れすぎる」「雨前に入れて流す」「株元に寄せすぎて焼く」などの事故が増えます。そこで、緩効性窒素を活用して、追肥の山谷(効きすぎ・切れ)を小さくする発想が、作業性と品質の両面で効いてきます。
IBDU(イソブチルアルデヒド縮合尿素)は、分解(窒素放出)の速度が土壌水分に強く支配され、土壌種類・土壌pH・土壌温度の影響をほとんど受けない「安定性の良い緩効性窒素肥料」と説明されています。つまり、窒素供給が急になりにくく、追肥の“効かせすぎ事故”を減らす方向に働きます。さらに、尿素放出が非常に緩慢であることから、施肥後のアンモニア化成による急な土壌変化や障害リスクを下げる狙いも述べられています。
大葉に当てはめるなら、次のような使い分けが現実的です。
- 収穫が安定するまで:元肥+早めの追肥で立ち上がりを作る(速効寄りも活用)
- 収穫が回り始めてから:緩効性窒素を混ぜ、追肥の振れ幅を抑える(作業が遅れても急落しにくい)
- 真夏の高温・降雨が多い時期:速効一辺倒を避け、分割と緩効性で「焼き」と「流亡」を両方ケア
ここは資材コストとの相談になりますが、「施肥の失敗で落ちる収量・選別・クレーム対応」の隠れコストまで見れば、緩効性を一部に入れる価値は出やすいです。
参考:IBDU(イソブチルアルデヒド縮合尿素)の性質(分解速度、安定性など)
http://bsikagaku.jp/f-fertilization/IBDU.pdf