ブドウ晩腐病農薬の選び方と防除のポイント

ブドウ晩腐病対策で効果的な農薬選びと使用タイミングを解説。休眠期防除から生育期散布、物理的防除まで、収量減少を防ぐための総合的な対策をご存知ですか?

ブドウ晩腐病と農薬防除の基本

袋掛け後も晩腐病菌は侵入します。


この記事のポイント
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休眠期防除が収穫期発病を左右

越冬病原菌からの胞子形成を抑制することで、幼果期の感染を大幅に減少させることができます

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薬剤選択と耐性菌管理

ベンレート水和剤などの連用による耐性菌発生を防ぐため、異なる系統の薬剤をローテーション使用する必要があります

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落花期から7月が重要な防除時期

幼果期に感染した病原菌は長い潜伏期間を経て収穫期に発病するため、小豆大から大豆大の時期の薬剤散布が極めて重要です


ブドウ晩腐病とは何か



ブドウ晩腐病は糸状菌による病害で、主に成熟期の果房に甚大な被害をもたらします。病原菌はColletotrichum属の複数の菌種から構成される種複合体で、特に巨峰やピオーネといった大粒種品種で被害が深刻です。この病気の最大の特徴は、幼果期に感染しても すぐには症状が現れず、収穫が近づき果実の糖度が上昇する着色期以降に急速に発病することにあります。


感染した果粒は淡褐色の病斑から始まり、やがて墨がにじむような黒褐色の腐敗へと進行します。降雨時には鮭肉色の胞子塊を生じ、雨滴によって周囲の健全果に二次感染を引き起こします。


つまり発病果が多いということです。


収穫直前に降雨が多いと、たった数日で園地全体に蔓延し、出荷量を大きく減少させる恐れがあります。特に近年の気象条件下では発生が増加傾向にあり、令和6年には北海道の一部地域で収量が大幅に減少する被害が発生しました。


これは深刻ですね。


病原菌は結果母枝や巻きひげに潜伏して越冬し、翌春の降雨時に分生胞子を形成・飛散させます。平均気温が15℃以上になり降雨で枝が十分に濡れると胞子形成が始まり、6月から7月の雨期に最も盛んになるのが特徴です。発芽前防除が重要な理由は、この越冬伝染源を叩くことで後の感染を抑制できるためです。雨媒伝染性の病害であるため、物理的防除との組み合わせが防除成功の鍵となります。


ブドウ晩腐病に効果的な農薬の種類

現在、ブドウ晩腐病防除に使用できる農薬は複数の系統に分類されます。休眠期防除薬剤としては、ベンレート水和剤ベノミル系)が分生子形成抑制効果が高く、岡山県の試験では越冬伝染源上の分生子形成を顕著に抑制することが確認されています。同様にパスポート顆粒水和剤も休眠期散布で高い効果を示し、ベフラン液剤25の代替薬剤として推奨されています。


生育期散布では、セイビアーフロアブル20やゾーベックエニベル顆粒水和剤といった予防・治療効果を併せ持つ薬剤が重要です。これらは散布後に雨が降っても効果が持続しやすく、梅雨期の防除に適しています。特にセイビアーは袋掛け前の仕上げ散布として山梨県の生産者から高い評価を得ているとのことです。


実績がありますね。


マンゼブ剤(ペンコゼブ水和剤、ジマンダイセン水和剤)は予防効果に優れ、耐性菌発生リスクが低いため、QoI剤やベンゾイミダゾール系剤に対する耐性菌が発生した圃場での使用が推奨されます。ただし施設栽培では使用基準が制限されているため注意が必要です。また、デランフロアブルは幅広い病害に効果を示す保護殺菌剤として、防除体系の基礎となる薬剤です。各薬剤の特性を理解し、病害の発生ステージに応じて使い分けることが防除効果を高めます。


薬剤選択では、FRAC(殺菌剤耐性菌対策委員会)コードを確認し、同一系統の連用を避けることが耐性菌発生を防ぐ基本です。ベンレート水和剤は年1回の使用に留め、他系統の薬剤と組み合わせた防除を行うことが推奨されています。薬剤抵抗性は世界的な課題であり、日本でもブドウ晩腐病におけるベンゾイミダゾール系剤やQoI剤への耐性菌が各地で確認されています。適切なローテーション散布が長期的な防除成功には不可欠です。


岡山県農業研究所の発芽前防除薬剤試験結果(ベンレート水和剤とパスポート顆粒水和剤の効果データ)


ブドウ晩腐病の休眠期防除の重要性

休眠期防除は晩腐病対策の最重要ポイントです。発芽前に越冬伝染源上の分生胞子形成を抑制することで、6月以降の幼果への第一次感染を大幅に減少させることができるためです。農研機構の研究では、ベノミル水和剤200倍の休眠期散布により、収穫期の果実発病が無処理区と比較して顕著に少なくなることが実証されています。


散布適期は発芽前、具体的には4月下旬から5月上旬の芽の綿毛が見え始め青味が見えた頃です。この時期を逃すと薬剤が十分に樹体に浸透せず、また新芽への薬害リスクも高まります。薬剤散布前には必ず主幹の粗皮剥ぎを行い、越冬病原菌が潜む粗皮を除去した上で、樹体全体に薬液が十分かかるよう丁寧に散布することが重要です。


使用薬剤はベンレート水和剤200倍またはパスポート顆粒水和剤250倍が推奨されます。ベンレート水和剤は石灰硫黄合剤との同時処理が可能で、黒とう病・つる割病など幅広い病害を同時防除できる利点があります。一方、パスポート顆粒水和剤は石灰硫黄合剤と混用できないため注意が必要です。トクチオン水和剤と混用する場合は、薬液調整後すぐに散布しないと凝結する可能性があります。


使い分けが大切です。


ただし休眠期防除だけでは完全な防除は困難です。岡山県の調査では、休眠期防除を行っても6月以降の降雨により新たな感染が起こることが確認されています。休眠期防除は生育期防除の散布回数を減らし、防除効果を安定させる土台として位置づけ、その後の生育期防除、物理的防除と組み合わせた総合防除体系の構築が不可欠です。


ブドウ晩腐病の生育期における薬剤散布タイミング

生育期の薬剤散布で最も重要な時期は、落花期から落花後10日頃(果粒が小豆大から大豆大の頃)です。この時期は幼果への感染が最も起こりやすく、ここで感染した病原菌が2〜3ヶ月の長い潜伏期間を経て収穫期に発病します。山梨県の接種試験では、落花期以降に接種した場合、発病度が大きく増加することが明らかになっています。


6月上旬から7月下旬までが主要な感染時期とされ、この期間の予防散布が晩腐病防除の成否を分けます。特に梅雨期は胞子形成・飛散が最も盛んな時期であり、降雨前後の防除が重要です。散布間隔は通常10〜14日ですが、降雨が多い年や発病が多い圃場では7〜10日間隔に狭めることが推奨されます。


雨が続く時は要注意です。


薬剤は予防効果の高いマンゼブ剤や、予防・治療効果を併せ持つセイビアーフロアブル20、ゾーベックエニベル顆粒水和剤などを使用します。房にも十分量を丁寧に散布することが肝心で、散布むらがあると そこから発病が始まります。6月中旬頃は薬害が発生しやすい時期のため、気温に注意しながら散布します。


袋掛け直前の散布は特に重要です。袋掛け後は薬剤散布ができなくなるため、この時点で果房表面に病原菌を残さないようにすることが収穫期の発病を防ぐ最後の砦となります。岩手県の研究では、6月下旬から7月上旬の二次感染期から袋掛けまでに2〜3回の薬剤散布を行うことで、袋掛け後の晩腐病防除剤を省略できることが示されています。


これは経済的ですね。


7月下旬から8月上旬の散布は果房を汚染しやすいため、細霧とし噴口を果房から十分離して散布する工夫が必要です。収穫前は特に果実汚染に気をつけながら、各薬剤の使用基準(収穫前日数、使用回数制限)を厳守します。


ブドウ晩腐病防除における袋掛けと物理的対策

薬剤防除のみでは晩腐病を完全に防ぐことは困難です。物理的防除として袋掛けや簡易雨よけ、傘掛けを組み合わせることで、防除効果を飛躍的に高めることができます。佐賀県の研究では、袋の止め口を堅く締めた果房では晩腐病の発病房率が顕著に低下することが実証されています。


袋掛けで最も重要なのは、止め口を堅く締めて雨滴が袋内に流入しないようにすることです。止め口が緩いと降雨時に晩腐病菌を含んだ雨水が袋内に流入し、袋内で発病が進行します。感水紙を用いた試験では、止め口を緩く締めた袋では水滴の流入が確認されましたが、堅く締めた袋ではまったく流入しませんでした。針金を止め口の上部まできつく締めることが基本です。


これが防げます。


袋掛けの時期は6月下旬から7月中旬、摘粒作業後できる限り早く行うことが推奨されます。摘粒時の傷から病原菌が侵入しやすいため、作業後に時間を置かず袋掛けを完了させることが感染リスクを下げます。また降雨等で果房が濡れた状態で袋掛けを行うと、病原菌を袋内に閉じ込めることになるため、果房が乾いた状態で作業することも重要なポイントです。


大規模経営では袋掛け作業に多数の人を雇用することが多く、作業の丁寧さに個人差が出やすくなります。作業前に止め口を堅く締めることの重要性を全員に周知し、袋掛けの良し悪しを確認しながら進めることが、晩腐病発生を防ぐ上で欠かせません。


管理者の目配りが大切です。


簡易雨よけや傘掛けは、雨滴による病原菌の飛散を物理的に遮断する効果があります。茨城県の試験では、簡易雨よけと袋掛けを併用した区で平均発病度が5、防除価95と極めて高い防除効果が確認されました。梅雨期の降水量が多い年ほど効果は明確になります。傘掛けは6月下旬から7月上旬までに行うと高い防除効果が得られるとされています。


佐賀県果樹試験場の袋掛け方法と晩腐病発病の関係(止め口の締め方の重要性を示すデータ)


ブドウ晩腐病防除で知っておくべき耐性菌リスクと対策

薬剤を効果的に使い続けるためには、耐性菌の発生を防ぐ管理が不可欠です。ブドウ晩腐病菌では、ベンゾイミダゾール系剤(ベンレート水和剤など)やQoI剤(ストロビルリン系)に対する耐性菌が全国各地で確認されています。秋田県の調査では、ベンレート水和剤を連年使用した結果、低感受性菌株が検出され、効力低下のリスクが指摘されました。


岡山県の最新調査(令和6年)では、県内27圃場から採取した晩腐病菌のうち22.2%でベンレート耐性菌が検出されました。ただし平成24年の調査と比較すると発生圃場率は94.7%から22.2%へと減少傾向にあり、適切な薬剤管理により耐性菌を抑制できることが示されています。


減っているということです。


耐性菌対策の基本は、同一系統の薬剤を連用しないことです。ベンレート水和剤のような耐性菌発生リスクが高い薬剤は、単剤での使用を年1回に留め、FRACコードの異なる他系統薬剤とローテーション使用します。例えば、休眠期にベンレート水和剤を使用した場合、生育期はマンゼブ剤やフェニルアマイド系、QoI剤など異なる系統を組み合わせます。


圃場での発生状況を把握することも重要です。防除効果が以前より低下したと感じた場合は、都道府県の病害虫防除所や試験研究機関に相談し、薬剤感受性検定を依頼することができます。耐性菌の発生が確認された場合は、速やかに別系統の薬剤に切り替え、圃場内での耐性菌の蔓延を防ぎます。


早めの対応が肝心です。


新規薬剤の導入も選択肢の一つです。山梨県では殺菌剤ミギワ20フロアブルが晩腐病に高い効果を示すことが確認されましたが、耐性菌発生リスクは中〜高であるため、散布濃度は2,000倍とし連用を避けることが推奨されています。新しい薬剤でも耐性菌リスクは存在するため、導入時から適切な使用管理を行うことが長期的な防除効果の維持につながります。


日本植物防疫協会発行のブドウ晩腐病の発生生態と防除法(薬剤使用回数制限と耐性菌問題の詳細)




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