ベリーポップすずの特徴と栽培!農家が選ぶ炭疽病抵抗性と収量

ベリーポップすずの特徴である炭疽病への複合抵抗性や栽培メリットを農家向けに解説します。よつぼしとの比較や種子繁殖型の収量データも紹介。苗の導入で労働負担はどう変わるのでしょうか?

ベリーポップすずの特徴

ベリーポップすずの導入メリット
🛡️
複合抵抗性

炭疽病と萎黄病の両方に強い抵抗性を持ち、育苗期のリスクを大幅に低減します。

🍓
優れた輸送性

果実が硬く傷みにくいため、直売所や通販でのクレーム削減に貢献します。

🌱
省力化育苗

種子繁殖型(F1)のため親株管理が不要。育苗労働を劇的に圧縮できます。

ベリーポップすずの炭疽病と萎黄病への複合抵抗性


農業経営において、最も頭を悩ませる課題の一つが病害防除です。特にイチゴ栽培における「炭疽病(たんそびょう)」と「萎黄病(いおうびょう)」は、発生すれば苗の大量廃棄に直結し、翌シーズンの収量を決定的に損なう深刻なリスク要因です。ここで紹介する「ベリーポップすず(品種名:MYAGMIE-1)」の最大の特徴は、これら二つの難防除病害に対して「複合抵抗性」を持っている点にあります。


従来の主要品種の多くは、どちらか一方には強くても、両方に強い抵抗性を持つものは稀でした。例えば、「かおり野」は炭疽病には強いものの、他の病害への警戒が必要な場合があります。しかし、ベリーポップすずは、三重県と三好アグリテック株式会社の共同育成により、炭疽病および萎黄病の両方に対して「強い抵抗性」または「抵抗性」を有することが確認されています。これにより、高温多湿な日本の夏場における育苗管理の難易度が劇的に下がります。


具体的に、この複合抵抗性が農家の現場にどのような利益をもたらすかを深掘りします。


  • 農薬散布回数の削減: 予防的な殺菌剤の散布回数を減らすことが可能となり、薬剤コストの削減と労働時間の短縮につながります。これは「みどりの食料システム戦略」などで求められる減農薬栽培の流れにも合致します。
  • 歩留まりの向上: 育苗期間中の病気による欠株リスクが減るため、定植苗の確保が確実になります。計画通りの株数を定植できることは、経営の安定化に直結する重要な要素です。
  • 精神的負担の軽減: 雨よけ栽培や底面給水などの物理的防除を行っていても、夏のゲリラ豪雨などで感染が広がる不安は常につきまといます。品種自体が抵抗性を持っているという事実は、栽培者の精神的なストレスを大きく軽減します。

ただし、抵抗性があるからといって「絶対に感染しない」わけではありません。菌密度が高まれば発病する可能性は残るため、基本的な耕種的防除(罹病残渣の処分や排水対策)は継続する必要がありますが、万が一感染が発生した場合でも、蔓延速度が遅く、被害を最小限に食い止めやすいという現場の声も聞かれます。


以下のリンクでは、開発元である三好アグリテック株式会社が公表している、各品種の抵抗性評価や特徴が詳しく解説されています。


ベリーポップ すず - 三好アグリテック株式会社(品種の詳細スペックや抵抗性データが確認できます)
参考)ベリーポップ すず

ベリーポップすずの味と硬さ!よつぼしとの比較

新品種を導入する際、栽培のしやすさと並んで重要なのが「果実品質(食味・日持ち)」です。種子繁殖型イチゴのパイオニアである「よつぼし」と比較することで、ベリーポップすずの食味特性がより鮮明になります。市場評価を左右する「味」と「硬さ」について、具体的なデータと感覚的な特徴を解説します。


まず、味の傾向ですが、ベリーポップすずは「甘味が強く、酸味が少ない」という特徴があります。


  • 糖度: 12〜15度程度で安定しており、十分に高い甘さを感じられます。
  • 酸度: 「よつぼし」や「かおり野」と比較しても酸味が低く抑えられています。酸っぱいイチゴが苦手な子供や、甘さを重視する層からの評価が非常に高い品種です。
  • コク: 単に甘いだけでなく、イチゴ特有の濃厚な「コク」があります。果肉の中まで赤く染まるため、見た目のシズル感も食欲をそそります。

これに対し、「よつぼし」は甘味・酸味・風味のバランスが取れた「四つ星」級の美味しさが売りであり、適度な酸味が全体の味を引き締めています。対照的に、ベリーポップすずは「甘さへの特化」を感じさせる食味設計となっており、濃厚な甘みを好む消費者にダイレクトに訴求できます。


次に、流通における最大の武器となる「硬さ(果実硬度)」についてです。


ベリーポップすずの果実は、「よつぼし」よりも硬く、しっかりとした肉質を持っています。


  • 輸送性: 果皮が強く、果肉も緻密であるため、輸送中の振動や衝撃による傷み(うるみ)が発生しにくいです。これは、長距離輸送を前提とした市場出荷や、宅配便を利用するネット通販において極めて有利な特性です。
  • 棚持ち: 店頭に並んでからの劣化が遅く、鮮度が長持ちします。直売所では、午後に売れ残った商品を翌朝に見切り処分するケースがありますが、棚持ちが良ければ販売機会の損失(ロス率)を下げることができます。
  • 食感: 「サクッ」とした歯ごたえがあり、水っぽさがありません。ケーキのデコレーションやパフェなどの加工用としても、形が崩れにくく断面が赤くて美しいため、業務需要も見込めます。

以下のリンクでは、果実の断面や具体的な糖度などの特徴が写真付きで紹介されています。


ベリーポップ すず/ MYAGMIE-1 < いちご:旬の果物百科(果肉の赤さや断面の様子、食味の詳細レビューがあります)
参考)ベリーポップ すず/ MYAGMIE-1 < いちご:旬の果…

ベリーポップすずの種子繁殖型による栽培の省力化

「ベリーポップすず」は、F1種子(一代交配種)から育てられる「種子繁殖型イチゴ」です。これは、従来のランナー(栄養繁殖)で苗を増やす方式とは根本的に異なる栽培体系を可能にし、農家の労働環境を一変させるポテンシャルを秘めています。特に、イチゴ栽培で最も過酷とされる育苗期間の労働負担軽減について詳述します。


従来の栄養繁殖では、収穫終了後の春から夏にかけて親株を管理し、ランナーを伸ばして子苗、孫苗を確保する必要がありました。この期間は高温多湿であり、炭疽病などの病害リスクが最も高まる時期です。また、親株の管理スペースや潅水の手間、ランナー整理などの作業は膨大で、休む間もないのが実情でした。


一方、種子繁殖型であるベリーポップすずには以下の圧倒的なメリットがあります。


  1. 親株管理からの解放: 種子(種)からスタートするため、親株を維持・管理する必要が一切ありません。これにより、春から初夏にかけての労働時間をゼロに近づけることができ、農家の長期休暇の取得や、他の作物への労働力配分が可能になります。
  2. 病害の垂直感染リスクの遮断: 親株からランナーを通じて病気が次世代に伝染するリスクがありません。種子はクリーンな状態で供給されるため、ウイルスの持ち込みや、前作からの炭疽病の持ち越しをリセットした状態でスタートできます。「苗半作」と言われるイチゴ栽培において、健全な無病苗から始められるアドバンテージは計り知れません。
  3. 育苗期間の短縮とスケジュール管理: 必要な時期に種を播き、プラグトレイで育苗することで、育苗期間を大幅に短縮できます。セルトレイ苗を購入して定植する方法を選べば、育苗施設自体が不要になり、空いたハウスを別の用途に活用することも可能です。

さらに、ミヨシグループなどの種苗メーカーから「セル苗」の状態で供給を受ける体制が整いつつあります。農家は、定植時期に合わせて苗を注文するだけで済み、育苗という高リスクかつ高労働な工程をアウトソーシング(外部化)できるのです。これは、規模拡大を目指す法人農家や、新規就農者にとっても参入障壁を下げる大きな要因となります。


以下の資料は、三重県が公開している技術資料で、種子繁殖型品種の特性や抵抗性についての公的な試験結果が含まれています。


炭疽病および萎黄病に抵抗性をもつイチゴ種子繁殖型品種「MYAGMIE-1」(PDF)(三重県による公的な品種特性データと抵抗性試験の結果)
参考)https://www.pref.mie.lg.jp/common/content/001037012.pdf

ベリーポップすずの収量と収穫時期のデータ

農家にとって最も気になるのは、やはり「どれだけ獲れるのか(収量)」と「いつから獲れるのか(収穫時期)」でしょう。ベリーポップすずは、単に病気に強いだけでなく、興行的なパフォーマンスにおいても既存の主力品種に引けを取らない、あるいは凌駕するデータが出ています。


まず「収穫時期」についてです。


ベリーポップすずは「極早生(ごくわせ)」に近い早生性を持ち、花芽分化が早いため、促成栽培において年内収穫(11月下旬〜12月)が可能です。


  • クリスマス需要への対応: イチゴ単価が最も高騰する12月のクリスマス商戦に、一番果のピークを合わせやすいという特性があります。この時期に安定して出荷できることは、シーズンの総売上を大きく押し上げます。
  • 連続出蕾性: 一番果房が出た後の二番、三番果房の上がりがスムーズで、収穫の中休み(端境期)が短い傾向にあります。これにより、シーズンを通して途切れのない出荷が可能となり、契約販売や直売所での顧客維持に有利に働きます。

次に「収量性」についてです。


草勢(株の勢い)が非常に強く、連続して花を咲かせるスタミナがあります。


  • 総収量: 三重県の試験データや各地の現地試験では、「よつぼし」と同等、あるいは条件によってはそれを上回る多収性が報告されています。特に、厳寒期(1月〜2月)でも草勢が落ちにくいため、果実の肥大が良く、L〜2Lサイズの大玉比率が高くなる傾向があります。
  • パック詰め効率: 果形がきれいな円錐形で揃いやすいため、パック詰め作業の効率が良いのも隠れたメリットです。乱形果が少ないことは、秀品率(A品率)の向上に直結し、選果労働時間の短縮にも貢献します。

注意点としては、草勢が強すぎるがゆえに、窒素過多になると「チップバーン(葉先枯れ)」や「奇形果」が発生するリスクがある点です。しかし、これは施肥設計を適切に管理(やや控えめにする等)することでコントロール可能です。また、電照栽培(長日処理)への反応も良いため、厳寒期の草勢維持にはLED補光や電照が有効です。


以下のリンクは、種子繁殖型イチゴの栽培技術に関する公設試の研究成果です。セル苗の直接定植技術など、収量確保のための具体的な技術指標が示されています。


イチゴ種子繁殖型品種のセル苗本圃直接定植技術(宮城県)(種子繁殖型品種の具体的な栽培カレンダーや収量データが参照できます)
参考)https://www.pref.miyagi.jp/documents/52206/r05gijutu04.pdf

ベリーポップすずの硬さを活かした直売所戦略と棚持ち

最後に、ベリーポップすずの「硬さ」という物理的特性を、どのように経営戦略に組み込むかという独自の視点で解説します。多くの農家ブログや種苗会社のパンフレットでは「輸送に強い」という記述にとどまりがちですが、この「硬さ」は直売所経営やeコマース(産地直送通販)において、利益率を直接左右するパラメーターになります。


昨今の農業経営では、市場出荷だけでなく、メルカリShopsやポケットマルシェ、食べチョクといった「BtoCプラットフォーム」を活用する農家が急増しています。ここで発生する最大のリスクが「配送中の事故」です。完熟イチゴは非常にデリケートで、到着時に果汁漏れや潰れがあると、即座に返金対応や代替品発送を迫られます。これは送料や箱代が無駄になるだけでなく、レビュー評価の低下を招き、ブランド毀損につながります。


ベリーポップすずは、果皮が硬く弾力があるため、この「配送リスク」に対する耐性が極めて高い品種です。


  • 完熟出荷が可能: 柔らかい品種では、輸送リスクを避けるために7〜8分着色で収穫せざるを得ない場合がありますが、ベリーポップすずなら、糖度が最高潮に達した「完熟状態」で収穫しても、輸送に耐えうる硬度を維持できます。「完熟で届く」という付加価値は、通販において最強の武器になります。
  • 直売所での廃棄ロス削減: 直売所やスーパーのインショップ形式では、消費者がパックを手に取って確認するため、その過程で傷みが生じることがあります。また、夕方まで売れ残った場合、翌日には劣化して廃棄せざるを得ない品種も多い中、ベリーポップすずは翌日でも商品価値を保ちやすい(棚持ちが良い)ため、廃棄率を数%単位で改善できる可能性があります。売上の5%が廃棄されていた場合、その5%がそのまま純利益に転換されるインパクトは絶大です。

また、硬い果肉は「冷凍イチゴ(フローズンベリー)」や「ドライフルーツ」への加工適性も高いことを示唆しています。解凍後のドリップが出にくい、乾燥しても形が崩れにくいといった特性は、B級品や規格外品を6次産業化商品として高単価で販売する際の強みにもなり得ます。


このように、「硬さ」という単純な物性を、「通販でのクレーム対策」や「廃棄ロス削減」、「完熟ブランディング」という経営課題の解決策として捉え直すことで、ベリーポップすずは単なる新品種以上の価値を農家にもたらす戦略的ツールとなります。


種子繫殖型イチゴの開発と事業展開 - ミヨシグループ(開発背景や今後の種子繁殖型イチゴの展開ビジョンについて)
参考)種子繫殖型イチゴの開発と事業展開




ドリームガールズ