タンポポやハコベを敷くと、作物の生育を阻害する物質が溶け出して収量が落ちます。
畑で長年使われてきたビニールマルチの代わりに、刈り取った雑草を畝の上に敷いて土を覆う農法が「雑草マルチ」です。地表を覆うという目的は同じでも、ビニールマルチには「使い終わったら廃棄する」というコストと手間が発生します。一方の雑草マルチは、畑のまわりに生えている草をそのまま資源として転換できる点が大きな違いです。
ビニールマルチが得意とするのは、地温を上げる効果と雑草を強力に遮断することです。ただし夏場は地温が上がりすぎて根傷みの原因になることもあります。雑草マルチは通気性があるため過湿になりにくく、地温が極端に上がったり下がったりする変動を抑えてくれます。つまり、温度管理の観点では雑草マルチの方が安定しているといえます。
さらに、雑草マルチが最も優れているのは「敷きながら土づくりができる」点です。敷いた草がミミズや微生物に分解されることで、有機物として土に還元されます。マイナビ農業の記事によれば、春から秋にかけて半年間丁寧に行うだけで土が団粒化してフカフカになっていくと報告されています。団粒化とは、土の粒子がだんご状に集まって適度な空隙ができた状態で、根が伸びやすく水はけと保水性が同時に高まります。つまり野菜を育てながら同時に土壌改良が進むということです。
ビニールマルチとの比較を整理すると、以下のような違いがあります。
| 項目 | ビニールマルチ | 雑草マルチ |
|------|-------------|-----------|
| コスト | 毎年購入が必要 | ほぼゼロ(畑の草を活用) |
| 地温 | 上がりやすい(夏は過熱のリスク) | 安定しやすい |
| 通気性 | 低い(過湿になりやすい) | 高い |
| 土壌改良 | なし | 有機物補給・団粒化が進む |
| 廃棄 | プラスチックごみになる | 自然分解される |
地温の安定が条件です。この点において雑草マルチはビニールマルチを上回ります。
参考:マイナビ農業「敷くだけで土が良くなる!雑草マルチのススメ」
https://agri.mynavi.jp/2021_05_13_157053/
雑草マルチの効果を左右する最重要ポイントが、「どの草を選ぶか」です。ここを間違えると、土づくりどころか作物の生育を妨げてしまう可能性があります。
まず積極的に使いたいのがイネ科の雑草です。ススキ、カヤ、ヨシ、チガヤ(夏に採取)、イヌムギ、ネズミムギ(冬〜春に採取)などが代表例です。イネ科雑草は葉が細長く水分量が少ないため、敷いた後に乾燥しやすく長期間土を覆ってくれます。また分解に時間がかかる(炭素率が高い)ため、マルチ材として長持ちします。これがイネ科を選ぶ理由です。
一方、避けた方がよい草があります。タンポポ、ハコベ、ホトケノザ、シロツメクサなど葉脈が網状になっている「広葉雑草」、特に多年草のものは要注意です。これらが持つアレロパシー(他感作用)という性質により、茎葉が分解される過程で放出される化学物質が作物の生育を妨げることがあります。また、多年草の広葉雑草は茎の一部から根を出す「栄養繁殖」の機能を持つため、圃場に持ち込むと逆に雑草が増えるリスクがあります。
ツユクサやメヒシバのような「ほふく性(地を這う)雑草」も同様です。地上部だけ刈っても茎から根が出てなかなか枯れないため、畝の上で再び発根してしまうことがあります。これらを使う場合は、野菜の株元から離れた畝の端や通路に限定して敷くのが安全です。
使える草が周りにない場合は、イネ科の緑肥作物(ソルゴー、エン麦など)を畑の周囲に植えて、その地上部を繰り返し刈り取って活用する方法もあります。コストをかけずに安定したマルチ材を確保できる方法です。これは使えそうです。
なお、種がついた草を使うのも避けましょう。種のついた草はマルチ材としての養分が少ないうえ、畑に余分な雑草の種を持ち込む原因になります。刈り取るタイミングは「穂が出る前、開花前」が理想です。
参考:カクイチ「雑草マルチの注意点。マルチ材に向かない雑草について」
https://www.kaku-ichi.co.jp/media/crop/earth-building/precautions-for-weed-mulch
実際の作業手順は「刈る→切る→敷く→押さえる」の4ステップです。シンプルですが、各工程に守るべきポイントがあります。
① 草を刈る
鎌やネジリ鎌を使って、地上部のみを刈り取ります。根は残したまま地際で刈るのが基本です。根を掘り起こすと土が崩れて固まってしまうため、地表から数センチ上を刈るイメージで進めましょう。草刈り機(刈払機)を使う場合は、細かく粉砕できるタイプだと後工程の手間が省けます。
② 長い草は20〜30cmに切る
長いまま敷くと通気性が悪くなり、下の方が蒸れてカビや害虫の温床になりやすいです。目安として20〜30cm程度(はがきの長辺くらいの長さ)に切り揃えると、隙間なく均一に敷き詰めやすくなります。
③ 畝に敷き詰める(厚さ3cm程度)
土が完全に見えなくなるまで敷き詰めることが必要です。厚さの目安は3cm程度。これは指を立てて第一関節の先端ほどの厚さです。土が一か所でも見えていると、そこから雑草が発芽したり、土の乾燥が始まります。
ここで一点注意が必要です。3cmの厚さで圃場全面をカバーするには、その圃場の面積の2〜3倍の草地が必要になります(農業専門家・伊藤幹二氏による解説)。10㎡の畑なら20〜30㎡分の草が要ることになります。草の量が足りないと中途半端に敷くことになり、逆に雑草が集中して発芽しやすくなります。草の量は確保してから始めましょう。
④ 手でしっかり押さえる
敷いた草が浮いたままだと風で飛びやすく、野菜の周囲の通気性も悪くなります。敷いた後は手で全体を押さえて、土と草がなじむようにしましょう。慣れてくると、保湿された土と草がなじみ合って多少の風では飛ばなくなります。
株元への敷き方は少し工夫が必要です。野菜の株元から10cmほど離して敷くのが基本です。株元に密着させると湿度が高まりすぎてナメクジや害虫の隠れ場所になります。株元は風通しを良くするために薄めに、またはあえて敷かないほうが安全です。
参考:AGRI JOURNAL「草をマルチにした場合の効果と留意点(伊藤幹二氏解説)」
https://agrijournal.jp/production/65994/
雑草マルチをやり始めた農家が最初につまずきやすいのが、虫の増加問題です。保湿効果の高い草マルチは、同時にナメクジやダンゴムシにとって「快適な隠れ家」にもなります。これは知らないと損する情報です。
実際に自然農実践者の報告では、草マルチを畑全面にびっしり敷いたところ、数百匹規模でダンゴムシとナメクジが発生し、播いた種や苗がことごとく食べられてしまったケースがあります。特に雑草がない砂質の土で全面マルチをすると、虫の天敵となる生き物がいないため、被害が集中しやすいのです。
対策の基本は3つあります。
- 全面に敷かない:株元や必要な箇所だけに限定して敷く。畝間は薄めに、または敷かないという選択もある。
- 梅雨時期は特に注意:湿った草を株元の近くに敷くと蒸れてカビが発生しやすい。梅雨の時期は畝の端に寄せるか、乾燥させた草を使う。
- 天敵が育つ環境を整える:ダンゴムシを食べるカエルやクモが生息しやすい環境にすることで、自然界のバランスが保たれやすくなる。
刈り草マルチは有機物が未分解の状態のため、腐敗が進む過程でナメクジの好む温床になりやすいという特性があります。これが原因です。対策として、ある程度乾燥させた草(枯れ草)を使うと発生を抑えやすくなります。
ナメクジが既に多い圃場では、草マルチの量を抑えつつ木酢液を株元周辺に希釈散布する方法が有効です。木酢液は忌避効果があり、有機農業でも広く使われています。コーヒーかすを株元に散布する方法も、カフェインがナメクジの神経に毒性を示すため一定の効果が期待できます。いずれも化学農薬を使わずに対処できる点が農業従事者には使いやすいところです。
虫の増加は雑草マルチの欠点ではなく、「やり方の問題」であることがほとんどです。全面ではなく必要な場所に適量を敷く、という原則を守れば問題ありません。
雑草マルチが単なる「草を敷く」行為以上の価値を持つ理由は、土壌に対して複数の改善効果が同時に起きるからです。その仕組みを理解すると、なぜ半年続けるだけで畑が変わるのかが見えてきます。
まず「雨滴による土壌破壊の防止」という効果から始まります。雨粒が裸の土に直接当たると、土壌粒子がバラバラに砕けて表面が泥状になり、乾燥すると固化します。これが繰り返されると、土が硬く締まって根が伸びにくくなります。草マルチが地表を覆うことで雨滴の衝撃が緩和され、土の構造が守られます。これが第一の効果です。
次に「微生物の活性化と団粒化」が起きます。敷いた草にはミミズ、ダンゴムシ、糸状菌などの多様な微生物や小動物が集まり、有機物の分解が進みます。この分解物が腐植となって土の粒子を結びつけ、団粒構造を形成します。団粒化した土はスポンジのように適度な空隙を持ち、根が伸びやすく、水はけと保水性が同時に高まります。団粒化が目標です。
「水分調整」効果も見逃せません。雑草マルチを敷くと日光が直接土に当たらなくなるため、土の水分蒸発が緩やかになります。一方で雨が降っても草がクッションになるため、過剰な水分が畝に集中することが減ります。乾燥を防ぎながら過湿も防ぐ、この二面性が野菜の生育安定につながります。
「栄養の循環」という観点も重要です。雑草は土壌から養分を吸い上げて成長しています。それを刈り取って敷くことで、養分が土に戻っていくサイクルが生まれます。焼却や廃棄してしまえば養分は減り続けますが、草マルチにすることで高い割合で循環させることができます。翔栄ファームの実践報告では、同じ種を同じ時期に植えた場合、雑草マルチを敷いた畝と敷いていない畝で作物の背丈が2倍以上異なるという具体的な結果が示されています。
半年間継続することが条件です。短期間だけでは土が変わったと感じにくいですが、春から秋にかけて丁寧に続けることで、肉眼でわかるほど土の色・質感・匂いが変わってきます。翌年の秋冬野菜の収量にも好影響が出ることが多いので、結果を見る目安として「半年後の秋冬作」を設定しておくとよいでしょう。
参考:翔栄ファーム「今まで捨てていた雑草を、メリットだらけの資源に変える循環型農法」
https://syouei-farm.net/nojo/20230825/
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