園試処方 作り方で失敗を防ぐ肥料設計入門

園試処方 作り方の基本から誤解されやすい希釈計算とEC管理まで、損失を出さないための実践ポイントを整理します。どこで失敗しやすいのでしょうか?

園試処方 作り方と養液栽培の基本

絶対に自己流の目分量で園試処方を作らないでください。


園試処方の作り方と失敗しないポイント
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A液B液分けと正確な計量

MgSO₄やKNO₃、Ca(NO₃)₂などをA液・B液に適切に分け、1,000L当たりのグラム数を守ることが、塩類の析出や欠乏を防ぐ第一歩です。

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ECと窒素量で見る設計

園試処方はEC1.0で全窒素約100ppmになるバランスが標準です。単なる倍率ではなく、必要量から逆算して調整する考え方が重要です。

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「希釈倍率」の落とし穴

500倍・1,000倍などの表示を鵜呑みにすると、1平方メートルあたりの施肥量が大きくズレることがあります。必要量ベースで計算し直すことが事故を防ぎます。

園試処方 作り方の基本A液B液の分け方

園試処方の作り方で最初に押さえたいのが、A液とB液を分けて調製するという基本構造です。
一般的な園試処方では、A液に硫酸マグネシウム(MgSO₄)や硝酸カリウム(KNO₃)、リン酸アンモニウム(NH₄H₂PO₄)などを溶かし、B液には硝酸カルシウム〔Ca(NO₃)₂〕を溶かす形が採用されています。
同じタンクで一気に溶かしてしまうと、カルシウムとリン酸・硫酸が反応して沈殿を生じ、見た目には透明でも栄養が欠けた養液になることがあります。
この分離は、1,000Lタンクであれば、例えばKNO₃を数キログラム単位で溶かすような、かなり濃いストック液を安全に扱うための工夫でもあります。
A液とB液を別々に濃縮しておき、使用時に同量ずつ自動混合する装置を使えば、毎回の手作業ミスを減らせます。つまり分けて作ることが基本です。
園試処方のオリジナルでは、1,000L当たりの標準配合(g/t)が細かく決められており、多くの市販配合肥料はこの数値をベースに設計されています。agriworks+1
例えば、EC1.0付近で窒素全量およそ100ppm、カリウムやカルシウムはそれぞれ約8me/Lというように、バランスが取られています。agriworks+1
これを独自にいじる場合でも、N・P・K・Ca・Mgの比率は大きく崩さないのが無難で、少しの変更はppm単位で行うと、リスクを抑えられます。jgha+1
濃度計算が不安な場合は、園試処方に準拠した二液式配合肥料を採用し、まずはその推奨ECを守るのが現実的です。結論は既存配合を軸に考えることです。


園試処方を自作する際の注意点として、ストック液の総量と溶解限界があります。youeki+1
例えば、1LのA液に十数百グラム単位で肥料を溶かす場合、温度が低いと一部が溶け残って底に沈んでしまい、濃度が安定しません。


参考)https://youeki.jp/hydro_backNO/pdf/2-2_085.pdf


この状態で「よく振ったつもり」で使うと、日によって給液濃度が変動し、EC管理ができていても、実際には特定要素が過不足になることがあります。agriworks+1
暖かい場所で溶かす、攪拌時間を十分に取る、溶け残りがないかを毎回確認する、といった現場レベルのチェックが結果を左右します。攪拌の徹底が条件です。


園試処方 作り方とEC・窒素ppmの考え方

園試処方は、単に「〇倍に薄める」処方ではなく、ECと窒素ppmを揃えるための基本レシピとして位置付けられています。
代表的な説明では、園試処方の給液EC1.0で全窒素(アンモニア態窒素硝酸態窒素)は約100ppmになり、「EC×100≒全窒素ppm」という目安で運用できるとされています。
これは、EC1.5なら窒素150ppm前後、EC0.8なら窒素80ppm前後というイメージで、作物の生育段階に応じてECを上下させると、ほぼ比例して窒素供給量も変わるという考え方です。
実際には他のイオンも含まれるため厳密な比例ではありませんが、現場で「今日は少し攻めたい」「逆に控えたい」と判断する際の指標として便利です。つまりECと窒素は連動します。
一方で、ボトル肥料のラベルにある「500倍」「1,000倍」といった表示だけを頼りにしていると、1平方メートルあたりの窒素量が大きくズレるリスクがあります。


参考)[574]肥料の希釈は倍率ではなく必要量で考えましょう


ある解説では、1㎡に原液で1mLの肥料が必要な場面で、ジョウロ1Lの水に1mL入れて撒くと、希釈倍率は1,000倍になりますが、もし2Lの水に同じ1mLを入れて広い面積に撒くと、栄養が足りなくなる例が示されています。


このように、同じ「1,000倍」でも、散布水量や面積が変わると、実際に作物に届く原液量が変わってしまうのです。倍率だけ覚えておけばOKではありません。


園試処方をベースに考える場合、「EC1.0で窒素100ppm」という指標を一つの軸にして、作物ごとの適正窒素量(例えば葉菜類なら80〜120ppmなど)を意識すると、ムラの少ない施肥がしやすくなります。jgha+1
ECメーターを使ったチェックも重要です。


参考)水質分析


タンクの水が1,000Lで、園試処方の標準量を溶かしたのにECが0.7しかない場合、どこかの肥料を入れ忘れている可能性があります。kaneyama+1
逆にECが1.5を超えているのに、予定よりも肥料量が少ない場合は、原水の硬度や既存の塩類が影響していることが多いです。


その場合は原水の水質分析を行い、園試処方の組成からカルシウムやマグネシウムを減らすなどの調整が必要になります。水質分析で原因を確認すれば大丈夫です。


水質分析 | アグリワークス株式会社(園試処方の組成バランスと水質補正の考え方の参考)
水質分析

園試処方 作り方と希釈計算の落とし穴

園試処方のストック液や農薬を扱う現場で、多くの人がつまずくのが「希釈倍率」の計算です。
希釈倍率の一般式は、必要薬量(gまたはmL)=作る希釈液の量(L)÷希釈倍率(倍)×1,000で、例えば1,000倍で10L作るなら、10L÷1,000×1,000=10mLとなります。
タンク容量500mL・1L・3L・5L・10Lなどごとに、100倍・300倍・400倍などの早見表を用意しておくと、散布時の「暗算ミス」を減らせます。
このとき、「タンクが8Lだから、1Lのときの表を8倍にすればいい」といったざっくり計算を現場でやると、忙しい時ほど1桁間違えが起きやすいのが実情です。厳しいところですね。
肥料に関しては、希釈倍率よりも単位面積当たりの必要量で考えることが推奨されています。


ある解説では、「肥料や微量要素、栄養剤は1㎡あたりの原液必要量を決めてから、それを水で薄める」という順序で考えるべきと説明されています。


例えば、1㎡あたり原液5mLが必要なら、ジョウロ1Lを5Lに変えても、必ず「1㎡に5mL」が届くように、散布範囲と水量の組み合わせを調整するわけです。


園試処方のストック液でも同様で、「EC1.0で窒素約100ppm」を基準に、ベッドの面積や灌水回数から、1日あたり何ppm供給するかを設計する方が合理的です。結論は必要量ベースで考えることです。


農薬に関しては話が別で、「希釈倍率を厳守する」ことが法律やラベルで求められています。s-boujo+2
同じ希釈倍率でも、散布量が少なすぎると病害虫防除効果が落ち、多すぎると薬害や残留の問題が出るため、農薬希釈早見表や計算アプリを使って、毎回同じ条件を再現することが重要です。ohtashp+1
また、散布するノズル動噴の吐出量の違いでも、実際に葉面に付着する量が変わるため、1反あたりどれくらい水を流しているかを事前に計測しておくと精度が上がります。


参考)【農薬】混ぜ方・作り方「希釈倍率早見表」&「計算アプリ」


スマホの希釈計算アプリや、自作のExcelシートを使って、「タンク容量」「希釈倍率」「散布面積」を入れれば薬量が出る仕組みにしておけば、属人的な計算ミスを減らせます。これは使えそうです。


【農薬】混ぜ方・作り方「希釈倍率早見表」&「計算アプリ」(希釈倍率とタンク容量計算の具体例の参考)
【農薬】混ぜ方・作り方「希釈倍率早見表」&「計算アプリ」
農薬希釈早見表 面積換算表(希釈倍率と薬量計算式の参考)
https://www.s-boujo.jp/kihon/file/14sonota/1411.pdf

園試処方 作り方と市販配合肥料・アプリの活用

園試処方は1960年代に整理された均衡培養液の処方で、多くの配合肥料メーカーがこの組成を基準に商品設計を行っています。
鐘山グリーンテックの資料でも、園試処方をベースに、各イオンのg/t(1,000L当たりのグラム)を記載し、それに準じた「汎用銘柄」が作られていると説明されています。
このため、原料単肥を揃えて自分で配合するよりも、まずは園試処方準拠の二液式肥料や、EC指定で給液できる配合肥料を使った方が、誤配合によるリスクを大きく減らせます。
自前調合は、基本を理解したうえで、既存配合の微調整に使うステップと考えるのが現実的です。つまり既製肥料の活用が基本です。
さらに、ECとpHの自動制御装置や、スマホ連携の施肥管理アプリを組み合わせることで、「園試処方をベースにした独自レシピ」をデータで管理することも可能です。jgha+1
例えば、EC1.2・pH5.8を目標に設定し、原水の硬度やアルカリ度を測定したうえで、硝酸やリン酸でpHを調整し、その分のイオンを園試処方から引き算していく手順が紹介されています。


参考)https://jgha.com/wp-content/uploads/2019/11/TM06-11-27osaka_wada_01.pdf


この計算を手書きで行うのは負担が大きいので、Excelや施肥管理アプリにロジックを組み込んで、「原水データを入れたら自動で補正式が出る」ようにしておくと、場内で誰でも同じ配合が再現できます。jgha+1
ITに不慣れなスタッフには、印刷したレシピとチェックシートを渡し、「日にち・EC・pH・タンク残量」を毎回書き込んでもらう形にすると、トラブルの早期発見にもつながります。記録管理が原則です。


水質分析や園試処方の計算方法 | 鐘山グリーンテック(園試処方とg/t計算の参考)
https://www.kaneyama.co.jp/image/technical_data/technical_sheet_04.pdf

園試処方 作り方と「独自レシピ」で差をつける視点

最後に、検索上位ではあまり語られない、園試処方の「独自レシピ化」の考え方を見てみます。
園試処方は汎用型で、多くの作物に適用できる反面、特定の作物や生育ステージに最適化されているとは限りません。
例えば、果菜類の開花・結実期には、窒素をやや抑えてカリウムを増やす、葉菜類の初期成育には、アンモニア態窒素を少し増やして立ち上がりを良くする、といった微調整が有効な場合があります。
ただし、こうしたチューニングは「EC1.0で窒素100ppm」などの基準を守りつつ、イオンごとの割合を10〜20%の範囲で動かす程度にとどめるのが安全です。つまり園試処方はベースです。
園試処方培養液における各養分濃度の資料では、NO₃-Nが16me/L、NH₄-Nが1.3me/L、Kが8me/L、Caが8me/L、PO₄-Pが4me/L、Mgが4me/L、SO₄-Sが4me/Lという標準組成が示されています。


ここから例えば、カルシウムを10%増やして8.8me/Lにし、マグネシウムを10%減らして3.6me/Lにする、といった小さな変更であれば、全体バランスは大きく崩れません。


こうしたパターンを数種類作り、圃場ごと・季節ごとに切り替えてみて、収量や品質、病害発生状況を記録すると、自分の農場に最適化された「園試処方アレンジ」が見えてきます。agriworks+1
変更した配合と結果をノートや表計算ソフトで蓄積することが、長期的な競争力の差につながるポイントです。いいことですね。


大阪府立大学 植物工場研究センター資料(園試処方成分組成とpH補正の具体例の参考)
https://jgha.com/wp-content/uploads/2019/11/TM06-11-27osaka_wada_01.pdf
最後に一つ質問です。


園試処方を使いたい場面は、土耕の追肥でしょうか、それとも完全な養液栽培ロックウールや水耕など)でしょうか?