ニラの肥料を一言で言うなら、「葉を作る窒素(N)を切らさず、株をもたせるカリ(K)を落とさない」設計が基本です。
ニラは刈り取り(収穫)を繰り返すため、葉の再生に必要な養分=窒素の比重が高く、「葉肥」と言われる理由もここにあります。
一方で、リン酸(P)は“必要ない”わけではありません。根の働きや初期生育に関わり、しかも土壌中で移動しにくい性質があるため、基本は元肥で入れておくのが合理的です。
参考)ニラ栽培 肥料の与え方の基本とおすすめの肥料
加えて、カリは吸収量が多く、作物が必要以上に吸ってしまう(贅沢吸収)ことがあるので、窒素と同様に分施(複数回に分ける)を意識すると設計が安定します。
ここで「ニラの肥料は何を選べばよいか?」に戻ると、現場での選択肢は大きく3つです。
「意外と見落としがち」なのは、有機質肥料の効き方が季節で変わる点です。冬は肥効が出るまで10〜20日以上かかり、夏は油かす類でも施肥後2〜3日で効き始め1週間ほどでピークになり得る、とされています。
つまり、同じ“有機”でも、低温期に追肥的に使うと効く前に欲しい時期を外すことがあり、時期により化成や液肥に寄せる判断が現実的になります。
ニラの施肥で遠回りを減らすなら、最初に土壌pHの目安を押さえます。ニラはpH6.0〜6.5程度が目安として示されており、酸性に傾く圃場では苦土石灰などで調整します。
pHが合わないと、肥料成分が土に固定されたり吸われにくくなったりして、「入れているのに効かない」状態になりやすいので、施肥量をいじる前に土の条件を整える方が再現性が出ます。
土づくりでは堆肥の扱いが重要です。ニラは同じ場所で年数をかけて育てるケースが多く、有機物が土の構造や根張りを支えるため、元肥の段階で堆肥を入れて土台を作る考え方が紹介されています。
また、堆肥は“入れれば入れるほど良い”ではなく、堆肥由来成分も肥料として効くため、施肥設計では堆肥由来の窒素・リン酸・カリを差し引く必要がある、という整理が公的資料でも述べられています。
意外な落とし穴として、堆肥の炭素率(C/N)が高い(20以上)場合、窒素を固定して作物に効きにくくなる点が挙げられています。
「ニラが黄ばんだから追肥を増やす」ではなく、「堆肥の質で窒素が一時的にロックされていないか」を疑うと、無駄な追肥やEC上昇を避けられます。
もう1つ、施肥設計の現場感が出る指標がECです。資料ではpHとECから土壌の状態を大まかに推測し、ECが高い場合は元肥を補正(減らす)する目安があると示されています。
ニラは追肥回数が増えやすい作型なので、ECの積み上がり(塩類集積)を疑う癖を持つと、肥料コストだけでなく障害リスクも抑えられます。
施肥量は地域・作型・土壌で変えるのが前提ですが、目安がないと設計できないので、まずは「基準」を知ってから自分の圃場へ落とし込みます。
例えば、ニラの施肥量について、10a当たり成分量で窒素48kg・リン酸20kg・カリ35kg程度が目安として紹介されており、窒素を多く必要とする(葉肥)作物という位置づけが明確です。
さらに別の資料では、促成栽培で目標収量8t/10aに対し、元肥と追肥合計で窒素85kg・リン酸30kg・カリ65kgという例が示され、収量1kg当たり窒素約10gなどの換算まで触れられています。
参考)ニラ栽培の動向と潅水施肥管理について - ゼロアグリ
この「収量当たりの施肥」の見方は、規模が大きいほど効いてきます。収量が伸びた年に“いつもの施肥”を続けると不足し、逆に収量が落ちた年に“いつもの施肥”を続けると余りやすい、というブレの理由が説明しやすくなるからです。
公的な施肥基準(県の基準例)では、ニラ(ハウス促成栽培)で元肥と追肥の時期別に、窒素・リン酸・カリの成分量が提示されています(例:元肥、9月中旬追肥、11月〜4月の追肥など)。
ここから読み取れる実務的ポイントは、リン酸は元肥と早い追肥で確保し、収穫期を含む期間は窒素とカリで草勢を切らさない設計になっていることです。
施肥量を現物(kg)に落とすときは、成分%で割り戻します。資料には例として、土壌中の無機態窒素量を見て元肥窒素量を差し引き、8-8-8肥料の施肥量(現物)を計算する考え方が示されています。
つまり「ニラの肥料は何?」の答えは銘柄名よりも、(1)土壌診断、(2)成分設計、(3)時期配分、(4)現物換算、の順で決まる、と理解するとブレにくいです。
実務でありがちな事故は「一度にドカンと速効性を入れる」ことです。速効性肥料は濃度障害を起こしやすく、少量を分けて施す分施が有効だと整理されています。
また、追肥は葉焼け防止のため「晴天で露のない時や降雨直前に行う」など、施用条件に触れている資料もあり、同じ施肥量でも“やり方”で差が出ます。
参考)https://www.maff.go.jp/j/seisan/kankyo/hozen_type/h_sehi_kizyun/attach/pdf/aki3-6.pdf
追肥のタイミングをカレンダーで丸暗記すると、天候や生育のズレに弱くなります。ニラでは特に「収穫で葉を失った後、次の葉を伸ばす期間」に追肥の意味が集中します。
県の基準例でも、ハウス促成で元肥後に9月中旬の追肥、その後11月〜4月に追肥(窒素・カリ中心)を入れる設計が示され、草勢維持を重視しているのが分かります。
追肥に何を使うかは、圃場条件で変えます。プランターなど臭いが問題になる場合は有機配合肥料を使い、追肥は水やり代わりに液体肥料という提案もあり、資材の性格に合わせた運用が紹介されています。
施設や連作でリン酸が集積している土では、pH・ECだけでは判断できないことがあり、必要に応じて交換性加里などの分析も視野に入れるべき、と公的資料で注意されています。
ここが独自視点ですが、ニラの追肥は「量」より「回復の質」を見ると上達が速いです。具体的には、追肥後に“葉色が濃くなるか”だけでなく、“次の刈り取りまでの葉の伸びが揃うか”“刈り取り後の立ち上がりが鈍くなっていないか”で判断します(揃いが悪いと、実は根域の問題=pH・過湿・堆肥の質・塩類などが原因で、追肥増量が逆効果になることがあるためです)。
参考)【プロ農家向け】ニラの栽培方法とおすすめ肥料・農業資材
さらに、有機質肥料は高温期に急激に分解してガス障害を起こす恐れがある、とされているため、「夏場の追肥は速効性を小分け」「有機を溝に集中させすぎない」などの工夫が安全側になります。
最後に、現場で迷いがちな「油かすだけでいけるか?」ですが、油かすだけだとリン酸・カリが足りないので、リン酸は過リン酸石灰や骨粉、カリは草木灰や硫酸カリ等を併用する、という考え方が示されています。
“何を入れるか”と同時に、“何が足りなくなりやすいか”をセットで押さえると、ニラの肥料設計は一気に安定します。
土壌診断・施肥設計(pH/EC、たい肥由来成分の差し引き、速効性と有機の使い分け)の基礎がまとまっている参考。
施肥の基本(pH・ECの見方、速効性/有機質肥料の特性、たい肥由来成分の考慮)と、ニラ(ハウス促成)の施肥基準例が載っています
ニラの施肥量の考え方(収量当たり換算、リン酸は基肥中心、たい肥利用時の減肥など)を掴む参考。
ニラ栽培の施肥基準例(促成のN-P-K総量と収量換算)と施肥上の留意点が整理されています