放置した果実1個が、半径2km圏内の農園すべてを危機に陥れる発生源になります。
2025年(令和7年)、ミカンコミバエの国内飛来状況は例年を大きく上回りました。長崎県では8月27日時点で10市町・計230匹の捕獲を確認し、これまでの過去最多だった2021年度の128匹をすでに超えています。県は2025年9月の県議会定例会に、調査・駆除費用として約2億4000万円の補正予算を計上しました。
これは深刻ですね。
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鹿児島県でも令和7年度(2025年)8月27日時点で、薩摩川内市(下甑島)・屋久島町・奄美市・大和村・瀬戸内町(加計呂麻島)において計17匹の誘殺を確認しており、全県下に411基のトラップを設置して侵入警戒調査を継続中です。2024年度は奄美・徳之島を中心に計54匹が確認され、徳之島では寄主果実への幼虫寄生まで確認されました。
ミカンコミバエは国内に定着していないのが現状です。しかし毎年、梅雨前線や台風などの強風によって東アジア(主に台湾・中国大陸・東南アジア)から飛来し、農林水産省門司植物防疫所と各都道府県が連携して侵入警戒体制を維持しています。台湾では年間を通じてミカンコミバエが発生しており、飛来源として台湾東南部・西北部が推定されています。飛来数が増加している背景のひとつとして、地球温暖化による気候変動の影響も指摘されています。pref+1
参考:長崎県公式サイト — ミカンコミバエの調査結果・防除対策の詳細
https://www.pref.nagasaki.jp/bunrui/shigoto-sangyo/nogyo/nouyaku-nogyo-shigoto-sangyo/nouyaku-news/736206.html
「ミカンコミバエ=ミカンの害虫」と思っている農家は要注意です。
被害対象はカンキツ類だけではありません。
農林水産省・長崎県の資料によると、寄主植物は以下のように非常に広範囲にわたります。
参考)https://www.pref.nagasaki.jp/shared/uploads/2025/08/1754544591.pdf
幼虫が果実に寄生すると内部から腐敗・落下が起こり、ひどい場合は収穫が皆無になります。体長わずか7mm(爪の先ほどの大きさ)の成虫が果実に産卵し、孵化した幼虫がウジ状に果肉を食い荒らします。被害果実は見た目に異常がないまま内部で腐敗が進むこともあり、収穫直前まで気づかないケースも報告されています。
これは痛いですね。
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ナスやトマトを栽培している農家は特に注意が必要です。実際、過去の奄美大島での事例では、カンキツ農家だけでなく野菜農家にも大きな影響が及びました。「自分はミカンを育てていないから関係ない」という認識が、まん延を許す一因になります。
つまり全ての果実農家が当事者です。
参考:農林水産省資料 — ミカンコミバエ種群の寄主植物・被害リスク詳細
https://www.maff.go.jp/j/syouan/keneki/kikaku/attach/pdf/pra_table2-31.pdf
現在、国・県・市町村が連携して全国各地にトラップ(捕虫器)を設置しています。鹿児島県だけで全県下に411基のトラップが稼働しており、これは約10km四方に1基の密度に相当します。誘殺が確認された場合、発生地点から半径5km圏内に追加トラップを設置し、さらに詳細な調査を行う流れです。pref.saga+1
ただし、トラップで捕まるのは雄の成虫のみです。雄誘引剤(キュウラック)を使ったトラップは雄しか引き寄せません。雌がすでに果実に産卵していた場合、トラップには何も引っかからないのに幼虫の被害は着々と進んでいることになります。
これだけは例外です。
参考)https://www.pref.nagasaki.lg.jp/shared/uploads/2025/07/1751531671.pdf
農家にとって重要なのは、トラップに頼りきりにならないことです。寄主果実の調査(誘殺地点から半径2km圏内)や落下果実の確認が、幼虫被害の早期発見につながります。自分の圃場でも定期的に落下果実を割って確認する習慣をつけることが、早期対応の第一歩になります。
日頃のチェックが基本です。
参考)https://www.pref.saga.lg.jp/kiji003115101/index.html
参考:佐賀県農業部門 — テックス板・トラップ設置の防除対策マニュアル
https://www.pref.saga.lg.jp/kiji003115101/index.html
ミカンコミバエのまん延を防ぐ最も確実な方法は、不用果実を放置しないことです。成熟した果実・取り残した果実・落下果実はすべて産卵の標的になります。長崎市・対馬市などの行政が農家に呼びかけているのも、この「不用果実の自主廃棄」です。
参考)https://www.city.tsushima.nagasaki.jp/material/files/group/25/mikannkomibae_kannennbousi.pdf
具体的な対策はシンプルです。
沖縄県では施設栽培農家向けに、「ハウスから出荷場まで果実を運ぶ際、コンテナにネットをかける」という指導を行っています。わずかな隙間から成虫が侵入して産卵するリスクを防ぐためです。非常に細かい対策ですが、まん延防止においては一つひとつの積み重ねが重要です。
これは使えそうです。
参考)果樹施設栽培農家の皆さまへ ミカンコミバエのまん延防止にご協…
また、ベイト剤(タンパク加水分解物+殺虫剤の混合毒餌剤)を樹木の幹や葉の裏にスポット散布する方法は、雌雄両方の成虫を駆除できる点でテックス板より幅広い効果があります。行政から指示が出た際には積極的に活用してください。ベイト剤は県・市町村から配布される場合があります。
参考)かんきつ類や果菜類の重要害虫「ミカンコミバエ」の防除対策の強…
参考:長崎市・大村市 — 農家向けまん延防止チラシ(果実放置の危険性)
https://www.city.tsushima.nagasaki.jp/material/files/group/25/mikannkomibae_kannennbousi.pdf
日本はかつて、ミカンコミバエを国内で根絶した実績があります。南西諸島・小笠原諸島でかつて定着していたミカンコミバエは、長年にわたる不妊虫放飼法(雄を不妊化した虫を大量放飼して繁殖を阻止する手法)により根絶されました。
これは農業史上の大きな成果です。
これはいいことですね。
しかし、2015年に奄美大島で再び幼虫が確認され、植物防疫法に基づく緊急防除が発動されました。2015年10月には奄美大島全域で1ヶ月に491匹という記録的な誘殺数が確認されました。同月だけで瀬戸内町・加計呂麻島で436匹が捕獲されるなど、発生の広がりは急速でした。
根絶後でも油断は禁物ということですね。
参考)ミカンコミバエ「緩みが二の舞に」~ニュースFollow~ &…
専門家は「緩みが二の舞になる」と警告しています。一度根絶されても、東アジアからの飛来は毎年続くため、モニタリングと初動対応の継続が不可欠です。農家個人の意識と行政の連携が、再定着を防ぐ唯一の手段です。奄美と沖縄が連携した不妊虫放飼体制の整備が、今後の抜本策として検討されています。農家として今できることは、発見したら即座に報告する体制を身につけておくことです。
報告が条件です。
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参考:奄美新聞 — 過去の大量発生と再定着リスクの解説
ミカンコミバエ「緩みが二の舞に」~ニュースFollow~ &…