イチジクの挿し木は、枝の樹液が本格的に動き出す直前が扱いやすく、目安として2~3月頃が適期とされます。ペットボトル方式のように「密閉して湿度を稼ぐ」やり方は、春先に芽が動き始めて条件がシビアになった場面の対策としても紹介されています。つまり、同じ2~3月でも“寒すぎて発根が遅い”年と、“動き出しが早くて萎れやすい”年があるので、暦よりも「枝の状態」と「置き場所の温度」を見て決めるのが失敗しにくい考え方です。
また、水挿し(ペットボトルを容器にする方法)なら、適期は3~4月とされ、明るい日陰の室内で管理し、発芽まで1週間に1回程度の換水が目安として示されています。土に挿すか水で発根させるかは、あなたの圃場・作業動線で決めて構いませんが、農業従事者の現場では「同じ穂木を複数条件で分散させて歩留まりを上げる」発想が強いので、ペットボトル密閉挿し(用土)とペットボトル水挿し(液)を半々で走らせるのも実務的です。
意外と見落とされるのが、発根が始まる前の“芽の動き”です。芽が動いた=成功、ではありません。密閉環境で芽が先に伸び、根が追いつかないと、あとから一気に萎れて失速します。芽が出ても慌てて直射日光に当てず、根の形成が追いつくまで環境を急変させないのがコツです。
ペットボトル密閉挿しの要点は、簡易温室を作って湿度を高く保ち、挿し穂の乾燥ストレスを減らすことです。密閉挿しは「挿し穂を密封して湿度の高い状態で管理する方法」とされ、葉がある状態では蒸散が強く萎れが障害になるため、できれば湿度100%近い環境を狙う、という説明がされています。
準備物の例としては、2リットル規格のペットボトル、はさみ、赤玉土、霧吹き、水を張るボール、発根促進剤(あれば)などが挙げられています。2リットルが推奨される理由は、内部の空間(微気象)と作業性の両面で有利だからです。切断した上部は、切り口を熱して加工し、下部の内側に差し込みやすくすると扱いやすいとも述べられています。
作業の流れは、現場で再現できる形にすると次の通りです。
・ペットボトルを上下に切り、上部を“フタ”として再装着できる形にする。
・新しい赤玉土など清潔寄りの用土を入れ、あらかじめ湿らせておく(乾土に挿すと切り口を傷めやすい、とされています)。
・挿し穂は節から約5mm下で斜めに切り、切り口を広くして発根を促す考え方が示されています。
・挿し穂は乾燥させないよう水に浸し、可能なら発根促進剤を混ぜる。
・挿し込みは全長の半分程度を目安にしつつ、容器の底に接しないようにする(底に水が停滞しやすく、腐敗リスクが上がるため、という注意が明記されています)。
・最後に霧吹きで潅水し、上部を被せて密閉する。
ペットボトル密閉の強みは、用土や挿し穂から蒸散した水分が内側で水滴になって落ち、内部湿度が安定して潅水の手間が減る点です。逆に弱みは「内部が高湿度になりやすい=腐敗条件も満たしやすい」ことなので、後述の腐敗・カビ対策をセットで運用してください。
密閉挿しでは湿度が高い環境になるため、用土は雑菌が少ないものを選ぶことが大切とされています。例として新しい赤玉土を用いた事例が紹介されており、少なくとも「使い回し用土で雑菌負荷を上げない」判断は合理的です。農業現場ではコストも大事ですが、挿し木は母材(穂木)そのものが価値なので、用土をケチって全滅するのが最も高くつきます。
水分で重要なのは“量”ではなく“停滞”です。挿し穂が容器底に接すると、底に水が溜まりやすく、発根を妨げたり腐敗を引き起こす可能性が高いと注意されています。ペットボトルは構造上、底に水が集まりやすいので、排水穴の位置、鉢底石の有無、挿し穂の長さをセットで最適化してください。
一方で、水挿し(液体で発根させる)を選ぶ場合は、容器はペットボトルでもよく、水位は「節が2節ほど浸かるぐらい」が目安として示されています。水は発芽するまで1週間に1回程度換える、管理は明るい日陰の室内、発根は3週間~1か月程度が目安、という具体値も出ています。水挿しは「清潔さ」と「観察しやすさ」が武器ですが、根が出たあと土に移す際に失速しやすい(=水根が土に適応しにくい)ので、鉢上げ直後は水切れさせない設計が必要です。
ここで“意外と効く小技”を一つ。ペットボトル密閉挿しで内部が過湿になったとき、いきなりフタを外すのではなく、まずキャップの開閉で換気量を微調整してください。乾燥ストレスを急にかけずに、カビ側に有利な「停滞した飽和湿度」を少しずつ崩せます。
水挿しの解説では、メネデール(100倍希釈)やミリオンAの使用例が示されており、発根を早めたり根を太く元気にする目的で発根促進剤が有効とされています。特にミリオンAは水耕栽培で根腐れ防止剤として使われることがあり、水挿しでも切り口が腐りにくくなるため換水頻度を下げられる、という説明がされています。
挿し木で本当に効くのは「薬剤そのもの」だけでなく、薬剤を使うことで管理作業が安定する点です。例えば、水が傷みにくいなら換水の手間が減り、作業のばらつきが減ります。すると結果的に、挿し穂のストレスが下がり、歩留まりが上がります。
ただし、密閉挿し(用土)の場合は、そもそも内部湿度が高いので、薬剤に頼って“水を多めにする”方向へ振れると逆効果になりがちです。発根促進剤を使うなら、同時に「底の停滞水を作らない」「清潔用土を使う」「換気を段階的に行う」までセットで運用するのが安全です。
検索上位の多くは「挿す方法」までは丁寧ですが、農業従事者の実務で差が出るのは、実は“発根後の馴化(ならし)と鉢上げの設計”です。ペットボトル方式は根の観察がしやすい反面、成功に見えた瞬間から失敗が始まることがあります。密閉・室内・高湿度で育った挿し穂は、急に外気へ出すと蒸散量が跳ね上がり、根量が不足して一気に萎れます。
密閉挿しの解説では、発根が確認できたらペットボトル上部を外してできるだけ自然状態に近づけ、初秋(9~10月)に植え替える、という段取りが示されています。水挿しの解説でも、真夏は避け、冬の休眠期に入る前の9月上旬までには鉢上げした方がよい、また水で育った根は土から吸水しにくいことがあるため植え替え直後は水を切らさず、乾燥したら葉水で補う、という注意があります。
現場向けに“事故を減らす手順”をまとめると、次の運用が堅いです。
✅ 発根確認(根が見える、または引っ張ると抵抗が出る)→ まずキャップ開閉で数日換気→ 次に上部を短時間だけ外す→ 慣れたら完全開放。
✅ 鉢上げは「根が白く伸びているうち」に行い、褐変してから慌てて植え替えない。
✅ 鉢上げ直後は施肥しない(根が落ち着くまで待つ)。
✅ 直射日光へは段階的に移行し、急に“屋外フル日照”へ持っていかない。
最後に、意外な落とし穴を一つだけ。ペットボトル密閉は便利ですが、ラベルを書かずに増やすと、品種や採穂日が混ざって管理が崩れます。密閉挿しの手順でも「メモを記したラベル」を挿すことが触れられており、これは趣味のためだけでなく、農業の作業品質を守る基本動作です。苗の価値が上がるほど、ラベリングは“収益に直結する技術”になります。
密閉挿し(ペットボトル)の手順・用土・管理・植え替え時期の考え方がまとまっている(湿度100%近く、2~3月適期、底の停滞水注意、9~10月植替えなど)
https://www.ars-edge.co.jp/contents/proen30/
水挿し(ペットボトル容器可)の具体手順(3~4月適期、節が2節浸かる水位、1週間に1回換水、3週間~1か月で発根、鉢上げ注意など)
https://www.noukaweb.com/figs-cutting-hydroponics/