実は、収穫前日まで外見が正常でも、果肉がすでに腐敗していることがあります。
クリ実炭疽病は、発生時期が9〜10月の収穫期と完全に重なります。 果皮が黒変し、果肉が褐色〜黒褐色に変色するのが典型的な症状です。
参考)http://gaityuu.com/kazyu/kuri/tanso/page0001.htm
ただし、病気の恐ろしい点は「潜伏感染」にあります。感染そのものは梅雨期(6〜7月)に成立しており、外見が健全に見える果実でも内部腐敗が進行しているケースがあります。 収穫直前まで見た目が正常なのに、選果後や貯蔵中に腐敗が発覚することがあるのです。
これを知らないと損します。
症状の特徴をまとめると次のとおりです。
つまり「見た目が健全=問題なし」ではありません。
参考:病害の症状写真と発生時期を詳細に掲載している農業害虫データベース
クリ炭疽病の症状と発生時期 ― 農業害虫・病害データベース(gaityuu.com)
クリ実炭疽病の病原菌は糸状菌(かび)の一種で、人や家畜の炭疽菌(細菌)とはまったく別の生き物です。 この点を誤解している農業従事者が少なくありません。
参考)炭疽病 | 病害データベース | 種苗事業部 | 武蔵野種苗…
感染サイクルは以下の流れで進みます。
参考)https://www.pref.aichi.jp/site/byogaichu/kaki-tannso.html
病原菌の胞子は雨滴によって飛散・伝播します。
台風や長雨の後は特に要注意です。
また、排水不良・風通しの悪い園地では感染リスクが高まることが知られています。
感染が広がるのは梅雨期です。
この時期の防除が収量を左右します。
農薬散布は「発病してから動く」では手遅れになります。 予防的散布が原則で、感染成立前に薬剤を圃場に行き渡らせることが重要です。
参考)毎年繰り返す「炭疽病」の原因と対策!再発防止へのステップ
クリ実炭疽病に登録されている主な農薬は次のとおりです。ja-aira.or+1
| 農薬名 | 希釈倍数 | 使用時期 | 使用回数 |
|---|---|---|---|
| ベルクートフロアブル | 1,000倍 | 収穫14日前まで | 2回以内 |
| ジマンダイセン水和剤 | 600倍 | 収穫7日前まで | 2回以内 |
散布量は200〜700L/10aが目安です。 きゅう果(イガ)全体に薬液が付着するように散布することが重要です。
参考)https://ja-aira.or.jp/wp-content/uploads/2021/01/ad3a5262f514b5cc932909d1a83b78b7.pdf
防除体系の組み立て方は次のとおりです。
参考)https://www.is-ja.jp/noto/eino/pdf/r7_kuri.pdf
参考)https://www.pref.okayama.jp/uploaded/life/704331_6311847_misc.pdf
散布タイミングが使用制限を超えると農薬残留違反になります。収穫日の見込みを早めに確認しておくことが必要です。
参考:令和7年度版クリの使用農薬一覧(登録農薬・使用時期・回数を一覧で確認できる)
令和7年産 クリ使用農薬一覧(JA有明海)
農薬散布だけでは限界があります。 病原菌の「越冬場所」を物理的に減らすことが、翌年以降の発生量を下げる根本的な対策になります。
実施すべき耕種的防除は以下のとおりです。
参考)https://www.pref.fukui.lg.jp/doc/021033/shokuryouanzen/boujoshishin-2_d/fil/kuri.pdf
耕種的防除と薬剤防除の組み合わせが基本です。
剪定作業を自分でこなす農家は多いですが、樹高が高い成木での剪定枝処理には脚立作業が伴います。作業リスクを減らすために、長柄式の剪定鋏(高枝切り鋏)を使って地上から処理する方法も、負担軽減に有効です。
農薬散布は収穫前の対策ですが、「収穫後」にも有効な防除手段があります。
それが温湯処理です。
農研機構の研究では、収穫後の果実を50℃・30分間の温湯に浸漬し、その後流水で冷却・脱水することでクリ炭疽病に対して高い防除効果が得られることが確認されています。 この処理はクリシギゾウムシ対策として確立された技術でもあり、複数の病害・害虫に対して同時効果が期待できます。naro.affrc+1
注意すべき点は温度管理です。50℃を大きく超えると果実品質が損なわれます。 温度計で湯温を管理しながら処理することが求められます。
参考)https://www.naro.affrc.go.jp/org/warc/research_results/h18/02_kankyo/p29/index.html
温湯処理は農薬を使わない対策です。有機栽培や農薬使用回数の上限に達した場合のバックアップ手段として記憶しておく価値があります。
出荷量が多い農家では、大型の温湯処理機の導入も選択肢になります。農研機構が発表した50℃30分の条件は、既存の設備(温浴槽・業務用コンテナなど)でも応用可能です。
参考:農研機構が発表した温湯処理によるクリ炭疽病防除の研究成果
クリ果実の温湯処理によるクリ炭疽病防除 ― 農研機構(naro.affrc.go.jp)