クリ実炭疽病の原因と防除で収量を守る方法

クリ実炭疽病は、収穫期直前に果実を黒変させる深刻な病害です。発生の仕組みから農薬散布の適期、耕種的防除まで徹底解説。あなたの圃場は正しい時期に対策できていますか?

クリ実炭疽病の原因・症状・防除を完全解説

実は、収穫前日まで外見が正常でも、果肉がすでに腐敗していることがあります。


クリ実炭疽病 ― この記事でわかること
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発生の仕組みと感染時期

病原菌は6〜7月の梅雨期に感染し、収穫期の9〜10月まで潜伏。外見が健全でも内部腐敗が進んでいるケースがある。

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発病を助長する条件

高温多湿・降雨・梅雨明け後の高温が重なると急速に蔓延。排水不良・密植・病残渣の放置が圃場リスクを高める。

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農薬と耕種的防除の組み合わせ

ベルクートフロアブル・ジマンダイセン水和剤などの登録農薬を収穫14〜7日前までの使用期限に合わせ、耕種的防除と組み合わせることが収量保全のカギ。

クリ実炭疽病の症状と見分け方:外見だけでは判断できない理由



クリ実炭疽病は、発生時期が9〜10月の収穫期と完全に重なります。 果皮が黒変し、果肉が褐色〜黒褐色に変色するのが典型的な症状です。


参考)http://gaityuu.com/kazyu/kuri/tanso/page0001.htm


ただし、病気の恐ろしい点は「潜伏感染」にあります。感染そのものは雨期(6〜7月)に成立しており、外見が健全に見える果実でも内部腐敗が進行しているケースがあります。 収穫直前まで見た目が正常なのに、選果後や貯蔵中に腐敗が発覚することがあるのです。


これを知らないと損します。


症状の特徴をまとめると次のとおりです。


  • 果皮が黒褐色〜黒色の円形病斑を形成する
  • 病斑部が陥没し、同心円状の輪紋が現れることがある
  • 果肉が褐色〜黒褐色に変色し、商品価値がゼロになる
  • 貯蔵・輸送中に隣接果実へ二次感染が広がる

つまり「見た目が健全=問題なし」ではありません。


参考:病害の症状写真と発生時期を詳細に掲載している農業害虫データベース
クリ炭疽病の症状と発生時期 ― 農業害虫・病害データベース(gaityuu.com)

クリ実炭疽病の病原菌と感染サイクル:梅雨の雨が最大のトリガー

クリ実炭疽病の病原菌は糸状菌(かび)の一種で、人や家畜の炭疽菌(細菌)とはまったく別の生き物です。 この点を誤解している農業従事者が少なくありません。


参考)炭疽病 | 病害データベース | 種苗事業部 | 武蔵野種苗…


感染サイクルは以下の流れで進みます。


  1. 病原菌は枯れ枝・病残渣・樹皮の隙間で越冬する
  2. 春〜梅雨期に降雨があると分生胞子が飛散し、果実や枝に付着する
  3. 潜伏期間中(約7〜10日)は無症状のまま内部で進行する

    参考)https://www.pref.aichi.jp/site/byogaichu/kaki-tannso.html


  4. 気温25℃前後・高湿度の条件下で急激に増殖・発病する
  5. 収穫期の9〜10月に被害が顕在化する

病原菌の胞子は雨滴によって飛散・伝播します。


台風や長雨の後は特に要注意です。


また、排水不良・風通しの悪い園地では感染リスクが高まることが知られています。


感染が広がるのは梅雨期です。


この時期の防除が収量を左右します。


クリ実炭疽病の防除適期と農薬の選び方:収穫日から逆算する散布計画

農薬散布は「発病してから動く」では手遅れになります。 予防的散布が原則で、感染成立前に薬剤を圃場に行き渡らせることが重要です。


参考)毎年繰り返す「炭疽病」の原因と対策!再発防止へのステップ


クリ実炭疽病に登録されている主な農薬は次のとおりです。ja-aira.or+1

農薬名 希釈倍数 使用時期 使用回数
ベルクートフロアブル 1,000倍 収穫14日前まで 2回以内
ジマンダイセン水和剤 600倍 収穫7日前まで 2回以内

散布量は200〜700L/10aが目安です。 きゅう果(イガ)全体に薬液が付着するように散布することが重要です。


参考)https://ja-aira.or.jp/wp-content/uploads/2021/01/ad3a5262f514b5cc932909d1a83b78b7.pdf


防除体系の組み立て方は次のとおりです。


  1. 7月下旬〜8月上旬に第1回目の予防散布を実施する

    参考)https://www.is-ja.jp/noto/eino/pdf/r7_kuri.pdf


  2. 8月上〜下旬に第2回目をきゅう果に十分かかるように散布する

    参考)https://www.pref.okayama.jp/uploaded/life/704331_6311847_misc.pdf


  3. 収穫日から逆算し、使用時期の制限を絶対に守る

散布タイミングが使用制限を超えると農薬残留違反になります。収穫日の見込みを早めに確認しておくことが必要です。


参考:令和7年度版クリの使用農薬一覧(登録農薬・使用時期・回数を一覧で確認できる)
令和7年産 クリ使用農薬一覧(JA有明海)

クリ実炭疽病の耕種的防除:農薬に頼らず発生リスクを下げる圃場づくり

農薬散布だけでは限界があります。 病原菌の「越冬場所」を物理的に減らすことが、翌年以降の発生量を下げる根本的な対策になります。


実施すべき耕種的防除は以下のとおりです。


  • 🍂 落葉・剪定枝の撤去:収穫後に圃場内の落葉・枯枝を集め、焼却または園外搬出する
  • ✂️ 枯死部・病斑枝の剪定除去:枝幹害虫の被害跡や凍害による枯死部は病原菌の繁殖拠点になる

    参考)https://www.pref.fukui.lg.jp/doc/021033/shokuryouanzen/boujoshishin-2_d/fil/kuri.pdf


  • 💧 排水改善:排水不良の園地では感染リスクが高まるため、暗渠設置や畝立てで対応する
  • 🌬️ 風通しの確保:密植・徒長枝の多発は多湿環境を作り出す。冬季剪定で適度に開葉させる
  • 🚫 病残渣の圃場内放置の禁止:処分は必ず焼却または深埋めで行い、放置しない

耕種的防除と薬剤防除の組み合わせが基本です。


剪定作業を自分でこなす農家は多いですが、樹高が高い成木での剪定枝処理には脚立作業が伴います。作業リスクを減らすために、長柄式の剪定鋏(高枝切り鋏)を使って地上から処理する方法も、負担軽減に有効です。


クリ実炭疽病と温湯処理:収穫後の出荷前対策として見直される技術

農薬散布は収穫前の対策ですが、「収穫後」にも有効な防除手段があります。


それが温湯処理です。


農研機構の研究では、収穫後の果実を50℃・30分間の温湯に浸漬し、その後流水で冷却・脱水することでクリ炭疽病に対して高い防除効果が得られることが確認されています。 この処理はクリシギゾウムシ対策として確立された技術でもあり、複数の病害・害虫に対して同時効果が期待できます。naro.affrc+1
注意すべき点は温度管理です。50℃を大きく超えると果実品質が損なわれます。 温度計で湯温を管理しながら処理することが求められます。


参考)https://www.naro.affrc.go.jp/org/warc/research_results/h18/02_kankyo/p29/index.html


温湯処理は農薬を使わない対策です。有機栽培や農薬使用回数の上限に達した場合のバックアップ手段として記憶しておく価値があります。


出荷量が多い農家では、大型の温湯処理機の導入も選択肢になります。農研機構が発表した50℃30分の条件は、既存の設備(温浴槽・業務用コンテナなど)でも応用可能です。


参考:農研機構が発表した温湯処理によるクリ炭疽病防除の研究成果
クリ果実の温湯処理によるクリ炭疽病防除 ― 農研機構(naro.affrc.go.jp)




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