ビニールハウスの「色(見え方)」は、単なる好みではなく“透過する光の質”の選択です。透明度が高い被覆材は日射を取り込みやすく、例えば農ビは直進光線透過率が高い一方、農POは直進光線透過率が相対的に低い、といった差が紹介されています。
この差は、冬季の立ち上がりや、曇天時の積算光量の確保に効きますが、強光期には「焼け」「色ムラ」のリスクが増えやすくなるため、散乱光タイプや遮光資材と組み合わせる設計が現実的です。
また、UVカット被覆は病害虫抑制に寄与する一方で、“色づき(アントシアニン)を狙う作物”では不利になる場合があるため、作目・作型で割り切って選びます。
ここで役立つのが、色を「目的別」に分ける考え方です(例:春~初夏は透明寄り、盛夏は散乱光+白系遮光、秋は作物の着色目的でUVの扱いを再確認)。現場で迷う場合は、まず「収量を取りたいのか/秀品率を取りたいのか/作業性を取りたいのか」を言語化すると、色の選択がブレにくくなります。
参考)ビニールハウスにおける農業用フィルムの種類と特徴を解説 | …
ポイントを箇条書きにすると次の通りです。
遮光ネットは「遮光率」だけでなく“色”で体感環境が変わります。白色系はハウス内の明るさを保ちつつ遮熱できる、といった説明が流通現場の情報として整理されています。
同じ遮光率でも色で明るさが変わる、というFAQもあり、白・黒・銀などの選択は「暑熱対策」だけでなく「作業のしやすさ(見えやすさ)」にも効きます。
実務的には、遮光資材の色は“品質トラブルの芽”を先に潰す道具です。例えば、夏場の収穫で選別ミスが増える圃場では、単に遮光率を上げるより「白系で視認性を確保しながら遮熱する」ほうが、作業効率とロスの両方が改善することがあります。
参考)遮光ネット|ビニールハウス特集 – 農家のお店おてんとさん
一方で、黒系は遮光の“効き”が分かりやすい反面、圃場が暗くなりすぎると誘引・整枝の判断ミスや、病斑の見落としにつながるので、作型のピーク作業(摘果・防除・収穫)の視認性まで含めて決めるのがコツです。
参考)遮光資材の色によって遮光性能は変わりますか?
小さく試すなら、全面張替ではなく「作業動線の上だけ」「西日側だけ」など部分導入が安全です。導入前後で、ハウス中央の“作業者目線”の明るさ(主観でもよい)と、葉焼け・果焼け・色ムラの発生を記録しておくと、翌年の意思決定が速くなります。
農業現場の色分けは、実は「JIS安全色」を借りると一気に“伝わる設計”になります。JIS Z 9103は、安全標識や安全マーキング等に用いる安全色の考え方を示し、事故・災害を防ぐために視覚的に情報を伝える目的を明記しています。
JIS安全色は、赤・黄赤・黄・緑・青・赤紫などが体系化され、禁止・注意・安全状態・指示といった意味づけが整理されています。
農場での落とし込み例を、意味がズレない範囲で組み立てると実用的です。
ここで重要なのは「色は事故防止策の代用ではない」という前提です。規格本文でも、安全色は“識別しやすくする”ものであって本来の事故防止策の代用と考えてはならない、と注意が入っています。
つまり、色分けは最後の砦として効きますが、危険源そのものの隔離・ガード・手順の標準化とセットにすると効果が出ます。現場では「色を増やしすぎない」「誰が見ても同じ意味にする」「貼る場所のルールを固定する」の3点を守ると、運用が崩れにくいです。
参考リンク(安全色の目的・測定方法・色覚多様性への配慮がまとまっている:色の運用ルール作りの根拠に使える)
JIS Z 9103:2018(安全色の考え方・色覚配慮の附属書含む)
施設栽培や育苗でLEDを使う場合、「白色LEDなら何でも同じ」と考えるのは危険です。新潟県の研究資料では、葉菜類(レタス、ミズナ、コマツナ)で白色LEDの光質差を比較し、色温度3000Kが4000Kより生育で優れる傾向を示した、と結言でまとめています。
また同資料は、白色LEDでも“従来品/高演色”で分光特性が変わる点や、品目によって演色性への生育応答が異なる点も示しています。
農業現場の使い方としては、照明を「目的」で割り切るのが現実的です。
参考)https://www.pref.niigata.lg.jp/uploaded/attachment/345279.pdf
意外と見落としがちなのが、照明の色が「作業品質」も左右する点です。暖色寄りにすると葉の黄化や病斑が見えやすい一方、白色寄りは全体をスッキリ見せて“異常が埋もれる”こともあるため、栽培用ライトの色選びは、作物の反応と作業のしやすさの両方を同時に評価します。
小規模に検証するなら、同一品目・同一施肥で「3000Kと4000K」「従来と高演色」を並べ、調整重・最大葉長・収穫日数・クレーム要因(色ムラ、徒長、軟弱)をセットで記録すると、次の投資判断に直結します。
参考リンク(白色LEDの色温度・演色性の違いと、葉菜類の生育差が具体データで読める:照明更新の根拠に使える)
白色LEDの光質の違いが葉菜類の生育に及ぼす影響(新潟県資料PDF)
検索上位の「カラーバリエーション」は、商品選びやデザイン文脈で語られがちですが、農業現場で本当に効くのは“色だけに頼らない表示設計”です。JIS Z 9103の附属書では、色覚の多様性を前提に、色の境界の明示(縁取り)や、色以外の識別情報(文字・形・模様・点線など)を付加することが有効だと述べています。
さらに、信号灯のような「光源色」では色による明るさ差が小さく、赤と黄が区別しにくいことがあるため、点滅パターン等の追加情報が有効という趣旨も示されています。
農場への落とし込みはシンプルです。
この視点は、外国人技能実習生や季節雇用者が増える現場でも効きます。色の意味が共有されていない状態でも、形・文字・位置の3点が揃うと、教育コストを下げながら事故リスクを落とせます。
「色を増やす」のではなく「色を減らして情報を増やす」ほうが、結果的に運用が安定することが多いので、カラーバリエーションの使い方は“増やす技術”より“絞る技術”として設計すると失敗しにくいです。

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