庭木の選定において「手入れが楽」という理由でソヨゴ(冬青)を選ぶ方は多いですが、その最大の特徴である「成長速度の遅さ」は、時として大きなデメリットとなります。多くの施主が「隣家からの視線を遮りたい」という目的で常緑樹を植えますが、ソヨゴの場合、期待する遮蔽効果が得られるまでに数年単位の時間を要することがあります。
一般的な庭木であるシラカシやオリーブが年間50cm〜1m近く伸びるのに対し、ソヨゴの成長は非常に緩やかです。環境にもよりますが、年間の伸長量はわずか10cm〜30cm程度にとどまることが一般的です。
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この特性がもたらす「目隠しとしての欠点」は以下の通りです。
参考)庭木(植木)としてのソヨゴの魅力
他の主要なシンボルツリーとソヨゴの成長スピードを比較すると、その遅さが際立ちます。
| 樹種 | 成長速度 | 目隠し適性 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| ソヨゴ | 遅い (10-30cm/年) | △ (密度が低い) | 剪定頻度は低いが、完成まで時間がかかる |
| シラカシ | 早い (50cm-80cm/年) | ◎ (密度が高い) | すぐに茂るが、頻繁な剪定が必要 |
| オリーブ | 早い (40cm-60cm/年) | ◯ (枝が暴れる) | 成長は早いが、横に広がり場所をとる |
| アオダモ | やや遅い (20-40cm/年) | △ (落葉樹) | 落葉期は丸見えになる。成長はソヨゴよりやや早い傾向 |
参考リンク:雑木の庭の成長記録@ソヨゴは1年でどれぐらい伸びるのか(実際の計測データあり)
このように、ソヨゴは「植えればすぐに目隠しになる」という木ではありません。このデメリットを理解せず、「常緑だから」という理由だけで植えると、数年間はプライバシー確保に悩まされることになります。対策としては、最初から樹高2m以上の株立ちを購入するか、目隠しフェンスと組み合わせて植栽計画を立てることが重要です。
「ソヨゴは病害虫に強い」と紹介されることもありますが、決して無敵ではありません。特に注意が必要なのが、カイガラムシとそれに付随して発生するすす病です。これらはソヨゴの美観を著しく損なうだけでなく、放置すると樹木全体を衰弱させ、最悪の場合は枯死させる原因となります。
参考)ソヨゴを植えると後悔する?その理由やデメリットを紹介
カイガラムシは、風通しの悪い環境を好んで発生する吸汁性害虫です。ソヨゴの葉の裏や枝に固着し、樹液を吸い取って栄養を奪います。
カイガラムシが発生すると、高い確率で「すす病」を併発します。これがソヨゴを育てる上での最大のデメリットの一つと言えます。
参考)すす病
参考リンク:住友化学園芸 - すす病の症状と対策、原因となる害虫について
すす病を防ぐには、根本原因であるカイガラムシを寄せ付けないことが全てです。
ソヨゴを美しく保つためには、「放置OK」と過信せず、梅雨前から夏にかけての害虫チェックが欠かせません。
秋から冬にかけてつく赤い実は、ソヨゴの観賞価値を高めるチャームポイントです。緑の葉と赤い実のコントラストは非常に美しいものですが、生活者の視点に立つと、この「実」が生活環境を汚すデメリットになり得ます。
参考)ソヨゴをシンボルツリーにして後悔?原因と対策!おすすめ樹木紹…
10月から12月頃にかけて熟した実は、やがて地面に落下します。これが以下のような問題を引き起こします。
赤い実は鳥たちにとって格好の食料です。ヒヨドリやツグミなどの野鳥が実を求めて集まってきます。
参考リンク:ソヨゴをシンボルツリーにして後悔?実が落ちて掃除が大変という口コミ検証
実は、これらの「実による汚れ」の問題は、「雄株(オスの木)」を選ぶことで完全に回避できます。ソヨゴは雌雄異株(しゆういしゅ)といって、オスとメスの木が分かれています。
「実が可愛いからソヨゴにしたい」という方にはメスがおすすめですが、「掃除の手間を減らしたい」「汚れを避けたい」という実用性重視の方には、あえて実のならないオス株を指定して購入することを強くおすすめします。造園業者に依頼する場合も、「汚れるのが嫌なのでオスをお願いします」と伝えれば対応してもらえます。
庭木を選ぶ際、見落としがちなのが「イニシャルコスト(導入費用)」です。ソヨゴは、他の一般的な庭木と比較して価格が割高になる傾向があります。これは、先述した「成長速度の遅さ」が経済的なデメリットとして跳ね返ってくるためです。
参考)ソヨゴは成長の遅い常緑樹です!!! - 嘘はつけない庭屋の本…
苗木の価格は、生産者がその木を出荷できるサイズに育てるまでにかけた「時間」と「管理コスト」で決まります。
あくまで目安ですが、樹高1.5m〜2.0m程度の株立ちを購入する場合の相場感を比較します。
このように、同じ高さの木を手に入れようとすると、ソヨゴは他の樹種の1.5倍〜2倍程度の予算が必要になるケースが多いです。「予算を抑えたいから、小さな苗木を買って大きく育てよう」と考えても、ソヨゴの場合は大きくなるまでに気の遠くなるような時間がかかります。
価格が高いことはデメリットですが、見方を変えれば「植栽後の剪定コストが安い」というメリットの裏返しでもあります。
「初期投資が高くても、その後の手入れの手間をお金で買う」と割り切れるかどうかが、ソヨゴ導入の判断基準となります。
ソヨゴは基本的には丈夫な樹木ですが、「極端な乾燥」と「強い西日」には弱いという特性があります。これを無視して不適切な場所に植えてしまうと、葉焼けを起こしたり、最悪の場合は枯れてしまうリスクがあります。
参考)庭木造園業庭木にソヨゴを植えています夏場35℃が続くと、葉が…
ソヨゴの根は、地中深く潜るよりも、地表近くに浅く広く張る性質(浅根性)があります。
近年の日本の猛暑(35℃以上)は、山地に自生するソヨゴにとっては過酷な環境です。
参考リンク:ソヨゴの元気がない?!枯れる原因と対処法(水切れと環境要因について)
ソヨゴのデメリットをカバーし、健康に育てるためには、以下のような場所を選ぶのがベストです。
ソヨゴは「どこにでも植えられる万能な木」ではなく、「少し涼しい環境を好むおしとやかな木」です。南向きのカンカン照りの庭のど真ん中よりも、建物の脇や北玄関のシンボルツリーとして採用する方が、結果として手間がかからず美しく育ちます。