ソヨゴを庭木にするデメリットは?成長速度や病害虫で後悔しない

常緑樹として人気のソヨゴですが、成長速度が遅く目隠し効果が薄い、カイガラムシによるすす病リスクなど、意外な欠点も。植えてから後悔しないために知っておくべきデメリットと対策とは?

ソヨゴを庭木にするデメリット

ソヨゴ導入の落とし穴チェック
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成長が極めて遅い

成木になるまで時間がかかり、即効性のある目隠しには不向きです。

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病害虫リスクがある

カイガラムシが発生しやすく、排泄物が原因で「すす病」を誘発します。

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実の掃除が手間

赤い実が落下して地面を汚したり、鳥が寄ってくる原因になります。

ソヨゴは成長速度が遅い?目隠しがスカスカになる理由

 

庭木の選定において「手入れが楽」という理由でソヨゴ(冬青)を選ぶ方は多いですが、その最大の特徴である「成長速度の遅さ」は、時として大きなデメリットとなります。多くの施主が「隣家からの視線を遮りたい」という目的で常緑樹を植えますが、ソヨゴの場合、期待する遮蔽効果が得られるまでに数年単位の時間を要することがあります。

 

年間の成長幅とスカスカ問題

一般的な庭木であるシラカシやオリーブが年間50cm〜1m近く伸びるのに対し、ソヨゴの成長は非常に緩やかです。環境にもよりますが、年間の伸長量はわずか10cm〜30cm程度にとどまることが一般的です。

 

参考)庭木で人気落葉樹「アオダモ」と常緑樹「ソヨゴ」の特徴をご紹介…

この特性がもたらす「目隠しとしての欠点」は以下の通りです。

 

  • 初期のボリューム不足: 苗木の状態で購入すると、枝葉が少なく幹が細いため、向こう側が丸見えの状態(スカスカ)が長く続きます。

    参考)庭木(植木)としてのソヨゴの魅力

  • 即効性の欠如: 窓の高さまで隠したい場合、最初から高価な成木を購入しない限り、数年は視線が通ってしまいます。
  • 密度の低さ: ソヨゴはもともと葉が密生して壁のようになる樹種ではなく、風にそよぐような軽やかな樹形が魅力です。そのため、ブロック塀のような完全な遮蔽を期待すると「思ったよりスカスカで役に立たない」という後悔につながります。

    参考)庭木で目隠しするならコレ!NGな木&おすすめの木をプロが厳選…

成長速度比較表

他の主要なシンボルツリーとソヨゴの成長スピードを比較すると、その遅さが際立ちます。

 

樹種 成長速度 目隠し適性 特徴
ソヨゴ 遅い (10-30cm/年) △ (密度が低い) 剪定頻度は低いが、完成まで時間がかかる
シラカシ 早い (50cm-80cm/年) ◎ (密度が高い) すぐに茂るが、頻繁な剪定が必要
オリーブ 早い (40cm-60cm/年) ◯ (枝が暴れる) 成長は早いが、横に広がり場所をとる
アオダモ やや遅い (20-40cm/年) △ (落葉樹) 落葉期は丸見えになる。成長はソヨゴよりやや早い傾向

参考リンク:雑木の庭の成長記録@ソヨゴは1年でどれぐらい伸びるのか(実際の計測データあり)
このように、ソヨゴは「植えればすぐに目隠しになる」という木ではありません。このデメリットを理解せず、「常緑だから」という理由だけで植えると、数年間はプライバシー確保に悩まされることになります。対策としては、最初から樹高2m以上の株立ちを購入するか、目隠しフェンスと組み合わせて植栽計画を立てることが重要です。

 

ソヨゴの病害虫リスク!カイガラムシとすす病の対策

「ソヨゴは病害虫に強い」と紹介されることもありますが、決して無敵ではありません。特に注意が必要なのが、カイガラムシとそれに付随して発生するすす病です。これらはソヨゴの美観を著しく損なうだけでなく、放置すると樹木全体を衰弱させ、最悪の場合は枯死させる原因となります。

 

参考)ソヨゴを植えると後悔する?その理由やデメリットを紹介

天敵!カイガラムシの被害

カイガラムシは、風通しの悪い環境を好んで発生する吸汁性害虫です。ソヨゴの葉の裏や枝に固着し、樹液を吸い取って栄養を奪います。

 

  • 発生時期: 主に5月〜7月頃に活発化しますが、成虫は殻(介殻)に覆われているため薬剤が効きにくく、駆除が厄介です。​
  • 発見の難しさ: 動き回る虫ではないため、初期段階では気づきにくいのが特徴です。「なんとなく元気がない」「葉の色が悪い」と感じた時には、びっしりと寄生されていることも珍しくありません。
  • 駆除の負担: 成虫になって殻を被ると、殺虫剤が浸透しにくくなります。そのため、歯ブラシやヘラを使って物理的にこそぎ落とすという、非常に地味で手間の掛かる作業が必要になります。

二次被害としての「すす病」

カイガラムシが発生すると、高い確率で「すす病」を併発します。これがソヨゴを育てる上での最大のデメリットの一つと言えます。

 

  1. メカニズム: カイガラムシやアブラムシは、樹液の糖分を過剰に摂取し、余剰分を「甘露(かんろ)」として排泄します。このベタベタした排泄物が葉や幹に付着します。

    参考)すす病

  2. カビの発生: 付着した排泄物に空気中の「すす病菌(糸状菌)」が付着し、黒いカビとして繁殖します。
  3. 光合成の阻害: 葉の表面が煤(すす)を被ったように真っ黒になると、日光が遮断され、光合成ができなくなります。これによりソヨゴは栄養を作れなくなり、さらに樹勢が弱まるという悪循環に陥ります。

    参考)すす病とは?すす病が発生する原因と対策について - For …

参考リンク:住友化学園芸 - すす病の症状と対策、原因となる害虫について

効果的な予防と対策

すす病を防ぐには、根本原因であるカイガラムシを寄せ付けないことが全てです。

 

  • 定期的な剪定: 枝葉が混み合うと風通しが悪くなり、カイガラムシの温床になります。内側の枝を透かす剪定(透かし剪定)を行い、風と光を内部まで通すことが最大の予防です。
  • マシン油乳剤の散布: 冬季(1月〜2月)にマシン油乳剤を散布することで、越冬しているカイガラムシを窒息死させ、春の発生を抑えることができます。
  • 早期発見: 葉がベタベタしていたり、アリが木に行列を作っている場合は、カイガラムシがいるサインです(アリは甘露を求めて集まります)。

ソヨゴを美しく保つためには、「放置OK」と過信せず、梅雨前から夏にかけての害虫チェックが欠かせません。

 

ソヨゴの実は掃除が大変?落下による汚れと手間

秋から冬にかけてつく赤い実は、ソヨゴの観賞価値を高めるチャームポイントです。緑の葉と赤い実のコントラストは非常に美しいものですが、生活者の視点に立つと、この「実」が生活環境を汚すデメリットになり得ます。

 

参考)ソヨゴをシンボルツリーにして後悔?原因と対策!おすすめ樹木紹…

実の落下による汚れ

10月から12月頃にかけて熟した実は、やがて地面に落下します。これが以下のような問題を引き起こします。

 

  • 土間コンクリートのシミ: 駐車場やアプローチの真上にソヨゴを植えている場合、落下した実が踏み潰されると、コンクリートに赤いシミがつきます。植物性の色素は意外と落ちにくく、新築のきれいな土間が汚れる原因として「後悔ポイント」に挙げられることが多いです。
  • 靴底への付着: 玄関アプローチ付近に植えると、落ちた実を靴で踏んでしまい、そのまま玄関タイルを歩いて汚してしまうことがあります。
  • 掃除の頻度: 実がなる時期は、落ち葉掃除に加えて実の掃除もしなければなりません。潰れた実はほうきで掃きにくく、水洗いが必要になることもあります。

鳥害(フン害)のリスク

赤い実は鳥たちにとって格好の食料です。ヒヨドリやツグミなどの野鳥が実を求めて集まってきます。

 

  • フンの被害: 鳥が集まるということは、当然フンも落とされます。ソヨゴの下にある車やフェンス、ウッドデッキが鳥のフンで汚れるリスクが高まります。
  • 実の散乱: 鳥は実をその場で食べるだけでなく、ついばんで落としたりします。これにより、意図しない範囲まで実が散乱することになります。

参考リンク:ソヨゴをシンボルツリーにして後悔?実が落ちて掃除が大変という口コミ検証

対策:雄株(オス)を選ぶという選択肢

実は、これらの「実による汚れ」の問題は、「雄株(オスの木)」を選ぶことで完全に回避できます。ソヨゴは雌雄異株(しゆういしゅ)といって、オスとメスの木が分かれています。

 

  • 雌株(メス): 花が咲き、秋に赤い実をつける。観賞価値は高いが、掃除の手間がある。
  • 雄株(オス): 花は咲くが、実はつかない。葉の美しさは変わらない。

「実が可愛いからソヨゴにしたい」という方にはメスがおすすめですが、「掃除の手間を減らしたい」「汚れを避けたい」という実用性重視の方には、あえて実のならないオス株を指定して購入することを強くおすすめします。造園業者に依頼する場合も、「汚れるのが嫌なのでオスをお願いします」と伝えれば対応してもらえます。

 

ソヨゴの価格は高い?成長の遅さが苗木代に影響

庭木を選ぶ際、見落としがちなのが「イニシャルコスト(導入費用)」です。ソヨゴは、他の一般的な庭木と比較して価格が割高になる傾向があります。これは、先述した「成長速度の遅さ」が経済的なデメリットとして跳ね返ってくるためです。

 

参考)ソヨゴは成長の遅い常緑樹です!!! - 嘘はつけない庭屋の本…

なぜソヨゴは高いのか?

苗木の価格は、生産者がその木を出荷できるサイズに育てるまでにかけた「時間」と「管理コスト」で決まります。

 

  1. 生産期間の長さ: 例えば、樹高2mのシラカシを作るのに3〜5年かかるとすれば、成長の遅いソヨゴで同じ2mを作るには、その倍近い年数がかかることもあります。
  2. 管理コストの増大: 畑で育てている期間が長ければ長いほど、その間の水やり、肥料、剪定、病害虫防除の手間がかかり続けます。土地を占有する期間も長くなるため、回転率が悪くなります。
  3. 希少性: 手間と時間がかかるため、大量生産する農家が少なく、需要に対して供給が追いついていない場合があります。これが市場価格を押し上げます。

具体的な価格イメージ

あくまで目安ですが、樹高1.5m〜2.0m程度の株立ちを購入する場合の相場感を比較します。

 

  • シマトリネコ: 8,000円 〜 15,000円
  • シラカシ: 5,000円 〜 10,000円
  • ソヨゴ: 15,000円 〜 30,000円

このように、同じ高さの木を手に入れようとすると、ソヨゴは他の樹種の1.5倍〜2倍程度の予算が必要になるケースが多いです。「予算を抑えたいから、小さな苗木を買って大きく育てよう」と考えても、ソヨゴの場合は大きくなるまでに気の遠くなるような時間がかかります。

 

価格に見合う価値はあるか?

価格が高いことはデメリットですが、見方を変えれば「植栽後の剪定コストが安い」というメリットの裏返しでもあります。

 

  • 成長の早いシマトリネコは安く買えますが、年に2回以上の剪定が必要で、業者に頼めばランニングコストがかかります。
  • ソヨゴは初期費用(苗木代)は高いですが、成長が遅いため剪定は数年に1回、あるいは自分での軽作業で済むことが多く、長期間のトータルコストでは逆転する可能性もあります。

「初期投資が高くても、その後の手入れの手間をお金で買う」と割り切れるかどうかが、ソヨゴ導入の判断基準となります。

 

ソヨゴの植え場所の注意点!西日と乾燥に弱い特性

ソヨゴは基本的には丈夫な樹木ですが、「極端な乾燥」「強い西日」には弱いという特性があります。これを無視して不適切な場所に植えてしまうと、葉焼けを起こしたり、最悪の場合は枯れてしまうリスクがあります。

 

参考)庭木造園業庭木にソヨゴを植えています夏場35℃が続くと、葉が…

意外な弱点:浅い根張り

ソヨゴの根は、地中深く潜るよりも、地表近くに浅く広く張る性質(浅根性)があります。

 

  • 乾燥への弱さ: 地表付近の土は太陽熱で乾きやすいため、夏の猛暑日が続くと水切れを起こしやすくなります。特に植え付けから1〜2年の根が張り切っていない時期は、夏場の毎日の水やりが必須です。
  • 倒木のリスク: 根が浅いため、台風などの強風で傾きやすい傾向があります。植え付け時にはしっかりとした支柱を設置することが不可欠です。

西日と葉焼け(葉枯れ)

近年の日本の猛暑(35℃以上)は、山地に自生するソヨゴにとっては過酷な環境です。

 

  • 葉焼け: コンクリートの照り返しが強い場所や、西日が長時間当たる場所に植えると、葉の色が黄色く抜けたり、茶色く変色して枯れ落ちる「葉焼け」を起こします。​
  • 光合成の低下: 葉が焼けてしまうと、当然ながら光合成能力が落ち、樹勢が弱まります。弱った木はカイガラムシなどの害虫に対する抵抗力も落ちてしまいます。

参考リンク:ソヨゴの元気がない?!枯れる原因と対処法(水切れと環境要因について)

植栽に適した場所の選び方

ソヨゴのデメリットをカバーし、健康に育てるためには、以下のような場所を選ぶのがベストです。

 

  1. 半日陰: 午前中は日が当たり、午後の強い西日は建物や他の木で遮られる場所が理想的です。
  2. 排水と保水のバランス: 水はけが良い土壌を好みますが、完全に乾ききる場所は苦手です。腐葉土を多めに混ぜ込み、土壌の保水力を高めておくことが重要です。
  3. マルチング: 根元の土が乾燥しないよう、バークチップや下草(グランドカバー)で根元を覆う「マルチング」が非常に効果的です。これにより地温の上昇を防ぎ、水分の蒸発を抑えることができます。

ソヨゴは「どこにでも植えられる万能な木」ではなく、「少し涼しい環境を好むおしとやかな木」です。南向きのカンカン照りの庭のど真ん中よりも、建物の脇や北玄関のシンボルツリーとして採用する方が、結果として手間がかからず美しく育ちます。

 

 


ソヨゴ 株立ち 管理70790