サカタのブロッコリーの品種と栽培の選び方と特徴

サカタのブロッコリーを導入検討中の生産者へ。品種選びや栽培のコツ、市場評価の高い理由を徹底解説します。収益性を高めるために、あなたの圃場に最適な品種はどれですか?

サカタのブロッコリー

サカタのブロッコリー導入のメリット
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圧倒的な市場評価

ドーム形状が美しく、箱詰め効率と秀品率が極めて高いため、市場単価が安定しやすい。

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環境適応力

「グランドーム」に代表される根張りの良さが、湿害や乾燥ストレスへの強い耐性を発揮。

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生理障害への強さ

茎空洞症やアントシアン発生を抑える品種改良が進んでおり、廃棄ロスを大幅に削減可能。

サカタのブロッコリーの主な品種と特徴

 

農業経営において、ブロッコリーの品種選定は収益を左右する最も重要な意思決定の一つです。特にサカタのタネが開発したブロッコリー品種は、国内市場において圧倒的なシェアと信頼を誇ります。その最大の特徴は、「花蕾の締まり」と「ドーム形状の美しさ」にあります。市場出荷において、箱詰めした際の見栄え(ボリューム感)と、輸送中に崩れない硬さは、高単価を維持するために不可欠な要素です。ここでは、プロの生産者が主力として採用すべき代表的な品種について、その特性を深掘りします。

 

  • グランドーム(冬どりの王様)

    「グランドーム」は、サカタのブロッコリーを代表する中晩生品種であり、多くの産地で基幹品種として採用されています。最大の特徴は、圧倒的な根張りの強さです。根が深く広く張るため、過湿条件や乾燥ストレスに強く、天候不順な年でも安定した収量を叩き出します。花蕾は豊円形で、粒が細かく、極めて濃い緑色をしています。収穫後の日持ちも良いため、長距離輸送が必要な産地からも絶大な支持を得ています。

     

    ブロッコリー 「グランドーム」|【サカタのタネ】
    上記リンクでは、グランドームの基本的な栽培暦や特性が確認できます。特に「根張りがよいので、過湿や乾燥に強く、倒伏しにくい」という点は、排水性の悪い転換畑での栽培を検討している生産者にとって重要な情報です。

     

  • おはよう(低温期のアントシアンフリー)

    冬場のブロッコリー栽培で最大の悩みとなるのが、寒さによる「アントシアン(紫色の着色)」の発生です。「おはよう」は、この問題を遺伝的に解決したアントシアンフリー品種の決定版です。厳寒期に収穫しても花蕾が鮮やかな緑色を保つため、見た目の品質低下によるB品落ちを防ぐことができます。また、茎が空洞になりにくいという特性も持ち合わせており、加工業務用の需要にも対応可能です。播種時期の幅が広く、作型を組みやすいのも経営上のメリットと言えるでしょう。

     

  • ピクセル(早生のスタンダード)

    「ピクセル」は、播種後100日程度で収穫できる早生品種です。この品種の強みは、「茎の柔らかさ」と「収穫作業の容易さ」にあります。茎が柔らかいため包丁が入りやすく、収穫スピードを上げることができます。また、花蕾の位置がやや高くなる「立性」の草姿をしているため、足元の風通しが良く、病害の発生を抑えやすいという特徴もあります。早出しを狙う作型や、後作の準備を急ぐ圃場回転率重視の経営に適しています。

     

  • グリーンキャノン(根こぶ病耐性)

    アブラナ科野菜の宿命とも言える土壌病害「根こぶ病」。これに対抗するために開発されたのが「グリーンキャノン」です。従来の耐病性品種は花蕾品質が劣るケースがありましたが、この品種はサカタ品質のドーム形状を維持しつつ、強力な耐病性を備えています。連作障害に悩む圃場では、土壌消毒のコストと労力を削減できる切り札となります。

     

サカタのブロッコリーの栽培に向けた選び方

品種のカタログスペックだけを見て選定すると、実際の圃場環境とマッチせずに失敗するリスクがあります。サカタのブロッコリーを選ぶ際は、単に「人気があるから」という理由ではなく、ご自身の圃場の土質、地域の気候区分、そして狙いたい出荷時期(リレー栽培)を考慮した戦略的な選び方が求められます。

 

まず考慮すべきは「土壌適性」です。

 

水はけの悪い粘土質の圃場や、水田転換畑で作付けする場合は、前述の「グランドーム」一択と言っても過言ではありません。吸肥力が強く、悪条件下でも樹(株)を作りやすいためです。逆に、砂質土壌や肥沃な黒ボク土で、初期生育が暴れやすい(過繁茂になりやすい)圃場の場合は、草勢が比較的おとなしい品種や、肥料のコントロールがしやすい品種(例えば「緑嶺」などの安定種)を選ぶことで、花蕾の不揃いを防ぐことができます。

 

次に重要なのが「リレー栽培」による出荷期間の延長です。

 

単一品種を一斉に収穫しようとすると、収穫労力がピーク時に不足し、適期を逃して「花が咲く(花蕾が開く)」リスクが高まります。サカタのタネが提唱する「ドームシリーズ」のリレー栽培は、これを防ぐための鉄則です。

 

例えば、以下のような組み合わせが推奨されます。

 

  • 【10月〜11月収穫】

    早生種の「サマードーム」や「ピクセル」を選定。暑さが残る時期でも花蕾が緩みにくい品種を配置します。

     

  • 【12月〜1月収穫】

    晩生種の「グランドーム」を配置。寒さに当たりながらじっくり肥大させ、重量の乗った高品質な花蕾を狙います。

     

  • 【2月〜3月収穫】

    晩生種の「ウインタードーム」や「おはよう」などの晩生系を配置。寒さによるアントシアン着色を回避しつつ、端境期に出荷することで高単価を狙います。

     

このように、収穫時期を意図的にずらすことで、雇用労力を平準化し、選果場の稼働率を安定させることが可能になります。

 

ブロッコリーリレー栽培のすすめ|サカタのタネ オンラインショップ
こちらのページでは、サマードームからウインタードームへと繋ぐリレー栽培の具体的な作型例が紹介されており、作付け計画を立てる際の参考に役立ちます。

 

サカタのブロッコリーの種まきと収穫の時期

種まき(播種)のタイミングは、ブロッコリー栽培において「一日遅れれば収穫は一週間遅れる」と言われるほどシビアです。特にサカタの品種は、それぞれの品種が持つ「花芽分化」に必要な積算温度や低温感応性が明確に設計されています。適切な時期に種をまかなければ、どんなに優秀な品種でもそのポテンシャルを発揮できません。

 

地域別の標準的な種まきスケジュール
以下は、一般的な中間地(関東・東海・近畿などの平野部)を想定したスケジュールです。冷涼地や暖地では約1ヶ月前後のズレが生じるため、地域のJA指導指針と合わせて調整してください。

 

  1. 夏まき秋冬どり(主要作型)
    • 種まき: 7月中旬 〜 8月中旬
    • 収穫: 10月下旬 〜 2月
    • ポイント: 最も一般的な作型です。7月の高温期に育苗する必要があるため、遮光資材や底面給水などを活用し、徒長苗にならないよう管理することが成功の鍵です。サカタの「グランドーム」はこの作型に最適で、年内から年明けにかけての主力となります。
  2. 春まき初夏どり
    • 種まき: 1月下旬 〜 2月上旬(加温ハウス等での育苗必須)
    • 収穫: 5月 〜 6月
    • ポイント: 育苗期の低温管理が重要です。ある程度の大きさになった苗が低温に遭遇すると、株が小さいうちに花芽ができてしまう「ボトニング(早期出蕾)」が発生します。サカタの品種の中でも「ピクセル」や「緑嶺」など、比較的ボトニングに鈍感な早生品種を選ぶ必要があります。
  3. 初夏まき秋どり
    • 種まき: 6月 〜 7月上旬
    • 収穫: 9月 〜 10月
    • ポイント: 台風シーズンや秋雨と収穫期が重なる難しい作型です。湿害や病気に強い品種、かつ高温下でも花蕾が乱れにくい品種が求められます。

収穫適期の見極めについて、サカタの品種は特に「締まり」が良い分、収穫遅れによる品質低下が見た目で判断しにくい場合があります。しかし、適期を過ぎると花蕾の表面に凹凸ができたり、色が淡くなったりします。特に「グランドーム」は、花蕾径が12cm〜14cm程度になった時点で、指で押して弾力を感じるくらいがベストな収穫タイミングです。欲張って肥大させすぎると、茎の中に空洞ができたり、市場評価の低いL・2Lサイズ超過になったりするため注意が必要です。

 

サカタのブロッコリーの生理障害への耐性と対策

ブロッコリー栽培において、収益を大きく損なうのが「生理障害」です。病気や虫害と異なり、生理障害は気象条件や肥料バランスによって引き起こされるため、事前の対策が困難なケースがあります。しかし、サカタのタネは育種段階でこれらの生理障害への耐性を強化しています。ここでは、検索上位の記事ではあまり触れられない、具体的な生理障害と品種ごとの耐性について解説します。

 

1. 茎空洞症(ホローステム)
急激な肥大生長に伴い、茎の中心部が裂けて空洞になる現象です。空洞部分が褐変すると腐敗とみなされ、規格外となります。

 

  • 原因: 窒素過多、株間が広すぎる(疎植)、高温多雨による急成長。
  • サカタ品種の対策:

    「おはよう」や「ピクセル」は、遺伝的に茎の細胞配列が緻密で、空洞症が発生しにくい特性を持っています。一方、草勢の強い「グランドーム」は、元肥で窒素を効かせすぎると空洞ができやすくなります。グランドームを栽培する場合、元肥を控えめにし、追肥で調整する施肥体系を組むことが、空洞症回避の技術的ポイントです。

     

2. ブラウンビーズ(花蕾の褐変)
花蕾の一部が茶色く変色し、壊死する現象です。商品価値が完全になくなる致命的な障害です。

 

  • 原因: 花蕾形成期の高温、乾燥、ホウ素欠乏。
  • サカタ品種の対策:

    これは「水不足」と「高温」が主因です。特に花蕾が見え始めた頃(出蕾期)に土壌が乾燥していると発生率が跳ね上がります。サカタの品種の中でも、根張りの良い品種(グランドーム等)は土壌深層の水分を吸い上げることができるため、比較的耐性がありますが、過信は禁物です。乾燥が続く場合は、畝間灌水を行うか、ホウ素入りの葉面散布剤を使用することでリスクを軽減できます。

     

    ブラウンビーズ - タキイ種苗(参考情報)
    他社サイトですが、ブラウンビーズのメカニズム画像がわかりやすく掲載されています。サカタ品種を栽培する際も、この発生メカニズム(高温・乾燥・多肥)は共通ですので、対策の参考になります。

     

3. キャットアイ(不整形花蕾)
花蕾の粒(蕾)の大きさが不揃いになり、猫の目のように見える現象です。

 

  • 原因: 花芽分化後の温度変化(高温と低温の繰り返し)。
  • サカタ品種の対策:

    花芽形成の質が良いサカタ品種は比較的発生しにくいですが、極端な早まき(無理な作型)をすると発生します。各品種の推奨播種期を厳守することが最大の対策です。

     

サカタのブロッコリーの肥料設計と評判

サカタのブロッコリーが高品質である背景には、適切な「肥料設計」が不可欠です。サカタの品種、特に主力である「グランドーム」などは、他社品種に比べて「吸肥力が強い(肥料をよく吸う)」という特性があります。これを理解せずに漫然と施肥を行うと、過繁茂になったり、逆に肥料切れでボケ那(小玉)になったりします。

 

10a(1反)当たりの標準施肥量
サカタのタネが推奨する標準的な施肥量は以下の通りです(成分量ベース)。

 

  • 窒素 (N): 20kg 〜 25kg
  • リン酸 (P): 25kg
  • カリ (K): 20kg

一般的な野菜に比べて、かなり多くの肥料を必要とする「多肥性作物」です。

 

重要なのは、これを「元肥」と「追肥」にどう配分するかです。

 

  • 元肥重視型: 窒素成分で12kg〜15kg程度を元肥で入れ、残りを追肥で補うパターン。初期生育を確保し、大きな株を作るのに適しています。「グランドーム」のような大きな外葉を作る品種では、初期にガツンと効かせて葉枚数を確保することが、後の巨大な花蕾形成に直結します。
  • 追肥: 頂花蕾収穫までの間に、2回〜3回に分けて行います。特に花蕾が見え始める頃の追肥(止め肥)が遅れると、花蕾の締まりが悪くなります。

市場関係者からの評判と市場価値
市場のセリ人や仲卸業者から見た「サカタのブロッコリー」の評価は極めて高いです。その理由は「箱詰め効率」と「棚持ち」です。

 

  1. 箱詰め効率:

    サカタ品種のドーム形状は、発泡スチロール箱に詰めた際に隙間ができにくく、美しく並びます。これは、スーパーのバイヤーが箱を開けた瞬間の第一印象(=セリ値)を決定づける要素です。

     

  2. 棚持ち:

    小売店に並んでからも、花蕾が開きにくく、黄色くなりにくい特性があります。これは廃棄ロスを嫌う量販店にとって、指名買いの理由になります。

     

ブロッコリー 「グランドーム」|【サカタのタネ】
上記の公式ページでも、施肥量について「10a当たり窒素20kg、リン酸25kg、カリ20kg程度を標準とします」と明記されています。この数値を基準に、ご自身の圃場の肥沃度(EC値)に合わせて増減させることが、高収益への第一歩です。

 

農業経営において、品種選びは投資です。種代の差額など、収穫時のA品率向上と収量増加で十分に回収できます。まずは地域の気候に合ったサカタの品種を、圃場の一部で試験導入し、その「根張りの強さ」と「花蕾の重量感」を実感してみてください。

 

 


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