ニンニク春腐病に効く農薬の選び方と防除タイミング

ニンニク春腐病は細菌が原因で、薬剤を使うタイミングを誤ると収量が激減します。どの農薬をいつ散布すれば最大効果を得られるのでしょうか?

ニンニク春腐病に効く農薬と防除のポイント

抗生物質剤を発症後に散布しても、期待するほどの治療効果はありません。


ニンニク春腐病|農薬と防除の3つのポイント
🧄
原因は細菌

春腐病の病原はPseudomonas属などの細菌で、雨による泥はねで傷口から感染します。

予防散布が命

発病前・降雨前の散布が鉄則。 発症後の農薬散布は効果が大幅に落ちます。

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登録農薬を正しく選ぶ

Zボルドー・アグリマイシン100など登録農薬を適切な希釈倍数・使用回数で使うことが重要です。

ニンニク春腐病の原因と発生しやすい条件



春腐病は、細菌性の病害です。 病原菌はPseudomonas属をはじめとする複数の細菌で、土壌中に長期間生息し、降雨による泥はねが葉や葉鞘の傷口に付着することで感染します。yoshidaya-garlic+1
感染が起きると、葉や葉鞘の基部から組織がとろけるように腐敗し、独特の腐敗臭が発生します。 症状が進行すると止め葉やトウが出る頃に、葉の隙間や裂けた葉鞘から雨水とともに病原細菌が鱗球まで流れ落ち、鱗球の肩が裂けたり、葉鞘基部が剥離したりします。


参考)春腐病(はるぐされびょう)


発生しやすい条件は以下の通りです。kaku-ichi+1

  • 低温・多湿が続く春先(降雨後の翌日~2日以内に急拡大しやすい)
  • 窒素肥料が過多な圃場
  • 水はけが悪く水たまりができやすい場所
  • 20g前後の大きい種子を植えた場合
  • チューリップサビダニが寄生した種子を使用した場合
  • 堆肥などの有機物を仮置きした場所の周辺

連作によって土壌中の菌密度が上がるため、毎年同じ圃場でニンニクを作り続けるとリスクが高まります。


連作は避けるのが原則です。



参考)【植物の病害あれこれ】春腐病について。春腐病の原因や防除法を…


ニンニク春腐病に登録された農薬の種類と使い方

ニンニクの春腐病に使える登録農薬には、大きく「銅剤」と「抗生物質剤」の2系統があります。 それぞれに特性の違いがあり、場面に応じた使い分けが大切です。


参考)https://www.ja-kamiina.iijan.or.jp/wp-content/uploads/2023/03/c4b5c4a5b95d5fd68d8162b78c2fc2f2.pdf


代表的な登録農薬は以下の通りです。ja-kamiina.iijan+1

農薬名 分類 主な用途 使用回数の目安
Zボルドー・ICボルドー66D 銅剤(水和剤) 予防散布 規定回数以内
カセット水和剤 銅剤 予防散布 規定回数以内
アグリマイシン-100 抗生物質剤 発症初期 収穫7日前まで・3回以内
コサイド3000 銅剤(顆粒水和剤) 予防散布 2,000倍・規定回数以内

銅剤は予防効果が高く、降雨前に散布して株全体をコーティングするイメージで使います。 一方、抗生物質剤のアグリマイシン-100は発症初期に補助的に使えますが、発病が進んでからでは効果が大幅に落ちます。


ここが重要です。銅剤のZボルドーを散布した区では、他の薬剤区と比べて発病率が特異的に高くなったという試験結果もあります。 薬剤の選択と散布時期が防除結果を大きく左右します。


参考)https://agresearcher.maff.go.jp/kadai/show/135962


ニンニク春腐病の農薬散布タイミングと正しい方法

散布のタイミングが命です。 発病後に農薬をかけても、すでに腐敗が始まった組織を回復させることはできません。降雨が予想されるときに、事前に散布して薬剤を株全体に定着させることが防除の基本となります。


散布時の具体的なポイントは以下の通りです。


  • 葉の表裏・茎・葉鞘の内側まで薬液が届くように丁寧に散布する
  • 散布後に雨が降ると薬剤が流れてしまうため、雨の直前ではなく数時間前を目安にする
  • 晴天が続いても、定期的な予防散布を怠らない
  • 発病株は農薬を散布する前に抜き取って圃場外に廃棄する

発病株を放置したまま薬剤散布しても、その株が周囲への二次感染源になり続けます。 まず腐敗株を除去、その後に残りの株への予防散布という順番を守りましょう。


また、使用回数の制限にも注意が必要です。 アグリマイシン-100であれば「収穫7日前まで・3回以内」という制限があります。制限を超えた散布は農薬取締法に抵触しますので、必ずラベルを確認してから使用してください。


参考:ニンニクの登録農薬適用表(上伊那農業協同組合
https://www.ja-kamiina.iijan.or.jp/wp-content/uploads/2023/03/c4b5c4a5b95d5fd68d8162b78c2fc2f2.pdf

ニンニク春腐病と間違えやすい「イモグサレセンチュウ」との見分け方

症状が似ているので、注意が必要です。 イモグサレセンチュウもニンニクに深刻な経済的被害をもたらす害虫で、発症初期の症状が春腐病と非常によく似ています。農薬選びを誤ると、まったく的外れな対策をしてしまうリスクがあります。


見分けるためのチェックポイントは以下の通りです。


特徴 春腐病(細菌) イモグサレセンチュウ
腐敗の始まる場所 葉・茎の上部から 発根部(根の付け根)から
腐敗の色・状態 組織がとろける・腐敗臭あり 黄褐色〜灰褐色の病斑
対策の基本 銅剤・抗生物質剤散布 くん蒸剤による土壌消毒

春腐病は上から腐る、イモグサレセンチュウは下から腐る、この違いが原則です。 発根部付近から枯れていく株が多い場合は、春腐病ではなく線虫の可能性を疑ってください。


対策も全く異なります。イモグサレセンチュウが発生した圃場の鱗片は種子に使用せず、汚染されていない圃場での栽培が原則となります。 やむを得ず汚染圃場を使う場合は、くん蒸剤による土壌消毒と鱗片種子の薬剤処理を組み合わせます。


参考:春腐病とイモグサレセンチュウの症状・対策(株式会社カク一)
【植物の病害あれこれ】春腐病について。春腐病の原因や防除法を…

農薬に頼らないニンニク春腐病の予防策と圃場管理

農薬だけが防除手段ではありません。 圃場の環境を整えることで、農薬の使用量を抑えながら発病リスクを大幅に下げられます。


これは農薬コストの削減にも直結します。



実践的な圃場管理のポイントを以下にまとめます。


  • 排水対策:水はけの悪い圃場は畝を高くして、雨水が鱗球周辺に滞留しないようにする
  • 窒素肥料の調整:過剰な窒素は葉が軟弱になり病気にかかりやすくなるため、適正施肥量を厳守する
  • 種子の選定:チューリップサビダニが寄生していない健全種子を使用する(大きすぎる種子=20g前後以上は発生リスクが上がる)
  • 残渣処理収穫後の茎や葉を圃場に放置せず、すみやかに処分して翌年の菌密度上昇を防ぐ
  • 輪作:連作を避け、数年のサイクルで他の作物と輪作する

農業誌『現代農業』では、納豆菌液を春腐病対策に散布する事例も紹介されています。 納豆菌(Bacillus subtilis)が病原細菌の繁殖を抑制するとされ、発病株の除去と組み合わせることで無農薬栽培の継続に成功した事例です。


化学農薬と圃場管理を組み合わせることが、最もコストパフォーマンスの高い防除戦略です。 特に種子選びと排水対策は、散布農薬よりも効果が長続きするため、シーズン前にしっかり対処しておくことをおすすめします。yoshidaya-garlic+1
参考:ニンニク春腐病の原因・防除・農薬情報(株式会社よしだや)
春腐病(はるぐされびょう)
参考:農林水産省 ニンニク春腐病の発生要因の解明と防除研究
https://agresearcher.maff.go.jp/kadai/show/135962




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