ネギの除草剤で最初に押さえるべきは「その作物名に登録があるか」です。公的見解として、「葉ねぎ」だけに登録のある農薬は、葉ねぎ以外のねぎ(根深ねぎ)には使用できず、逆に「ねぎ」に登録のある農薬は「葉ねぎ」に使用できるとされています。栽培しているのが根深ねぎなのか、葉ねぎ(万能ねぎタイプ等)なのかを、出荷形態ではなく“登録上の作物名”で整理してから選びましょう。
さらに見落としがちなのが「あさつき」「わけぎ」です。これらは残留農薬基準値などが異なるため、農薬登録上は「葉ねぎ」に含まれない別作物として扱う、という整理が示されています。つまり「葉ねぎに使えるから、あさつき・わけぎにも行けるだろう」という横展開は危険です。
参考)農薬の使用についての質問 - 独立行政法人農林水産消費安全技…
チェック手順はシンプルに固定化するとブレません。
「購入した後に登録内容が変わっていた」問題も現場で起こりますが、ラベルの内容を守って使用したなら農薬取締法違反に該当しない、という整理も示されています。一方で、残留基準などは変わり得るため、都道府県やメーカーの最新情報を確認する必要がある点も同時に述べられています。ここが“コンプライアンス”と“出荷リスク”の分岐点です。
参考リンク(作物分類の考え方:葉ねぎとねぎの使い分け、あさつき・わけぎが別作物である理由)
農薬の使用についての質問 - 独立行政法人農林水産消費安全技…
ネギは生育期間が長く、雑草を“ゼロに近づける設計”がないと後半で手が回らなくなりがちです。基本は、雑草が出る前に土壌処理剤で発生を抑え、取りこぼしや後発雑草を茎葉処理剤で叩く流れです。実際に、ネギ向けの解説でも「まず土壌処理剤(雑草の発生抑制)、その後に茎葉処理剤(生えた雑草に散布)」という段取りが整理されています。
土壌処理剤は「土に処理層を作り、発芽を通さない」イメージを持つと判断が楽になります。ポイントは“土の表面に均一な層を残す”ことで、散布後に強く土を動かすと層が壊れ、ムラが出て効きが落ちます。したがって、中耕や培土のタイミングと、土壌処理剤の散布タイミングをセットで設計しておく必要があります。
参考)ネギの除草剤 おすすめの除草剤と効果的な使い方
また、土壌処理剤は万能ではなく、圃場条件で効きが変わります。乾燥し過ぎ・土塊が多い・ワラや残渣が表面を覆う・散布ムラがある、などで「効かなかった」になりやすいです。こうした時は“薬剤を変える”前に、散布水量、ノズル、走行速度、畝面の整地、散布直後の作業(踏圧や過度な土寄せ)を疑った方が改善するケースがあります。
土壌処理剤は効果の持続が永遠ではないので、必要なら次の手を準備します。ネギ向けの具体例として、定植後早期に1回目、その後に30〜45日後、さらに収穫30日前までに追加、という“段階的な土壌処理”の考え方が紹介されています(使用可否や回数は製品の登録に従う必要があります)。この発想自体が、長期作であるネギの雑草管理に合います。
「いつ撒くか」は、除草剤の種類より結果に効くことがあります。特にネギは中耕培土(管理機・鍬での畝間管理)が必須になりやすく、除草剤の散布時期が中耕培土と噛み合っていないと、効きが落ちたり、逆に薬害リスクが上がったりします。
生育期に使うタイプでは、雑草の葉齢や草丈が適期から外れると、効きが急に不安定になります。例として、ネギ生育期での雑草防除について、適期として「一年生イネ科雑草:3〜5葉期」が示された資料もあり、茎葉処理の“当てどころ”が重要だと分かります。
参考)https://www.mbc-g.co.jp/cms/wp-content/uploads/2022/07/20230713lorox_nabu_01.pdf
同じ資料には、ネギ生育期で全面散布する場合のルールとして「展着剤は加えない」「他の農薬とは混ぜない」「他剤散布後は7日以上間隔を空ける」といった注意が明記されています。ここは「効かせたいから足す・混ぜる」が裏目に出やすい典型ポイントなので、製品ごとの注意事項を最上位に置きましょう。
もう一段、実務で効く“意外な盲点”が時間帯です。県の栽培情報でも、夏期の高温は薬害を生じやすく、散布者の健康負荷も大きいので比較的涼しい時間帯に行う、という注意が示されています。除草剤は特に、気温・日射・乾燥で作物側のストレスが増えると薬害が表に出やすくなるため、夏場は朝夕に寄せるだけで事故率が下がります。
参考)https://www.pref.ibaraki.jp/soshiki/nourinsuisan/nannourin/tsunofu/documents/negi2023no2.pdf
ネギの除草剤トラブルの多くは「薬害」か「効かない」の二択に見えますが、原因はだいたい条件と運用です。薬害を避ける基本は、(1)作物・使用時期が登録に合っている、(2)ラベルにある加用・混用の可否を守る、(3)高温・乾燥など薬害が出やすい条件を避ける、の3点を外さないことです。
展着剤は万能ではありません。県の資料でも、浸透性をよくする展着剤は薬害の懸念があるため組み合わせに注意、という注意が明示されています。つまり「展着剤=効きが上がるから安全」ではなく、薬害方向にもブーストし得る“刃”だと理解しておくと判断が安定します。
さらに製品によっては、展着剤を加えない、混ぜない、近接散布を避ける、といった強い制限が設定されています。たとえばネギ生育期の雑草防除に関する資料では、展着剤は加えない・他農薬と混用しない・他剤散布後7日以上の間隔、が具体的に書かれています。これを破ると、効きが上がるどころか薬害やムラの原因になりやすいので、「ラベルの注意事項が一番強いルール」として運用してください。
高温時の散布リスクは、除草剤一般の注意としても示されています。製品情報の注意事項として「高温時の散布は薬害を生じるおそれがあるので、所定範囲内の少な目の薬量とする」といった記載がある例もあります。夏のネギで薬害が出た年は、薬量だけでなく“散布時刻・前後の乾燥・風・葉面の濡れ”まで含めて記録しておくと、翌年以降の再発防止に直結します。
参考)グラメックス水和剤
検索上位の多くは「おすすめ除草剤」や「時期」中心になりがちですが、現場で一番効くのは“事故を起こさない仕組み”です。そこで独自視点として、除草剤を選ぶ前に「作物名の罠」と「記録の弱さ」を潰す運用を提案します。ポイントは、畑や担当者が変わっても再現できる形に落とすことです。
作物名の罠は、ねぎ周りで特に起きます。公的には、葉ねぎ専用登録の農薬は根深ねぎには使えない、あさつき・わけぎは葉ねぎに含まれない、という整理が明示されています。つまり、箱の表示や出荷名が似ていても“登録上は別”で、ここを間違えると適用外使用になり得ます。圃場ごとに「作型(根深/葉)」「品目(あさつき等)」を固定ラベル化し、農薬選定の最初に必ず確認するだけで、ヒヤリハットが激減します。
記録は、面倒でも最終的に自分を守ります。農薬の総使用回数のカウント期間は「は種・植付け(準備作業含む)から収穫まで」とされ、複数回収穫作物では前回収穫の直前の収穫から次の収穫まで、という考え方が示されています。ネギ(特に葉ねぎで複数回カットする形)では、収穫が“一度完全に終了する”場合は使用回数がリセットされる、という整理も出ています。こうしたルールは自己判断だとブレるので、作型ごとに台帳テンプレを作り、散布日・製品名・有効成分・回数・気象(気温・風)・展着剤の有無を最低限の項目として残してください。
最後に、意外と効く工夫を1つだけ。除草剤で完璧を狙うより、「土壌処理で発生量を落とす→適期に中耕培土→取りこぼしだけ茎葉処理」という“損失最小化の設計”に寄せた方が、薬害リスクと労力が同時に下がることが多いです。紹介されているネギの段階的な土壌処理・茎葉処理の考え方も、この設計に近いので、自分の圃場条件に合わせて無理のない回し方に調整していきましょう。