黒豆(黒大豆)の摘心は「本葉が5~6枚(5~6節)」をひとつの基準にすると判断がブレにくいです。
この段階は、茎の先端にある頂芽(成長点)がまだ柔らかく、摘心後の側枝(わき芽)が立ち上がりやすい時期だからです。
一方で、摘心を“いつでもやれば増収”と考えると事故が起きます。大豆系は生育ステージで反応が変わり、開花に近づくほど「草姿の矯正」目的に寄っていくため、圃場のねらい(莢数を増やすのか、倒伏を抑えるのか)を先に決めておく方が安全です。
本葉で数えるときの現場注意点も押さえてください。黒豆は双葉(子葉)と、その上の初生葉は「本葉の枚数」に数えない扱いが一般的で、ここを数え間違えると摘心が早過ぎになります。
参考)https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fpls.2023.1211326/pdf
特に移植や育苗で生育差が出ている圃場は、播種日基準ではなく「株ごとの本葉」と「頂芽の勢い」を優先すると、摘心後のムラが減ります。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsbbs/advpub/0/advpub_22088/_pdf
作型によっても考え方は少し変わります。たとえば枝豆として収穫する丹波黒大豆の案内では、本葉5~6枚で摘心すると側枝が出てサヤ数が増え、大粒になりやすいとされています。
つまり、摘心は“枝数を増やす”だけでなく、“着莢しやすい株姿へ誘導する”作業として組み込むと、後工程(防除・追肥・土寄せ・収穫)が楽になります。
摘心で最重要なのは、成長点(頂芽)を確実に除去することです。
家庭菜園~小規模の黒豆栽培のやり方としては、「本葉5枚を残して先端を摘心する」方法が分かりやすく、作業者間で手順が揃います。
摘心のしかたは、手でひねり取る方法と、ハサミで切る方法があります。
ハサミを使う場合の事故は、切り口よりも“病原菌の持ち込み”で起こることが多いです。剪定ハサミでカットするなら消毒を徹底し、必要なら1回ごとにエタノール等で消毒する、という考え方が紹介されています。
また、頂芽だけを狙って切ったつもりでも、勢いよく刃を入れると葉をまとめて落としてしまい、直後に株が弱ったように見えることがあります。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10505814/
ただし大豆の摘心に関する省力摘心の資料では、成長点を切除すると葉も切除されるが、2週間程度で被覆度が回復し、問題になりにくい旨が示されています。
この「見た目で焦らない」判断は、上司チェックでも突っ込まれやすいポイントなので、現場メモに残しておくと説明が通りやすいです。
黒豆で摘心をする狙いは、大きく分けて2つあります。側枝(わき芽)を増やして莢数につなげる狙いと、草丈を抑えて倒伏を防ぐ狙いです。
黒豆向けの解説では、摘心によりわき芽が増え、莢数が増えて大粒収穫につながること、さらに草丈が抑えられて倒伏防止にもなることが整理されています。
枝豆向けの資料でも、本葉5~6枚で摘心すると側枝が出てサヤ数が増え、大粒に育ちやすいとされています。
一方で「摘心=必ず増収」ではありません。大豆全般の省力摘心の実証資料では、摘心により倒伏が平均24%軽減され、収量が平均12%増えたとされ、効果は“倒伏軽減→収穫ロス減”という経路も含むことが読み取れます。
つまり、圃場で倒伏が常習化している場合は、摘心を「莢数を増やす技術」だけでなく、「コンバインに入る豆を増やす技術」として設計する方が合理的です。
逆に、倒伏リスクが小さい圃場で枝葉が過剰に出ると、莢付きが悪い方向に振れやすいので、摘心だけでなく肥培管理とセットで詰める必要があります。
ここで、農業従事者向けに“言い換え”を用意しておくと便利です。
・側枝目的:本葉5~6枚で頂芽を落として、側枝の立ち上がりを早める。
・倒伏目的:開花に近い時期の摘心で縦伸びを止め、倒れにくい草姿へ寄せる(大豆資料では開花7日前~開花期が適期として示される)。
同じ「摘心」でも、狙いが違えば適期の考え方が変わる、ここが上級者の整理です。
現場では「気づいたら適期を過ぎていた」が普通に起こります。黒豆の摘心は必須ではない、という前提を持っておくと、無理な追い摘心で壊す確率が下がります。
黒豆の摘心が遅れた場合の目安として、本葉8枚頃ならその時点で摘心してもよいが、花が咲いてしまっているようなら摘心は不要で、そのまま育てるという考え方が示されています。
この判断は“正解が一つ”ではなく、圃場の目的(枝豆か子実か)、倒伏リスク、今後の天候で微調整してください。
遅れたときにやりがちな失敗は、「取り返そうとして深く切る」ことです。深く切るほど再生に時間がかかり、結果的に着莢期の光合成とバランスがズレやすくなります。
そこでリカバリーの基本は、摘心を諦めるか、やるなら“頂芽だけを確実に落とす最小の切り方”に留め、以降の管理で取り戻す設計に切り替えます。
具体的には、枝豆の資料で示されているように、生育初期は湿気に弱いので乾燥気味に、花が咲いてからは水が足りないとサヤができにくいので土の表面が乾いたら水やり、という水分のメリハリを崩さないことが重要です。
また、倒伏が気になる圃場では摘心を外しても、土寄せ(中耕を兼ねる)を丁寧にして株元を安定させる、という“地味だが効く”手段があります。
摘心だけに頼らず、株姿の安定・水分・病害虫防除まで含めて「倒れないで収穫まで運ぶ」設計にすると、結果として歩留まりが上がりやすいです。
検索上位の説明は摘心単体に寄りがちですが、黒豆は「摘心したのに莢が少ない」という事故が起きます。ここで疑うべきは、摘心の成否より“肥料が効きすぎていないか”です。
黒豆などマメ類は根粒菌と共生し窒素供給を受けやすいので、窒素を与え過ぎると枝葉ばかり茂って莢が付かない「つるぼけ」リスクがあると解説されています。
つまり、摘心で側枝を増やしても、窒素過多で栄養成長に偏れば、莢数増を“花落ち・着莢不良”で相殺してしまう可能性があります。
このときの現場チェックは、難しい分析機器より目視で十分役立ちます。
・枝葉が濃緑で勢いが強すぎる、節間が伸びる、株が柔らかい:肥料・水分過多を疑う。
・開花後に乾きやすい圃場でサヤが伸びない:水分不足を疑う(花が咲いてからは水不足でサヤができにくい)。
・倒伏が出て収穫ロスが増える:摘心で倒伏軽減を狙う設計に切り替える余地がある。
この「摘心・肥料・水分・倒伏」を同じ紙の上で同時に点検する発想が、作業の優先順位を決めるときに効きます。
参考:摘心の時期(本葉5~6枚)と側枝・サヤ数の考え方
https://www.jan.or.jp/agriculture/pdf/guide_202007.pdf
参考:黒豆の摘心位置(本葉5枚残し)・双葉/初生葉の数え方・ハサミ消毒の注意
https://www.noukaweb.com/black-soybeans-pinching/
参考:大豆の省力摘心で倒伏軽減(平均24%)・増収(平均12%)と適期(開花7日前~開花期)
https://www.pref.aichi.jp/uploaded/attachment/515318.pdf