栗の施肥は「基肥(寒肥)・追肥・礼肥」の3回を基本線にすると、現場で判断がブレにくくなります。高知県の施肥例でも、基肥は2月下旬、追肥は7月上旬、礼肥は収穫終了直後という設計になっています。年間の成分量(kg/10a)として、基肥で窒素9・リン酸6・カリ5、追肥で窒素3・リン酸2・カリ2、礼肥で窒素4・リン酸2・カリ2、合計で窒素16・リン酸10・カリ9という具体値が示されています。こうした「回数と時期」を先に決め、樹勢や土壌分析で量を調整するのが安全です。
基肥の狙いは、春の新梢伸長・葉の展開・根の立ち上がりを支えることです。ここで速効性を多用すると、効き方が急で徒長や軟弱化につながりやすいので、基本は有機質肥料・緩効性肥料主体が推奨されています。高知県の資料でも「有機質肥料・緩効性肥料を主体」と明記されています。
現場で効く手順は、次の3点をセットで押さえることです。
「意外と落とし穴」なのが、石灰と肥料の同時投入です。果樹の土壌改良の考え方として、石灰資材の種類によって肥料との間隔の目安が変わり、消石灰は10日以上(理想14日以上)、苦土石灰は7日以上、有機石灰は翌日以降(ほぼ同時でも支障が少ない)とされています。つまり、pH矯正を“今すぐ”やりたくても、基肥の投入日が迫っているなら資材選択と段取りが収量に直結します。
参考:石灰資材ごとの施用間隔の目安(消石灰・苦土石灰・有機石灰)
https://www.kajyu.org/saibai-nasi-dojyou1.html
追肥は「やり過ぎない」が鉄則で、果実肥大期に不足分を補う位置づけです。高知県の施肥例では追肥時期は7月上旬、成分量は窒素3・リン酸2・カリ2(kg/10a)と、基肥より控えめに設計されています。ここで窒素を強く効かせると、枝葉が勝って翌年の花芽や結実が不安定になりやすいので、「樹勢の見立て」が重要になります。
追肥の判断材料は、数字と目視を合わせると精度が上がります。
また、高知県の資料にある通り、施肥量・施用時期は「気象条件・土質・樹勢等を考慮して行う」とされています。つまり、追肥はカレンダー作業ではなく「その年の園の状態」を加味して初めて効果が出ます。
礼肥(お礼肥)は、収穫で消耗した樹を回復させ、翌年の花芽や根の準備につなげる施肥です。高知県の施肥例では礼肥は「収穫終了直後」、成分量は窒素4・リン酸2・カリ2(kg/10a)と示されています。ここで遅らせ過ぎると、地温が下がって根の活動が落ち、与えた成分が“樹の貯金”になりにくい年も出ます。
礼肥で現場差が出るのは、「収穫後の土づくり」とセットで考えるかどうかです。高知県の留意点には、土づくりのために堆肥や敷きワラ・敷草等を行う、とあります。礼肥を単独で入れるより、堆肥・敷草で土壌環境(保水・通気・微生物の餌)を整えるほうが、次年度の立ち上がりが安定しやすいのは現場でも実感されやすいポイントです。
さらに、礼肥の設計は「多収年ほど翌年の不作を招きやすい」問題への対策にもなります。収穫量が多い年は、礼肥をきっちり入れて回復を助けると、樹勢の落ち込みを緩和しやすくなります(ただし窒素の入れ過ぎは逆効果になり得るので、土壌分析と葉色・新梢の状態を見ながら調整が必要です)。
参考:クリの施肥例(基肥2月下旬、追肥7月上旬、礼肥は収穫終了直後、成分量kg/10aの具体表)
https://www.nogyo.tosa.pref.kochi.lg.jp/info/dtl.php?ID=2533
栗園の施肥で「肥料の効き」を決めるのは、成分量だけでなく土壌pHの段取りです。高知県の留意点では、土壌pH5.0〜5.5を目安に調整し、石灰質資材は基肥施用の1ヶ月前までに施用して混和するとされています。つまり、基肥の日程を決めたら逆算で“石灰の作業日”を先に押さえる必要があります。
pH調整の現場手順を、作業に落とし込むとこうなります。
意外に見落とされるのが、「石灰を入れたから安心」ではなく、pHは有機物投入や降雨、施肥で毎年動くという点です。果樹の石灰利用に関する説明でも、pHは経年変化や有機肥料の使用などの影響を受け毎年変化する、とされています。だからこそ、土壌分析→石灰→基肥の順番を“毎年の型”にすると、肥料費のムダ打ちが減り、樹勢の波も小さくなります。
検索上位の解説は「2月・7月・収穫後」と時期の説明が中心になりがちですが、農業従事者が本当に欲しいのは“翌年も再現できる型”です。その核になるのが、高知県資料が繰り返し強調している「施肥前土壌分析の結果を考慮して施肥設計」「気象条件・土質・樹勢等を考慮」「堆肥や敷きワラ・敷草」といった、時期以外の運用ルールです。
再現性を上げるための、現場のメモ(記録)項目を提案します。作業日誌に残しておくと、担当が変わっても施肥がブレません。
「意外な効果」が出やすいのは、肥料成分をいじるより先に、敷草や堆肥で根の環境を整えたケースです。高知県資料は土づくりとして堆肥・敷きワラ・敷草を挙げていますが、これは単なる“有機物推し”ではなく、施肥の効き方(流亡・保持・微生物分解のテンポ)を安定させるための土台づくりです。結果として、同じ施肥時期でも効き過ぎ・効かな過ぎの年ブレが小さくなり、収量の谷が浅くなります。
(ここまでの設計を押さえたうえで、園地ごとの最適化は「基肥を固定し、追肥と礼肥を微調整する」やり方が失敗しにくいです。高知県の施肥例のように、基肥の比重を高く、追肥・礼肥を控えめにしておく設計は、過剰施肥のリスクを下げる実務的な形と言えます。)

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