収穫量が増えるほど、あなたのロボット費用が下がっていく。
自動収穫ロボットの導入を検討するとき、最初に気になるのはやはり「価格」です。ひとくちに収穫ロボットといっても、対象作物や搭載機能によって価格帯は大きく異なります。まずは作物別の価格相場の全体像を把握しておきましょう。
野菜収穫ロボットの場合、単機能タイプで300万円〜500万円程度、AIや複数センサーを搭載した複合タイプになると1,000万円以上になることも珍しくありません。果物収穫ロボットでは800万円〜2,000万円程度が相場で、大規模農場向けになると1億円を超えるケースもあります。穀物収穫ロボットは1,000万円〜3,000万円程度が中心となっており、稲作など広大な圃場に対応する大型モデルは5,000万円以上になることもあります。
これは高い買い物です。ただし、全てを一括購入する必要はありません。
代表的な製品の価格を具体的に見ると、AGRISTが販売するピーマン自動収穫ロボット「L」は、吊り下げ式の独自構造により従来比1/5〜1/10のコストを実現し、普及価格帯での提供を目指しています。アイナックシステムのいちご自動収穫ロボット「ロボつみ」は、本体価格が1台250万円ですが、コントローラー代や設置費を含めると総額400万円ほどになります。一般的な市販ロボットを改造した製品が1,000万円を超える中で、これは比較的リーズナブルな選択肢といえます。
また、機能をシンプルに絞れば導入コストをさらに抑えることができます。たとえば運搬機能に特化したヤンマーの「野菜作業車NC14」は509,300円(税込)で導入でき、50万円台から農業ロボットを使い始めることが可能です。つまり価格が基本です。何のためにロボットを使うのかを明確にしてから選ぶ姿勢が、最適なコスト管理につながります。
| 作物・機種タイプ | 価格帯の目安 | 代表製品例 |
|---|---|---|
| 野菜収穫(単機能) | 300万〜500万円 | AGRIST「L」(ピーマン) |
| 野菜収穫(複合AI搭載) | 1,000万円以上 | パナソニック トマト収穫ロボット |
| いちご収穫ロボット | 400万円前後(設置費込み) | アイナックシステム「ロボつみ」 |
| えだまめ収穫ロボット(全自動) | 1,334万円 | 松元機工「MCBH11」 |
| 果物収穫ロボット(大規模向け) | 800万〜2,000万円以上 | 各社農業用アームロボット |
| 穀物収穫ロボット | 1,000万〜5,000万円以上 | 自動コンバイン型など |
価格を作物別に見るだけでも、導入先が変われば求める機能もまったく異なることがわかります。「とにかく高い」で諦める前に、自分の経営に合った機種の絞り込みから始めてみてください。
農林水産省が公開しているスマート農業機械の導入事例や費用情報は、下記のページで確認できます。
「自動収穫ロボットは買うもの」という考え方は、もう古いかもしれません。近年、農業向けのRaaS(Robot as a Service)と呼ばれる収穫量連動型のサービスモデルが注目されています。このモデルでは、ロボット本体を購入するのではなく、利用した分だけ費用を支払う仕組みになっており、初期費用を大幅に抑えて導入できるのが最大の特徴です。
代表的なのがinaho株式会社のAI自動収穫ロボットサービスです。このサービスでは、初期費用・メンテナンス費用がともに0円で、利用料は「市場の取引価格×収穫量の一定割合」という完全な出来高連動制をとっています。つまり、収穫できた量に応じて費用が決まるため、天候不順などで収穫量が減っても費用リスクが最小限に抑えられます。これは使えそうです。
inahoのRaaSモデルの利用料は現在収穫額の約15%が目安とされています。たとえば1,000万円分のアスパラを収穫した場合、利用料は150万円程度になる計算です。従来、農家はこの収穫作業のために180万円程度の人件費をかけていたとのデータもあり、コスト的に同水準または下回る可能性があります。
このRaaSモデルには、費用以外にもメリットがあります。
一方で、長期的に見ると収穫量が多い大規模農家では、購入型より総コストが高くなる可能性もあります。これが条件です。自分の経営規模と収穫量をもとに、購入型とRaaS型のどちらが合っているかを試算してみることをおすすめします。
RaaSモデルの仕組みや農業ロボット市場の最新動向については、以下の記事も参考になります。
SMART AGRI:佐賀市に自動野菜収穫ロボットの拠点が誕生(inahoのRaaSモデル紹介)
自動収穫ロボットの価格は高額に見えますが、補助金を正しく活用すれば、実質的な自己負担を大幅に圧縮できます。農林水産省や各都道府県では、スマート農業機械の導入に対して複数の補助事業を設けており、活用しないのは文字通り損です。
最も注目すべき制度が、農林水産省によるスマート農業機械等導入支援補助金です。収穫ロボットなどの導入にかかる費用のうち、年間最大5,000万円まで助成(費用の最大1/2)が受けられ、最長3年間にわたって継続して補助を受けることができます。1,000万円の収穫ロボットを導入する場合、最大500万円が助成される計算になります。
また、農業経営改善を目的とした「地域農業構造転換支援事業」でも、中核的な担い手が農業用機械や施設の導入費用に対して補助を受けられます。新規就農者を対象にした「農業次世代人材投資事業(経営発展支援)」では、農業機械・施設の導入に対して最大1,000万円の補助が設けられています。
補助金の活用は手続きが複雑に感じられることもありますが、実際にやることは1つで済みます。まずは都道府県の農業改良普及センターや農業委員会に連絡して、現在募集中の補助事業の一覧をもらうことです。窓口へのひと声で、数百万円の差が生まれることもあります。
補助金は申請期間が決まっており、タイミングを逃すと翌年度まで待つことになります。補助金には期限があります。農林水産省の最新公募情報は下記の公式ページで常時確認できます。
高い初期費用を払ってでも収穫ロボットを導入する価値があるのか——。農家にとって最も重要なのは、この費用対効果の判断です。具体的な数字で見ていきましょう。
AGRISTが公表しているデータによると、ピーマン農家がロボットを導入した場合、収穫作業時間を20%以上削減できるとされています。さらに、10アールあたりの売上(反収)が20%以上向上するという試算も出ており、収益性の指標としては非常に大きな改善です。3年で投資回収が見込めるケースもあるということですね。
人件費削減という観点からも効果は明確です。繁忙期に6人1組で対応していた収穫作業が2人でできるようになった農場事例もあり、1シーズンの人件費削減だけで数百万円規模になることもあります。AGRISTが宮崎県で支援した農家では、ロボット導入後に年間約100万円の収益増加(3年間合計で約300万円増)が確認されています。
費用対効果を左右するのは、主に次の3つの要素です。
逆に、小規模経営では効果が出にくい場合もあります。作付面積が1ヘクタール未満のハウス農家では、ロボットより人力のほうが合計コストが低くなるケースも現実にあります。冷静なシミュレーションが原則です。
導入検討にあたっては、農業機械・施設の導入費用を年単位で試算する際に農業経営コンサルタントや農業改良普及員への相談が有効です。自分の経営数字を整理した上で相談に行くと、より具体的なアドバイスが得やすくなります。
価格と補助金と費用対効果——ここまで数字の話を中心にしてきましたが、実際の導入現場では「いくらで買えるか」以上に大事なことがあります。それが「導入後に使い続けられる環境かどうか」という視点です。
収穫ロボットは精密機械であるため、故障対応が遅れるとすぐに収穫に影響が出ます。繁忙期の最中にロボットが停止した場合、修理を待っている間も作物はどんどん成長します。ピーマンは1日収穫を休んだだけで規格外サイズまで育ってしまうため、サポート体制の確認は必須です。
導入前に確認しておくべきポイントは以下のとおりです。
また、見落とされがちな視点として「ハウスの改修コスト」があります。レール型のロボットを導入する場合、既存ハウスへのレール設置工事費が別途かかることがあります。AGRISTの吊り下げ式「L」のように既存ハウスにワイヤーを張るだけで済むタイプなら、改修費用を抑えられます。意外ですね。本体価格だけでなく、設置費・改修費・メンテナンス費も含めた「トータルコスト」で比較することが、失敗しない選び方の基本です。
さらに、収穫ロボットは導入して終わりではなく、データを使いこなすことで経営改善につながる「育てる機械」でもあります。収穫量・熟度分布・収穫ピークのデータが蓄積されると、翌シーズンの出荷計画や施肥・温度管理の見直しにも活用できます。ロボットと農家が一緒に成長していくイメージです。
収穫ロボットの最新機種情報や各社の比較検討には、以下のページも参考になります。
農業土木:収穫が自動化できる「収穫ロボット」おすすめ5社を紹介