若齢幼虫は黒アリとそっくりで、畑で踏み潰しても害虫を退治したことにはなりません。
ホソヘリカメムシの幼虫は、成虫とはまったく違う姿をしています。1齢から5齢まで、クロヤマアリに非常によく似た黒い体形をしており、ルーペなしでは「アリだ」と判断してしまうほどの擬態精度です。
参考)ホソヘリカメムシ 軟弱な体を臭いと擬態で守る –…
成虫は体長14〜17mm(名刺の短辺ほど)で黒褐色〜赤褐色ですが、幼虫は体全体が黒く、胸部と腹部の間にアリのような「くびれ」があります。 アリとの判別ポイントは「口針(口吻)の有無」で、カメムシ幼虫には細い口針があります。これはルーペで確認するか、指でつまんだときに臭いを放つかどうかでも判断できます。wikipedia+1
幼虫の成長は1齢から5齢まで5段階あり、20〜30日ほどで羽化します。 若齢(1〜3齢)では黒くアリに酷似し、老齢(4〜5齢)になると茶褐色みが増して少しずつ成虫らしくなります。被害力は若齢より老齢幼虫のほうが大きく、3齢幼虫が一番頻繁に加害します。 つまり「若いうちに見つける」ことが防除の鉄則です。naro+1
| 齢期 | 見た目の特徴 | 加害の特性 |
|---|---|---|
| 1〜2齢(若齢) | 黒く小さい、クロヤマアリとほぼ区別不可 | 加害頻度は低め |
| 3齢(中齢) | やや大きく、くびれが目立つ | 加害頻度が最も高い |
| 4〜5齢(老齢) | 茶褐色みが増し、翅芽が見え始める | 1頭あたりの被害量が最大 |
被害は「いつ吸汁されたか」によって症状が大きく変わります。
これが重要です。
莢が伸び始める初期(莢伸長初期)に加害を受けると「落莢」や「板豆(ひらたく変形した粒)」が発生し、転選機にはじかれるため収量に直接響きます。 一方、子実肥大中期以降の加害では変形は少ないものの「変色粒」となり、品質等級を下げる原因になります。
参考)https://www.naro.go.jp/project/research_activities/daizukamemusi_full_3.pdf
加害が激しい圃場では「青立ち」と呼ばれる異常現象も起こります。 茎や葉がいつまでも緑色のまま落葉しない状態で、収穫適期の判断が難しくなります。
兵庫県の調査では、被害粒率が10.9%を超えると収量が10%減少することが報告されています。 50株あたり0.2頭という極めて少ない密度でも防除の要否を検討しなければならないほど、影響は深刻です。
発生を見逃さないための調査法が「払い落とし(ビーティングネット法)」です。直径60cmの円形ビーティングネットを畝間に差し込み、2〜3茎を上から下へ4〜5回叩き込んでネット上に落としてカウントします。 見とり調査より短時間で済み、他の害虫(ハスモンヨトウ等)も同時確認できる点が実用的です。
調査の目安は100茎(約50株)で、気温が高い日は成虫が飛んで逃げるため、なるべく早朝や曇天時に行うのがコツです。
覚えておくべき数字があります。
福井県のデータでは、被害粒率5%を基準とすると8月下旬の防除判断ラインは「0.3頭/100茎」という非常に低い水準です。 つまり、ほぼいないように見えても防除が必要な状況があります。
これは使えそうです。
フェロモントラップを活用する方法もあります。農研機構の研究では、8月のトラップ誘殺数が15頭以下なら推定被害粒率5%以下(防除不要)、30頭以上なら10%超(防除必要)と判断できることが示されています。 富士フレーバー株式会社からホソヘリカメムシ専用の誘引剤が市販されており、事前のモニタリングに活用できます。
参考:農研機構が公開するダイズカメムシ類のフェロモントラップ設置・解析方法の詳細はこちら
農研機構|ダイズカメムシ類対策マニュアル(2020年3月)── トラップ誘殺数と被害粒率の関係図・要防除水準の詳細データが掲載
防除は「時期」と「薬剤の残効」の2点が核心です。開花後30〜40日後(子実肥大初期)が最も効果的なタイミングで、被害が中程度(10〜20%予想)の場合はこの時期に1回散布します。 被害が20%超の大発生が予想される場合は、開花20〜30日後と40〜50日後の2回防除が推奨されます。
薬剤の選定では「残効14日以上」を目安にします。 ピレスロイド系(トレボン乳剤など)や有機リン系(スミチオン乳剤など)が代表的で、10aあたりの散布量は150〜300Lを目安に莢によく付着させることが大切です。
一方、注意点もあります。
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ホソヘリカメムシは腸内の共生細菌(Burkholderia属)の働きにより、有機リン系殺虫剤(フェニトロチオン)への耐性を獲得する事例が報告されています。 同じ系統の薬剤を毎年使い続けると、効果が落ちる可能性があります。RAC(作用機構)コードを確認しながら系統を変えてローテーションする習慣が防除効果を維持するカギです。
参考)【ホソヘリカメムシ】…アリに擬態、共生細菌で薬剤耐性、競争者…
参考:秋田県病害虫防除所が公開する防除薬剤リストとRAC別使用タイミングの一覧
秋田県病害虫防除所|大豆のホソヘリカメムシが多い(令和4年度防除対策情報)── 農薬名・希釈倍率・散布時期の実用的な一覧表を掲載
農薬以外にも、耕種的な工夫で被害を大きく減らせます。意外なことを言うようですが、「播種を遅らせる」だけで吸害粒率を半分程度に減らせることが埼玉県農業試験場の実証で示されています。 慣行の播種(6月下旬)より10日ほど遅く播くことで、カメムシ類の発生ピークと莢肥大期のズレが生じ、被害が軽減されます。
参考)https://www.pref.saitama.lg.jp/documents/32295/2019041003daizukamemushi.pdf
ただし、遅播きしすぎると逆に収量が落ちるリスクもあります。 品種の選択も有効で、小粒多莢の品種は補償作用が働きやすく、被害粒の割合を相対的に下げられます。つまり「品種×播種時期」の組み合わせが農薬コストを減らす第一歩です。
また、エダマメ・枝豆を集団化して一斉防除する面的防除も効果が高まります。 隣接農家と連携して同じタイミングで防除することで、周辺圃場からのカメムシ再侵入を抑えられます。圃場が小さいほど単独防除の効果は薄れるため、JAや集落単位での話し合いがカメムシ対策の最後の砦と言えます。
参考)http://www.ja-toukatsuchuou.or.jp/agri/0205IMG.pdf
参考:播種時期とカメムシ被害抑制の関係を詳しく解説した農業試験データはこちら
埼玉県農業試験場|ダイズ子実吸汁性カメムシ類の被害軽減に向けたIPMの実証 ── 播種時期別の被害粒率比較グラフを掲載

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