塩化カリウム(いわゆる塩化加里)は、カリ(K)を補うための代表的な加里肥料で、肥料成分として「N0-P0-K60」のようにカリ成分が高い製品が流通しています。
原料が加里鉱石で、肥効は速効性に位置づけられ、元肥・追肥どちらにも使われる設計の資材が多いのが特徴です。
カリウムは作物体内の浸透圧調整や水分の保持に関わり、結果として茎葉や塊根の充実、収量や品質の底上げに寄与しやすい栄養素です。
参考)カリウムを含む肥料の種類と効果・使い方を徹底解説 - アグリ…
一方で「カリは入れれば入れるほど効く」ではなく、窒素とのバランス(目安としてN:K2O=1:1〜1:1.5程度)を意識して施肥設計を組む、という考え方が紹介されています。
現場でありがちな勘違いは「カリ不足=すぐ塩化カリ多投」で、これは効かせる以前に“濃度障害(肥料やけ)”側のリスクを呼びやすい点が要注意です。
参考)http://bsikagaku.jp/f-fertilization/MOP.pdf
塩化加里は施用後に土壌ECと浸透圧を速く上げやすく、多量施用(特に追肥での多量施用)は避けるべき、という注意喚起があります。
実務としては、まず土壌診断(交換性Kなど)で「本当に不足しているか」を押さえ、必要量だけ入れるのが最短で安全です。
参考)https://agrin.jp/documents/2946/manual.pdf
肥料コスト低減マニュアルでも、交換性カリが一定以上なら施肥中止や減肥を検討し、CEC(塩基置換容量)も考慮して判断する、といった方針が示されています。
塩化カリウムは元肥・追肥に使われることがありますが、どの作物でも共通して大事なのは「一発で多量に入れない」ことです。
とくに追肥は根が密な場所に効かせやすい反面、局所的に濃度が上がって肥料やけを起こしやすいので、追肥量を欲張らない・雨や灌水で溶かし込みやすい条件を選ぶ、といった運用が安全側です。
水田では、塩化カリを基肥や中間追肥で施す運用が一般的に語られ、作土の状態や稲わら還元など条件次第で減肥できるケースもあります。
実際、コスト低減の観点からも「交換性カリが高い」「稲わら全量還元」など条件が揃えば、基肥カリを削減できるといった例が示されています。
畑・施設では話が変わり、塩類集積(施肥の蓄積でECが上がる現象)への警戒が強まります。
参考)https://www.pref.mie.lg.jp/common/content/001083627.pdf
施設土壌の塩類集積を回避する施肥法を検討した研究(北海道立総合研究機構の成果)もあり、「塩類を溜めない」設計が収量以前に経営を守る、という視点が重要になります。
参考)https://www.hro.or.jp/agricultural/center/result/kenkyuseika/gaiyosho/h13gaiyo/2001302.htm
ここでの実務ポイントを、やることベースで整理します。
カリ肥料として、塩化カリウムと硫酸カリウムは比較されることが多く、価格高騰局面では塩化カリウムをコスト低減策として検討する流れがあります。
農研機構(果樹の成果情報)では、モモ栽培で硫酸カリウムより安価な塩化カリウムを同等量施用しても、塩素の濃度障害や塩基の溶脱などの問題はなく、硫酸カリウムと同様に用いることができる、という結論が示されています。
つまり「塩化カリ=全面的にダメ」ではなく、作物・施用量・管理条件が揃えば置き換え可能な場面がある、というのが現実的な整理です。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9785884/
ただし、置き換えの判断を“価格だけ”でやるのは危険で、塩化物を入れる以上は塩素の影響(作物感受性)と、土壌側の塩類集積・EC上昇リスクを同時に見ないと、後から修正コストが膨らみます。
また、畑作の現場では「畑では硫酸カリを施用するのが良い」といった行政資料の記述もあり、塩化物系の扱いに慎重な姿勢が示されています。
参考)https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/61240.pdf
この系統の資料が言いたい核心は、硫酸カリの“絶対優位”というより、塩化物系は条件によってリスクが跳ねやすいので、標準解としては硫酸カリ寄りに置いておく方が事故が少ない、という実務判断です。
塩化カリウムの最大の注意点は「カリ」ではなく「塩化物(塩素)」が一緒に入ることです。
北海道のてんさい関連の成果情報では、塩化カリ施用がてんさい茎葉の塩素保有量を高め、茎葉の塩素利用率の推定値が平均32%とされています。
この“塩素が作物体に入る”事実は、裏を返すと、作物残渣(茎葉)をすき込む栽培体系では、塩素の行方(どれくらい作物に入り、どれくらい土壌に残るか)を意識する必要がある、ということです。
参考)https://www.mdpi.com/2075-1729/12/10/1577/pdf?version=1665478425
ただし同じ成果情報では、てんさい作付け翌年春季の土壌塩素含量は0.0〜6.7 mg/100gで、塩化カリ区と対照区に有意差がない、というデータが示されています。
さらに重要なのが、後作物への影響で、てんさい後作のばれいしょ・豆類の生育や収量は対照(硫酸カリ)と同等で、塩化カリ施用の悪影響は認められない、という整理です。
ばれいしょ塊茎の塩素濃度は塩化カリ区で有意に高いものの、その差は0.03%と小さい、という点まで書かれており、「増えるが、直ちに問題化しない範囲」というニュアンスが読み取れます。
一方で、土壌・栽培環境が変わると話は別で、特に施設栽培や乾燥条件では塩類集積が問題になりやすいことが、適正施肥の資料でも注意されています。
塩化加里そのものも、多量施用で土壌ECと浸透圧を速く上げ、濃度障害を起こしやすいので避ける、というかなりストレートな注意が出ています。
塩類集積を“気合いの水やり”で解決しようとして悪化するケースもあるため、チェック項目を固定して運用するのが現場では効きます。
独自視点として押さえたいのは、塩化カリウムが「単なるカリ肥料」ではなく、状況によっては“リスク低減資材”として扱われる場面があることです。
水稲では、土壌中の交換性カリが低いままだと放射性セシウムが高濃度で吸収されやすく、カリ施肥により放射性セシウムの吸収を抑えることができる、と整理されています。
この文脈では、塩化カリの施用量や、交換性カリ含量の目標値(例:25 mg K2O/100gを目標に施用)に触れた資料もあり、「どれくらい入れるか」を目標値に紐づけて設計する発想が重要になります。
参考)https://jrsm.jp/shinsai/1-3_Yoshioka.pdf
また別の資料では、水稲の放射性Cs吸収抑制には塩化カリ施肥が有効という前提のうえで、施肥時期が早いほど抑制効果が高い、という結果が報告されています。
参考)https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/453788.pdf
ここから得られる現場の学びは、肥料は“量”だけでなく“タイミング”が成果を左右する、という当たり前を、データ付きで再確認できる点です。
さらに応用として、稲作に限らず「カリを先に効かせておくと、後から起きる望ましくない吸収を抑える」という発想は、要素間の競合(同じ輸送経路を使うイオン)を意識した施肥設計に繋がります。
最後に、塩化カリウムを“怖がりすぎず、甘く見すぎず”に使うための、判断の軸を置いておきます。
土壌や作物で判断基準が変わるため、地域の施肥基準や作物別の指導資料も必ず併用してください。
栽培での置き換え検討(モモでの硫酸カリ同様利用、コスト面の背景)
https://www.naro.go.jp/project/results/laboratory/fruit/2015/fruit15_s01.html
てんさい施用と後作(ばれいしょ・豆類)への影響、土壌塩素や茎葉の塩素利用率(32%)などデータ
https://www.naro.go.jp/laboratory/harc/contents/files/kankyo01.pdf
肥料コスト低減の考え方(交換性カリとCECを見て減肥・中止を判断する例)
https://agrin.jp/documents/2946/manual.pdf
水稲の放射性セシウム吸収抑制とカリ施肥(塩化カリ施用、交換性カリ目標の考え方)
https://jrsm.jp/shinsai/1-3_Yoshioka.pdf