エリアンサス電源開発のバイオマス混焼燃料栽培実証試験

エリアンサスと電源開発の関係とは?バイオマス混焼や耕作放棄地活用に向けた実証試験の全貌と、農家への意外なメリットを徹底解説。次世代燃料の可能性は農業を救うのか?

エリアンサスと電源開発

エリアンサス×電源開発の要点
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驚異のバイオマス作物

ススキに似た多年草で、一度植えれば10年以上収穫可能。高い乾燥収量(20t/ha)を誇る。

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石炭火力の脱炭素化

電源開発(J-POWER)等が石炭混焼用燃料として注目。輸入ペレットに代わる国産燃料へ。

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耕作放棄地の救世主

手間がかからず獣害にも強い。荒廃農地をエネルギー生産拠点に変える新たなビジネスモデル。

エリアンサスのバイオマス燃料としての特徴


エリアンサス(Erianthus)という植物をご存知でしょうか。一見すると背の高いススキのように見えますが、実は「エネルギー作物」として世界中で注目を集めているイネ科の多年草です。特に日本国内においては、電源開発(J-POWER)をはじめとする電力会社や研究機関が、石炭火力発電所でのバイオマス混焼用燃料としての利用可能性を真剣に模索しています。なぜ今、杉やヒノキといった木質バイオマスではなく、草本系(そうほんけい)のエリアンサスが選ばれているのでしょうか。その最大の理由は、圧倒的な「生産効率」と「低コスト性」にあります。


まず、エリアンサスの成長スピードは驚異的です。種子を撒いてから数年で草丈は3メートルから4メートル以上に達し、大人の背丈を優に超える巨大なバイオマス(生物資源)の塊となります。一般的な木材が燃料として利用できる大きさに育つまで数十年かかるのに対し、エリアンサスは毎年収穫が可能です。しかも、一度定植(植え付け)を行えば、その後10年以上は株が生き続け、毎年春になれば新しい芽を出し、冬には収穫できる状態に育ちます。この「株出し栽培」が可能な点は、サトウキビなどと同様で、農家にとっては毎年の植え付け作業が不要になるという巨大なメリットを生み出します。


特筆すべきは、その乾燥収量の多さです。条件が良い農地であれば、1ヘクタールあたり年間約20トンから25トンもの乾燥重量が得られるというデータがあります。これは一般的な牧草やススキと比較しても2倍以上の収量であり、単位面積あたりで生産できるエネルギー量が非常に多いことを意味します。バイオマス発電において燃料の調達コストは事業の採算性を左右する最大の要因ですが、狭い日本の農地でも効率よく大量の燃料を確保できるエリアンサスは、まさに「国産エネルギーの切り札」となり得るポテンシャルを秘めています。


また、燃料としての品質も安定しています。エリアンサスは冬になると地上部が立ち枯れし、自然に乾燥が進みます。含水率が20%以下に下がった状態で収穫できるため、収穫後の乾燥工程を大幅に短縮、あるいは省略することが可能です。水分が多いバイオマス燃料は燃焼効率を下げるだけでなく、運搬時の重量コスト増や保管時の腐敗リスクを招きますが、エリアンサスはこの「天然の乾燥機能」を持っている点で非常に優秀です。


農研機構が開発した品種「JES1」について、以下のリンク先で詳細な特徴や開発経緯が解説されています。


農研機構:資源作物「エリアンサス」を原料とする地域自給燃料の事業化 - 世界初の品種「JES1」の特徴とペレット化技術についての詳細

電源開発が進めるエリアンサス混焼実証試験

日本の電力供給の一翼を担う電源開発(J-POWER)は、脱炭素社会の実現に向けて、石炭火力発電所におけるバイオマス混焼率の引き上げを急ピッチで進めています。石炭とバイオマスを混ぜて燃やす「混焼」は、既存の発電設備を有効活用しながらCO2排出量を削減できる現実的な解法ですが、その実現には安価で大量、かつ安定的に供給されるバイオマス燃料が不可欠です。これまで主流だった輸入木質ペレットは、海外情勢による価格変動や輸送に伴うCO2排出という課題を抱えていました。そこで白羽の矢が立ったのが、国内で生産可能なエリアンサスです。


電源開発が進める実証試験やプロジェクトでは、単に「燃えるかどうか」だけでなく、栽培から収穫、運搬、そして発電所での利用に至るまでのサプライチェーン全体の実効性が検証されています。具体的には、発電所の周辺地域や未利用地を活用してエリアンサスを大規模に栽培し、それを地元の火力発電所で消費する「地産地消型エネルギーモデル」の構築です。これにより、輸送コストを極限まで下げると同時に、地域経済への貢献も目指しています。


実証試験における重要な検証項目の一つが、ボイラーへの影響です。草本系バイオマスは木質系に比べて、塩素(Cl)やカリウム(K)といったアルカリ金属類を多く含む傾向があります。これらの成分は、燃焼時にボイラー内部で溶けて「クリンカ」と呼ばれる硬い灰の塊を形成したり、伝熱管に付着して腐食(ファウリング)を引き起こしたりする原因となります。電源開発のような大規模プラントでは、わずかなトラブルが電力供給に影響するため、エリアンサスをどの程度の比率で混ぜれば安全に運転できるか、あるいは事前にどのような前処理(水洗いや添加剤の使用など)を行えばこれらの成分を無害化できるか、といった技術的なハードルを一つずつクリアしています。


さらに、微粉炭機(ミル)での粉砕性も重要なポイントです。石炭は硬くて脆いため細かく砕きやすいですが、植物繊維の塊であるエリアンサスは繊維が強靭で、既存の石炭用ミルではうまく粉砕できない可能性があります。実証試験では、エリアンサスを事前に半炭化(トレファクション)して脆くする技術や、石炭と混合して粉砕する際の最適な比率など、既存インフラを最大限活かすための技術開発が行われています。これらの試験結果は、将来的に日本の石炭火力が「バイオマス専焼」や「高比率混焼」へと進化していくための重要な礎石となっています。


電源開発のバイオマス事業への取り組みや、未利用資源の活用に関する姿勢は以下のプレスリリースで確認できます。


J-POWER:発電用燃料向け木質ペレットの新会社設立と国内林地未利用材の活用について - バイオマス混焼への取り組み姿勢

農業従事者にとってのエリアンサス栽培と耕作放棄地

農業従事者の方々にとって、エリアンサスの栽培は単なる「新しい作物への挑戦」以上の意味を持ちます。それは、長年頭を悩ませてきた「耕作放棄地遊休農地)」の問題を解決し、安定的な収入源を確保する手段となり得るからです。日本の農業は高齢化と後継者不足により、作付けされずに荒れ果てた農地が増加の一途をたどっています。こうした土地は雑草が茂り、害虫や鳥獣の隠れ家となって周辺の農地に被害を及ぼすため、地域の悩みの種となっていました。


エリアンサスは、こうした条件の悪い土地でもたくましく育つ強さを持っています。


  • 低管理での栽培が可能: 肥料要求量が少なく、痩せた土地でも育ちます。一度定植して根付けば、雑草に負けない勢いで成長するため、除草の手間も大幅に削減できます。
  • 獣害に強い: イノシシやシカなどの野生鳥獣は、硬くて繊維質なエリアンサスを好みません。食害のリスクが極めて低いため、電気柵などの高価な防護設備が不要です。
  • 農閑期の有効活用: 収穫時期は冬から早春(1月~3月頃)にかけてです。これは米や野菜の農繁期と重ならないため、農家は冬場の空いた時間を有効に使って収入を得ることができます。既存のトラクターやロールベーラーといった牧草用機械をそのまま転用できる点も、導入のハードルを大きく下げています。

さらに、収益構造も魅力的です。食用の農作物は市場価格の変動が激しく、形や見た目で規格外となれば廃棄されることもありますが、エリアンサスは「燃料」として全量買取契約を結ぶことが一般的です。重量ベースでの取引となるため、見た目の良し悪しは関係ありません。契約栽培によって将来の収入が見通しやすく、経営の安定化に寄与します。特に、これまで維持管理のためだけに草刈りをしていた「お荷物」の土地が、利益を生む「生産拠点」に変わるインパクトは計り知れません。


もちろん課題もあります。食料生産と競合しないことが大前提であるため、優良な農地ではなく、あえて条件の悪い土地での栽培が推奨されますが、そうした土地は機械が入りにくい場合も多いです。しかし、農地保全の観点から見れば、エリアンサスを植えておくことで農地としての機能を維持し、将来的に食料が必要になった際に再び畑に戻すことも容易になります。これは、農業の持続可能性という観点からも非常に理にかなった選択肢と言えるでしょう。


エリアンサスペレットの製造コストと課題

エリアンサスを実際の発電所やボイラーで利用するためには、収穫したそのままの姿ではなく、扱いやすい形状に加工する必要があります。一般的には、乾燥した茎を粉砕し、圧縮成形して「ペレット」や「ブリケット」と呼ばれる固形燃料に加工します。しかし、この加工プロセスには、木質ペレットとは異なる独自の課題とコストの問題が存在します。


最大の課題は「かさ比重」の低さです。エリアンサスは中空の茎構造をしているため、収穫した状態では非常に軽く、体積ばかりがかさばります。そのまま運搬しようとすると、トラック1台に積める重量が限られてしまい、輸送コストが跳ね上がってしまいます。したがって、収穫地(農地)の近くで一次加工を行い、減容化(体積を減らすこと)する必要があります。移動式の破砕機や、地域ごとの小規模なペレット工場の設置が求められますが、これには初期投資が必要です。


次に、ペレット成形時の難易度です。木材にはリグニンという成分が多く含まれており、これが熱と圧力で溶け出して天然の接着剤の役割を果たし、頑丈なペレットが作れます。一方、草本類であるエリアンサスは木材に比べてリグニンが少なく、成形してもボロボロと崩れやすいという性質があります。崩れやすいペレットは輸送中に粉化(微粉末に戻る)してしまい、粉塵爆発のリスクを高めたり、自動供給装置を詰まらせたりする原因になります。これを防ぐために、製造時にデンプンや廃糖蜜などの「バインダー(結合剤)」を添加したり、ダイス(成形型)の圧力を高めたりする工夫が必要ですが、これらはすべて製造コストの上昇につながります。


株式会社タカノによる以下のリンク先では、実際にエリアンサスをペレット化し、地域の温泉施設で利用している事例が紹介されています。事業化におけるコスト削減の工夫などが参考になります。


株式会社タカノ:エリアンサス栽培とバイオマスエネルギー事業 - 耕作放棄地対策とペレット燃料化の実践
また、コスト競争力の面では、安価な輸入石炭や、既にサプライチェーンが確立している輸入PKS(パーム椰子殻)との価格差をどう埋めるかが課題です。エリアンサスペレットの製造コストを下げるためには、単位面積当たりの収量を最大化する栽培技術の確立と、ペレット加工の効率化が不可欠です。最近では、収穫と同時に細断して「チップ状」にし、ペレット化せずにそのまま混焼する技術や、前述の「半炭化」によってエネルギー密度を高める技術も研究されており、コスト削減へのアプローチは多様化しています。


エリアンサスの地域環境保全と土壌への意外な効果

検索上位の記事や一般的なバイオマス論議では「燃料としての価値」や「経済性」ばかりが注目されがちですが、エリアンサスにはあまり知られていない、しかし極めて重要な「環境修復機能」とも言える意外な効果があります。それは、その強靭な根系(こんけい)がもたらす土壌保全と水質浄化の能力です。


エリアンサスの根は、地下深くまで非常に密に張り巡らされます。この強力な根は、物理的に土壌をしっかりと掴むため、傾斜地や河川敷などの崩れやすい土地において「土壌侵食(エロージョン)」を防ぐ天然の杭の役割を果たします。大雨による表土の流出は、農地にとって肥沃な土を失う致命的なダメージですが、エリアンサスを植栽することでこれを劇的に抑制できます。実際に、法面(のりめん)の保護や防風林代わりとして利用されているケースもあります。


さらに興味深いのが、過剰な栄養塩類の吸収能力です。農業地帯では、畑に撒かれた肥料(特に窒素成分)が雨水と共に地下水に溶け出し、硝酸性窒素として河川や湖沼を汚染することが環境問題となっています。エリアンサスは成長のために多量の窒素を必要とするため、土壌中に残留した余分な肥料分を強力に吸い上げ、自らの成長エネルギーに変えてしまいます。つまり、エリアンサスを栽培すること自体が、地下水を浄化し、富栄養化を防ぐ「環境フィルター」として機能するのです。これを「ファイトレメディエーション(植物による環境修復)」の一種と捉える研究者もいます。


また、収穫後の株や根が土壌に残ることで、土壌中の炭素固定量が増加するという側面もあります。大気中のCO2を吸収して育ち、その一部を炭素として地中に留めることは、気候変動対策としても有効です。単に燃やしてエネルギーにするだけでなく、栽培されている期間そのものが、地域の環境を守り、国土を強靭化するプロセスに組み込まれています。このように、エリアンサスは「エネルギー」「農業」「環境保全」という3つの異なる分野の課題を同時に解決する、まさにマルチベネフィット(多面的便益)な作物と言えるでしょう。農家がエリアンサスを導入することは、単なる燃料生産者になるだけでなく、地域の環境を守る「環境保全の担い手」になることと同義なのです。




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