チェス顆粒水和剤は、有効成分がピメトロジン50%の殺虫剤で、登録番号は第21644号です。
効き方の説明として「汁を吸わせず餓死させる、ユニークな吸汁阻害作用」を持つことが明記されています。
つまり、虫を“すぐ倒す”というより、吸汁できない状態に追い込み、結果として被害拡大を止めていく設計です。
現場で勘違いが起きやすいのは、「効いているのに虫がすぐ落ちない」=「失敗」と判断してしまう点です。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9864389/
チェスは吸汁行動の抑制を狙うため、作物側の“被害の伸び”が止まるか、蜜露やすす病の進行が鈍るか、といった指標も合わせて観察すると評価が安定します。
特にコナジラミ類は、吸汁と同時に作物へのストレスや病害リスク(間接被害)を引き上げやすいので、「発生初期に叩く」というラベル上の助言は、薬効設計に合った合理的な運用です。
チェス顆粒水和剤の適用表では、トマト/ミニトマト/きゅうり/なす/いちご等で、アブラムシ類・コナジラミ類に5000倍が設定されています。
また、果樹(もも・なし・うめ)ではアブラムシ類に5000倍、使用時期は収穫14日前まで(うめは収穫21日前まで)など、収穫前日数が作物で異なります。
この「収穫前日数」と「使用回数(本剤の回数/ピメトロジン総回数)」の2つは、栽培計画の途中でずれると修正が難しいため、散布前に必ず適用表で再確認してください。
コナジラミ類に使う場合は「成虫の少ない発生初期に散布」するよう注意書きがあります。
これは、密度が上がってから“慌てて散布”しても、圃場のステージが進み、虫齢も混在し、被害も同時進行になるため、効き目の体感が落ちやすい典型パターンを避ける意図です。
裏を返すと、黄色粘着板や葉裏のルーペ確認など、発生初期を見逃さない仕組みを作るほど、チェスの「得意な局面」に寄せられます。
適用表では多くの野菜で希釈倍数5000倍、使用液量は100〜300L/10aが示されています(例:きゅうり、トマト、なす等)。
ばれいしょでは5000倍(100〜300L/10a)のほか、1000倍で25L/10aの少量散布体系も登録されています。
ただし、この1000倍・少量散布は「少量散布に適合したノズルを装着した乗用型の速度連動式地上液剤少量散布装置を使用」と注意書きがあるため、設備前提の登録だと理解して組みます。
散布の基本は、ラベルの「散布液は調製した日に使いきる」を守り、作物の生育段階・栽培形態・散布器具に合わせて散布量を調節することです。
コナジラミ類・アブラムシ類は葉裏に多いので、散布は「葉裏に届いているか」を作業者が意識するだけで結果が変わります(同じ薬液でも当たらないと効きません)。
薬液調製後に長時間放置して翌日も使う、といった運用は注意書きと逆で、効きムラやトラブルの原因になりやすいので避けてください。
目安計算の考え方(例):5000倍は「水5,000に対して製剤1」です。
たとえば100Lタンクで5000倍を作るなら、必要量は20g(100L÷5000=0.02kg)になります。
この計算自体は単純ですが、実務では「10a当たりの使用液量」と「何a散布するか」を先に固めて、余らせないのが一番のコツです。
製品説明では、チェス顆粒水和剤は「ハチ・天敵への影響が少なく、IPM適合性の高い製品」とされています。
IPMで大事なのは、薬剤単体の強さより「天敵が働ける圃場環境を壊さずに、害虫密度を管理域に戻す」ことなので、こうした記載は体系設計の判断材料になります。
さらに、作物のすみずみまでいきわたる浸透移行性が高い点も特徴として挙げられ、新葉や下葉の虫も防除できるとされています。
ローテーション面では、作⽤機構分類番号(RAC番号)が「殺虫剤分類9B」と記載されています。
現場では「同じ系統に偏らせない」ことが抵抗性対策の基本なので、チェスを入れるなら、別の作用機構の薬剤や物理的防除(防虫ネット、粘着資材)と合わせ、連続散布を避ける設計にすると安定します。
また、適用表に「ピメトロジンを含む農薬の総使用回数」が作物ごとに書かれているため、チェス以外にピメトロジン含有剤を使う場合は合算で管理する必要があります。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10782281/
検索上位の記事は「効果」「適用表」「希釈倍数」に寄りがちですが、実際のミスは“数字の読み違い”より“現場の段取り不足”で起きます。
代表例が、収穫が毎日動く作型(きゅうり・オクラ等)で、収穫前日数の制約を現場全員が同じカレンダーで共有できていないケースです。
チェス顆粒水和剤は、作物によって「収穫前日まで」「収穫3日前まで」「収穫14日前まで」などが混在するため、同じ圃場でも作物別に管理表を分けないと事故が起きやすい構造です。
もう一つ、意外に重要なのが「みょうが(花穂)」の注意書きです。
花穂の発生期には、マルチフィルム被覆により散布液が直接花穂に飛散しない状態で使用する、という条件が明記されています。
これは、作物の“収穫対象部位”に薬液がかかるリスクを下げるための、かなり具体的な現場オペレーション指示で、他作物にも応用できます(収穫対象が露出する時期は、散布の角度・圧・風・飛散対策を一段厳しくする)。
さらに、安全面でも「眼や皮膚への弱い刺激性」「散布器具の洗浄」「廃液処理」「空容器の適切処理」などが注意書きとして列挙されています。
効かせる技術と同じくらい、事故を起こさない手順が“農薬の実力”なので、作業手順書に落として新人にも同じ品質で回せるようにすると、長い目で見て防除が安定します。
初めて使う作物や新品種では、事前に薬害の有無を十分確認するよう記載があるため、いきなり全面散布ではなく、圃場の端で小面積テスト→問題なし→本散布、という順が堅実です。
権威性のある登録情報(適用表・回数・収穫前日数の原典)
農薬登録情報提供システム「チェス顆粒水和剤(登録番号21644)」
製品の適用表・注意事項(散布タイミングやIPM適合性の根拠)
シンジェンタ「チェス顆粒水和剤」製品ページ