うどんこ病は、葉や茎に白い粉をふいたような斑点が出て、進むと葉全体が白っぽくなり、光合成が落ちて樹勢が下がります。発生が進むほど「散布しても止まりにくい」局面に入るため、最初の白斑を見た時点で手を打つのが収量を守る近道です。
発生要因として見落とされがちなのが、「乾燥しているのに出る」点です。一般に病気は多湿を連想しますが、うどんこ病は乾燥気味の条件でも増えやすい特徴があるため、梅雨明けやハウスの換気不足・株間の蒸れだけでなく、乾いた風が続く時期でも油断できません。
参考)ズッキーニのうどんこ病に効く農薬について
現場でよくある引き金は、繁茂による風通し低下と、追肥での窒素過多です。密植や過繁茂は葉面が重なり、薬液も届きにくくなりますし、窒素が効きすぎると柔らかい新葉が増えて病気に弱くなります。
参考)うどんこ病|症状の見分け方・発生原因と防除方法
したがって「病気が出たから農薬」だけでなく、葉かき・整枝で受光と通風を確保し、肥培の偏りを戻すことが、農薬の効きを引き上げます。
農薬選定で最重要なのは、ズッキーニとうどんこ病に対して登録があり、使用時期・回数制限・希釈倍率が現場の収穫サイクルに合うことです。例えば、JAの「ズッキーニ登録農薬適用表」には、ズッキーニのうどんこ病で使える薬剤と、収穫前日まで、希釈倍率(例:2,000倍など)、使用回数が整理されています。
具体例として、同資料ではトップジンM水和剤(チオファネートメチル)が、ズッキーニのうどんこ病に「収穫前日まで」「1,500倍」「3回以内」で記載されています。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9405448/
同様に、ダコニール1000(TPN)は「収穫前日まで」「1,000倍」で、うどんこ病に対して“予防寄り”で記載されています(治療は×表記)。
また、パンチョTF顆粒水和剤(シフルフェナミド+トリフルミゾール)は「収穫前日まで」「4,000倍」で、うどんこ病効果が高い旨の備考もあります。
さらに、同資料ではアフェットフロアブル(ペンチオピラド)が「収穫前日まで」「2,000倍」「3回以内」で掲載され、うどんこ病に対して予防は○、治療は×の整理です。
アミスター20フロアブル(アゾキシストロビン)も、ズッキーニのうどんこ病に「2,000倍」「100〜300L/10a」「収穫前日まで」「4回以内」で示され、同一有効成分を含む農薬の総使用回数にも上限がある形で提示されています。
参考)https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fpls.2023.1098648/pdf
ここでのコツは、薬剤名だけ暗記しないことです。ラベルの「本剤の使用回数」と「同一有効成分の総使用回数」は別枠で管理される場合があり、計画を組むときに事故(回数超過)を起こしやすいからです。
参考:ズッキーニで使える登録農薬(希釈倍率・収穫前日・回数)が一覧で確認できる(薬剤選定の根拠に使える)
https://www.ja-kamiina.iijan.or.jp/wp-content/uploads/2023/03/72e20089fe19470cb8814b941ea704e1.pdf
参考:アミスター20フロアブルの適用表(ズッキーニうどんこ病の希釈倍率・使用回数・総使用回数の考え方が確認できる)
https://cp-product.syngenta.co.jp/product/amistar_20sc
ズッキーニは収穫が連続するため、「収穫前日まで使える」設定の薬剤は武器になりますが、散布設計は慎重に行う必要があります。JAの適用表でも、複数剤が「収穫前日まで」として載っている一方で、使用回数(例:3回以内、4回以内)がそれぞれ異なります。
収穫が続くからといって同じ剤を続けると、回数制限に引っかかるだけでなく、耐性リスクも現場では無視できません(輪番が基本)。
散布の“効き”を上げる実務ポイントは、症状のある葉の扱いと、薬液の当て方です。うどんこ病は胞子が風で飛びやすく、発生した葉が伝染源になりやすいので、初期なら病斑葉の早期除去は合理的です。
その上で、残した葉の「表だけでなく裏」「株の中心部」「下葉側」まで濡らす意識で散布すると、止まりやすくなります(葉が重なると薬液が届かないため、整枝・葉かきとセットで効く)。
ハウスやトンネルでは、散布後の環境にも注意が必要です。メーカーの注意事項として、施設内が高温多湿の場合は散布後に十分換気すること、条件によって薬害リスクがあるため使用を避けるべきケースが明記されています。
つまり「うどんこ病=乾燥で出る」一方で、「散布後は高温多湿が薬害に振れ得る」という、管理上のねじれが起きます。現場では、散布時間を朝の温度が上がり切る前に寄せる、散布後は換気を優先して葉を早く乾かすなど、ラベルの注意に沿った段取りが必要です。
予防を厚くすると、結果として「農薬が少なくて済む」年が増えます。ポイントは、病気が広がる前に環境を整え、初発を遅らせることです。例えば、密植を避けて風通しを作る、繁茂したつるや葉を間引く、日当たりを確保する、といった管理は、うどんこ病対策として基本に挙げられています。
肥料の設計も予防の一部です。窒素過多で発生しやすくなるという指摘があるため、勢いが出すぎている圃場では追肥設計を見直し、柔らかい新葉を増やしすぎないことが重要です。
また、周辺雑草が多いと病気の温床になり得るため、圃場周りの除草を徹底するという現場的な対策も紹介されています。
一方で、発病後の治療は「農薬散布が最も効果的」とされ、作物に適した薬剤かどうかをラベルで確認する必要が強調されています。
ここでの落とし穴は、うどんこ病は作物ごとに原因菌が異なる場合があり、同じ“うどんこ病”でも使える薬剤が違うことです。ズッキーニでの登録確認を飛ばすと、効果以前に適用外使用になり得るため、適用表や製品の適用作物欄に必ず戻ってください。
検索上位では「この農薬が効く」紹介で終わりがちですが、農業従事者にとって本当に差が出るのは、耐性を作らずに“効く状態”を維持する設計です。アミスター20フロアブルの注意事項でも、耐性菌の出現を防ぐために過度の連用を避け、作用性の異なる薬剤と組み合わせて輪番使用することが明記されています。
さらに、JAの登録農薬適用表にはFRACコード(作用機構分類)が併記されており、輪番設計の材料になります。
例えば、同表ではダコニール1000がFRAC「M5」、パンチョTFが「3, U6」、アミスター20が「11」と整理されているため、「同じ系統を続けない」ための判断がしやすくなります。
この“分類を見て回す”癖をつけるだけで、効いていた剤が急に効かなくなる(耐性疑い)局面を減らしやすくなります。
ローテーション設計の実務(考え方の例)は次の通りです。ここでは薬剤名の丸暗記ではなく、ラベル確認と分類で組むことを重視してください。
✅ ローテーション例(考え方)
・発生前〜初期:予防寄りの剤を軸に、散布間隔を守る(同一分類の連用を避ける)。
・初発確認〜拡大前:作用性の異なる剤へ切り替え、葉かき・除草・追肥調整で“効きやすい樹勢”に戻す。
・進行期:散布だけで押さえ込むのは難しくなるので、病斑葉の除去と散布をセットにして伝染源を減らす。
最後に、現場で起きやすいミスをチェックリスト化します。ズッキーニは収穫が続き、使用時期が短い作物なので、帳尻合わせが効きにくいからです。
⚠️ よくあるミスと回避策
・「ズッキーニ登録」を見ずに、同じウリ科の適用で判断してしまう → 適用表とラベルで作物名を必ず確認。
・同一成分の総使用回数を数え忘れる → 製品の「総使用回数」欄まで含めて記録する。
・ハウスで散布後に締め切って薬害を出す → 注意事項にある通り、散布後は十分換気する。
・葉が茂って薬液が届かない → 葉かき・整枝で通風と薬液到達を確保する。