ユーカリの挿し木は「いつやるか」で難易度が大きく変わります。家庭園芸の情報でも、気温が高めの6〜7月、あるいは25〜30℃あたりが成功率を上げやすい目安として整理されています。つまり“根が出やすい時期に集中して数を取る”のが、現場的には一番の近道です。
一方で、樹木一般の挿し木では地温15〜25℃が良いとされ、樹液が本格的に流れる直前が適期という考え方もあります。これは「挿し穂が動きすぎる前に、発根にリソースを回す」という発想で、春先の実施に寄ります。ユーカリは耐暑性が高い反面、環境変動にも反応するので、地域や置き場の微気象(ベンチの上・直置き・風の抜け)を見て調整してください。
農業従事者向けの作業設計としては、以下のように“温度×作業負荷”で現実的な着地点を作ると事故が減ります。
ペットボトル方式は「乾燥を止める」ことには強いですが、暑い日は逆に“温室化”して危険になります。ボトルは透明で日射を通すため、直射が入る場所に置くと内部温度が跳ね上がります。明るい日陰で管理する、風が抜ける場所にする、これを基本線にしてください。
ペットボトル挿しの価値は、発根前に挿し穂が萎れる最大要因=蒸散を止められる点です。密閉挿しは、挿し穂を密封して高湿度(可能なら湿度100%近く)で管理し、萎れを抑える方法として説明されています。ここを理解すると、単なる裏ワザではなく、理屈に沿った再現性のある技術になります。
基本の作り方はシンプルで、「ボトルを上下に切って、下を鉢(容器)として土を入れ、上をドームとして被せる」です。大きめのボトル(例:2L)の方が内部空間が確保でき、作業もしやすいとされています。加えて、ドーム内側に結露した水滴が落ちて用土に戻るため、湿度が安定し、潅水の手間が省けるという説明もあります。
ただし密閉は、管理を間違えると“過湿×空気停滞”で腐敗に一直線です。そこで現場的には「密閉度をキャップで調整する」発想が効きます。キャップを開けておけば最低限の空気の入れ替えが起き、閉めれば乾燥を止められます。梅雨や雨天続きでカビが出る圃場・庭先では、最初から“完全密閉”にしない方が、結果として歩留まりが上がることがあります。
密閉挿しで地味に効くのが、挿し穂の処理です。樹木の挿し木では「節の少し下で切る」「切り口を斜めにして面積を広げる」「乾燥させないよう水に浸ける」といったポイントが挙げられています。ユーカリでも同じで、切って放置した瞬間に導管に空気が入り、吸水が落ちるので、切ったらすぐ水揚げに回してください。
農業の段取りとしては、作業台に「水を張る容器」「霧吹き」「清潔な刃物」「ラベル」を並べ、切る→水揚げ→挿す、を流れ作業にします。これだけで“乾かして失敗”がかなり減ります。
ペットボトル方式は湿度を上げるため、用土側が雑菌・カビの温床になりやすいのが弱点です。そこで「肥料分がなく、菌が増えにくい土」を挿し木工程に使うのが合理的で、赤玉土は肥料分を含まないため病気が発生しにくく、挿し木・挿し芽に向くという整理があります。高湿度で運用するほど、このメリットが効いてきます。
実務的なおすすめは、発根工程だけは赤玉土(小粒)や鹿沼土のような挿し木向け土に寄せ、発根後に培養土へ移す二段階設計です。最初から培養土(肥料入り)で密閉すると、温度が上がった日に微生物が一気に走って、切り口が負けることがあるためです。
さらに、ペットボトルを“育苗ポット”として使う場合は、底に穴を開けて排水を確保する説明が一般的です。密閉で上からの乾燥は止められるので、排水性を落とす理由はありません。むしろ排水が悪いと、底に水が停滞し、腐敗の確率が上がります。樹木の密閉挿しでも「容器の底には水が停滞しやすく、腐敗の可能性があるので、挿し穂が底に接しないよう注意する」と説明されています。
ここで意外と見落とされるのが「赤玉土の粒の崩れ」です。長期に湿った状態が続くと、柔らかい赤玉土は潰れて通気性が落ちます。密閉挿しはまさに“常湿〜過湿の長期戦”になりやすいので、硬質寄りや新しい資材を選び、期間を引き伸ばしすぎない(=温度が乗る時期に仕掛ける)方が、トータルで安全です。
挿し木は「切り口が耐えるか」「発根スイッチが入るか」の勝負なので、発根促進剤を使うと成功率が上がる、とされています。ユーカリの挿し木でも、ルートンやメネデールなどを準備物として挙げ、あると格段に成功率が上がるという説明があります。
ただし、資材は性格が違うので、役割を分けて使うと失敗が減ります。
現場でありがちな失敗は、「良かれと思って濃くする」「粉をベタ付けする」です。ルートンは使用上の注意として“多量につけ過ぎない”ことが示されているので、粉が白く厚く乗るほど付けないのが基本です。また、食用作物には使用しない注意もあるため、圃場や直売所で食用系を同時に扱う場合は、資材の保管区分や器具の共用にも気を配ってください。
水揚げは、地味ですが勝敗を分けます。ユーカリ挿し木の説明では、切ったらすぐ水に浸して水揚げし、土に挿す場合は2時間ほど水揚げしておく手順が紹介されています。特に夏場は、切り口が乾く速度が速いので、剪定→束ねて放置、の運用は避け、切ったら即バケツへ、が鉄則です。
参考:密閉挿しの考え方(湿度100%近く、ペットボトル内の結露が潅水手間を減らす、用土は新しい赤玉土が良い等)
https://www.ars-edge.co.jp/contents/proen30/
参考:ユーカリ挿し木の適期(6〜7月、25〜30℃)、ペットボトル密閉挿しの手順(洗浄・乾燥、半分に切る、底穴、赤玉土/鹿沼土、キャップで湿度調整)
https://www.noukaweb.com/eucalyptus-cuttiing/
参考:赤玉土が挿し木に向く理由(肥料分がなく菌が少ない、病気が発生しにくい、挿し木・挿し芽に向く)
https://gardenstory.jp/gardening/57364
参考:ルートンの農薬登録情報(植物成長調整剤、使用方法、薄く付着・厚塗りしない等)
https://pesticide.maff.go.jp/agricultural-chemicals/details/6071
検索上位の多くは「手順」を丁寧に書きますが、農業の現場で効くのは“判定基準を数字と状態で持つ”ことです。そこで、ペットボトル挿しを「温度」「湿度」「用土水分」「病徴」の4項目で、毎日30秒で見切れるチェック表に落とします。これをやると、忙しい時期でも全滅を避けやすくなります。
以下は、ユーカリ挿し木×ペットボトル密閉の運用に合わせた、実装しやすい定量チェックです(入れ子にせず、現場でそのままメモにできます)。
“意外な盲点”として、密閉挿しは「水やりが不要になる」一方で、問題が起きた時も見落としやすくなります。結露がある=安心、ではなく、結露が過剰=換気不足かもしれない、という逆の読み方を持ってください(ペットボトル内は小さな気象室です)。
最後に、発根後の順化は必ず段階的に行います。密閉→開放を一気にやると、葉が急に乾燥環境に投げ込まれ、発根していても萎れが出ます。上部を少しずつ外す、キャップ開放の時間を伸ばすなど、作業者が扱える“手順の定型化”まで落とし込むと、チーム作業でも品質が揃います。
ここまでを踏まえて、次に作るべきは「あなたの圃場・置き場に合わせた規格」です。例えば、ペットボトルは2Lを標準にするのか、500mlで回すのか、赤玉土の粒度を小粒で統一するのか、発根促進剤の使用有無をどうするのか。規格が決まると、挿し木は“運任せ”ではなく、再現できる作業になります。