青枯病で発病した株から土壌中に放出された菌は、土壌消毒後も深層部に生き残ることがあります。
参考)https://www.pref.wakayama.lg.jp/prefg/070100/070109/kanko/3_1_kenpo_d/fil/kenpo7.pdf
青枯病の発生初期は、株の先端付近にある上位の葉が日中だけ萎れます。 夕方や雨天の翌朝には元に戻るため、「水が足りないだけ」と見逃されやすい段階です。
これが青枯病の厄介なところです。
yuime+1
この「日中しおれ・夜回復」というサイクルが2〜3日続き、その後は夜間も回復しなくなります。 発病の進行は夏の高温期で特に速く、地温が25℃を超えると病勢の拡大が加速します。 通常の病害と異なり、葉や茎が黄化せずに青いまま萎れるのが最大の特徴です。boujo+2
写真で確認する際のポイントは葉色です。萎れているのに緑色が保たれている株は、青枯病を強く疑う必要があります。 他の枯れ方(黄化してから萎れる)と明らかに異なる外観です。yuime+1
初期サインを写真に撮って記録に残す習慣をつけると、翌年の発生時期・場所の特定に役立ちます。
発病が疑われる株を確定診断するには、茎切断テストが最も確実な方法です。 茎を横に輪切りにして、その断面を水に浸すだけでできます。
これは費用ゼロの診断法です。
参考)トマト青枯病
手順は以下のとおりです。
この白濁液(菌泥)が出れば、青枯病の確定診断となります。 導管部の褐変色も重要な判断材料であり、青枯病の場合は褐変が茎の上位まで広がっています。 半身萎凋病では褐変色が比較的薄く、根腐萎凋病では导管の褐変が地際付近までに限られるため、色と範囲の2点を確認することで病害の種類を絞れます。vegepalette.unirita+1
つまり、「白濁液が出る+上位まで褐変」が青枯病の確定条件です。
写真診断のコツとして、切断した茎の断面を白い紙や白い容器の上に置いて撮影すると、褐変の程度が判別しやすくなります。現場記録として圃場台帳に添付しておくと、指導員や普及センターへの相談にも活用できます。
参考)https://www.pref.aichi.jp/uploaded/attachment/320285.pdf
農薬・病害情報の詳細は、農林水産省が公認している「農業害虫や病害の防除・農薬情報」サイトで確認できます。
農業害虫や病害の防除・農薬情報 トマト青枯病ページ(圃場での症状確認・農薬情報が掲載)
青枯病と症状が似ている病害は複数あります。 対処法が異なるため、見分け方は農家にとって直接的な収益を左右します。yuime+1
以下の表で主な土壌病害との違いを整理します。
| 病害名 | 萎れ方 | 葉の変化 | 導管褐変 | 診断のポイント |
|---|---|---|---|---|
| 🦠 青枯病 | 急性・全体 | 青いまま | 上位まで褐変 | 水浸しで白濁液が出る |
| 🍂 萎凋病 | 片側から進行 | 下葉から黄化 | 上位まで褐変 | 片側萎れ・黄化が先行 |
| 🍂 半身萎凋病 | 片側 | 葉脈間が黄化 | 褐変は薄い | 低温期発生・褐変色薄い |
| 🌱 根腐萎凋病 | 緩慢 | 黄化・巻上り | 地際のみ | 根が太くコルク化 |
| 🦠 かいよう病 | 下葉から周縁部 | 上巻き・褐変 | 上位まで | 茎や果実に斑点 |
萎凋病と青枯病は特に混同されやすい点に注意が必要です。 萎凋病は「片側の葉が先に黄化・萎れる」のが特徴で、青枯病のような急性の全体枯れとは経過が異なります。 どちらの場合も発病初期の記録写真が、後の対策選択に直結するため、スマートフォンで断面写真を必ず残すことを習慣にするとよいでしょう。pref+1
愛知県農業総合試験場が作成した土壌病害の見分け方資料は、圃場で使える実践的な診断チャートが掲載されています。
愛知県農業総合試験場「トマト土壌病害の見分け方」PDF(導管褐変の比較写真・診断フロー図)
青枯病の病原菌(Ralstonia solanacearum)は、土壌中に長期間残存します。 病原菌が活性化する条件は「地温20℃以上・過湿・連作」の3点セットです。 条件が重なると、地温25℃を超えた夏季には一気に発病が拡大します。nogyo.tosa.pref.kochi+2
菌の侵入経路は主に根の傷口です。 ネコブセンチュウやコガネムシの幼虫による食害痕、また農作業中にできた傷口から菌が侵入します。 センチュウ被害が多い圃場は青枯病の二次感染リスクが高い、ということですね。yuime+1
圃場の写真を定点観測すると、発病が畝に沿って連続して広がっているケースがあります。 これは作業機械やツールを介した伝染(地上部感染)のサインです。 発病株の土がついた農具を無消毒のまま使い回すと、圃場全体に菌が広がるリスクがあります。
発病リスクを高める要因をまとめます。
農具の消毒には70%エタノールや次亜塩素酸ナトリウム液が使えます。 感染株を抜いたハサミや支柱を、そのまま隣の健全株に使わないことが原則です。
青枯病の防除は「予防が全て」と言っても過言ではありません。発病後の治療薬は現時点でほぼ存在しないからです。
発病したら除去が基本です。
現在、農業現場で最も有効とされる対策のひとつが高接ぎ木法です。 通常の接ぎ木(子葉位)より高い節位(本葉第2〜3葉の節位)で接ぎ木することで、青枯病菌が穂木へ移行するのを遅らせ、発病率を大幅に下げられます。 茨城県農業総合センターの試験では、高接ぎ木株は慣行接ぎ木株より発病株率と維管束褐変程度が低く、かつ収量・糖度への悪影響も認められないという結果が出ています。
これは使えそうです。
naro.go+1
また、農研機構の研究では、青枯病抵抗性台木を使った接ぎ木トマトは、発病株からの菌の土壌への移動量・移動割合を減少させることが確認されています。 つまり、抵抗性台木の接ぎ木は自分の株を守るだけでなく、圃場全体への菌の拡散抑制にも貢献します。
参考)青枯病抵抗性台木は発病株からの青枯病菌の土壌への移動を減らす…
土壌消毒の方法は大きく2つです。
和歌山県の試験では、糖含有珪藻土や糖蜜吸着資材を使った土壌還元消毒も青枯病に対して有効という結果が報告されています。 農薬を使わずに取り組める選択肢として注目されています。
農研機構が公開している青枯病抵抗性台木に関する研究情報は、最新の防除技術を確認する際に役立ちます。
農研機構「青枯病抵抗性台木は発病株からの青枯病菌の土壌への移動を減らす」(台木利用の防除効果データ)
発病株を発見した瞬間の行動が、被害の広がりを決めます。
迷っている時間はありません。
発生時の緊急対応手順は以下のとおりです。
発病株を抜いた穴には石灰を施用して局所的な消毒を図る農家も多いですが、あくまで補助的な対処です。 根本的な解決は次作の防除計画にあります。pref.ibaraki+1
写真記録は防除計画の精度を上げる重要ツールです。 発病箇所を圃場マップに書き込み、写真とともに管理することで、翌年の定植レイアウトや土壌消毒の重点エリア選定に活用できます。 石川県農業総合試験場のような公的機関に写真を持ち込むと、確定診断のサポートを受けられる場合があります。pref+1
石川県の診断事例ページには、青枯病を含む複数のトマト病害の現場写真と診断基準が掲載されています。
石川県農林総合研究センター「トマト青枯病 診断事例」(現場写真・診断基準の参照に)