本を読むだけでは、あなたの圃場は2〜3年間ほぼ収量ゼロになる可能性があります。
炭素循環農法を学ぶうえで、まず押さえておくべき情報源が複数あります。書籍だけに頼ると全体像を掴みにくいため、ウェブ資料と書籍を組み合わせて学ぶ方法が最も効果的です。
起点となるのは、炭素循環農法の提唱者・林幸美氏が2001年に開設したウェブサイト「炭素循環農法 百姓モドキの有機農法講座(tan.tobiiro.jp)」です。ブラジル在住のキノコ栽培農家である林氏が、近隣の野菜農家・峯均氏の農法を理論化したもので、印刷すると両面で厚さ3cmにもなる膨大な情報量を誇ります。無料で閲覧できる点も魅力です。これが基本です。
書籍としては、以下のものが実践農家の間でよく参照されています。
- 📗 『図解でよくわかる土壌微生物のきほん』(横山和成 監修/誠文堂新光社):炭素循環農法の根幹となる微生物の世界を図解でわかりやすく学べる一冊。とっかかりとして最適です。
- 📗 『無肥料栽培を実現する本』(岡本よりたか著/マガジンランド):炭素循環農法に触れた記述が30〜33ページに掲載されており、無肥料栽培の全体思想を理解したい農業従事者向けです。
- 📗 『現代農業 2016年10月号(特集:モミガラ天国)』(農山漁村文化協会):炭素資材の筆頭候補である籾殻の活用法を詳述。資材収集に悩む実践者に役立つ特集です。
- 📗 『現代農業 2016年12月号(特集:畑の菌力強化大作戦)』:糸状菌を中心とした微生物の働きと発酵について詳しくまとめられており、理論を深めたい農業従事者に最適です。
- 📗 『農で1200万円!』(西田栄喜著/ダイヤモンド社):石川県で30アール(サッカーコートの半分程度)の圃場で年収1,200万円を達成した「菜園生活 風来」代表が、炭素循環農法を含む実践ノウハウを解説した本です。
つくば自然農園や農文協のルーラル電子図書館なども、炭素循環農法の関連記事を多数収録しています。情報源は本だけではないということですね。
参考資料として、国立国会図書館レファレンス協同データベースが「炭素循環農法」関連書籍を一覧化しています。
国立国会図書館レファレンス協同データベース:「炭素循環農法」が載っている本の紹介
本を読んでも「なぜ肥料なしで育つのか」の部分が腹落ちしない農業従事者は少なくありません。ここを理解するかどうかが、実践の成否を大きく左右します。
炭素循環農法の核心は「炭素資材→糸状菌→窒素固定菌→植物の栄養」というサイクルです。肥料の代わりに、C/N比(炭素量と窒素量の比率)が高い有機物を土壌に浅くすき込むことで、糸状菌(キノコと同じ菌類)が活性化し、最終的に植物が必要な栄養を土壌内で自給できる仕組みを作ります。つまり微生物に肥料工場を担わせるイメージです。
C/N比の目安を数字で整理すると以下のようになります(『現代農業 2016年10月号』より)。
| 資材 | C/N比(目安) |
|---|---|
| 鶏糞 | 約5 |
| 牛糞 | 約15 |
| オガクズの廃菌床 | 30〜50 |
| 籾殻 | 約80 |
| 竹 | 約280 |
炭素循環農法では、C/N比が40以上の資材を使うことで、バクテリアより進化の上位にいる糸状菌が優先的に有機物を分解します。廃菌床が特に優れているのは、すでにキノコ菌(糸状菌の一種)が含まれており、初心者でも菌糸の広がりを目で確認しやすいためです。これは使えそうです。
一般の有機農業で「高炭素資材を入れると窒素飢餓になる」と懸念されることがありますが、炭素循環農法では糸状菌が窒素を必要としないため、窒素飢餓は起きません。この点が、一般的な堆肥施用との本質的な違いです。慣行農法の常識と正反対になるポイントですので、本を読む際にとくに注目してください。
また、土壌中の炭素循環が活性化することで得られる副次効果として、土壌の団粒化(排水性・通気性の向上)、病虫害の自然抑制、硝酸態窒素量の大幅な低下(慣行農業比で一桁少ない)が報告されています。炭素循環農法で育てた野菜が「うまみが強い」と言われる背景には、この硝酸態窒素の低減があります。
炭素循環農法の理論を提供者自身がまとめた一次資料として最も重要なサイトです。
本を読んで「廃菌床を入れれば翌年から安定する」と思い込んでいると、現実のギャップに苦しむことになります。ここが最も重要な注意点です。
炭素循環農法に転換した場合、一般に2〜3年は収量が激減するか安定しないと言われています。これは糸状菌を中心とした微生物生態系の構築に時間がかかるためで、特に長年慣行農法を続けてきた圃場では顕著に出ます。農業で生計を立てている農業従事者にとって、この期間は収入面で深刻なリスクになり得ます。痛いですね。
ブラジルでの調査データ(国際農林水産業研究センター・筑波大学の2012年合同調査)によれば、炭素循環農法を安定的に継続した場合のブラジル・サンパウロ州の野菜圃場の単収は、ブラジル平均の4.4倍(日本全国平均比で約2.4倍)という結果が出ています。また、転換から4年半経過した圃場では、隣接する慣行農法圃場と比べて全窒素含有量が5.7倍にまで向上した例もあります。これは長期視点での数字です。
初年度から安定した収量を出せるケースも報告されていますが、その多くは「有機栽培からの転換」か「もともと微生物活性の高い圃場」という条件があります。慣行農法から直接転換する場合は、以下の準備が収量リスクを抑える鍵となります。
- 🔲 心土破砕の実施:直径1〜1.5cmの棒が数十cm刺さるほど土が軟らかでない場合は、深度80cm以上の心土破砕を「農作業ではなく土木工事」として先行して行うことを炭素循環農法では推奨しています。
- 🔲 廃菌床は鮮度優先:初期導入時は分解がある程度進んでいる鮮度の高い廃菌床が適しています。古くなりすぎた廃菌床は糸状菌の活性が低く、効果が出にくくなります。
- 🔲 水はけの確認を優先:水はけが悪い圃場に炭素資材を投入すると腐敗してしまい、逆効果になります。まず排水性の改善を図るのが条件です。
転換リスクを抑えつつ農法を学ぶという観点から、「たんじゅん農を楽しむ広場(城雄二氏主宰)」が主催する各地の交流会への参加も有効な選択肢です。書籍で学んだ後、実際の圃場を持つ実践者から話を聞く機会として活用できます。
炭素循環農法を「農法の理論」としてだけでなく、「農業経営のコスト構造」の観点から捉えると、本の読み方が大きく変わります。これはあまり語られない視点です。
通常の慣行農法では、化学肥料・農薬・防除資材の調達コストが年々大きな負担になっています。農林水産省の統計では、農業経営費のうち肥料・農薬費が占める割合は品目によって異なるものの、野菜作では生産費全体の2〜3割を占めることが珍しくありません。炭素循環農法が安定稼働した場合、この費用が大幅に削減される可能性があります。
実際に石川県の「菜園生活 風来」の西田栄喜氏は、30アール(テニスコート約4面分)の圃場に肥料・農薬ゼロで臨み、年間売上1,200万円・所得600万円を達成しています。炭素循環農法を含む無肥料栽培の実践が経営コスト削減に直結した事例として注目されています。結論は「農法の選択が経営戦略になる」です。
一方で、転換初期に必要な廃菌床や木材チップなどの炭素資材の調達コストは意外と見落とされがちです。炭素資材は10アールあたり乾物で1〜3トンが目安とされており、廃菌床を購入する場合は地域や業者によって費用が異なります。キノコ栽培農家や製材所から無償あるいは低コストで調達できるルートを先に確保しておくと、導入の経済的な障壁が大幅に下がります。
本を読む段階から「自分の圃場でこの資材をどこから調達するか」という経営視点を合わせ持つことが、絵に描いた餅で終わらせないための実践力につながります。農業従事者が本で学ぶ際の差別化ポイントはそこにあります。
炭素循環農法の本をもとに、実際の農業経営と組み合わせた視点で紹介したダイヤモンドオンラインのインタビュー記事です。
炭素循環農法に関する情報は、書籍・ウェブサイト・農業誌と多岐にわたるため、どこから学べばよいか迷うことがあります。読む順番を整理しておくと学習効率が大きく上がります。
ステップ1:理論の全体像をつかむ(所要時間の目安:1〜2週間)
まず林幸美氏の公式ウェブサイト「炭素循環農法 百姓モドキの有機農法講座」を通読します。膨大な量ですが、全体の骨格となる考え方(炭素循環のサイクル・糸状菌の役割・C/N比の意味)をここで固めます。この段階で「なぜ肥料なしで育つのか」を自分の言葉で説明できるようになることが目標です。
ステップ2:微生物の基礎知識を補強する(書籍1冊)
『図解でよくわかる土壌微生物のきほん』(誠文堂新光社)で微生物の世界を体系的に学びます。炭素循環農法の根底にある糸状菌・バクテリア・菌根菌の関係性が図解で整理されており、ウェブサイトで得た知識と紐付けやすいです。
ステップ3:農業誌で炭素資材の実務を学ぶ
『現代農業 2016年10月号(モミガラ天国特集)』と『同年12月号(畑の菌力強化大作戦特集)』を読み、実際の資材の種類・C/N比の数字・入手方法を具体的に把握します。これが条件です。
ステップ4:経営視点で照合する
『農で1200万円!』(西田栄喜著)で、炭素循環農法を経営に組み込んだ実例を参照し、自分の農業規模・資材調達環境と照らし合わせます。理論と経営の両輪で考えることで、実践への解像度が高まります。
ステップ4まで終えたら、実際の圃場で小さく試す段階に進みます。炭素循環農法は「理解してから実践」より「少しずつ試しながら観察する」アプローチが向いています。なぜなら、圃場の土壌状態・気候・水はけの条件が異なるため、書籍の知識通りには動かないことが多いからです。これが基本です。
城雄二氏が管理する「たんじゅん農を楽しむ広場」は、各地で交流会を開催しており、書籍学習を補う実践コミュニティとして機能しています。炭素循環農法を学ぶ農業従事者にとって、本の知識と圃場経験の橋渡しになる場として積極的に活用することをお勧めします。
炭素循環農法を日本で広めた城雄二氏が管理するコミュニティサイトで、交流会情報や実践事例が豊富に掲載されています。
炭素循環農法の理論を体系的にまとめたWikipediaページ。参考文献も充実しており、さらに深掘りしたい農業従事者に有用です。
Wikipedia:炭素循環農法(英語表記:carbon-driven eco-agriculture)
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