タンゴールは「みかん(Tangerine)×オレンジ(Orange)」の交雑柑橘を指す総称で、清見は国産初のタンゴールとして知られています。
(参考:タンゴールの定義と清見の位置づけ)
清見は、温州みかんとオレンジの長所を併せ持つ品種として紹介されることが多く、特に「樹上で越冬させてから収穫する」運用が品質の核になります。
越冬収穫は、単に収穫を遅らせるだけではなく、冬期の乾湿・低温・風・鳥害というリスクを抱えたまま樹上で完熟させる設計であり、現場では“樹上貯蔵”として扱うのが実態に近いです。
清見の現場で頻出する作業が袋掛けで、寒さや鳥・害虫から果実を守る目的で、1玉ずつ手作業で袋をかける事例が複数の産地紹介で語られています。
参考)きよみ - 伊藤農園のみかんな図鑑
意外に見落とされがちなのは、袋掛けが「保温」と「物理防除」を兼ね、樹上越冬の成立条件そのものになっている点で、産地によっては外気より温度を約1度上げる狙いで袋掛けを採用した経緯も紹介されています。
参考)清見タンゴールとは|「西宇和農業協同組合 三崎共選」公式|愛…
つまり清見で“越冬収穫”を名乗るなら、袋掛けの労力は贅沢な付加価値ではなく、凍害・食害の確率を現実的な水準に落とすためのリスクマネジメントとして位置づけるのが合理的です。
参考)清見タンゴール約3.5kg-贈答用
また清見は、不知火(デコポン)やせとか等の親になっている点が重要で、タンゴールみかん全体の栽培技術を考えると「清見で起きる問題は、派生品種にも形を変えて出る」と見た方が現場判断が早くなります。
参考)清見(清見オレンジ/清見タンゴール)
例えば、清見系は果皮が比較的薄い・果肉が柔らかいとされるため、収穫の“遅らせすぎ”は糖度だけでなく果皮障害・荷傷みのリスクと表裏一体になりやすく、出荷設計の段階から逆算した熟度管理が必要です。
参考)清見とはどんな品種?
不知火は、清見タンゴールと中野3号ポンカンの交配で育成されたタンゴールであることが、複数の解説で明記されています。
そして「デコポン」は品種名ではなく登録商標で、不知火のうち一定基準を満たしたものがデコポンとして流通する、という整理が一般的です。
この“品種とブランドの二重構造”は、農家側の経営に直結し、同じ園地・同じ樹でも、糖酸や外観が基準に届かなければブランド外になるため、技術の狙いが「収量最大化」より「基準達成率の最大化」に寄りやすい点がポイントです。
不知火は「見栄え(突起や果皮の粗さ)」が評価に影響した経緯が語られており、外観品質が価格形成に強く効く柑橘だと理解しておくと、剪定・着果管理・防風の優先順位が決めやすくなります。
参考)https://www.naracoop.or.jp/umaimono/umaimono.html
また、親が清見である以上、樹上完熟や収穫の遅取りが食味に寄与する一方、低温・風傷・病害のリスクを同時に抱えるため、園地条件(冷え込み・風当たり)と作業投入量(袋掛け・防風)が“セットで収益を決める”構造になりやすいです。
意外な実務のコツとしては、「選果で落ちる果実をどう減らすか」を病害虫の薬剤だけで解決しようとせず、台風前の予防散布や防風対策のような“園地側の事故率”を下げる設計に戻る方が、年変動に強くなります。
参考)http://jppa.or.jp/archive/pdf/68_06_63.pdf
せとかは、農研機構の品種情報で、(清見×アンコール)にマーコットを交雑して育成したタンゴールで、大果・多汁・高糖度で、熟期は2月と示されています。
同じ資料で、せとかは「そうか病、かいよう病に強い」一方で、カンキツトリステザウイルス(CTV)に罹病性でステムピッティングの発生度が高い、と明記されています。
この“強い病気と弱い病気の差が大きい”のがせとかの扱いづらさで、圃場で病害が出た時に「いつもの柑橘防除」の惰性で動くと、弱点側(ウイルス・樹勢低下)を見落として取り返しがつきにくくなります。
現場寄りの注意点として、せとかは黒点病や灰色かび病の発生リスクが高いので注意、黒点病は枯れ枝から伝染するため剪定で枯れ枝を除去し圃外へ持ち出すことが重要、という解説が出ています。
参考)みかんの「せとか」という品種の栽培に関する注意点を教えてくだ…
さらに権威性の高い整理として、黒点病は樹上の枯れ枝や園内に放置された剪定枝に病原菌が潜み、雨水で胞子が飛散して伝染するため、枯れ枝・剪定枝の除去が最重要の防除法になる、と専門誌の解説で述べられています。
薬剤は当然必要になり得ますが、黒点病は「伝染源を物理的に減らせる」タイプの病害として位置づけられているため、忙しい年ほど“薬剤散布の回数”より先に“枯れ枝を残さない剪定と持ち出し”をやり切った方が結果が安定しやすいです。
かいよう病についても、病原が細菌で、台風などの暴風雨で樹体が傷つくと発病が助長され、台風前の薬剤散布や防風対策が重要とまとめられています。
つまり、タンゴールみかん(清見系を含む)の品質勝負は「糖度を上げる」だけでなく、「風・雨・傷の確率を下げる」ことが同じくらい収益に効く、という現場設計に落ち着きます。
黒点病は、枯れ枝や園内に放置された剪定枝が伝染源になり、雨で胞子が運ばれて伝染する、と整理されています。
また、果実や葉にできた病斑は伝染源にならないため、園内の枯れ枝・剪定枝を除去することが“伝染源を絶つ最も重要な防除法”だと明記されています。
この性質は意外に強力で、「発病した果実を拾う」よりも「枯れ枝を園外へ出す」方が、翌年以降の発生圧を落としやすいことを意味します。
かいよう病は、台風などの暴風雨で傷が増えると発病が助長されるため、台風前の予防散布と防風対策が重要とされています。
さらに、ミカンハモグリガの食害痕にも病原菌が侵入して激しく発病するため、害虫防除と夏秋梢の管理がポイントになる、と同資料で述べられています。
つまり、薬剤の“銘柄選び”以前に、剪定・防風・園地衛生・新梢管理といった「畑の構造」を整えるだけで病害の入口が減り、タンゴールみかんの外観品質が上がりやすい、というのが再現性の高い結論です。
ここで、作業計画に落とし込むためのチェック項目を挙げます。
清見の袋掛けは、寒さ・鳥・害虫から果実を守るために1玉ずつ行う、と紹介されています。
一方で、樹上越冬に踏み切れない理由として「凍害や鳥による食害で全滅するリスク」が語られており、それを下げる対策として袋掛けと園地条件の制約(例:標高)を組み合わせた経緯が紹介されています。
ここから導ける独自の現場解釈は、袋掛けを“糖度を上げる技術”として語るより、“全滅・大幅減収という事故の確率を下げる保険”として設計した方が、経営判断がブレにくいという点です。
具体的には、袋掛けの投資対効果を「何度保温できるか」だけで評価すると、年によって寒波の有無で結論が揺れますが、「鳥害・虫害・裂果・擦れ傷・低温障害が出る確率を何%下げたか」という“事故率”で見れば、複数年で安定して評価できます。
また、かいよう病は傷が増えると発病が助長されるため、袋掛けが物理的に傷を減らすなら、病害リスクの低下にも寄与する可能性がある、という発想で作業を組み立てると、樹上完熟の成功率が上がりやすいです。
この考え方は清見だけでなく、不知火やせとかのように外観評価が価格に直結するタンゴールみかん全般で応用でき、作業の優先順位(防風・袋掛け・剪定衛生)を“見た目の品質”に寄せて最適化できます。
品質と作業負担のバランスを取るための、現場向けの実装案です。
意外な盲点として、せとかは樹勢が中~やや弱であることが示されているため、過剰な着果や過度な樹上完熟の負担が続くと、樹体側の疲弊が先に来る可能性があります。
参考)せとか
タンゴールみかんの高単価は、果実だけでなく樹体の寿命・更新コストも含めた“長期の原価”で決まるため、単年の糖度競争より、剪定と衛生で病害の入口を減らし、樹勢を落とさず毎年同じ品質を出す設計が結局強いです。
黒点病の伝染源(枯れ枝・剪定枝)と散布間隔の考え方(積算降水量など)の根拠:http://jppa.or.jp/archive/pdf/68_06_63.pdf
せとかの品種特性(交配、糖度、熟期、病害抵抗性・CTV感受性など)の一次情報:せとか

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