ししとう栽培で赤くなる原因と対策・収穫タイミング完全ガイド

ししとう栽培で実が赤くなってしまう原因を知っていますか?完熟・水不足・肥料切れなど複数の要因を徹底解説。緑色のまま収穫する適切なタイミングや、辛くなるのを防ぐ管理方法とは?

ししとう栽培で赤くなる原因と防ぎ方・適期収穫まとめ

赤くなったししとうも、実は緑色より栄養価が高い場合があります。


🌶️ この記事でわかること
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なぜ赤くなるのか?

完熟・栄養不足・水分ストレス・収穫遅れなど、ししとうが赤くなる原因を具体的に解説します。

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収穫タイミングのポイント

開花後20〜25日、果長5〜6cmが目安。遅らせるほど赤化・辛化・株弱化につながります。

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赤くなるのを防ぐ管理術

追肥・水やり・マルチングの組み合わせで、緑色のまま長く収穫できる環境をつくれます。


ししとう栽培で赤くなる3つの主な原因


ししとうが赤くなるのは、大きく分けて「完熟(自然な成熟)」「栄養・水分ストレス」「収穫の遅れ」の3つが絡み合っています。それぞれを把握しておくと、対策が格段に立てやすくなります。


① 完熟による赤化


ししとうはもともとトウガラシ属の植物です。ピーマンが完熟すると赤ピーマンになるのと同じ仕組みで、枝についたまま成熟が進むと果実が赤く色づいていきます。緑色の状態は「未熟果」であり、私たちが普段スーパーで目にするししとうは、すべて完熟前に収穫されたものです。つまり、赤くなること自体は異常でも病気でもなく、自然なプロセスです。


完熟が問題になるのは、「商品として出荷できなくなる」という点です。


② 栄養・水分ストレスによる早期完熟


問題になりやすいのは、株が小さいまま・実が小ぶりなまま赤くなるケースです。これは肥料不足や水分不足が原因で、株が「これ以上育てられない」と判断し、小さいうちに成熟を急いでしまう現象です。いわば植物の自己防衛反応で、栄養が足りないと実を大きくする前に熟させてしまいます。


たとえば1週間以上雨が降らない真夏の状況を想像してください。葉がしおれ、土がカラカラに乾いた状態では、株全体が危機を感じて実を急いで成熟させようとします。これが「小さいのに赤い」という状態につながります。


③ 収穫の遅れによる赤化


収穫適期を過ぎてもそのまま放置すると、実はどんどん成熟が進んで赤くなります。収穫できる実を放置することは、株にとって「種を作る作業」に多くのエネルギーを使わせることになり、新しい花や実の形成が遅れます。農業では「採れば採るだけ収穫が続く」という原則があり、収穫の怠りは次の実付きにも直結します。


収穫遅れが続くと赤い実が増え、株も弱ります。


農家が教えるシシトウの栽培方法(マイナビ農業):収穫を怠ると収量が落ちる理由を農家目線で詳しく解説


ししとう栽培で赤くなると辛くなるは本当か?

「赤くなったししとうは辛い」というイメージを持っている方は多いですが、これは半分正解で半分誤解です。この点を正確に理解しておくと、赤くなったしし唐の取り扱いに迷わなくなります。


赤いから辛い、は必ずしも正しくない


赤く完熟したししとうは、見た目が唐辛子にそっくりです。しかし完熟によって赤くなった場合、辛味が「強くなる」というよりむしろ「甘みが増す」傾向があります。ピーマンが赤ピーマンになると甘みが強くなるのと同じ原理です。農林水産省のカプサイシン情報によれば、ししとうは甘味種に分類されており、通常の完熟過程でカプサイシンが急激に増えるわけではありません。


実際に辛くなる場合は、「ストレスによって赤くなった」ケースです。水不足・肥料切れ・高温などで株がダメージを受けると、防御反応としてカプサイシンが蓄積されます。このときは赤くなる前の段階から辛い実が増えていることも多く、「赤いから辛い」というよりは「ストレスがかかっているから辛い、そして赤くもなる」と考えるほうが正確です。


赤と辛さを切り離して理解するのが原則です。


「10本に1本は辛い」という話


ししとうには約10%の確率で辛い実が当たるという話は有名です。これはストレスを受けた株が一部の実に多くのカプサイシンを集中させることがあるためで、同じ株から収穫しても辛い実と甘い実が混在することがあります。辛いしし唐を事前に見分けるには、実の形が細く曲がっていて、しわがより、小ぶりのものに注意するのがポイントです。


なお、赤くなったしし唐は食べることができます。食感は少し柔らかくなりますが、甘みが増して栄養価も高く、料理に使えます。廃棄する必要はありません。


農林水産省 カプサイシンに関する情報:ししとうに含まれるカプサイシンの仕組みと甘味種・辛味種の違いを公式解説


ししとう栽培で赤くなるのを防ぐ水やりと追肥の管理

赤くなるのを防ぐ最も効果的な方法は、「株にストレスを与えないこと」です。そのための二大管理が、適切な水やりと追肥です。いずれも怠ると実の赤化・辛化・収量低下につながるため、丁寧に取り組む価値があります。


水やりの基本と真夏の注意点


ししとうは乾燥に非常に弱い作物です。特に雨明け後から9月にかけての夏場は、1週間雨が降らないだけで株がストレスを受けて辛い実・赤い実が増えます。露地栽培では梅雨明けを機に水やりを開始し、土の状態を毎日チェックする習慣をつけましょう。


水やりの時間帯は午前中か夕方が基本です。日中の高温時に水やりをすると、水温が上がって根を傷める可能性があります。また、葉がしおれているように見えても、夕方になると回復している場合は「高温による一時的なしおれ」であることが多く、慌てて水をやる必要はありません。夕方にも回復していない場合は、速やかに水を与えてください。


プランター栽培の場合は圃場より保水量が少ないため、特に注意が必要です。


追肥のタイミングと量の目安


収穫が始まったら、1か月に1回を目安に追肥を施します。畑栽培の場合は、1㎡あたり化成肥料(8-8-8)で400g程度が目安です。7月以降は畝間の通路にばらまくだけで十分に効果が出ます。肥料が不足すると花柱(めしべ)がおしべより短くなる「短花柱花」が増え、着果しにくくなります。


株の健康状態は「花」で確認できます。めしべがおしべより長く伸びている「長花柱花」が咲いていれば、株の栄養状態は良好です。めしべとおしべが同じ長さか、めしべが短い状態のときは栄養不足のサインです。こうした状態のときは早めに追肥を行いましょう。


肥料切れは赤化・辛化の直接原因になります。


マルチングで土の乾燥を防ぐ


土の乾燥を防ぐ効果的な方法として、マルチングがあります。畝にポリマルチを張ることで、地温の上昇を抑え、水分の蒸発を防ぎ、雑草の発生も抑制できます。シシトウは根を地中深く張る性質があるため、地表温度が上がりすぎると根が弱ります。遮光ネットとの組み合わせで、真夏でも安定した株の管理が可能になります。


シシトウの育て方(自然暮らし):花の観察で健康状態を確認する方法・水やりと追肥の実践的な解説ページ


ししとう栽培で赤くなる前に押さえる収穫タイミング

赤くなるのを防ぐ最も直接的な方法は「適切なタイミングで収穫すること」です。収穫が遅れれば遅れるほど赤化が進み、株も弱ります。正しい収穫サインを覚えておきましょう。


収穫の目安:開花から20〜25日、果長5〜6cm


ししとうの収穫適期は、開花後20〜25日が目安です。果長(実の長さ)で言うと5〜6cm、表面に光沢が出てきたころが食べごろです。はがきの短辺(約10cm)の半分程度のサイズを目安にするとイメージしやすいでしょう。


大きくし過ぎると株への負担が大きくなり、次の実がつきにくくなります。「少し小さいかな」と感じるくらいで収穫するのが正しい判断です。これは多収につながる重要なポイントで、プロ農家が口をそろえて「収穫が一番の追肥」と言う理由のひとつです。早く採れば採るほど、株は次の実に栄養を回せるようになります。


収穫はこまめに、が基本です。


一番果は特に早めに収穫する


定植後に最初についた実(一番果)は、株がまだ小さい段階でできるため、特に小さいうちに収穫します。一番果を大きくなるまで育ててしまうと、株が疲れて夏の本収穫期に勢いが出にくくなります。少し惜しく感じるかもしれませんが、一番果の早期撤去は後の収穫量を増やすための投資と考えましょう。


収穫のタイミングで辛さも変わる


実を長く枝につけておくほど、カプサイシンが蓄積されやすくなります。つまり、収穫を遅らせることは赤化だけでなく辛化も招きます。特に夏の高温期は実の熟成が速く、数日放置しただけで様子が変わることもあります。毎日圃場を確認し、収穫適期のものはその日のうちに採るのが理想的な管理です。


みんなの農業広場 シシトウの作り方:開花後20〜25日の収穫適期と追肥タイミングの目安を解説


ししとう栽培で赤くなったときの活用と独自視点:完熟果を「商品」に変える発想

赤くなったしし唐を「失敗作」として捨ててしまうのは、実は非常にもったいないことです。完熟させた赤ししとうには、緑の状態とは異なる価値があります。農業従事者としての視点で、この「赤化した実」を活用する方法を考えてみましょう。


赤ししとうの栄養価は緑色より高い可能性がある


ピーマンの場合、完熟した赤ピーマンはβ-カロテンの含有量が緑ピーマンの約3倍に達します。ししとうでも同様に、完熟によって赤くなった実はβ-カロテンやビタミンCが増加しています。ししとうには100gあたり530µgのβ-カロテンが含まれていますが、赤くなることでこの値はさらに高まります。


β-カロテンは体内でビタミンAに変換され、皮膚・粘膜の健康維持や免疫機能のサポートに関わる成分です。夏の農作業で日焼けしやすい時期にこそ、積極的に摂りたい栄養素でもあります。「赤くなったから廃棄」ではなく、「栄養価の高い完熟野菜として活用する」という発想の転換が、農業経営においても食の観点においても有効です。


これは使えそうですね。


農産物直売所や加工品での販売可能性


完熟した赤ししとうは、農産物直売所での差別化商品として活用できます。「赤ししとう」として通常品とは別に陳列することで、消費者の目を引く効果があります。また、赤ししとうを乾燥させると、唐辛子に似た風味の乾燥食品として使えます。農家の加工品としてのポテンシャルも十分あります。


さらに、赤いししとうを種採り用に残すという活用法もあります。翌年以降の自家採種に使うことで、種苗代のコスト削減になります。


赤い実も無駄にしないのが農家の知恵です。


まず「なぜ赤くなったか」を記録する習慣を持つ


赤くなる実が増えてきたとき、原因が「単なる収穫遅れ」なのか「栄養・水分ストレス」なのかによって対策は異なります。どのタイミングで、どの株の、どの場所についた実が赤くなったかを記録する習慣をつけると、翌年以降の管理改善に役立ちます。たとえば「北側の株が毎年早くに赤くなる」という傾向が分かれば、日照不足が原因と判断できます。


記録が翌年の収量改善につながります。


カゴメ ししとうの栄養・育て方解説:β-カロテンなど栄養素の詳細と、熟すと赤くなる仕組みをわかりやすく説明




現 代 農 業 2022年 09 月号 [雑誌]