生産調整 米 廃止を理解するには、まず約50年続いた減反政策の役割を整理する必要があります。 減反は生産過剰となった米の作付面積を減らし、米価の下落を防ぐことと、麦・大豆などへの転作で食料安全保障と地域適作を進めることを目的としていました。
1970年代に始まった減反は、行政が農家ごとに生産数量目標を割り当て、守れば補助金を得られる仕組みで、稲作農家の経営は「米価+交付金」を前提として組み立てられてきました。 しかし人口減少や食生活の変化で主食用米の需要は長期的に減少し続け、逆に財政負担や水田の活力低下といった新たな問題も顕在化していきます。
参考)https://www.jacom.or.jp/archive02/document/series/seisan/03031201.html
2013年、政府は2018年産米から国による生産数量目標の配分をやめる方針を決定し、2018年に減反政策は形式的に終了しました。 これにより、主食用米の作付けは原則として農業者自身の経営判断に委ねられ、「需要に応じた多様な米の生産・販売」を掲げる新しい米政策へ移行したと説明されています。
参考)減反政策の廃止理由とは? 影響や日本農業の未来について解説
生産調整 米 廃止と言われる一方で、実務上は行政による「適正生産量」などの目安提示が続き、完全な自由市場とはいえない状況が続いています。 農林水産省は全国・都道府県・市町村レベルで翌年産米の需要量の見通しを示し、地域協議会などを通じて「水田フル活用」の計画づくりを促しています。
しかし、目標配分がなくなったことで、生産抑制に協力しない農家が出れば、一気に供給過剰と価格暴落につながるリスクも高まっています。 実際に、地域ごとに生産調整の参加度合いが異なり、米価が期待よりも上がらない、あるいは局所的な値崩れが生じるなど、従来以上に「地域差」が大きくなっていることが指摘されています。
参考)http://www.nohken.or.jp/23-1-5-4shougenji.pdf
一方で、米不足や価格高騰が発生した局面では、減反によって水田の潜在生産力を削いできたツケが出たとの批判もあり、食料安全保障の観点から減反廃止を求める声も強まっています。 このように、生産調整 米 廃止は「価格を支える仕組みの弱体化」と「需給ひっ迫時の供給力不足」という、相反するリスクを同時に抱えた状態を生んでいると言えます。
参考)時代遅れな「減反政策」の代償
生産調整 米 廃止により、従来のように「減反に協力して交付金をもらい、安定した米価を前提にする」モデルは揺らぎ、収入構成の見直しが避けられなくなりました。 戸別所得補償の終了や直接支払の見直しにより、規模の小さい兼業農家ほど、減反協力によるメリットが薄れた一方、高収量・高品質の主食用米や輸出用米を安定的に販売できる担い手にはチャンスも拡大しています。
農業経営の安定を図るために、国は担い手経営安定対策などを通じて一定の価格補填や収入保険制度への加入を促しており、米価下落時の急激な所得減少を和らげる仕組みが整備されています。 しかし、新潟県の調査では、5ヘクタール以上層の稲作農家にとって「撤退ライン」と感じる米価は1万5000〜1万6000円との回答が多く、現在の市場環境ではその水準が現実味を帯びる可能性も否定できません。
こうした状況で生き残るには、単純に主食用米の作付けを増やすだけではなく、飼料用米や加工用米、麦・大豆、園芸作物を組み合わせた複合経営で所得源を分散させることが重要になります。 実際に、飼料用米や米粉用米の戦略的な導入により、補助単価を活用しながら水田を遊ばせずに所得を積み上げている事例も増えてきています。
参考)減反政策の見直しは実現するか ~新たな農政を逆手にとれ!~ …
生産調整 米 廃止の影響は、個々の農家だけでなく集落営農や地域運営組織の運営にも大きく波及しています。 生産数量目標の配分が行政主導から農業者やJA、地域協議会主体へと移行する過程で、「地域全体でどれだけ主食用米を作るのか」「どのほ場を転作に回すのか」といった判断を、現場が自ら行うことが求められるようになりました。
農文協などは、生産調整見直しと直接支払廃止を含む「米30年問題」を念頭に、集落営農から地域運営組織への発展を提案し、地域ぐるみでの収支改善・世代交代・販売戦略の見直しを呼びかけています。 具体的には、法人化による農地集積の加速、「米+α+β」の複合経営で畜産・園芸・加工などを組み合わせること、新規就農者や地域外人材の雇用を通じて担い手を増やすことなどが挙げられています。
参考)農文協の主張:2017年6月 集落営農から地域運営組織へ——…
興味深いのは、条件不利地や中山間地域でも、ブランド米や高食味米の独自販売によって、生産調整 米 廃止をむしろ規模拡大と所得向上のチャンスと捉える事例がある点です。 新潟の一部地域では、魚沼産コシヒカリなどの高評価を背景に、独自販売と直販ルートを確保することで、一般市場の米価下落を逆手に取り、買い叩かれた農地を集積して経営規模を拡大した法人も報告されています。
参考)「減反政策」の廃止で、日本の稲作はどう変わったのか 「令和の…
生産調整 米 廃止後の米政策では、「需要に応じた多様な米の生産・販売」が掲げられていますが、その延長線上で輸出や高付加価値米へのシフトは、まだ現場で十分に掘り下げられていないテーマと言えます。 国内需要の先細りが続く中、アジアを中心とした日本産米の輸出は緩やかに増加しており、とくに高品質・ブランド米や酒造好適米などに対するニーズは拡大傾向にあります。
輸出や高付加価値米を狙うには、単に味や品質だけでなく、栽培ストーリーや環境配慮、トレーサビリティなどを組み合わせた「物語性のある商品づくり」が求められます。 その意味で、生産調整 米 廃止により、国の枠組みではなく産地や生産者自身がマーケットと直結して供給量や価格戦略を考える必要が出てきたことは、逆にブランド化や輸出向け商品開発の大きなチャンスでもあります。
一方、輸出やプレミアム市場を狙う取り組みは、地域内での所得格差や「選ばれる農家」と「そうでない農家」の分断を生みかねないリスクもあります。 この点を和らげるには、集落営農や地域運営組織が輸出用・ブランド用の米と、地域内消費や学校給食向けなどの米をバランスよく組み合わせ、作業受託や分配のルールを透明にすることが重要となるでしょう。
参考)https://www.maff.go.jp/kyusyu/kagoshima/attach/pdf/070214-1.pdf
生産調整 米 廃止を前提とした中長期戦略では、「自分の地域の需給」と「自分の経営リスク」を可視化することが出発点となります。 地域内の人口動態、米の販売ルート、転作先作物の市場動向、畜産や加工業との連携可能性などを棚卸しし、少なくとも5〜10年スパンで「どのほ場で何を作るか」「誰が作業を担うか」を具体的に描く必要があります。
実務レベルでは、次の点が重要なチェックポイントになります。
また、あまり知られていないポイントとして、「生産調整 米 廃止後も、実際には生産調整への参加度合いが高いほど、一定の交付金や補助事業の採択で有利になるケースがある」という指摘があります。 これは、生産調整の達成状況が地域の産地づくり交付金などの前提条件とされることがあるためで、表向き「廃止」と言いながらも、現場レベルでは生産調整への協力の有無が依然として影響力を持ち続けているという、やや矛盾した構造といえます。
参考)https://www.mizuho-rt.co.jp/publication/mhri/research/pdf/insight/pl131219.pdf
このページでは生産調整 米 廃止後の政策全体像と現場の影響を俯瞰しましたが、実際の経営判断は地域や経営規模によって大きく異なります。 自身の経営を守りながら、地域の水田と食料供給をどう維持していくのか、一度集落や仲間内でじっくり話し合ってみてはいかがでしょうか。
生産調整・減反政策の経緯と廃止後の政策全体像の詳細を解説した農林水産省の資料です。制度の変遷や「水田フル活用」の考え方を整理する際の参考になります。